副業マーケターの活用|本業・並行案件との線引きと頼み方

副業マーケターの活用|本業・並行案件との線引きと頼み方 マーケティング

副業のマーケターを自社で活用するなら、契約前に相手の立場を確かめ、競合と情報の扱いを条項で決め、本業の繁忙期の連絡方法まで取り決めておくことが要点です。社外の専門家に頼みたい一方で、相手の本業や別の案件とぶつからないか不安を持つ企業は少なくありません。副業・複業のマーケターには本業の勤め先や並行して支援する会社があり、そこから競合や情報の混線、稼働の波が起きることがあります。なお、ここでいう複業人財は本業を持つ人に限らず、特定の一社に専従せず、専門スキルを複数の仕事に提供する個人のプロを指します。この記事では、頼む側の企業に向けて、相手の立場の見分け方、契約前に本人へ確かめる項目、契約書に入れる条項、本業が忙しい時期に備える取り決めを順に整理します。

副業マーケターに頼む意味と向かない状況

副業マーケターに頼む意味と向かない状況

副業のマーケターは、採用しにくい専門性を必要な分だけ借りる手段として使えます。ただし、日中にすぐ動いてほしい業務や、相手の稼働を超える量の仕事には向きません。頼む前に、任せる業務が時間をずらして進められるものかを見ておきます。

頼む会社が得られるもの

得られるものは、専門性を必要な時間だけ借りられることと、社外の目が入ることの2つです。広告運用やSEOの経験者を正社員で採るのは時間も費用もかかりますが、副業の形なら週に数時間からでも頼めます。自社の外で複数の現場を見てきた人の視点が入るので、社内だけでは気づきにくい改善点も見つかりやすくなります。

働き方の面でも、副業は特別なものではなくなっています。厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインによると、平成30年1月に改定されたモデル就業規則では、労働者は勤務時間外に他の会社等の業務に従事できるとされています。

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任せやすい業務と社内に残す業務

任せやすいのは、やり取りが文字で済み、作業の時間を相手がずらせる業務です。日中の即時対応や常駐が要る業務は、社内に残します。
業務 副業の人に向くか 理由
アクセス解析・効果検証 向く データを見て報告にまとめる作業で、夜や週末にも進められる
広告運用の設定と改善 向く 管理画面での作業が中心で、締切を週単位で置ける
SEO・コンテンツ制作 向く 構成や原稿の作成は非同期で進めやすい
SNSの企画と投稿予約 向く 予約投稿を使えば作業の時間帯を選ばない
問い合わせへの即答・当日の差し替え 向かない 相手の本業の時間と重なりやすい

表で「向く」に入る業務でも、方針の判断と決裁は社内に残します。頼む業務を選ぶときは、作業に締切を週単位で置けるかを一つの目安にしてください。

頼まないほうがよい状況

見送ったほうがよいのは、日中の即時対応が前提の業務と、頼みたい量が相手の稼働の見込みより大きい場合です。

日中の即時対応が前提の業務は、問い合わせへの即答や当日中の広告の差し替えなどです。業務の全部を外に出すのは見送り、即時対応は社内に残して、分析や改善案づくりだけを切り出して頼みます。

頼みたい量が稼働を上回る場合は、そのまま頼むと締切が守られにくくなります。優先する業務を1つに絞って範囲を切るか、量が落ち着くまで頼むのを見送ります。

副業マーケターの3つの立場と頼み方の違い

副業マーケターの3つの立場と頼み方の違い

当社の複業人財マッチングに登録するマーケティング領域の人材にも、事業会社のマーケや営業の仕事を経て複業に踏み出した人、代理店や制作会社での経験をもとに独立した人、いくつもの会社を同時に支える人がいます。これらの経歴は1人の中で重なることもあります。ここからは経歴ではなく、頼み方に効く立場として、本業がある人、独立している人、並行して支援している人の3つに分けて前提を整理します。

本業がある人に頼むときの前提

本業がある人には、稼働が夜や週末に寄りやすく、本業先の規則で依頼が止まることもある、という前提で頼みます。

勤務時間外をどう使うかは、原則として労働者の自由です。ガイドラインは裁判例の考え方として、勤め先が副業を制限できるのは、労務提供上の支障、業務上の秘密の漏洩、競業により自社の利益が害される場合などに当たるときと紹介しています。厚生労働省のパンフレットも、副業ができるかどうかは会社によって異なると書いています。モデル就業規則の解説では、雇用の形に限らず、請負・委託・準委任の契約で行う副業も対象に含める書き方がとられています。

この制限は、本業先とその社員との間の話です。頼む側に義務が生じるわけではありませんが、相手の都合で契約が途中で止まる可能性として、頼む前に見込んでおきます。

本業を持たず独立した人に頼むときの前提

独立した人の稼働は本人の裁量で組まれ、ほかの取引先との配分で決まる、という前提で頼みます。

労働時間を事業場をまたいで通算する決まりは労働基準法第38条第1項にあり、ガイドラインは、通算されない場合の例にフリーランスや独立を挙げています。雇われていない人の時間は、本業先の労働時間の管理とは切り離して考えます。

そのため、業務委託では相手の時間ではなく、業務の内容と期日で約束します。ガイドラインは、請負のような契約でも実態が雇用と認められる場合には、就労の実態に応じて使用者の責任が問われるとしています。頼む側は「何をいつまでに」を決め、作業の進め方は相手に任せる形を基本にしてください。進み具合は、週に1回の報告など、成果物に沿った形で受け取ります。

複数社を並行して支援する人に頼むときの前提

並行して支援する人に頼むなら、同業の会社を同時に支援している可能性と、自社の資料が別の案件の作業と同じ環境で扱われる可能性を前提にします。

並行先があること自体は、複数の現場を見てきた経験として頼む側の利点にもなります。気をつけたいのは、並行先の業種が自社と重なる場合です。広告の配信先や訴求の方針、売上の数字といった情報は、同業の会社にとって価値があります。

また、作業用のパソコンやクラウドの保存先を複数の案件で共有していると、資料の取り違えが起きる余地が生まれます。こうした確かめ方は、次の章の確認項目と条項で扱います。

最初の面談で立場を確かめる質問

最初の面談では、相手の立場を4つの質問で確かめ、答えに合わせて連絡の時間帯と締切の置き方を変えます。

質問文 答えで変える頼み方
本業はありますか。ある場合、勤め先の副業のルールは確認済みですか 本業があるなら、連絡は夜と週末に寄せ、締切は週末明けに置く
いま並行して支援している会社は何社で、どんな業種ですか 同業があれば、条項と情報の範囲を先に決めてから着手する
稼働できる曜日と時間帯はいつですか 定例の打ち合わせを相手の空く時間帯に固定する
今後半年で、就職や独立など立場が変わる予定はありますか 予定があれば、契約期間を短く区切って更新の時に見直す

答えにくそうな質問があれば、契約前の確認項目として改めて聞きます。

本業や並行案件との競合と情報の混線を防ぐ確認

本業や並行案件との競合と情報の混線を防ぐ確認

競合と情報の混線は、起きる場面を知り、本業先のルールを踏まえ、契約前に本人へ確かめ、契約書に条項で残す、の順で防ぎます。確認だけで終えず、条項にするところまでを1つの流れとして進めてください。

競合と情報の混線が起きる場面

相手が複数の会社を並行して見ているのは、例外ではなく前提です。支援してきた中では、登録するマーケターが並行して見ている会社は、おおむね2〜3社です。事務局が日々の調整で把握している実務上の目安で、調査の数字ではありません。

ここから、頼む側が気をつけたい場面は3つに整理できます。

  1. 並行先に自社と同業の会社がいる場面。広告の方針や数字が、同じ市場で競う相手の支援に生かされうる
  2. 相手の本業先が自社の競合にあたる場面。本業で得た知識と、自社の仕事で得た情報の境目があいまいになる
  3. 資料やデータが別の案件と混ざる場面。共有フォルダや作業ファイルの取り違えで、自社の情報が他社の目に触れる

どの場面も、相手の誠実さだけに頼らず、仕組みで防ぐのが基本です。

本業先のルールで依頼が止まる場合

本業先のルールで依頼が止まる可能性は、頼む側からは見えにくいので、本人に確かめてもらうのが現実的です。

ガイドラインは、副業を希望する労働者に、まず勤め先の副業に関するルール(労働契約や就業規則など)を確認する必要があるとしています。つまり、確認するのは本人です。ガイドラインそのものは、企業が自社の労働者の副業をどう扱うかを定めた文書で、外の人に頼む企業向けに書かれたものではありません。

それでも、本業先の規則で途中から稼働できなくなると、困るのは頼む側です。契約前に「勤め先のルールを確認したか」を本人に聞き、確認が済んでから着手する流れにしておくと、途中で止まる事態を避けやすくなります。

契約前に本人へ確かめる項目

契約前には、競合関係と情報の範囲を中心に、次の項目を本人に確かめます。

項目 聞き方
並行先の業種と自社との競合関係 「いま支援している会社に、当社と同じ商材を扱う会社はありますか」
本業先の副業の扱い 「勤め先の副業のルールは確認されましたか。業務委託の副業も対象になっていますか」
自社の情報のうち相手が見る範囲 「この業務で見ていただくのは、広告アカウントとこのフォルダだけです。ほかに要るものはありますか」
使うアカウントと権限 「作業に使うアカウントは当社が発行したものでよいですか」
終了時に権限とデータを戻す手順 「契約が終わったら、権限の削除とデータの消去をお願いできますか」

答えの中に同業の並行先があっても、すぐに見送る必要はありません。見る情報の範囲を絞り、次の条項で決めておけば頼める場合があります。

契約書に書き込んでおく条項

契約書には、副業ならではの関係に合わせた条項を足しておきます。

  • 同業の会社から新たに受託するときは、事前に申告する
  • 自社の資料やデータを、並行先の作業に使わない
  • 本業先への就職や独立など、立場が変わったら知らせる

秘密保持と競業避止も、契約で定めておくと、対象の範囲と期間がはっきりします。相手がフリーランス法の特定受託事業者に当たる場合、頼む側は報酬の額や支払期日、給付の内容などを明示しますが、明示が要る事項に秘密保持や競業避止は含まれていません。必要なら別に条項で決めます。

申告を受けたときの扱いも決めておきます。見せる情報を絞る、担当を分ける、契約を見直す、のどれにするかを申告のたびに話し合う、と一文入れる形です。外部に頼んでも、成果と法律上の最終責任は発注した自社に残ります。

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本業が忙しい時期に備える契約前の取り決め

本業が忙しい時期に備える契約前の取り決め

本業がある人に頼むなら、本業が忙しい時期に稼働が落ちることを前提に、連絡と予告の決まりを契約前に置きます。ここで扱うのは本業の事情による揺れで、取り決めは相手と合意したうえで、契約書かメールに残します。

稼働が揺れやすい時期と理由

相手の稼働は、もともと幅があるものとして見込んでおきます。登録するマーケターが引き受ける稼働の目安は週10〜20時間で、その幅は人ごとにかなり違います。

そのうえで本業がある人は、本業の事情で稼働が落ちる時期があります。決算や年度末などの繁忙期、本業先での異動、副業の規則の見直しといった事情は、本人にも早めに読めないことがあります。頼む側は、相手が怠けたわけではない揺れがあると知ったうえで、事前に決めておける部分を決めておくことが大切です。

揺れは、毎年の繁忙期のように前もって分かるものと、異動や規則の見直しのように急に起きるものに分けて備えます。前者は次の聞き取りで予告の決まりを置き、後者は立場や事情が変わったら知らせてもらう約束を契約に入れて受け止めます。

本業の繁忙期を契約前に聞き取る

本業の繁忙期は、契約前の面談で聞き取り、次の4項目を相手と決めておきます。

項目 決め方
本業の繁忙期の時期 決算月や年度末など、毎年忙しくなる月を聞いておく
稼働が落ちるときの予告 何日前までに、どの連絡手段で知らせてもらうかを決める
稼働が落ちた週の返信の期限 「平日の連絡には翌営業日までに返信」など、落ちた週でも守る線を1つ置く
自社側の窓口 予告や相談を受ける担当者を1人決め、相手に伝えておく

本業が詰まった週に、契約で決めた範囲を超える稼働を求めないことも、頼む側の姿勢として決めておきます。無理を重ねると、締切の遅れや品質の低下として自社に返ってくるためです。

揺れが続くときの稼働の幅の決め直しと終え方

揺れが一時的でなく続くときは、まず契約の中身を相手と決め直し、それでも合わなければ契約を終えます。

稼働の幅と範囲を決め直す

最初に、契約で決めた稼働の幅、業務の範囲、締切の置き方を相手と話し合って見直します。たとえば月の稼働の上限を下げる、業務を1つに絞る、締切を週単位から隔週に延ばすといった変え方です。決め直した内容は口頭で済ませず、書面かメールで残し、いつから適用するかも明記します。

契約を終えるときの予告

決め直しても合わない場合は契約を終えます。頼む側が従業員を使う会社などで、相手がフリーランス法の要件に当たり、施行令で定める6か月以上の継続的な業務委託(契約の更新で通算6か月以上になる場合を含む)なら、解除や更新しない場合の少なくとも30日前に、書面や電子メール等で予告します。厚生労働省関係の施行規則は、災害などで予告が難しい場合、1回の契約期間が30日以下の契約の解除、相手の責めに帰すべき事由で直ちに解除が必要な場合などを例外としています。

よくある質問

本文で扱いきれなかった問いのうち、頼む側から出やすいものを3つ取り上げます。どれも契約の前後で判断が要る場面です。

Q. 契約の途中で相手の立場が変わったらどうするか。

相手の立場が変わったら、契約前に確かめた項目をやり直します。本業先への就職、独立、並行先の追加などで、競合関係や稼働の前提が変わるためです。

  1. 立場が変わったら知らせてもらう約束を、契約書に入れておく
  2. 知らせを受けたら、並行先の業種、本業先の副業の扱い、見る情報の範囲を改めて確かめる
  3. 稼働が変わるなら、稼働の幅と締切を決め直し、書面かメールに残す

知らせが来る前提を作っておくと、変化に気づくのが遅れる事態を防ぎやすくなります。

Q. フリーランス法は本業がある個人にも当てはまるか。

本業があるかどうかではなく、条文の要件に当たるかで決まります。フリーランス法の特定受託事業者は、業務委託の相手方である事業者のうち、従業員を使用しない個人などを指します。本業がある人でも、この要件に当たれば対象になりえますが、副業の人が全員当たるわけではありません。

対象になる場合、頼む側は業務委託をしたら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面か電磁的方法で明示する必要があります。迷ったときは、相手が対象に当たる前提で明示しておくと、あとから認識のずれが生じにくくなります。

Q. 相手の本業先へ直接確認してよいか。

本業先へ直接確認するのは避けます。勤め先のルールの確認は本人と本業先の間の話で、確かめるのは本人だからです。頼む側が本人の同意なく本業先へ連絡すると、相手が副業をしていること自体を勤め先に伝える結果になりかねません。

頼む側にできるのは、本人に確認を頼み、確認が済んだかを契約前に聞くことです。不安が残る場合は、確認の結果を本人から書面かメールで受け取る形にします。中身は、勤め先のルールを確認した日と、この業務が勤め先のルールに照らして問題ないと本人が判断したこと、の2点で足ります。

まとめ

副業のマーケターに頼むときは、相手の立場を見分け、契約前に確かめ、条項に残し、本業の繁忙期の決まりを置く、の順で備えます。

  • 立場の見分け: 本業がある人、独立している人、並行して支援している人で、稼働の時間帯と止まる理由が違う
  • 契約前の確認: 並行先の業種、勤め先のルールの確認、見せる情報の範囲を本人に聞く
  • 契約の条項: 同業の受託の申告、資料の流用の禁止、立場が変わったときの連絡を入れる
  • 繁忙期の取り決め: 繁忙の時期、予告の期限、返信の線、窓口を決め、続くときは稼働の幅を決め直す

明日からできることとして、候補の人との面談で使う4つの質問を書き出し、契約書の案に3つの条項を足すところから始めてみてください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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