マーケティング体制構築の手順|1人目の確保と最初の90日

マーケティング体制構築の手順|1人目の確保と最初の90日 マーケティング

兼務で施策が単発に終わるなら、マーケティングの体制構築は、小さく始めて1人目の役割と社内の判断者を先に決めるのが近道です。最初から部門の完成形を描く必要はありません。責任者1人の役割と、社内に残す判断の線さえ決めれば、足りない実務は育成や社外の人材で埋められます。

この記事では、専任を置くべきかの見極め方、最初の人数と役割、1人目を社内・採用・社外のどれで確保するか、内製と外注の線引き、費用の見積もり方、最初の90日の段取りを扱います。読み終えたときに、自社の条件を当てはめて体制の最初の形を書き出せる状態をめざします。

  1. マーケティング体制が担う役割
    1. 体制が受け持つ3つの業務
    2. 営業の兼務では回らない理由
    3. 置くことが多い職種と担当範囲
  2. 専任を置くべきかの見極め方
    1. 兼務のまま止まっているサイン
    2. 1人が全領域を抱えていた事例
    3. 専任化を判断する材料の並べ方
  3. 体制より先に決める戦略の範囲
    1. 誰に何を届けるかの最低ライン
    2. 戦略がないまま実行が進む失敗
  4. 組織の形と報告ラインの選び方
    1. 代表的な型ごとの長所と短所
    2. 自社に合う型の絞り込み方
    3. 報告ラインを置く場所
  5. 最初の人数と役割の置き方
    1. 立ち上げ期は責任者1人から
    2. 成長期に足す役割の順番
    3. 1人目に求めるスキルとAIで変わる点
  6. 1人目を確保する方法の選び方
    1. 社内の兼務者を育てる
    2. 新たに採用する
    3. 稼働が限られる人を体制に組み込む
  7. 社外の担い手の種類と違い
    1. 形ごとの稼働と契約の縛り
    2. 人が決まりにくい依頼の条件
    3. 相談から着手までと途中でやめる条件
  8. 内製と外注の線引き
    1. 業務ごとの振り分け方
    2. 社内に誰もいない領域の扱い
    3. 社内に残す判断と窓口
  9. 営業との連携の決め方
    1. 引き渡すリードの基準と連絡の期限
    2. 両部門で追う共通の指標
  10. 費用の見積もりと予算の通し方
    1. 年間費用の組み立て式
    2. 広告費より先に決める人
    3. 経営層に見せる指標の選び方
  11. 成果が見えるまでの期間と増員の時期
    1. 領域ごとに兆候が出るまでの期間
    2. 増員に進む合図と待ちきれない失敗
  12. 体制づくりが止まる典型と防ぎ方
    1. 予算を増やしても受注が増えない
    2. 本数の目標だけで始めてしまう
    3. 社内の確認待ちで施策が止まる
  13. 最初の90日の段取り
    1. 最初の30日でそろえるもの
    2. 60日目までに動かす施策
    3. 90日目に見直す項目
  14. まとめ

マーケティング体制が担う役割

マーケティング体制が担う役割

マーケティング体制は、見込み客を集めて育て、営業が商談にできる状態で渡すまでを、担当者の頑張りではなく仕組みで回すためにあります。受け持つ業務、兼務で回らない理由、置く職種の3点を押さえると、自社に欠けている部分がはっきりします。

体制が受け持つ3つの業務

体制が受け持つのは、戦略設計・施策の実行・効果の分析の3つです。どれか1つが欠けると、残りの2つも空回りします。

業務 中身 欠けたときに起きること
戦略設計 誰に何を届けるか、どの手段に予算を割くかを決める 施策が思いつきの順になる
施策の実行 広告やSEO(検索結果からの集客)で集め、メールや資料で育てる 計画が紙の上で止まる
効果の分析 数字を見て、続ける施策とやめる施策を分ける 同じ失敗を繰り返す

BtoBでは、リード(自社に関心を示した見込み客)の獲得から営業への引き渡しまでをマーケティングが持つ形が多く見られます。自社の体制図を描くときは、3つの業務それぞれに担当者の名前が入るかを確かめると、手薄な所が分かります。

営業の兼務では回らない理由

営業の兼務で回らないのは、担当者の能力ではなく体制の問題です。BtoBの買い手は、営業に会う前にWebサイトや資料で情報を集め、候補を比べてから問い合わせる流れが一般的になりました。営業と会う前の段階で選ばれる準備が要るため、その仕事を受け持つ人が必要になります。

兼務の担当者は、目の前の商談や受注の対応を優先せざるを得ません。その結果、施策を1回打って終わり、問い合わせへのフォロー・数字を見た改善・月ごとの振り返りが抜け落ちます。施策が単発で終わっているなら、人を責めるより、誰がいつその時間を持つかを決め直すことが先です。

置くことが多い職種と担当範囲

体制に置くことが多いのは、責任者・マーケター・制作・分析の4つの役割です。

役割 担当範囲
責任者 目標と優先順位を決め、経営や営業と調整する
マーケター 広告・SEO・メールなどの施策を計画して回す
制作(ライター・デザイナー) 記事・資料・バナー・LP(広告の受け皿になるページ)を作る
分析 数字を集計し、改善の材料を出す

全ての役割に1人ずつ置く必要はありません。立ち上げ期は責任者とマーケターの役割を1〜2人で兼ね、制作と分析は社外に頼むか、ツールで手間を減らす形で回せます。役割を人数ではなく仕事の単位で捉えると、最初に置く人の要件が絞りやすくなります。

専任を置くべきかの見極め方

専任を置くべきかの見極め方

専任を置くかどうかは、売上規模やリード数の一律の線では決めにくい判断です。会社ごとに商材の単価も営業の体制も違うからです。自社で起きている症状と、専任に払える予算の2つを並べて決めます。

兼務のまま止まっているサイン

次の3つの症状のうち2つ以上に当てはまるなら、兼務のままでは施策が前に進みにくい段階です。1つだけなら運用の工夫で直せますが、2つ重なると担当者の時間そのものが足りていないからです。

症状 確かめる質問 当てはまる状態
施策が単発で終わる 直近半年で、改善を重ねた施策はありますか 1回やって終わりの施策ばかり
改善する人がいない 先月の数字を見て次の打ち手を決めた人は誰ですか 名前が挙がらない
引き渡し後のフォローが抜ける 営業が連絡しきれなかった問い合わせを把握していますか 把握していない

兼務の担当者が社長や役員であることは珍しくありません。事業の拡大で1人では回らなくなった時点が、専任化を考えるきっかけになりやすいタイミングです。

1人が全領域を抱えていた事例

ある事例では、マーケティングの担当者が1人で全ての領域を兼任していました。リソースが回らず、施策の判断を代理店の提案に委ね、言われるままに進める状態になっていました。

この状況は、代理店の良し悪しより、社内に判断する時間を持つ人がいないことから生まれます。提案を比べて選ぶ人が社内にいなければ、どの外部パートナーと組んでも同じ状態に陥りえます。専任か兼務かを考えるときは、施策の実務量だけでなく、外部の提案を評価する時間を誰が持つかも数に入れてください。

なお、この事例は一社の状況であり、同じ体制の会社が同じ状態になると決まっているわけではありません。

専任化を判断する材料の並べ方

専任化は、兼務者の時間・症状の数・費用の3つを1枚の紙に並べて決めます。

  • STEP1:兼務者がマーケティングに割けている時間を、直近1か月の実績で書き出す
  • STEP2:「兼務のまま止まっているサイン」の3症状のうち、当てはまる数を数える
  • STEP3:「年間費用の組み立て式」で、専任1人を置く場合と社外の人材を組み込む場合の年間費用を出す

STEP1の時間では施策が回らず、症状が2つ以上あり、STEP3の費用を払えるなら、専任を置く段階です。費用が合わなければ、社外の人材を組み込んで症状を減らすことから始めます。症状が0〜1つなら、担当者の時間を確保し直すだけでよく、専任化は見送って構いません。

体制より先に決める戦略の範囲

体制より先に決める戦略の範囲

人を置く前に、最低限の戦略だけは決めておきます。誰に何を届けるかが決まっていないと、採った人も頼んだ人も進む方向を選べないからです。細かい計画は体制ができてからで間に合います。

誰に何を届けるかの最低ライン

体制を作る前に決めるのは、ターゲットと選ばれる理由の2つで足ります。

ターゲットは、今の売上に効いている既存顧客の像から決めるか、これから狙う層を決めるかのどちらかです。迷うなら、受注額の大きい既存顧客の上位数社に共通する業種・規模・担当者の役職を書き出すと、根拠のある像になります。選ばれる理由は、その顧客が他社ではなく自社を選んだ理由を営業担当に聞き、1〜2行にまとめます。

この2つが決まれば、1人目の担当者は施策の優先順位を自分で決められます。市場分析や年間計画まで含む戦略書は、体制が回り始めて数字が集まってから作るほうが、中身の濃いものになります。

戦略がないまま実行が進む失敗

社外の力を借りるきっかけとしてよくあるのは、そもそも上流の戦略設計ができていないことです。実行する人は社内にいたのに、誰に何を届けるかが決まらないまま手を動かし、戦略なき実行になっていた型も見られます。

この型では、広告も記事も一定の量は出ているため、問題が表に出にくくなります。成果が出ない理由を実行の質に求めて担当者を替えても、向かう先が決まっていなければ同じ結果になりやすいのです。

今いる実行者の手が止まっていないのに成果が伸びないなら、増員より先に、ターゲットと選ばれる理由を言葉にしてください。人を増やす前に「誰に何を届けるかの最低ライン」を決めるのは、この型を避けるためです。

組織の形と報告ラインの選び方

組織の形と報告ラインの選び方

組織の形は、型の長所と短所を知るだけでは選べません。自社の事業の数や人数を当てはめて絞り込み、報告ラインをどこに置くかまで決めて、初めて体制図が描けます。

代表的な型ごとの長所と短所

代表的な型は、事業部の中に置く型・独立部門・経営直轄の企画型・プロジェクト型の4つです。どの型にも短所があるため、その短所を自社で補えるかで選びます。

型 向く会社 長所 短所
事業部の中に置く型 事業ごとに顧客が大きく違う 現場に近く動きが速い 事業をまたぐ知見がたまりにくい
独立部門 複数の事業を横断して集客する ノウハウとデータを1か所に集められる 事業部との距離が開きやすい
経営直轄の企画型 少人数で経営判断と直結させたい 意思決定が速く予算を動かしやすい 経営者の関与が薄れると止まる
プロジェクト型 新規事業や期間限定の取り組みがある 必要な人を集めてすぐ始められる 終了後に知見が散りやすい

短所への備えも一緒に決めておくと、型を選んだ後に迷いません。

自社に合う型の絞り込み方

型は、事業の数・マーケティングの人数・意思決定の速さ・営業との距離の4軸で絞ります。自社に当てはまる行だけを見て、○が最も多い型を候補にします。

当てはまる条件 事業部の中 独立部門 経営直轄 プロジェクト型
事業が複数あり顧客層が違う ○ ○ × ×
マーケの人数が1〜2人 ○ × ○ ○
予算や方針をすぐ決めたい × × ○ ○
営業と日々やり取りして動く ○ × △ ×

事業が1つで人数が少なく、判断を急ぎたい立ち上げ期の会社なら、経営直轄の企画型が残りやすくなります。迷ったら今の人数で回る型を選び、人数が3人を超えた時点で見直すと決めておけば十分です。

報告ラインを置く場所

報告ラインは、経営の直下か、営業と同格に置くのが判断しやすい形です。

営業部門の下に置くと、今月の商談数を求められやすく、短期のリード獲得に偏りがちになります。問い合わせを増やす施策は回っても、半年先に効く記事や見込み客を育てる仕組みに時間と予算が回りにくいからです。経営の直下に置けば、短期と中長期の配分を経営の判断として決められます。

営業と同格に置く場合は、連携のルールを文書にしておくことが前提です。どのリードを渡し、渡した後に誰がいつ連絡するかを決めていないと、部門の境目で見込み客がこぼれます。

最初の人数と役割の置き方

最初の人数と役割の置き方

最初の人数は、立ち上げ期と成長期で変わります。立ち上げ期は少人数で役割を兼ね、成果の芽が出た領域から担当を分けていくのが無理のない順番です。

立ち上げ期は責任者1人から

立ち上げ期は、責任者1人に実務の担当1〜2人程度(兼務を含む)が一般的な目安です。

この人数になる理由は、立ち上げ期に要る役割の数にあります。優先順位を決める役割、施策を回す役割、社内と調整する役割の3つがそろえば、最初の数か月は動けます。責任者がこのうち2つを持ち、残りを兼務者や社外の人材が担えば、2〜3人の体制で足ります。

1人目に任せるのは、施策の実行そのものより、何から手を付けるかの判断と社内の調整です。実行は社外やツールで補えても、営業や経営と話して優先順位を決める仕事は、社内の人にしか担えません。

成長期に足す役割の順番

成長期は、成果の芽が出た領域から担当を分けて人を足します。全領域を一度に厚くするより、効いている施策に人を寄せたほうが投資を回収しやすいからです。

足す順 役割 社内に置くか頼むか
1 コンテンツ(記事・資料の企画) 企画は社内、執筆は頼んでもよい
2 育成の運用(メールやMAの運用) 顧客理解が要るため社内に置く
3 広告 運用は頼みやすい。予算の判断は社内
4 デザイン 頼みやすい。量が増えたら社内も検討

MA(見込み客へのメール配信などを自動化するツール)の運用を社内に置くのは、どの顧客にどの情報を届けるかが営業の現場と直結するためです。この順番は目安で、広告が先に成果を出したなら広告の担当から分けて構いません。

1人目に求めるスキルとAIで変わる点

1人目に欠かせないのは、数字を見て改善できる力、社内を調整する力、複数の施策を同時に進める管理の力の3つです。

記事の執筆、バナーの制作、広告の入稿や日々の運用といった実務は、社外の人材やツールで補えます。候補者を見るときは、実務の経験年数より、数字を見て施策を変えた経験があるかを確かめてください。面談なら「成果が出なかった施策を、どう判断して変えましたか」と聞くと、改善の力が見えます。

AIの普及で、文章の下書きやデータの集計にかかる手間は減りつつあります。ただ、どの施策に予算を割くかの判断と、顧客が何に困っているかを理解する仕事は人に残ります。1人目の要件は、手を動かす量より判断の質で決めます。

1人目を確保する方法の選び方

1人目を確保する方法の選び方

1人目の確保には、社内の兼務者を育てる、新たに採用する、稼働が限られる社外の人を体制に組み込む、の3つの道があります。急ぐなら社外の人を組み込み、社内に候補がいれば並行して育てる組み合わせが、採用を待つより早く動き出せる形です。

社内の兼務者を育てる

社内の兼務者を育てる道は、事業と顧客を知っている人を活かせるのが強みです。足りない専門知識は、社外の経験者と並走させて補います。

株式会社SEIRYOは、戦略策定の専門知識を持つ人財が社内に不足していたため、経験豊富なマーケターを業務委託で迎えました。戦略提案資料の作成を並走してもらい、提案フォーマットの型化も進めた結果、新規案件の獲得と社員の能力向上につながったと語っていました。

社外の人と並走させると、社内の担当者は判断する側に回り、他の業務にも時間を使えるようになります。この事例は一社の取り組みで、同様の成果を保証するものではありません。育成を選ぶなら、並走の期間と、社内の担当者が最終的に持つ判断の範囲を先に決めてください。

▼社外のマーケターと並走して社内の人財を育てた取り組みはこちら
【株式会社 SEIRYO】SOKKIN MATCH企業インタビュー記事
SOKKIN MATCH 企業インタビューVol.11 株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区 代表取締役:本間亮平)は、マーケター・クリエイターに特化した人財マッチングサービス SOKKIN MATCHの業務委託人財を活用している企業に...

新たに採用する

採用は、長く社内に残る担い手を得られる道ですが、1人目の確保としては最も時期が読みにくい方法です。社内に専任できるスキルを持つ人がいないうえ、マーケターは市場に少なく採用自体が難しいことが、外部に頼る理由として多く挙がります。

体制づくりの相談を受けてきた中では、社内でマーケ人材を採用できた会社はほとんどありません。採用を第一の道にする場合も、決まらなかったときの道を同時に用意しておくのが現実的です。

採用にかかる期間と費用は、自社の実績で見積もります。過去に専門職を採用したときの、募集開始から入社までの月数と、求人広告や紹介手数料にかかった金額を書き出してください。その月数の間は施策が止まる前提で計画を立て、止まる期間を社外の人材で埋めるかを決めます。

稼働が限られる人を体制に組み込む

稼働が限られる社外の人を組み込む道は、採用を待たずに経験者の知見を使えるのが利点です。フリーランスや複業のマーケターは、別の仕事を並行して抱えているため週の稼働に限りがある一方、複数の会社で得た知見を持ち込めます。

株式会社Algoageは、正社員か業務委託かの区別を設けず、適任者であれば業務委託でも積極的に迎える姿勢をとっていました。この事例は一社の方針で、同様の結果を保証するものではありません。

組み込むときの前提は、社内に判断する人と窓口を置くことです。目標と優先順位は社内が決め、実務と提案を社外の人が担う分担にすれば、稼働の少なさは体制の弱点になりにくくなります。

▼採用の形にこだわらず社外のマーケターを迎えた会社の考え方はこちら
【株式会社Algoage】SOKKIN MATCH企業インタビュー
SOKKIN MATCH 企業インタビューVol.6 株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区 代表取締役:本間亮平)は、マーケター・クリエイターに特化したマーケターのマッチングサービス SOKKIN MATCHの業務委託人材を活用している...

社外の担い手の種類と違い

社外の担い手の種類と違い

社外の担い手は、会社の良し悪しより、形ごとの稼働・契約の縛り・社内の管理の手間の違いで選びます。同じ業務を頼んでも、形が違えば社内に残る仕事と費用の出方が変わるからです。

形ごとの稼働と契約の縛り

社外の担い手には、代理店・BPO(業務の一部を手順ごと外部に任せる形)・コンサル・フリーランスや複業の個人・顧問の5つの形があります。

形 主な担当 稼働の形 契約の縛り 社内の管理の手間
代理店 広告の運用・制作 チームで対応 継続の契約が多い 方針の確認が要る
BPO 定型業務 決まった手順で処理 業務量で契約 手順書の用意が要る
コンサル 戦略・計画 定例の会議が中心 期間を区切る契約が多い 実行者を別に用意する
フリーランス・複業の個人 戦略から実務まで人による 週の稼働時間を決めて参加 月単位の業務委託が多い 窓口と確認の流れが要る
顧問 助言・判断の相談 月数回の相談 月額の契約 実行者を別に用意する

社内に実行者がいなければ実務まで担う形を、判断者がいなければ戦略を担う形を選ぶのが基本です。

個人に頼む場合の費用と稼働の目安

マーケティング領域の業務委託を個人に頼む場合、費用は領域を問わずおおむね月15〜30万円に収まることが多く、稼働は週10〜20時間が目安です。稼働も金額も人によってばらつきが大きいため、一つの目安として見てください。

代理店やコンサルとは契約の形が違うため、金額だけで比べず、頼む業務の範囲と稼働時間をそろえてから比べます。

個人の担い手に多い経歴

マッチングの現場で見る個人の担い手の経歴は、広告代理店や制作会社の出身で独立したフリーランス、事業会社でマーケティングや営業を経験して複業を始めた人、複数の会社を並行して支援するプロの3つの型に分かれます。担当の範囲は戦略から施策の実行、クリエイティブの制作まで広がり、電話やメール送付の実務まで担える人もいますが、どこまで担えるかは人によります。

多くの人は複数の会社を並行して支援しており、始まった契約が長く続くことも多く見られます。面談では、経歴がどの型に当たるかと、頼みたい業務の経験があるかを確かめると、期待のずれを防げます。

人が決まりにくい依頼の条件

社外の人がすぐ決まるかは、依頼の中身に大きく左右されます。決め手になりやすいのは、稼働の希望と求めるスキルの幅が現実的に釣り合っているか、開始をどれだけ急ぐか、予算が稼働時間に見合っているかの3点です。

決まりにくいのは、週数時間の稼働なのに専門性を幅広く求める依頼や、予算と希望の稼働時間が釣り合わない依頼です。稼働の単位が細切れすぎる依頼や、専門外の業務まで求める依頼も、受け手に敬遠されやすくなります。

依頼前に直す項目の確認表

依頼を出す前に、次の質問を社内で確かめてください。

確かめる項目 社内で聞く質問 直したほうがよい状態
稼働とスキル 決めた稼働時間で、求める業務を回しきれますか 少ない時間に多くの専門を詰めている
業務の範囲 頼む業務の領域を絞れていますか 専門外の業務まで含めている
予算と稼働 予算を稼働時間で割ると、経験者に頼める水準ですか 割ると極端に低くなる
開始の時期 いつまでに始める必要がありますか 理由なく「すぐ」になっている

1つでも直したほうがよい状態があれば、依頼の前に範囲か稼働を見直すと、人が決まるまでの時間を縮めやすくなります。

相談から着手までと途中でやめる条件

SOKKIN MATCH(マーケター等の複業人財を業務委託で企業にマッチングするサービス)を使う場合、相談、ヒアリング、候補の選定、三者面談、契約、稼働後のフォローの順に進みます。着手までは、おおむね2週間が一つの目安です。

三者面談では、候補者と直接話して、稼働の時間や担当の範囲を確かめられます。着手までの期間を計画に入れておくと、最初の30日の段取りが崩れにくくなります。

途中でやめるときの条件

小さく始めて合わなければやめられるかは、契約の前に確かめておきたい点です。次の契約条件が、撤退を判断する材料になります。

条件 内容
最低期間 短期の依頼も最低3か月から
解約の予告 最低期間を過ぎた後、1か月前に予告する
最低期間の途中でやめる場合 残りの期間の分がかかる
範囲外の依頼 頼む範囲は事前に決め、範囲外は事務局を通す

最低期間を試す期間と考えるなら、その間に何を見て続けるかを決めてから契約すると、やめる判断も迷わずにできます。

内製と外注の線引き

内製と外注の線引き

内製(社内の人で担うこと)と外注は、どちらか1つを選ぶのではなく、業務ごとに振り分けます。社内に誰もいない領域から頼み始め、目標や優先順位を決める判断は社内に残すのが基本の形です。

業務ごとの振り分け方

業務は、社内に知見を残すべきかと、求める専門性の深さの2軸で振り分けます。

業務 社内に知見を残すべきか 専門性の深さ 振り分け
戦略・企画 高い 中 社内
営業との調整 高い 低 社内
記事や資料の制作 中 中 頼みやすい
広告運用 中 高 頼みやすい
ツールの初期設定 低 高 頼みやすい

知見を残すべき度合いが高い業務は、専門性が浅くても社内に置きます。事業の方針や顧客の声が絡むため、外に出すと判断の材料が社内に残らないからです。反対に、専門性が深く、一度きりの作業が多い業務は、頼んだほうが早く質を保てます。

社内に誰もいない領域の扱い

社内に担当者が1人もいない領域は、無理に社内で始めず、最初から頼む対象にします。

よく見られるのは、コンテンツ・SEOを社内の誰もやっておらず、基本的に全てを外に頼む形です。SNSは見よう見まねで始めたものの定着せず、放置の状態になっている例が目立ちます。広告運用では、担当者の質やコストの見直しをきっかけに、頼む先を切り替える例もあります。

どの領域でも、続かない原因は頼む先より、社内に判断する人がいないことにある場合が多くなります。誰もいない領域を頼むときは、目標と確認の担当だけは社内で決め、そのうえで実務を任せます。

社内に残す判断と窓口

外注しても社内に残すのは、目標と優先順位の決定、成果の確認、社内の窓口1人の3つです。

この3つを手放すと、施策は動いていても、それが事業に効いているかを誰も判断できなくなります。アフィリエイト(成果に応じて報酬を払う広告)では、提携先の審査と成果の承認の作業を社内に残さないと回らない例がよくあります。どの提携先と組み、どの成果に報酬を払うかは、事業の判断そのものだからです。

外注しても、成果と法律上の最終責任は発注側に残ります。任せる範囲を広げるほど、窓口1人と、確認・承認の流れを社内で持っておくことが欠かせなくなります。

営業との連携の決め方

営業との連携の決め方

営業との連携は、会議を増やすことより、引き渡しの基準と連絡の期限を先に決めることです。基準と期限が決まっていれば、両部門の打ち合わせは月1回程度の振り返りで足ります。

引き渡すリードの基準と連絡の期限

営業に渡すリードの基準と連絡の期限は、営業責任者と一緒に次の表を埋めて決めます。MQL(マーケティングが営業に渡してよいと判断した見込み客)とSQL(営業が商談にすると判断した見込み客)の境目を、自社の言葉で書くのが目的です。

決める項目 自社の答え 決まっていないと起きること
どのリードを渡すか (記入) 営業が質の低いリードに追われる
何日以内に連絡するか (記入) 連絡が遅れて検討の熱が冷める
誰が連絡するか (記入) 担当が決まらず放置される
窓口は誰か (記入) 基準の変更を誰も決められない

埋めた表は両部門が見られる場所に置き、変えるときは両者の合意で変えます。

両部門で追う共通の指標

営業とマーケティングは、リード数ではなく、商談化率や受注率など受注につながる指標を共通で追います。

リード数だけを追う組み方では、マーケティングは件数を増やすほど評価され、営業は商談にならないリードへの対応に追われます。評価の物差しがずれるため、引き渡しの基準も守られにくくなります。商談化率(リードのうち商談になった割合)と受注率を共通の指標にすれば、両部門が同じ数字の改善をめざせます。

月1回程度の振り返りでは、渡したリードの数、商談になった数、受注した数と、連絡の期限を守れたかを並べて見ます。数字が落ちたときに、基準を変えるのか連絡の仕方を変えるのかをその場で決めると、責任の押し付け合いになりにくくなります。

費用の見積もりと予算の通し方

費用の見積もりと予算の通し方

体制の費用は、一律の相場や売上に対する比率の目安では決まりません。人を採るか頼むか、広告にいくら使うかで総額が大きく変わるため、自社の数字を積み上げる式で見積もります。

年間費用の組み立て式

年間の総額は、次の式で積み上げます。

年間の総額 = 専任1人の人件費(年収+会社負担分)+ 採用費 + 社外の人材の月額 × 12か月 + ツール費 + 広告費

費目 入れる数字 数字の出どころ
人件費 想定する年収と会社負担分 給与テーブルと総務・人事の上乗せ率
採用費 求人広告費や紹介手数料 過去の専門職採用の実績
社外の人材の月額 頼む人数分の月額 「社外の担い手の種類と違い」で示した目安
ツール費 MAや分析ツールの年額 見積もりや料金表
広告費 年間の出稿予定額 最初の領域の計画

採用する案と頼む案を並べる

採用しない案では人件費と採用費が0になり、社外の人材の月額×12か月にツール費と広告費を足した額になります。採用する案と頼む案の2つを同じ式で出して並べると、経営層が比べやすくなります。

比べるときは、採用する案に採用までの月数、頼む案に着手までの期間を書き添え、施策が始まる時期もそろえて見せてください。

広告費より先に決める人

広告費を積み増す前に、その広告を運用し、判断できる人を決めます。

ある事例では、BtoBのSaaS(インターネット経由で使うソフトウェア)企業が広告費を月200万円まで増やしたものの、運用できる人が社内にいない状態でした。予算は用意できても、配信の設定を見直し、成果の出ない広告を止める判断をする人がいなければ、増やした分が成果につながっているかを確かめられません。

費用を組むときは、広告費の行より先に、運用を判断する人の行を埋めてください。社内に置けないなら、社外の人材の月額を先に計上してから広告費を決める順番にします。この事例は一社の状況で、同様の結果を保証するものではありません。

経営層に見せる指標の選び方

経営層に見せるのは、商談数・受注額・獲得単価(顧客1社の獲得にかかった費用)など、事業の成果に近い指標です。記事の本数やPV(ページの閲覧数)などの活動量は、途中の経過を説明する補助として添えます。

経営層が予算を判断する材料は、投資がいつ、どれだけ売上に返ってくるかです。活動量を中心に報告すると成果との関係が見えず、次の予算が通りにくくなります。回収の見通しは次の式で示します。

必要な受注の増加件数 = 年間の総額 ÷ 受注1件あたりの粗利

見通しは楽観的な数字ではなく、控えめな前提で出してください。控えめな見通しを上回れば信頼が積み上がり、次の増員や増額を相談しやすくなります。

成果が見えるまでの期間と増員の時期

成果が見えるまでの期間と増員の時期

成果が見え始める時期は、最初に手を付ける領域によって違います。領域ごとの目安で自社の年表を作り、どの時点で何を確かめるかを先に決めておくと、焦って止める判断を避けられます。

領域ごとに兆候が出るまでの期間

改善の兆候が見え始めるのは、広告運用で1か月程度、SEOで3〜6か月程度、リード育成やIS(電話やメールで見込み客との関係を深める役割)で1〜2か月程度のことが多くあります。兆候は成果の約束ではなく、続けるかを判断する最初の手がかりです。

自社の年表は、次の3つを足して作ります。

  • STEP1:開始日を決める
  • STEP2:着手までの期間を足す(採用なら自社の採用実績の月数、社外の人材なら「相談から着手までと途中でやめる条件」で示した目安)
  • STEP3:最初に手を付ける領域の、兆候が出るまでの期間を足す

SEOから始めるなら、着手の日にSEOの目安の期間を足した時点が最初の確認の時期です。それより前に成果が見えなくても、それだけでは止める理由になりません。

増員に進む合図と待ちきれない失敗

増員に進む合図は、1人の担当者では回らない施策が出てきたときです。成果が出た施策に時間を取られ、ほかの施策が止まり始めたら、その施策を切り出して人を足します。

反対に、兆候が出る前に取り組みそのものを止めてしまう失敗もあります。新規事業の立ち上げでは、効率やリードの質の改善を待ちきれず、取り組みが止まる型が見られます。立ち上げ期は数字が小さく改善の幅も見えにくいため、判断を急ぎやすいのです。

新規事業で体制を作るなら、自社の年表で決めた確認時期までは続けると、始める前に経営と合意しておいてください。確認時期に兆候が見えなければ、そこで領域や手段を見直します。

体制づくりが止まる典型と防ぎ方

体制づくりが止まる典型と防ぎ方

体制づくりが止まる典型は、予算を増やしても受注が増えない、本数の目標だけで始める、社内の確認待ちで施策が止まる、の3つです。どれも、契約や増額の前に決めておくことで防ぎやすくなります。

予算を増やしても受注が増えない

よくあるのは、広告予算を2倍にしたのに受注が増えなかった型です。集めた見込み客を商談まで育てる仕組みがなかったことが原因でした。

問い合わせや資料請求の数が増えても、その後に情報を届け続ける仕組みや営業に渡す基準がなければ、見込み客は検討の途中で離れやすくなります。集める力だけを強めても、受注までの道の途中が細いままでは、増やした予算が受注に届きません。

防ぎ方は、広告の契約や増額の前に、集めた見込み客が受注に至るまでの導線を整理しておくことです。問い合わせの後に誰がどんな情報をいつ届け、どの時点で営業に渡すかを書き出してから、予算を決めてください。

本数の目標だけで始めてしまう

記事の制作で多いのは、本数のノルマだけを決めて始めた結果、検索する人の意図に合わない記事が量産され、成果につながらなかった型です。

本数は数えやすく、進み具合を報告しやすい目標です。そのため、何を狙う記事かを決めないまま本数だけが目標になり、書きやすい題材の記事が増えていきます。検索意図とずれた記事は、何本あっても問い合わせにつながりにくくなります。

防ぎ方は、始める時点で、目標を記事の本数ではなく検索順位や流入の数で合意しておくことです。記事を社外に頼む場合も、契約の段階で狙うキーワードと確認する指標を決めておけば、本数だけを追う進め方を避けられます。

社内の確認待ちで施策が止まる

実行を社外に任せた後に起きやすいのが、社内の意思決定者が忙しく確認が滞り、施策が止まる型です。

実行する側は、原稿や広告の案を出しても、承認が下りなければ先へ進めません。確認する人が他の仕事を優先せざるを得ないと、確認待ちの案が積み上がっていきます。実行の速さは、社外の人の力量より、社内の確認の速さで決まる場面が少なくありません。

防ぎ方は、実行を任せる前に社内の確認の流れを決め、窓口を1人に絞っておくことです。誰が何を何日以内に確認するか、窓口が不在のときは誰が代わるかまで決めておくと、確認待ちの期間を短くできます。

最初の90日の段取り

最初の90日の段取り

最初の90日は、30日・60日・90日の区切りで、誰が何を終えるかを決めて進めます。区切りごとに終えることが決まっていれば、進み具合を経営層と同じ物差しで確かめられます。

区切り 主に動く人 終えること
30日目まで 責任者・経営層 戦略の最低ラインと、権限・窓口・実績データの用意
60日目まで 責任者・実務の担当 最初の1領域で施策を始める
90日目 責任者・経営層・営業責任者 兆候・連携・体制を見直し、続けるかを決める

最初の30日でそろえるもの

最初の30日は、戦略の最低ラインを決めるのと並行して、施策を始めるための準備をそろえます。

先に用意しておくと進みが速いのは、広告アカウントやCMS(Webサイトのページを更新する管理システム)などの権限、社内の窓口1人、過去の実績データの3つです。実績データは、広告のレポートやアクセス解析の数字など、手元にあるもので構いません。

この3つが遅れると、社内の人でも社外の人でも、最初の数週間を権限の申請や資料探しに使うことになります。戦略の最低ラインを決める会議の場で、権限の持ち主と窓口の担当者まで決めてしまうと、準備の期間を短くできます。

60日目までに動かす施策

60日目までに、最初の1領域に絞って施策を始めます。複数の領域を同時に始めると、どの施策が効いたかが分からず、限られた人手も分散するからです。

最初の領域は、領域ごとの兆候の時期と、自社の顧客がどこで情報を集めているかを見て選びます。早く手応えを確かめたいなら兆候が早く出る領域から、時間をかけて集客の土台を作りたいなら記事の領域から始めます。

新規事業の立ち上げなら、マーケティングの戦略から入り、伝え方、ターゲットの順に落とし込んで、小さなテストから始める流れが一つの型です。テストを小さくしておけば、結果を見て方向を変えるときの負担も小さく済みます。

90日目に見直す項目

90日目は、次の項目を確かめ、続けるか、範囲を変えるか、やめるかを決めます。

見直す項目 確かめる質問
兆候の出方 自社の年表で決めた確認時期と比べて、兆候は出ていますか
連携の基準 引き渡しの基準と連絡の期限は守られていますか
体制の人数 1人の担当で回らない施策は出ていますか
頼む範囲 社外に頼む業務の範囲は、今の課題に合っていますか
続けるか 次の90日で確かめたいことは決まっていますか

兆候が出ていて連携も回っているなら、範囲を広げるか増員を検討します。兆候が出ていないときは、確認時期にまだ届いていないのか、領域の選び方が合っていないのかを分けて考え、やめるのは後者と分かったときにします。

まとめ

マーケティングの体制構築は、決める順番を守ると迷いが少なくなります。兼務の症状と予算で専任を置くかを決め、誰に何を届けるかの最低ラインを言葉にします。次に1人目の役割を判断と調整に置き、社内の育成・採用・社外の人材から確保の道を選びます。内製と外注は業務ごとに振り分け、判断と窓口は社内に残します。費用は自社の数字を積み上げる式で出し、最初の90日は区切りごとに終えることを決めて進めます。

明日からできる一歩は次のとおりです。

  • 兼務のまま止まっているサインの3症状に、自社がいくつ当てはまるかを数える
  • 受注額の大きい既存顧客に共通する業種・規模・役職を書き出す
  • 広告アカウントやCMSの権限の持ち主と、社内の窓口1人を決める
  • 1人目を社内で確保できる見込みがなければ、社外の人材に頼む業務の範囲と週の稼働時間を書き出す
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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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