税金の控除とは、税額計算のプロセスにおいて、条件を満たすことで所得や税額から一定額を差し引くことができる制度です。控除を受ける手続きを行うことで、税金を安くして納税の負担を軽減することができます。しかし、所得税の手続きは1年に1度しか行わないこともあり、控除についてしっかり理解できていないという方もいらっしゃるでしょう。
「控除」とは?所得控除と税額控除の相違点
控除(こうじょ)とは、税額計算のもとになる金額から一定の額を差し引くことです。
税額計算の基本は、その人の収入から所得金額を計算して、その所得に対して税率をかけます。そのため、所得の金額が大きいほど税金も高くなります。
一方で、制度の条件を満たして控除を適用することができれば、所得から一定額を差し引くことができます。その結果、課税される所得額が小さくなるため、税金の負担も軽減されます。
所得税の計算においては、控除には以下の2種類があります。
- 所得控除
- 税額控除
以下でそれぞれの控除の特徴や違いを解説します。
所得控除と税額控除の相違点
所得控除と税額控除は、どちらも税額を低くして負担を軽減するための制度です。両者の違いは、税額計算のプロセスのどの段階で、どの金額を減額できるのかの違いです。
所得控除 | 税率を掛ける前の課税対象の所得を減額できる制度 |
税額控除 | 税額計算の後に、納税すべき税額を直接減額できる制度 |
たとえば、所得が500万円の人に100万円の所得控除を適用すると、課税される所得は400万円に減額されます。控除で減額された所得に税率を掛けるため、納税額の負担が軽減されます。
一方で税額控除は、所得税率を掛けて税額を計算した後に、その納税すべき税額を直接減らすことができる制度です。
たとえば、その年に納税すべき税額が15万円の人に10万円の税額控除を適用すると、納税額は5万円となります。税額控除は納税額を直接減額できるため、節税効果が高い制度となります。
所得控除と税額控除は、条件を満たすものは複数適用できます。まずはどのような種類の控除があるのか一通り把握して、可能な限り多くの控除を適用することで、税金の負担を軽くすることができます。
所得控除について詳しく解説
以下で所得控除についてさらに詳しく解説します。
どのような所得控除があるのか一覧で紹介しますので参考にしてください。
所得控除は人的控除と物的控除の2種類
所得控除は人的控除と物的控除の2種類に分けられます。人的控除は人に関わる所得控除で、本人や家族(親族)の状況によって税負担を軽減する制度です。一方で、物的控除は一定の支出を行ったときに適用される控除です。
以下でそれぞれの控除について詳しく見ていきましょう。
人的控除の一覧
人的控除は、納税者本人がおかれている状況や、配偶者や親族を扶養する状況に応じて受けられる控除です。たとえば、配偶者や親族を養っている人は家計の負担が大きくなりますので、所得控除で税金の負担を軽減できます。
人的控除には以下の8種類があります。
- 基礎控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
物的控除の一覧
物的控除は、その人が1年間に支払った支出に対して適用される控除です。たとえば、保険料や医療費の支払いを行った場合に、その支払額に応じて控除を受けることができます。そのほかに、寄付を行った場合に受けられる控除や、災害の被害などでやむを得ない支出が発生した場合に受けられる控除もあります。
物的控除には以下の7種類があります。
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 医療費控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 寄附金控除
- 雑損控除
所得控除の一覧表
所得税の所得控除は全部で15種類あります。
以下の表は、所得控除の種類と対象者、条件などを一覧にまとめたものです。
所得控除の種類 | どのようなときに適用できるか | |
人的控除 | 基礎控除 | すべての人に適用 |
配偶者控除・配偶者特別控除 | 配偶者がいて、配偶者の所得が48万円以下(配偶者特別控除は133万円以下) | |
扶養控除 | 子や親などの親族を扶養している | |
障害者控除 | 本人が障害者である | |
ひとり親控除 | 本人がひとり親である | |
寡婦控除 | 本人が寡婦である | |
勤労学生控除 | 本人が勤労学生である | |
物的控除 | 社会保険料控除 | 健康保険料、年金、社会保険料を支払った |
生命保険料控除 | 生命保険料や個人年金保険料を支払った | |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った | |
医療費控除 | 本人や家族のために年間10万円以上の医療費を支払った | |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済や、iDeCoの掛金を支払った | |
寄付金控除 | 自治体などへの寄付や、ふるさと納税の寄付を行った | |
雑損控除 | 災害や盗難などの被害のために支出を行った |
このように、様々な状況に合わせた控除があり、税金の負担が公平に行われるようになっています。家族構成や生活状況が変わったり、普段とは違う出費があったときは、新たに適用できる控除がないか確認してみるとよいでしょう。
ただし、所得控除は条件を満たせば自動的に適用されるというものではありません。控除が適用可能かを自分で判断して、申告の手続きをしてはじめて税金が安くなります。以下で、実際に控除を受けるための手続き方法を見ていきましょう。
控除を受けるための手続き方法
ここからは、実際に控除を受けて税金を安くするための手続き方法を解説します。
控除を受ける手続きには、以下の2種類があります。
- 年末調整
- 確定申告
年末調整は会社員やアルバイト、公務員などの給与所得者のための手続き方法です。個人事業主やフリーランスなど、給与所得者以外の人は、確定申告で所得控除の手続きを行います。
以下でそれぞれの手続き方法について詳しく解説します。
給与所得者の場合
給与所得者は、控除を受けるための手続きを勤務先の会社で行うことができます。毎年10月から12月ごろになると年末調整の手続きがありますので、勤務先に書類を提出するだけで所得控除が適用されます。
年末調整とは、毎月の給与から天引きされている所得税の金額を、実際の納税額と完全に同じにして精算するための手続きです。その年の正確な税額を計算するために、年末調整の中で所得控除の申告手続きが行われます。具体的には、毎年10月〜11月ごろになった時点で、以下の流れで手続きを行います。
- 保険会社などから発行される控除証明書などを準備する
- 勤務先の会社から所得控除の申告用紙が配布される
- 自身や配偶者などの所得や支払った保険料額などを記入する
- 証明書を添付して勤務先に書類を提出する
年末調整は簡素な手続きですぐに終わりますが、確定申告と比べると期限が早いことに注意が必要です。保険料などの控除証明書を紛失しないように保管し、申告用紙の記入もれや提出忘れがないように注意しながら手続きを行いましょう。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は年末調整はありませんので、確定申告で所得控除の申告を行います。
確定申告とはその人の1年間の収入や支出した経費などを税務署に申告して、所得税を納税するための手続きです。支払うべき所得税の金額を計算するプロセスで、同時に控除の申告も行います。具体的には以下の流れで手続きを行います。
- 1年間の収入や経費を集計して帳簿を作成する
- 保険会社などから発行される控除証明書などを準備する
- 収入や所得、所得控除を記入した確定申告書を作成する
- 確定申告書を税務署に提出する
確定申告の期限は毎年2月16日から3月15日までとなり、期限内に所得税の納税も済ませる必要があります。書類の提出方法は、紙の申告書を税務署に郵送したり持参することもできますし、e-Taxを利用してオンラインで送信することもできます。
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給与所得者で確定申告が必要なケース
給与所得者は基本的な控除は年末調整で申告できますが、一部の控除は確定申告でしか申告できません。給与所得者でも確定申告が必要となる控除は以下の3つです。
- 医療費控除
- 寄付金控除
- 雑損控除
医療費控除は、本人や家族が病院などで支払った医療費や、薬局などでの医薬品購入費が年間10万円を超えると受けられる控除です。
雑損控除は災害や盗難などの被害にあい支払いが生じた年に受けられる控除です。給与所得者がこれらの控除を受けたいときは、勤務先での年末調整を行ったうえで、さらに税務署での確定申告も行う必要があります。具体的には、以下のような流れとなります。
- 10月〜12月ごろに勤務先で年末調整を行う
- 勤務先から発行される源泉徴収票を受け取り、保管しておく
- 翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行う
2つの手続きを行うことで手間は増えますが、確定申告で上記3つのいずれかの控除を適用できれば、還付金を受け取れる場合があります。
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税制優遇のために活用したい控除
ここからは、納税の負担を軽減するために積極的に活用したい控除について紹介します。
物的控除の中には上手に活用することでお得になるものがあり、特に効果的な控除は以下の2つです。
- 寄附金控除(ふるさと納税)
- 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)
それぞれどのような控除なのか、仕組みやメリットなどを以下で解説します。
寄附金控除
寄附金控除は、国や地方自治体、公益法人などに寄付を行った場合に、その寄附額に応じて控除が受けられる制度です。人気のふるさと納税も寄附金控除の対象となりますので、積極的に活用することで負担軽減に繋がります。
ふるさと納税とは、自分が選んだ市町村に寄付を行うことで、その年の所得税や翌年の住民税で控除が受けられる制度です。寄附をした金額から自己負担分の2,000円を引いた額が控除額となり、以下の計算のとおり税額が安くなります。
- 税額 = 所得額 – (寄附額 – 2,000円) × 税率
ふるさと納税では、寄附を行った自治体から特産品や日用品などの返礼品がもらえることが多いため、好きな自治体を応援しながら実質的な負担軽減にもなります。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、対象となる共済の掛金を支払ったときに、支払額に応じた控除が受けられる控除です。iDeCo(個人型確定拠出年金)も対象となりますので、将来を見据えた資産運用と節税を両立するために積極的に活用したい制度です。
iDeCoとは、自分で毎月の掛金を決めて積み立てを行い、60歳を超えてから年金として受け取れる制度です。運用益が期待できる投資信託やリスクの少ない定期預金など、運用方法を自分で決めることができますので、支払った掛金より多くの年金が受け取れる可能性もあります。
iDeCoで将来のための積み立てを行いつつ、支払う毎月の掛金に応じた小規模企業共済等掛金控除を受けることで、老後資金を準備しながら同時に税金の負担も軽減できます。
よくある質問
ここからは、税金の控除についてよくある質問とその回答を以下で紹介します。
土地や建物を売って譲渡益がある場合の控除は?
土地や建物の売却を検討している場合、金額が大きいため課税される税金が心配になることもあるでしょう。
土地や建物を売却した際に、購入したときの価格より高く売れた場合は、譲渡所得として税金が発生します。譲渡所得は給与所得や事業所得など他の所得とは分けて税額計算される分離課税となり、高く売れた場合は課税される税金も高額になる場合があります。
ただし、自分が住んでいたマイホームを売ったときには、一定の条件を満たせば受けられる特別控除があります。これは「居住用財産の3,000万円の特別控除」と呼ばれるもので、課税される譲渡所得の計算時に最大3,000万円を差し引くことができます。
居住用財産の特別控除を受けるには以下のような条件があります。
- 現に住んでいる、または以前住んでいて住まなくなってから3年以内に売却
- 売った前年と前々年に同じ特例を受けていない
- 売った年、前年、前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を受けていない
- 売った家屋について収用等の場合の特別控除を受けていない
- 親子や夫婦関係などに売却したものでないこと
このように、直近で自分が実際に住んでいたマイホームの売却であること、家族間での売却では適用されないこと、類似の特例を受けていないことがポイントです。
詳細な条件については国税庁ホームページで確認することができます。
この特別控除が適用できる場合は、譲渡所得が3,000万円までなら課税所得が0円になりますので、家を売っても税金がかからないケースが多くなります。
退職金を受け取った場合の控除は?
退職金も一度にまとまった金額を受け取りますので、課税される所得税が気になる方が多いのではないでしょうか。
退職金は退職所得に分類されますが、退職所得には勤続年数に応じた退職所得控除がありますので、受け取る退職金の金額にそのまま課税されるわけではありません。
退職所得控除の金額は勤続年数によって計算式が変わり、以下のように計算します。
勤続年数が20年以下 | 40万円 × 勤続年数
(80万円未満の場合は80万円) |
勤続年数が20年を超える | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年) |
たとえば、勤続年数が30年の場合は以下の計算となります。
- 退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (30年 – 20年) = 1,500万円
また、課税される退職所得額は上記の特別控除を引いて残った金額の1/2となります。
- 課税される退職所得額 = (退職金などの支給額 – 退職所得控除額) × 1/2
たとえば、退職金が1,700万円で勤続年数が30年だった場合は以下の計算となります。
- 課税される退職所得額 = (1,700万円 – 1,500万円) × 1/2 = 100万円
この100万円に所得税率を掛けると、退職金に課税される税額が求められます。
このように、退職金は一度にまとまった金額を受け取りますが、退職所得控除の金額が大きく、課税対象額も1/2となりますので、税金の負担は大幅に軽減される仕組みになっています。
親への仕送りは税控除の対象?
1人暮らしをしている親に仕送りをすることになり、税金の控除を受けたいという方もいらっしゃるでしょう。
所得控除の中に扶養控除がありますが、同居していなければならないという条件はありません。別居の親に仕送りをしているケースでも、条件を満たせば以下の金額の扶養控除が受けられます。
親の年齢 | 区分 | 控除額 |
70歳以上 | 老人扶養親族(同居老親以外の者) | 48万円 |
70歳未満 | 一般の控除対象扶養親族 | 38万円 |
上記の控除額を所得額から差し引けますので、課税所得が減額されて税金が安くなります。扶養親族が複数人いる場合は、人数分適用可能です。親に仕送りをするケースで扶養控除を適用するためには以下の3つの要件があります。
- 納税者と扶養親族が同一生計
- 扶養親族のその年の合計所得額が48万円以下
- その扶養親族が別の納税者の扶養親族になっていないこと
同一生計とは、納税者の収入や預金などで扶養親族の生活費を支払っている状況のことです。そのため、親の生活費の仕送りをしている場合は同一生計に当てはまります。
親に収入がある場合、合計の所得金額が年間48万円を超えないことが条件です。年間48万円を超える場合はその人自身が納税者となり、扶養親族にすることができません。
また、その扶養親族が別の納税者の扶養親族になっていないことが必要です。兄弟姉妹など複数人で仕送りをする場合は、そのうち誰か1人のみが扶養控除を適用できます。
まとめ
この記事では税金の負担が軽くなる控除について、種類や具体的な内容、手続き方法などを解説しました。
所得税の計算で控除を受けるための手続きは、給与所得者は年末調整で、それ以外の人は確定申告で行います。ただし、医療費控除など、会社員でも確定申告が必要になる控除がありますので注意してください。
所得控除は全部で15種類ありますので、どのような控除があるのか一通り知ったうえで、条件を満たすものはもれなく申告しましょう。控除を最大限に適用することで、税金の負担が軽くなり、状況によっては還付金が受け取れる場合もあります。
ぜひこの記事でまとめたことを参考にしていただき、年末調整や確定申告でスムーズに控除の手続きができるようにしましょう。
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