広告運用代行の比較ポイント|依頼先6タイプと見積の並べ方

広告運用代行の比較ポイント|依頼先6タイプと見積の並べ方 マーケティング

「要問い合わせ」ばかりで比べにくい広告運用代行も、依頼先をタイプで絞り、同じ条件で取った見積を月の総額と契約条件で並べれば比べられます。候補を探しても料金が公開されておらず、どこが自社に合うのか決めきれない方も多いはずです。

結論から言うと、比べる順番は3つです。先に自社の広告費と任せる範囲を決め、依頼先を6つのタイプから2〜3タイプに絞り、最後に同じ文面で見積を取って1枚のシートにそろえます。会社名から入ると、条件の違う見積を金額だけで比べることになり、判断を誤りやすくなります。

この記事では、依頼先6タイプの向き不向き、手数料と初期費用の比べ方、料率型と固定型が入れ替わる広告費の出し方、依頼先に聞く質問と赤信号、契約書で確かめる条件、代行に出しても成果が止まる条件までを順に扱います。読み終えたときに、問い合わせる候補と質問リストを手元にそろえられる構成です。

  1. 広告運用代行の依頼先を比べる前にそろえる前提
    1. 代行に頼める業務と自社に残る仕事
    2. 代行に出す利点と注意したい弱点
    3. 比べる条件を広告費と目的で固定する
  2. 広告運用の依頼先6タイプと得意分野
    1. 大手総合代理店とネット専業代理店
    2. 運用型広告の専門会社とマーケ全般の支援会社
    3. 内製化まで支える代理店
    4. フリーランスや業務委託人材
  3. 自社に合う依頼先タイプの絞り込み方
    1. 広告費の規模と社内の窓口で絞る
    2. ノウハウを社内に残すかで絞る
  4. 広告運用代行の費用の比べ方
    1. 手数料と初期費用と最低手数料の相場
    2. 料率型と固定型が逆転する広告費の出し方
    3. 少ない広告費で頼むときの選択肢
  5. 依頼先を見極める確認項目と質問例
    1. 担当者の体制と1人あたりの担当社数
    2. 広告アカウントの持ち主と管理画面の共有
    3. 月次報告で見るべき中身と提案の質
    4. 認定パートナーと同業種の実績の読み方
  6. 契約書で確かめる条件
    1. 最低契約期間と途中でやめるときの扱い
    2. 手数料の掛け方と頼む業務の範囲
  7. 見積と提案を同じ物差しで並べる手順
    1. 問い合わせる社数と最初に伝える項目
    2. 見積を1枚の比較シートにそろえる
    3. 提案の場で聞く質問と赤信号
  8. 代行に出しても成果が止まる条件と事前の備え
    1. 受注までの導線がないまま広告費を増やす
    2. 社内に判断できる担当者がいない
    3. 契約前に自社で用意しておくもの
  9. 依頼してから成果が見えるまでの期間
    1. 相談から配信開始までの進み方
    2. 成果を判断するまでに待つ目安
  10. 業務委託人材を依頼先に加えるときの見方
    1. 費用の幅と稼働時間の前提
    2. 代理店から切り替えた企業の事例
    3. 契約の条件と稼働までの流れ
  11. よくある質問
  12. まとめ

広告運用代行の依頼先を比べる前にそろえる前提

広告運用代行の依頼先を比べる前にそろえる前提

依頼先を比べる前に、自社が何を頼み、どの条件で比べるかを決めておきます。ここが曖昧なまま問い合わせると、各社が別々の前提で見積を出すため、金額を並べても比べたことになりません。

代行に頼める業務と自社に残る仕事

広告運用代行に頼める業務は、戦略と目標の設計、アカウントの設計、広告の入稿、入札の調整、クリエイティブ(広告のバナーや文章)の制作、レポート、改善の提案までが一通りです。ただし、どこまでを基本料金に含めるかは会社ごとに違い、クリエイティブ制作やLP(広告の飛び先のページ)の改善を別料金にする会社も珍しくありません。

自社に残るのは、目標を決めること、提案を採るかを判断すること、受注までの流れを整えることです。外注しても、広告の成果と、表示内容や契約に関する法律上の最終責任は発注側に残ります。任せる範囲を決めるときは、判断する役を社内の誰が持つかも一緒に決めておきます。

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Web広告運用代行の発注条件|手数料の実質負担率と担い手の選び方
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代行に出す利点と注意したい弱点

利点と弱点は対になっていて、弱点の多くは依頼先選びと契約の段階で小さくできます。
利点 対になる弱点
社内の運用工数が空き、判断や他の業務に時間を回せる 広告費とは別に手数料がかかる
複数の業界を見てきた運用者の知見を使える 任せきりにするとノウハウが社内に残りにくい
入札や配信の調整を日々回すので改善が速い 担当の抱える社数が多いと対応が遅れることがある

手数料は費用の比べ方で総額を出せば判断でき、ノウハウは引き継ぎの範囲とアカウントの持ち主を、対応の速さは担当者の体制を確認すれば見極められます。弱点を理由に外注をやめるより、弱点を確認項目に変えて依頼先を選ぶ方が、判断を前に進めやすくなります。

比べる条件を広告費と目的で固定する

見積を並べるための条件は、次の5つを自社で先に決めて、全社に同じ文面で伝えます。

  1. 月の広告費(媒体に払う金額。手数料は含めない)
  2. 扱う媒体(検索広告、SNS広告、ディスプレイ広告など)
  3. 目的のKPI(成果を測る指標。問い合わせ数、商談数、獲得単価など)
  4. 任せる範囲(運用だけか、クリエイティブ制作やLP改善まで含むか)
  5. 期間(まず試す期間と、続けるかを判断する時期)

5つのうち1つでも会社ごとに違う前提で伝わると、見積の金額差が条件の差なのか価格の差なのか見分けられません。決めきれない項目は「未定」と書いたうえで、各社に同じ質問として投げると比べやすさを保てます。

広告運用の依頼先6タイプと得意分野

広告運用の依頼先6タイプと得意分野

依頼先は、会社名ではなくタイプで比べると判断が速くなります。同じタイプの会社は費用の形と得意な規模が似ているので、先にタイプを2〜3に絞ってから会社を探します。

タイプ 向く会社 費用の形 注意点
大手総合代理店 広告費が大きく、テレビなどとも組み合わせたい 料率型が中心 少額の依頼は受けにくい
ネット専業代理店 複数のWeb媒体をまとめて任せたい 料率型が中心 担当が若手になることがある
運用型広告の専門会社 検索広告やSNS広告の運用を深く見てほしい 料率型か固定型 対応する媒体が限られることがある
マーケ全般の支援会社 広告とSEO・LP・SNSをまとめて見てほしい 固定型か個別見積 運用の深さは会社で差が出る
内製化まで支える代理店 いずれ自社で運用したい 期間を区切った固定型が多い 引き継ぎの範囲を決めないと残らない
フリーランスや業務委託人材 窓口がいて、範囲を決めて任せたい 月額や稼働時間で決める 得意範囲と稼働量が人で違う

大手総合代理店とネット専業代理店

大手総合代理店とネット専業代理店は、広告費の大きい会社が、複数の媒体をまとめて動かすときに力を発揮します。媒体との取引の実績が厚く、ブランドを広く知らせる施策や、テレビ・新聞などと組み合わせた計画まで一緒に組めるのが強みです。

一方で、最低出稿額や最低手数料が高めに設定されていることが多く、少ない広告費では受けてもらえないことがあります。また、窓口の営業担当は経験を積んだ人でも、実際に運用する担当が若手になる体制もあります。大手だから任せて安心と考えるより、自社の広告費がその会社の主な顧客の規模に合っているか、運用するのは誰かを確かめてから選ぶ方が失敗を避けられます。

運用型広告の専門会社とマーケ全般の支援会社

運用型広告の専門会社は、少人数の担当が検索広告やSNS広告の設定と改善を深く見る形が多く、媒体ごとの細かい調整を期待するなら候補の筆頭になります。反面、得意な媒体が限られていたり、LPや記事の改善までは引き受けなかったりすることがあります。

マーケ全般の支援会社は、広告に加えてSEO、LP、SNSまで横断して見られるので、広告で集めた見込み客が次にどこで離れているかまで一緒に考えてもらえます。ただ、広告運用そのものの深さは会社ごとに差が大きく、運用の担当者が専任か兼任かで質が変わります。

広告の成果が数字の調整で伸びる段階なら専門会社、広告の先にあるページや導線に課題があるなら全般の支援会社、と課題のある場所で選び分けます。

内製化まで支える代理店

内製化まで支える代理店は、運用を代わりに回しながら、社内の担当者に設定や分析のやり方を引き継いでいく型です。いずれは自社で広告を回したい会社、担当者を育てる時間と意思がある会社に向いています。

この型で起こりやすいのは、契約を終えるころになっても社内に何が引き継がれたのかがはっきりしないことです。防ぐには、契約前に引き継ぐ範囲と期間を決めます。たとえば「最初の期間は運用を任せ、次の期間は社内担当が設定し、代理店は確認に回る」のように、段階ごとに誰が手を動かすかを書面に残します。引き継ぎの到達点を決めないまま始めると、通常の代行と同じ状態が続き、費用だけが内製化支援の分かかることになります。

フリーランスや業務委託人材

フリーランスや業務委託人材は、代理店に並ぶ依頼先のタイプの1つです。広告運用を担う人の経歴は、大きく3つの型に分かれます。広告代理店や制作会社の出身で独立した人、事業会社でマーケティングや営業を経験してから複業を始めた人、複数の会社を並行して支援しているプロの人材です。

担当する範囲は、マーケティングの戦略から施策の実行、クリエイティブ制作まで広く持つ人がいる一方、運用だけに絞る人もいます。代理店のように組織で動くわけではないので、得意な媒体と引き受けられる範囲は人によって違います。稼働できる時間に制約があるのは、別の仕事を並行して抱えているためです。

このタイプを選ぶなら、経歴の型と担当範囲を最初に確かめ、自社の窓口が指示と判断を出せる体制を整えておくと、力を引き出しやすくなります。

自社に合う依頼先タイプの絞り込み方

自社に合う依頼先タイプの絞り込み方

依頼先のタイプは、広告費の規模、社内に判断できる窓口がいるか、ノウハウを社内に残したいかの3つで絞れます。この3つが決まると、6タイプのうち候補に残るのは2〜3タイプになり、問い合わせ先を探す範囲がはっきりします。

広告費の規模と社内の窓口で絞る

広告費の大小は、各社の最低出稿額や最低手数料に楽に届くかで判断し、それに社内の窓口の有無を掛け合わせます。

広告費と窓口 候補になるタイプ
広告費が大きい・窓口がいる 大手総合代理店、ネット専業代理店、運用型広告の専門会社
広告費が大きい・窓口がいない 内製化まで支える代理店、マーケ全般の支援会社(窓口を立てる前提で)
広告費が小さい・窓口がいる 運用型広告の専門会社の固定型、業務委託人材
広告費が小さい・窓口がいない 今は発注を見送り、スポットの診断で準備を進める

窓口がいないまま任せると、依頼先の提案を判断できず、言われたとおりに進めるしかなくなります。ある事例では、マーケティング担当者が1人で全領域を兼任してリソースが回らず、代理店の言いなりになっていました。代理店の問題というより、社内に判断する役がいなかったことが原因で、同じ状態はどの依頼先でも起こりえます。

ノウハウを社内に残すかで絞る

ノウハウを社内に残したいなら、内製化まで支える代理店か業務委託人材を選び、任せきりでよいなら代理店を選ぶ、と決めてかまいません。代理店は組織として運用を引き受けるのが本来の役割で、社内への引き継ぎは契約で決めない限り生まれにくいからです。

内製化支援型は引き継ぎそのものを契約の目的にでき、業務委託人材は社内のチャットや会議に入って一緒に動く形を取りやすいため、判断の理由が社内に残ります。逆に、広告運用を当面は自社の中核業務にしない、担当者を育てる時間も取れないという会社なら、任せきりの代理店の方が管理の手間は少なくすみます。どちらが上ということではなく、3年後に自社で運用していたいかどうかで選び分けます。

広告運用代行の費用の比べ方

広告運用代行の費用の比べ方

費用は手数料率だけで比べず、最低手数料、初期費用、範囲外の作業費まで足した月の総額で比べます。料率が低くても最低手数料や別料金の制作費で総額が逆転することがあり、率の数字だけを見て選ぶと、あとから想定外の請求に気づくことになります。

手数料と初期費用と最低手数料の相場

代理店の料率型について各社が公開している価格を並べると、おおむね次の幅に収まります。

費目 公開価格の幅
運用手数料 広告費の15〜20%で、20%とする会社が多い
初期費用 0〜10万円で、無料の会社も多い
最低手数料 月5万円程度から
最低出稿額 月5万〜100万円と会社で大きく違う

手数料が20%なら、広告費50万円の月は手数料10万円が上乗せされます。この幅は運用の基本料金についてのもので、クリエイティブ制作やLP改善は含まない会社が多い点に注意します。

見積が届いたら、まず自社の広告費で手数料を計算し、そこに最低手数料と初期費用を当てはめてください。幅から大きく外れる項目があれば、その会社に何が含まれているかを聞く合図になります。

料率型と固定型が逆転する広告費の出し方

料率型と固定型のどちらが安いかは、「固定型の月額÷料率=入れ替わる広告費」の式で出せます。

仮に、固定型の月額が10万円、料率型の手数料が20%とします。10万円÷20%=50万円なので、広告費が月50万円のとき両者の手数料は同じになります。広告費が50万円より小さければ料率型が安く、50万円より大きければ固定型が安い、と判断できます。

自社で使うときは、候補の会社の固定の月額と料率を式に入れ、今の広告費と1年後に増やしたい広告費の両方で比べます。今は料率型が安くても、広告費を増やす計画があるなら、増やした後の金額で逆転していないかを確かめておくと、途中で契約を見直す手間が省けます。

成果報酬型は、1件の問い合わせや購入ごとに費用が決まる形です。何を成果と数えるかで請求額が大きく変わるので、成果の定義を契約前に文章で決めてから比べます。

少ない広告費で頼むときの選択肢

広告費が少ないと、最低手数料が効いて実質の負担が跳ね上がります。最低手数料が月5万円の会社に広告費10万円で頼むと、手数料は率で計算した2万円ではなく5万円になり、広告費に対する負担は50%です。

この場合の選択肢は4つです。固定の月額が低い運用会社に絞る、アカウントの設計だけをスポットで診断してもらい運用は社内で回す、業務委託人材に範囲を決めて任せる、内製化支援で社内担当を育てる、のいずれかです。

業務委託で頼む場合も、稼働が週数時間と極端に短いのに専門性を幅広く求める依頼や、予算と希望の稼働時間が見合わない依頼は、引き受け手が決まりにくくなります。稼働の単位が細切れすぎる依頼や、専門外の業務まで広く求める依頼も同じです。任せる業務を1〜2つに絞り、それに必要な稼働と予算をそろえてから相談すると、少ない予算でも話が進みやすくなります。

依頼先を見極める確認項目と質問例

依頼先を見極める確認項目と質問例

依頼先の見極めは、項目ごとに「聞く質問」と「望ましい答え」を組にして持っていくと、商談の場で判断できます。望ましい答えと大きくずれた回答が返ってきたら、その項目を比較シートに印を付けて残し、他社と並べてから判断します。

担当者の体制と1人あたりの担当社数

聞く質問は3つです。

  • 「営業の担当と、実際に運用する担当は別の人ですか。運用担当と直接話せますか」
  • 「運用担当の方は、いま何社を担当していますか」
  • 「担当が替わるのはどんなときで、これまでどのくらいの頻度で替わっていますか」

望ましいのは、運用担当の名前と経歴が契約前に分かり、定例の打ち合わせに運用担当が出てくる体制です。担当社数を聞いて答えが曖昧なら、1社あたりにかけられる時間が見えないので注意します。

業務委託人材も、複数の会社を並行して支援しているのが普通です。代理店と同じように、自社に割ける稼働の量と、連絡がつく時間帯を先に確かめます。

広告アカウントの持ち主と管理画面の共有

聞く質問は「広告アカウントは自社の名義で作りますか」「管理画面の閲覧権限をもらえますか」「解約したあと、アカウントをそのまま引き継げますか」の3つです。

望ましい答えは、アカウントを自社名義で作り、自社も管理画面をいつでも見られて、解約後もそのまま使い続けられる形です。代理店の名義で作ったアカウントだと、解約するときに過去の配信データや設定を持ち出せない場合があります。すでに代理店名義で運用しているなら、次の契約を結ぶ前に、移すことができるかを今の依頼先に確かめておきます。

権限は、見るだけの権限か、設定を変えられる権限かでも違いがあり、誰にどこまで渡すかを決めておく必要があります。

▼広告アカウントの権限と手数料の決め方を詳しく知りたい方はこちら
リスティング広告運用代行の任せ方|権限と手数料の決め方
リスティング広告の運用代行を任せる前に決めることを解説します。手数料の型と実質負担率の出し方、広告アカウントの権限と所有者、代理店を変えるときの履歴の扱い、成果を判断してよい時期までまとめました。

月次報告で見るべき中身と提案の質

月次報告は、数値が並んでいるかではなく、数値が動いた理由と次の打ち手が書かれているかで見ます。クリック数や獲得単価の表だけが届く報告だと、良くなったのか悪くなったのか、次に何をするのかを社内で判断できません。

聞く質問は「実際の月次レポートと提案資料のサンプルを、社名を伏せた形で見せてもらえますか」です。見るときは、先月との差について理由が書かれているか、打ち手が「予算を増やす」だけで終わっていないか、打ち手に優先順位と実施時期が付いているかを確かめます。

サンプルを出せない会社や、出てきたものが数値の表だけの会社は、運用が始まってからも同じ形の報告になると考えておくと、判断を誤りません。

認定パートナーと同業種の実績の読み方

広告媒体の認定パートナーであることは、一定の運用実績と知識があるかを確かめる最低ラインで、運用の質を保証するものではありません。認定の有無で候補を絞るのは構いませんが、認定があるから任せられると判断するのは早すぎます。

実績は、同じ業種で、同じくらいの広告費の案件を持っているかを具体的に聞きます。「BtoBで、月の広告費が自社と同じくらいの案件で、何を指標にどんな改善をしましたか」と尋ねると、実際に手を動かした経験があるかが答えに出ます。社名を出せない事情は理解したうえで、指標と打ち手を具体的に話せるかどうかで判断します。

契約書で確かめる条件

契約書で確かめる条件

契約前に、やめるときに何が起きるかを決めておけば、依頼先選びを誤っても取り返せます。どれだけ比べて選んでも合わない依頼先に当たることはあるので、失敗しない選び方と同じくらい、失敗したときに抜けられる契約を結ぶことが大切です。

最低契約期間と途中でやめるときの扱い

最低契約期間は、3〜6か月としている代行会社が多く、短い会社では1か月、長い会社では1年を超えることもあります。

業務委託の現場でも、揉めやすい契約項目として挙がるのは中途解約の条件です。始める前は続ける前提で話が進むため、やめる場面を具体的に想定しないまま署名してしまうことが多いからです。

契約書では、次の3点を確かめます。最低期間の途中でやめたときに違約金がかかるか、最低期間の残りの分を払う必要があるか、解約の申し出を何か月前までに出す必要があるか。最低期間が6か月を超える契約や、自動更新で解約の申し出期限が短い契約は、最初に試す期間を短くできないか交渉する価値があります。

手数料の掛け方と頼む業務の範囲

手数料の掛け方には内掛けと外掛けがあり、同じ20%でも請求額と広告に回るお金が変わります。

月の予算100万円で手数料20%の場合、外掛けは広告費100万円に手数料20万円を足して支払いが120万円になります。内掛けは支払いの100万円に手数料が含まれ、手数料20万円、広告費80万円です。内掛けの20%は、広告費に対しては25%の手数料を払っているのと同じになります。見積を並べるときは、どちらの掛け方かを必ず確かめてから比べます。

もう1つは、範囲外の作業の扱いです。LPの改修やバナーの追加制作が基本料金に入るか、別料金ならいくらか、頼むときは誰にどう依頼するかを契約書に書いてもらいます。書かれていないと、作業のたびに追加の見積が届き、月の総額が読めなくなります。

見積と提案を同じ物差しで並べる手順

見積と提案を同じ物差しで並べる手順

「要問い合わせ」の会社も、同じ条件を渡して見積を取れば、並べて比べられます。公開されている料金で比べられない分、問い合わせの文面をそろえて、返ってきた見積を1枚のシートにまとめる手順が判断の質を決めます。

問い合わせる社数と最初に伝える項目

候補は2〜3タイプに絞り、合わせて3〜5社に問い合わせます。2社以下だと価格や提案の幅が分からず、6社以上になると提案の場の時間と比較の手間が膨らみ、1社ごとの確認が浅くなります。

最初に伝えるのは、月の広告費、扱う媒体、目的のKPI、任せる範囲、期間の5つで、全社に同じ文面で送ります。あわせて、見積に「手数料の掛け方」「最低手数料」「初期費用」「範囲外の作業の料金」「最低契約期間と解約の条件」を書いてもらうよう頼んでおくと、返ってきた見積をそのままシートに写せます。

文面は、社内で決めた前提を短く書き、分からない項目は「未定・提案がほしい」と明記します。こう書くと、各社が何を提案してくるかも比べる材料になります。

見積を1枚の比較シートにそろえる

返ってきた見積は、会社を列、項目を行にして1枚のシートにそろえます。

比較シートに並べる項目

項目 書き込む中身
費用の内訳 手数料の率か月額、掛け方、初期費用、範囲外の作業の料金
最低条件 最低出稿額、最低手数料
体制 営業と運用の担当が別か、運用担当の担当社数
アカウント 自社名義か、閲覧権限、解約後に引き継げるか
レポート 頻度、理由と打ち手が書かれているか
契約期間 最低契約期間、自動更新の有無
解約条件 申し出の期限、途中でやめたときの扱い

月の総額と実質の手数料率の出し方

費用は、全社を同じ広告費で計算し直して並べます。月の総額は、広告費に、手数料(料率型は広告費×率、最低手数料があれば大きい方、固定型は月額)と、範囲外の作業費の見込みを足して出します。初期費用は、最低契約期間の月数で割って月額に乗せると比べやすくなります。

実質の手数料率は、(月の総額−広告費)÷広告費で出します。この率で並べると、料率型と固定型、内掛けと外掛けの違いが1つの数字にそろいます。最も安い会社を選ぶのではなく、実質の手数料率が近い会社どうしで、体制とアカウントと解約条件を比べて決めます。

提案の場で聞く質問と赤信号

提案の場では質問を絞り、答えに赤信号がないかを確かめます。聞くのは「運用担当は誰で、何社を担当していますか」「アカウントは自社名義で作れますか」「月次レポートのサンプルを見せてもらえますか」「途中でやめるときの条件を教えてください」の4つで足ります。

次の答えが返ってきたら、その会社は慎重に判断します。

  • アカウントは代理店側の名義で、解約後に渡せないと言われる
  • 運用担当が契約してから決まると言われ、名前も経歴も出てこない
  • 「必ず獲得単価を下げます」など、成果を保証する言い方をする
  • レポートのサンプルを出せない、または数値の表だけが出てくる
  • 最低契約期間が長く、途中でやめる条件を聞いても答えが曖昧になる

赤信号が1つあっても即座に外す必要はありませんが、比較シートに書き込み、他社と並べたうえで選ばない理由にしてかまいません。

代行に出しても成果が止まる条件と事前の備え

代行に出しても成果が止まる条件と事前の備え

支援してきた中では、代行に出しても成果が止まった案件の原因は、依頼先の腕より発注側の準備不足にある例が目立ちます。依頼先をいくら丁寧に選んでも、受注までの流れや社内の判断役が欠けていると、広告だけでは成果が伸びません。契約前に整えられることは、先に整えておきます。

受注までの導線がないまま広告費を増やす

ある事例では、広告予算を2倍にしたのに受注が増えませんでした。広告で見込み客を集めても、集めた相手を育てて商談や受注につなげる仕組みがなかったためです。この案件は、契約前に受注までの導線を依頼先と一緒に整理しておけば防げたと振り返られています。

広告費を増やせば問い合わせは増えやすくなりますが、その先の対応が追いつかなければ、受注の数は変わりません。契約前に、問い合わせのあと誰がいつ連絡するか、すぐに検討しない相手にどう情報を届け続けるかを1枚に書き出し、依頼先にも共有しておくと、広告の成果を受注まで追えるようになります。一つの事例であり、同じ手順で必ず防げると保証するものではありません。

社内に判断できる担当者がいない

ある事例では、BtoBのSaaS企業が広告費を月200万円まで増やしたものの、社内に運用できる人がいませんでした。広告費が大きくなるほど、配信を止める、予算を振り分け直すといった判断の重みも増しますが、それを受け止める人が社内にいない状態でした。

依頼先に運用を任せても、提案を採るか、どの指標を優先するかを決めるのは発注側です。判断役が社内にいないと、依頼先は確認を待つか自分の判断で進めるしかなく、どちらでも自社の意図から外れていきます。広告費を増やす前に、運用の判断を受け持つ人を1人決め、その人が依頼先と定例で話す時間を確保しておきます。

契約前に自社で用意しておくもの

契約前に用意しておくと立ち上がりが速いものは、3つあります。

  1. 広告アカウントや関連ツールの権限。依頼先に渡す権限の範囲を決め、すぐに付与できるようにしておく
  2. 社内の窓口を1人に決めること。確認と判断をその人に集め、連絡の行き違いを減らす
  3. 過去の実績データ。広告のレポートやアクセス解析の数値を、期間をそろえて渡せるようにしておく

3つとも依頼先が最初に求めるもので、そろっていないと、初回の打ち合わせのあとに権限の申請やデータ探しで時間が過ぎます。特に窓口を1人に決めることは、成果が止まる原因になりやすい判断役の不在を防ぐ手当てにもなります。問い合わせを始める前にそろえておくと、提案の中身も具体的になります。

依頼してから成果が見えるまでの期間

依頼してから成果が見えるまでの期間

広告運用の外注は、配信を始めるまでの準備と、配信を始めてからの学習の両方に時間がかかります。成果が見えないうちに焦って依頼先を替えないよう、いつ何を見て続けるかを判断するのかを、契約前に決めておきます。

相談から配信開始までの進み方

相談から配信開始までは、次の順で進みます。

  1. ヒアリング:自社の広告費、目的のKPI、任せる範囲を伝える
  2. 提案:依頼先が運用の方針と体制を示す
  3. 見積:費用の内訳と契約条件を受け取る
  4. 契約:解約の条件と範囲外の作業の扱いを確かめて結ぶ
  5. アカウント共有:権限を付与し、過去のデータを渡す
  6. 配信:設定を確かめたうえで配信を始める

この流れの中で時間がかかりやすいのは、社内の稟議と、アカウントの権限をそろえる作業です。問い合わせの前に社内の承認の流れと権限の持ち主を確かめておくと、契約から配信までが滞りにくくなります。

成果を判断するまでに待つ目安

業務委託の経路では、広告運用はおおむね1か月程度で改善の兆候が見え始めることが多くあります。ここでいう兆候は、クリック率や獲得単価の動きに変化が出てくる段階のことで、成果が安定して続く状態とは物差しが違います。

安定した成果が出ているかは、兆候が出たあとも同じ水準が続くかで判断するので、兆候より長い期間を見る必要があります。また、依頼先を切り替えた直後や、アカウントの設定を大きく変えた直後は、配信の仕組みが新しい設定を学習する期間があるため、数字が揺れやすくなります。

契約前に「1か月目は兆候を見る、その後は安定しているかを見る」のように判断の時期を依頼先と合意しておくと、途中で焦って打ち手を変えずにすみます。

業務委託人材を依頼先に加えるときの見方

業務委託人材を依頼先に加えるときの見方

業務委託人材も、代理店と同じく、費用・体制・契約条件の物差しで比べます。ここでは、当メディアを運営するSOKKINが提供する、マーケター等の複業人財を業務委託で企業にマッチングするサービスの実務をもとに、比べるときの前提を書きます。

費用の幅と稼働時間の前提

事務局への聞き取り(2026年9月)では、マーケティング領域の業務委託の費用は、広告運用を含め領域を問わずおおむね月15〜30万円に収まることが多く、稼働は週10〜20時間が目安です。稼働できる時間は人によってばらつきが大きく、同じ金額でも関わり方は変わります。

この金額は、稼働する時間を前提に決まるもので、広告費に比例して決まる代理店の手数料とは前提が違います。そのため、比較シートでは代理店の手数料と同じ列に並べず、「稼働時間ベースの月額」として別の行に書きます。何を含むかも依頼の内容で決まるので、運用だけか、クリエイティブ制作やレポートまで含むかを見積の段階で確かめます。

比べるときは、代理店は自社の広告費で出した月の総額、業務委託は任せる範囲と稼働時間を決めたうえでの月額を並べ、同じ範囲を頼んだ場合にどちらが合うかで判断します。

代理店から切り替えた企業の事例

株式会社ウィルゲートは、M&A事業のリスティング広告を代理店に任せていましたが期待した効果が得られず、別の代理店でも結果は同じでした。高度な専門知識が要る分野だったため、同社は「代理店という枠組みでは技術的な未熟さを感じた」と受け止め、業務委託の人材を採用しました。これは同社の案件での受け止めで、代理店全般への評価ではありません。

人材選びでは、戦略設計まで具体化した提案が決め手になりました。運用開始から約1か月半で、獲得単価(CPA。顧客1件の獲得にかかる広告費)は取り組み前と比べて約半分に減り、広告の出稿量は約1.3倍に伸びています。

担当者の専門性と、提案をまず試す姿勢がそろった一つの事例で、同様の効果を保証するものではありません。

▼代理店から業務委託の人材に切り替えた経緯を読みたい方はこちら
【株式会社 ウィルゲート】SOKKIN MATCH企業インタビュー記事
SOKKIN MATCH 企業インタビューVol.13 株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区 代表取締役:本間亮平)は、マーケター・クリエイターに特化した人財マッチングサービスSOKKIN MATCHを提供しております。SOKKIN M...

契約の条件と稼働までの流れ

依頼から稼働までは、ヒアリング、候補者の選定、依頼企業と候補者と事務局の三者面談、契約、稼働開始後のフォローの順に進みます。契約は、発注企業とサービス運営会社の間の業務委託契約で、人材へは準委任で再委託される形です。

契約の条件は、次のとおりです。

  • 最低契約期間は3か月から
  • 最低期間を過ぎたあとは、1か月前に解約を予告すればやめられる
  • 最低期間の途中でやめると、残りの期間の分の費用がかかる
  • 稼働時間は、事務局が業務の内容から想定を算出して設定し、増やすときは事前に企業側と合意する
  • 頼む業務の範囲は事前に決め、範囲外を頼むときは事務局を通す

代理店の契約と比べるときは、最低期間の長さと、途中でやめたときの扱いを同じ行に並べて見比べます。

よくある質問

Q. 今の代理店から替えるべきですか。

替えるかは、不満が担当者の対応にあるのか、費用にあるのか、成果にあるのかを分けてから決めます。代理店から業務委託に切り替えた会社が挙げる理由は、担当者の質とコストの2つが中心です。担当者の対応が不満なら、まず担当の変更を今の代理店に相談する道があり、費用が不満なら、同じ条件で他社の見積を取って実質の手数料率を比べれば判断できます。替える場合は、広告アカウントが自社名義かを先に確かめます。自社名義なら、配信のデータを残したまま依頼先を替えやすくなります。

Q. 媒体ごとに依頼先を分けるべきですか。

広告費が小さく媒体が2つ程度までなら、1社にまとめる方が管理の手間と最低手数料の負担を抑えられます。媒体ごとに高い専門性が要り、それぞれの広告費が各社の最低条件を十分に超えるなら、分ける価値があります。分ける場合は、媒体をまたいだ成果を誰がまとめて判断するかを社内で決めておきます。

Q. BtoBで依頼先を選ぶときは何を見ればよいですか。

問い合わせの数ではなく、商談や受注まで見る指標を依頼先と共有できるかを見ます。確かめる手順は3つです。まず、自社の問い合わせから商談、受注までの件数を月ごとに整理します。次に、提案の場で「商談化した件数をもとに配信を調整した経験はありますか」と聞きます。最後に、商談の結果を依頼先へ戻す方法と頻度を契約前に決めます。

まとめ

広告運用代行は、次の順で比べると、会社名や料金表に振り回されずに決められます。

  1. 広告費、社内の窓口、ノウハウを残すかで、依頼先を6タイプから2〜3タイプに絞る
  2. 広告費・媒体・KPI・任せる範囲・期間を同じ文面で3〜5社に伝え、見積を取る
  3. 比較シートで、月の総額と実質の手数料率、体制、アカウント、解約条件を並べる

問い合わせの前に、次のことを済ませておきます。

  • 月の広告費と、1年後に増やしたい広告費を決める
  • 運用の判断を受け持つ社内の窓口を1人決める
  • 広告アカウントの名義を確かめる
  • 過去のレポートやアクセス解析のデータを集める
  • 候補の固定の月額と料率を「月額÷料率」の式に入れ、どちらが安いかを出す

広告費がまだ小さく、社内に判断する人もいない場合は、今は発注を見送り、窓口を決めてから相談する方が失敗を避けられます。準備がそろったら、代理店と業務委託人材を同じシートで比べてください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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