年末調整はいつ、いくら戻ってくる?受け取り時期や計算方法、早見表について解説

還付金

所属する勤務先で源泉徴収された給料が支給されている場合に行われる年末調整。この手続きの結果、還付金を受け取れるかもしれません。

そもそも還付金とはどういうもので、どのような条件を満たせば受け取れるのでしょうか。

本記事では還付金の概要を説明するとともに、計算方法や受取時期の解説、年収ごとの早見表も紹介します。年末調整における還付金をお知りになりたい人は、ぜひ参考にしてください。

還付金とは?

還付金とは年末調整・予定納税をした際に、納めすぎた所得税の超過分が納税者に変換される税金のことです。

例えば会社・企業などで毎月給料を受け取っている人は、支給される前に所得税を源泉徴収されています。しかし本来の所得税は12月分の給料が確定してから判明するので、源泉徴収した分と比較した際には差額が出ることが一般的です。この差額を調整する方法が年末調整であり、源泉徴収分のほうが多かった場合には還付金として返金されます。

また個人事業主やフリーランスは、受注した仕事の報酬に源泉徴収されていると会社・企業から源泉徴収済みの給料を受け取っているケースと同様です。ただし業務委託の場合は年末調整が行われないため、確定申告を行うことで還付金を受け取ります。

還付金の例として一番わかりやすいであろう源泉徴収を取り上げていますが、還付金として納めすぎていた税金が戻ってくるケースはほかにもあり、これだけではありません。

給料や報酬に対する源泉徴収以外のケースについては次の項目で解説するので、あわせて参考にしてください。

還付金が発生するケース

還付金が発生するケースとして、主に以下の9つがあげられます。

  1. 個人払いの社会保険料
  2. 住宅ローンの利用
  3. 生命保険・地震保険への加入
  4. iDeCoへの加入
  5. 本人や扶養家族が障害者
  6. 結婚
  7. 扶養家族の増加
  8. ひとり親
  9. 離婚や死別

それぞれのケースについて詳しくみていきましょう。

社会保険料を個人で払った場合

個人で社会保険料を支払っている場合、年末調整や確定申告で手続きをすることで還付金が発生する可能性があります。所得控除のひとつである社会保険料控除の制度が適用されるからです。

会社・企業に所属している給与所得者の場合、健康保険や厚生年金にかかる社会保険料は毎月の給料から天引きされるため、申告する必要はありません。

しかし社会保険料控除が対象にしている保険料は勤務先で天引きされる健康保険や厚生年金だけではなく、国税庁では範囲を以下のように定めています。

  • 健康保険・国民年金保険・厚生年金保険・船員保険
  • 国民健康保険
  • 後期高齢者医療保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 国民年金基金
  • 農業者年金
  • 厚生年金基金
  • 公務員共済

(参考:No.1130 社会保険料控除|国税庁

上記はすべて生計を同一とする配偶者や親族も含まれており、納税者本人だけではありません。

例えば生計を同一とする親族が後期高齢者医療保険に加入し、その保険料を親族本人が支払っていた場合も社会保険料控除の対象です。

これら支払済の保険料や掛金を年末調整または確定申告時に申請することで全額が控除対象となり、課税所得額が減少して払い過ぎていた所得税が還付金として戻ってくる可能性があります。

▼確定申告について詳しく知りたい方はこちら
【初心者向け】確定申告を1からわかりやすく解説

住宅ローンを組んでいる場合

住宅ローンを組んでいる場合も、払い過ぎていた所得税が還付されるかもしれません。所得税の税額控除の一環として住宅借入金等特別控除制度があり、以下の要件を満たすことで適用される可能性があるからです。

  1. 取得後6カ月以内に入居・継続居住
  2. 家屋の床面積50平方メートル以上
  3. 床面積の2分の1以上が居住専用
  4. 民間金融機関または住宅金融支援機構などを利用
  5. 分割返済期間10年以上
  6. 控除適用年の総所得額2,000万円以下
  7. 長期優良住宅建築計画の認定通知書及び住宅用家屋証明書あり

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を受けるためには、上記7つすべての要件を満たさなければなりません。

また上記とは別に2024年12月31日までに建築確認を受けたもので、床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、適用年の総所得額が1,000万円以下に限定されているので注意してください。

控除額は住宅の性能・取得要件によって異なり、以下のような計算式を用いて算出します。

性能・取得要件 計算式 上限額 控除期間
特例対象個人の納税者が認定住宅(認定長期優良住宅・低炭素建築物)の新築または取得 (住宅ローンの年末残高(5,000万円まで))×0.7% 35万円 13年間
特例対象個人以外の納税者が認定住宅(認定長期優良住宅・低炭素建築物)の新築または取得 (住宅ローンの年末残高(4,500万円まで))×0.7% 31.5万円
特例対象個人の納税者がZEH水準省エネ住宅を取得 (住宅ローンの年末残高(4,500万円まで))×0.7% 31.5万円
特例対象個人以外の納税者がZEH水準省エネ住宅を取得 (住宅ローンの年末残高(3,500万円まで))×0.7% 24.5万円
特例対象個人の納税者が省エネ基準適合住宅を取得 (住宅ローンの年末残高(4,000万円まで))×0.7% 28万円
特例対象個人以外の納税者が省エネ基準適合住宅を取得 (住宅ローンの年末残高(3,000万円まで))×0.7% 21万円
認定住宅・SEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅の中古住宅を取得 (住宅ローンの年末残高(3,000万円まで))×0.7% 21万円 10年間
一般的な中古住宅を入手 (住宅ローンの年末残高(2,000万円まで))×0.7% 14万円
一般住宅の新築・取得 (住宅ローンの年末残高(2,000万円まで))×0.7% 14万円

(参考:マイホームを持ったとき|国税庁

なお特例対象個人とは、以下のいずれかの条件を満たす納税者のことです。

  • 配偶者を有する40歳未満
  • 40歳未満の配偶者を有する40歳以上
  • 19歳未満の扶養家族を有する40歳以上

(参考:マイホームを持ったとき|国税庁

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の適用を受ける際には、初年度のみ確定申告を行わなければなりません。2年目以降は年末調整の手続きでで起用されるので、初年度のみ忘れないようにしてください。

生命、地震保険に加介入している場合

生命保険・地震保険に加入している場合、年末調整や確定申告で還付金があるかもしれません。

生命保険に加入している場合、以下の条件を満たすことで生命保険料控除の適用が可能です。

種類
一般生命保険 ・一般的な生命保険や死亡保険や学資保険
・旧簡易生命保険
・農協協同組合の生命共済
介護保険 ・個人で加入する介護保険
・介護医療保険
個人年金保険 ・老齢年金
・終身年金
・夫婦年金
控除額は2012年1月1日以降に契約した新契約と、2011年12月31日までに契約した旧契約によって以下のように定められています。
契約形式 年間保険料 控除額
新契約(2012年1月1日以降契約分) 2万円以下 支払保険料全額
2万円超4万円以下 支払保険料×1/2+1万円
4万円超8万円以下 支払保険料×1/4+2万円
8万円超 4万円(一律)
旧契約(2011年12月31日までの契約分) 2.5万円以下 支払保険料全額
2.5万円超5万円以下 支払保険料×1/2+1.25万円
5万円超10万円以下 支払保険料×1/4+2.5万円
10万円超 5万円(一律)

(出典:No.1140 生命保険料控除|国税庁

納税者が地震等の損害にかかる保険料や掛金を支払っていた場合には、地震保険料控除の利用が可能です。地震保険料控除には「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の2種類があり、区分によって以下のように控除額が設定されています。

区分 年間保険料 控除額
地震保険料 5万円以下 支払保険料全額
5万円超 5万円(一律)
旧長期損害保険料 1万円以下 支払保険料全額
1万円超2万円以下 支払保険料×1/2+5千円
2万円超 1.5万円
地震保険料と旧長期損害保険料の併用 「地震保険料」と「旧長期損害保険料」の合算控除額(上限5万円)

(出典:No.1145 地震保険料控除|国税庁

年末調整でiDeCoに加入している場合

国から支給される年金だけでは将来に不安を感じる人は多く、個人的に掛金を積み立てて資産を運用し、将来年金として受け取るiDeCoを利用する人が増えてきました。

このiDeCoに加入している場合、還付金が発生するかもしれません。iDeCoは、所得控除のひとつである小規模企業共済等掛金控除の対象になるからです。

小規模企業共済等掛金控除の対象とされている掛金は、以下の3つに限定されています。

  1. 独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約掛金
  2. 企業型年金加入者または個人型年金加入者の掛金
  3. 心身障害者扶養共済制度の掛金

(参照:No.1135 小規模企業共済等掛金控除|国税庁

上記のうちiDeCoは「2」の個人型年金のことであり、控除の対象です。年末調整または確定申告時に申請することで、掛金全額が控除されます。

本人または家族が障害者の場合

本人または生計を同一とする配偶者や親族が障害者である場合は、障害者控除の対象になるため、還付金が発生するかもしれません。

国税庁では障害者控除の範囲を、以下のように定めています。

  1. 精神上の障害があり、日常生活に影響を及ぼす状況にある人(特別障害者)
  2. 児童相談所や精神保健指定医などから知的障害と判断された場合(重度の場合は特別障害者)
  3. 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合(1級は特別障害者)
  4. 身体障害者手帳に「身体上の障害あり」との記載がある場合(1級と2級は特別障害者)
  5. 福祉事務所長などの認定を受けた65歳以上の精神または身体障害認定を受けている場合
  6. 戦傷病者手帳の交付を受けている場合
  7. 厚生労働大臣の認定を受けた原子爆弾被爆者(特別障害者)
  8. 対象年12月31日時点で引き続き6カ月以上寝たきりであり、介護を必要とする場合(特別障害者)

(参考:No.1160 障害者控除|国税庁

なお上記に当てはまる場合の控除額は以下の通りです。

区分 控除額
障害者 27万円
特別障害者(本人) 40万円
同居特別障害者 75万円

(出典:No.1160 障害者控除|国税庁

同居特別障害者とは納税者本人と同居していなくても、特別同居障害者と同居している人物が納税者本人と生計を同一とする配偶者または親族の場合のことを指します。

例えば納税者本人と生計を同一とする配偶者の親族が特別障害者で、配偶者が介護等の目的で一時的に納税者本人のもとを離れてその親族と同居している場合は、同居特別障害者として認定されるので対象です。

結婚した場合

結婚した場合は、配偶者控除または配偶者特別控除が適用されます。

配偶者控除の控除額は以下の通りです。

控除を受ける納税者本人の

合計所得金額

控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

(出典:No.1191 配偶者控除|国税庁

一方の配偶者特別控除は以下の要件を満たすことで適用されます。

  1. 納税者本人の年間総所得額が1,000万円以下
  2. 生計を同一とする年間総所得額が133万円以下の配偶者特別控除を適用していない配偶者
  3. 勤務先で源泉徴収されていない配偶者

(参考:No.1195 配偶者特別控除|国税庁

配偶者特別控除の金額は以下の通りです。

納税者本人の年間総所得額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
配偶者の年間所得額 48万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超135万円以下 3万円 2万円 1万円

(出典:No.1195 配偶者特別控除|国税庁

扶養対象者が増えた場合

16歳以上の扶養家族がいるまたは増えた場合は扶養控除の対象になり、還付金が発生する可能性があります。

区分別の控除額は以下の通りです。

区分 控除額
一般扶養親族(16歳以上30歳未満、または70歳以上) 38万円
特定扶養親族(19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(70歳以上) 同居以外 48万円
同居 58万円

(参考:No.1180 扶養控除|国税庁

なお、70歳以上の扶養親族が老人ホームなどへ入居している場合は「医療費控除」の対象になるので、上記一覧の「老人扶養親族(同居以外)」には含まれません。

親がひとりの場合

以下の範囲に該当するひとり親の場合は、ひとり親控除の対象になります。

  1. 事実上婚姻関係または同様と認められる一定の人がいない
  2. 生計を同一とする子がいる
  3. 年間合計所得額500万円以下である

(出典:No.1171 ひとり親控除|国税庁

原則として該当年の12月31日時点であり、満たす場合は35万円の控除が適用可能です。

夫と離婚・死別した場合

夫または妻と離婚・死別した場合には寡婦(寡夫)控除が適用されますが、以下の要件を満たさなければなりません。

  1. 離婚後に再婚しておらず、年間合計所得500万円以下の扶養親族がいる人
  2. 死別または生死が明らかではない状態で年間合計所得500万円以下の人

(参考:No.1170 寡婦控除|国税庁

扶養家族の要件は2020年に撤廃されており、上記を満たす場合は一律27万円が控除されます。

還付金を受け取れる時期は?

還付金が発生した場合、どのタイミングで受け取れるのでしょうか。

一般的には年末調整の手続きが終了した1カ月後に支払われますが、所属している会社・企業の規模によっては処理に時間がかかるため、一概にはいえません。

早い会社・企業の場合は、12月分の給料と一緒に振り込まれるでしょう。年末調整は、1年分の支払い給与・賞与額を確定させてから手続きを行い、1月上旬には各機関に所得税を納税しなければなりません。12月の時点で手続きは終了していることが多いので、12月分の給料に合算して振り込まれます。

勤務先によっては1月下旬に還付される可能性がありますが、その場合の主な理由は以下の通りです。

  • 繁忙期を避けるため
  • 従業員の提出書類がそろわないため

1月下旬に還付金が支払われる場合も、12月支払の場合同様に振込手数料などの都合から給料に合算されることが多いでしょう。

ただし支払のタイミングが遅いと判断する企業・会社によっては、給料とは別のタイミングで振り込まれたり手渡しされたりする可能性もあります。

還付金を受け取る方法

年末調整時の還付金の受け取り方法は、所属する勤務先からの振込や手渡しが一般的です。

しかし国税庁が定める以下の要件に該当する場合は、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を作成し、必要書類を添付して管轄する税務署に提出しなければなりません。

  1. 廃業などで還付できなくなった場合
  2. 徴収税額が不足して過納額の還付ができなくなった場合
  3. 還付日の翌月から2カ月以上経っても還付しきれないと見込まれる場合

(参考:No.2675 年末調整の過不足額の精算|国税庁

また添付しなければならない必要書類は、以下の通りです。

  • 受給者の源泉徴収票の写し
  • 過納額の請求及び受領に関する委任状(退職者は不要)
  • 翌年分の源泉徴収の写し(花王額を翌年に繰り越している場合)
なお「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」は、国税庁のホームページからダウンロードが可能なので、そちらをご利用ください。

受け取りに必要な書類

年末調整で還付金を受け取る際には、勤務先に以下のような所得控除対象の証明書類の添付が必要です。

  • 生命保険料控除証明書
  • 社会保険料控除証明書
  • 住宅ローン年末残高証明書

控除の適用を受ける際に必要な証明書は、通常10月ごろから順次自宅に送られてきます。遅くとも12月までには手元に届きますが、11月下旬になっても届かない場合は発行元に確認したほうが良いかもしれません。

また控除証明書の再発行は可能ですが、発行元によっては再発行〜郵送まで時間がかかることがあります。直接発行元の窓口に赴いて手続きをすれば即日対応してもらえますが、郵送を希望する場合は早めに連絡をしてください。

還付金の計算方法

通常、年末調整で還付金がある場合は所属する会社・企業で手続きを行うので、自分で計算する必要はありません。
しかしなかには「事前に還付金の有無を知っておきたい」「還付金がある場合は目安となる金額を知りたい」と思う人もいるでしょう。

還付金の有無や金額を計算する際には、「対象年の給与明細」「所得控除対象の支払額がわかる書類」「住宅ローンの年末残高表」の3つがあると便利です。

これらの書類を利用して以下の手順で計算します。

  1. 月収と源泉徴収額を合計
  2. 年額給与から控除額を差し引く
  3. 課税所得額から所得税額を算出
  4. 年調年税額と源泉徴収額を比較

それぞれの手順について詳しくみていきましょう。

毎月の給与と源泉徴収額を合計する

最初に1年間の収入(給与・賞与など)と源泉徴収額を合計します。このとき注意したいのが、非課税対象のものについては省く点です。

  • 交通費
  • 立替費用
  • 副業収入
例えば上記3つは年末調整の対象外なので、含めないでください。交通費と立替費用は非課税であり、副業収入は年末調整の対象が勤務先での収入のみであるからです。

また途中で転職をしている場合は前職の勤務先で発行された源泉徴収票も確認し、給与・賞与や源泉徴収額をそれぞれ含めます。

給与の年額から控除額を差し引く

給与・賞与と源泉徴収額の合計が完了したら、次は給与・賞与の合計金額から控除額を差し引かなければなりません。

ここでの控除額とは所得控除のことであり、対象となる主な制度は以下の通りです。

所得控除 内容 控除額(上限)
給与所得控除 個人事業主や自営業にとっての経費分 195万円
配偶者控除
配偶者特別控除
生計を同一とする配偶者が存在する場合 ・配偶者控除:48万円
・配偶者特別控除:38万円
扶養控除 扶養家族が存在する場合 58万円
生命保険料控除 ・新生命保険や介護料保険や新個人年金に加入している場合(新契約)
・旧生命保険や旧個人年金保険に加入している場合(旧契約)
・新契約:4万円
・旧契約:5万円
小規模企業共済等掛金控除 ・共済契約の掛金
・企業型年金または個人型年金加入の掛金
年間支払済掛金全額
ひとり親控除 年間総所得500万円以下の同一生計の子がいる場合 35万円
寡婦(寡夫)控除 年間総所得500万円以下の生計を同一とする扶養家族がいる場合 27万円
障害者控除 納税者本人または生計を同一とする配偶者や扶養家族が障害者の場合 75万円

条件を満たす所得控除がある場合は、年間所得額に応じた控除額を差し引いて課税所得額を算出ください。

課税所得額から所得税額を算出する

課税所得額が算出できたら、次に所得税額を計算します。国税庁のホームページでは課税所得額に応じた税率と控除額を示した速算表が公開されているので、これを利用するとスムーズな算出が可能です。

課税所得額 税率 控除額
194.9万円以下 5% 0円
195万円以上329.9万円以下 10% 97,500円
330万円以上694.9万円以下 20% 427,500円
695万円以上899.9万円以下 23% 636,000円
900万円以上1,799.9万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円以上3,999.9万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

(出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

所得税額=課税所得額×税率-控除額

上記の計算式に計算した課税所得額と一覧表の税率・控除額をあてはめて計算してください。

年調年税額と源泉徴収額を比較する

前述で計算した所得税額と、最初に算出した源泉徴収額を比較します。

所得税額よりも源泉徴収額のほうが多ければ差額分が還付金として戻ってきますが、所得税額のほうが少ない場合は不足していることになるので、12月に支払われる給与から天引きされるでしょう。

還付金の計算例、還付金早見表

実際の数字を当てはめて還付金を計算してみます。

  1. 配偶者特別控除や生命保険料控除
  2. 住宅ローン控除
  3. 障害者控除

上記のケースとあわせて「年収200万円」「年収400万円」「年収800万円」の還付金早見表も紹介するので、参考にしてください。

1.配偶者特別控除や生命保険料控除などがあるケース

以下のような条件下のもとで還付金を計算してみましょう。

条件 年間総給与額:450万円
年間賞与額:130万円
年間社会保険料:84万円
生命保険料:8万円
配偶者特別控除:38万円
扶養控除:38万円
基礎控除:48万円
年間源泉徴収額:23万円
給与所得額 【計算式】年間総収入額-(年間総収入額×20%+44万円)
(450万円+130万円)-{(450万円+130万円)×20%+44万円}=420万円
課税所得額 【計算式】給与所得額-総所得控除額
420万円-(84万円+48万円+38万円+38万円+5万円)=207万円
所得税額 【計算式】課税所得額×10%-9.75万円
207万円×10%-9.75万円=10.95万円
還付金 【計算式】年間源泉徴収額-所得税額
23万円-10.95万円=12.05万円
配偶者特別控除や生命保険料控除は、どちらも所得控除制度であるため、課税所得額を計算する際に給与所得額からまとめて差し引きます。

2.住宅ローン控除があるケース

住宅ローン控除がある場合の還付金をシミュレーションしてみましょう。

条件 年間総給与額:570万円
年間賞与額:110万円
社会保険料:88万円
基礎控除:48万円
配偶者特別控除:38万円
生命保険料:9万円
住宅借入金等特別控除:15万円
源泉徴収税額:27万円
給与所得額 【計算式】年間総収入額-(年間総収入額×10%+110万円)
(570万円+110万円)-{(570万円+110万円)×10%+110万円}=502万円
課税所得額 【計算式】給与所得額-総所得控除
502万円-(88万円+48万円+38万円+9万円)=319万円
所得税額 【計算式】課税所得額×10%-9.75万円
319万円×10%-9.75万円=22.15万円
住宅借入金等特別控除を差し引く 【計算式】所得税額-住宅借入金等特別控除額
22.15万円-15万円=7.15万円
還付金 【計算式】年間源泉徴収額-所得税額
27万円-7.15万円=19.85万円
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、税額控除のひとつであることから、基礎控除や配偶者特別控除のように給与所得額からは差し引きません。

先に所得税額を算出し、そこから住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の金額を差し引きます。

3.扶養親族が障害者に該当するケース

扶養家族に障害者がいる場合の還付金は以下の通りです。

条件 年間総給与額:410万円
年間賞与額:140万円
社会保険料:71万円
基礎控除:48万円
配偶者特別控除:38万円
生命保険料:6万円
障害者控除:27万円
源泉徴収税額:16万円
給与所得額 【計算式】年間総収入額-(年間総収入額×20%+44万円)
(410万円+140万円)-{(410万円+140万円)×20%+44万円}=396万円
課税所得額 【計算式】給与所得額-総所得控除額
396万円-(71万円+48万円+38万円+6万円+27万円)=206万円
所得税額 【計算式】課税所得額×10%-9.75万
206万円×10%-9.75万円=10.85万円
還付金 【計算式】年間源泉徴収額-所得税額
16万円-10.85万円=5.15万円

 

年収200万|還付金早見表

年収200万円の場合の条件別還付金をみてみましょう。

年収 200万円
年齢 40歳
源泉徴収額 32,800円 13,300円 0円
社会保険料 30万円
控除 配偶者控除
扶養控除 有(16歳以上2人)
還付金 5,300円 5,200円 0円

給与所得の源泉徴収税を計算する際には、国税庁が毎年公表している「給与所得の源泉徴収税額表」を利用します。

月収から社会保険料などを控除した金額を基準にして、扶養家族の人数ごとの税額を確認して算出する方法が一般的です。

今回の場合の源泉徴収税額は、以下のように算出しました。

(200万円(年収)-30万円(社会保険料))×1/12カ月=14.16万円(1カ月分)
社会保険料を控除した月収が14.16万円と算出されたので、一覧表から扶養家族0人・1人・3人それぞれの源泉徴収額の12カ月分を計算しています。
なお控除額については基礎控除・配偶者控除・扶養控除の3つのみで、そのほかの所得控除・税額控除は考慮していません。

年収400万|還付金早見表

年収400万円の場合の3パターンの還付金をシミュレーションしてみます。

年収 400万円
年齢 40歳
源泉徴収額 92,500円 73,200円 34,300円
社会保険料 60万円
控除 配偶者控除
扶養控除 有(16歳以上2人)
還付金 6,800円 6,900円 6,800円
(400万円(年収)-60万円(社会保険料))×1/12カ月=28.3万円(1カ月分)

上記の計算式が、3パターンの源泉徴収税額を確認する際のベース金額です。「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で1カ月分のベース額における独身・配偶者のみ・扶養家族3人それぞれの税額を確認して12カ月分を算出しました。

年収800万|還付金早見表

年収800万円の人の還付金を3パターンで確認してみます。

年収 800万円
年齢 40歳
源泉徴収額 49.2万円 41.4万円 25.9万円
社会保険料 120万円
控除 配偶者控除
扶養控除 有(16歳以上2人)
還付金 2.6万円 2.56万円 2.37万円

源泉徴収税額を調べる際に使用するベース金額の計算方法は、以下の通りです。

(800万円(年収)-120万円(社会保険料))×1/12カ月=56.6万円(1カ月分)

給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」より、1カ月分の金額における独身・配偶者のみ・扶養家族3人(配偶者+子2人)の各税額を確認して12カ月分を算出しています。

追加徴収が発生するケース

年末調整が行われたことで、必ずしも還付金が発生するとは限りません。手続きをすることで追加徴収することもあり、その主なケースは以下の通りです。

  • 給与の支給額が増加
  • 賞与支給額が多い場合
  • 扶養親族の減少
  • 源泉徴収されていない収入あり

会社・企業によっては給与のベースアップが行われることがありますが、アップ率が大きくなると給与収入が増加してそれまで源泉徴収していた金額では足りなくなり、年末調整後に追加徴収が発生します。

支給される賞与の金額が多かった場合も、年末調整をすることで追加徴収されるかもしれません。会社や個人の業績が大幅にアップしたことで、賞与として還元されることがあります。その場合、例年よりも支給額が増加するので追加徴収される可能性があるでしょう。

扶養親族の減少で追加徴収が発生する理由は、扶養控除額が減少するからです。扶養控除は扶養家族の人数や年齢によって金額が変わります。年の途中で配偶者との離婚や親族の独立などで扶養家族から外れると控除される金額が減少して年収が増加するので、所得税の納税額がアップしてしまうでしょう。

最後の源泉徴収されていない収入とは、副業をしている場合があげられます。源泉徴収された給与を受け取っている会社員が、源泉徴収のない副業をしていたとしましょう。副業所得額が20万円を超えた場合は確定申告が必要ですが、全体的な収入増加に伴い所得納税額が高くなり、追加徴収が発生します。

よくある質問

年末調整や還付金について、よくみられる質問は以下の通りです。

  • 確定申告での返金額の確認方法
  • 年末調整の修正方法
  • 還付金の取り扱い

これらは年末調整や還付金についての知識を得る際に、多くの人が疑問に感じるポイントでしょう。これらの質問について回答するので、参考にしてください。

確定申告で返金額はわかる?

年末調整での還付金の確認方法は、計算方法やシミュレーションなどで解説しました。しかし、還付金が発生するケースは年末調整だけではありません。個人事業主や自営業の場合は年末調整は行わず、自分で確定申告をして所得を確定させて税金を納めます。

個人事業主・自営業の場合、取引によっては源泉徴収をされた報酬が支払われることがあり、その場合は還付金が発生するかもしれません。

確定申告書の第一表に「税金の計算」という項目があり、還付金がある場合は「52」欄に返金される金額が入ります。

なお還付金は一般的に、確定申告書を提出して1カ月程度で還付金の通知はがきが自宅に送られてきます。

e-Taxで確定申告を行った場合は還付金の処理状況が確認できますが、電子申請を行った人のみなので注意してください。

年末調整の修正はできますか?

年末調整での金額修正は、所属する会社・企業の提出期間内なら相談すれば可能です。

多くの会社・企業では11月上旬から始まり、必要書類の提出期限は11月下旬から12月上旬に設定されていることが多く、その期間内なら修正が可能なケースもあるでしょう。

ただし所属する勤務先では、翌年1月下旬までに各機関に必要書類を提出しなければなりません。年末調整の手続き対象が多くなれば多くなるほど作業数が多くなるため、提出期限を過ぎた場合の年末調整の修正には応じてもらえない可能性があります。

勤務先で年末調整の修正を相談して断られた場合は、確定申告を行いましょう。会社・企業では年末調整が終わると12月下旬〜1月末ごろに源泉徴収票が発行されるので、これを入手してください。

確定申告は毎年2月16日〜3月15日までが手続き期間として設定されており、この期間中に申告書類に金額などを記入して必要書類とあわせて提出すれば修正されます。

なお修正時にさらに還付金があることが事前にわかっている場合は、確定申告の期間に縛られることなく修正申告が可能です。還付金が発生する際の修正を還付申告といい、還付金発生対象年の翌年から5年間は好きなタイミングで申請できます。

還付金は収入になりますか?

還付金は納めすぎていた所得税が戻ってきているだけなので、収入としてカウントされません。これは給与所得者の年末調整時だけではなく、個人事業主や自営業を営む人が確定申告を行った際に発生する還付金も同様です。

ただし還付金に還付加算金が付与される場合があり、この加算金については雑所得扱いになるので次回の年末調整や確定申告で申告しなければなりません。

還付加算金とは、予定納税をした際に還付金が発生すると付与される利息です。

予定納税とは所得税額が一定の金額を超えた場合に、翌年分の所得税と復興特別所得税の一部を納税しなければならない制度で、対象になると6月中旬ごろに税務署から通知書が送られてきます。

個人事業主や自営業だけではなく、不動産収入や副業での所得が多い会社員も対象になることがあるので注意してください。

この予定納税で納めた税金が実際の納税額よりも多かった場合には還付金として戻されますが、このとき還付金に利息として還付加算金が付与されます。還付金自体の申告は不要ですが、還付加算金は雑収益に分類されるので、次の年末調整や確定申告時には忘れず収入に含めましょう。

まとめ

年末調整と還付金について解説しました。

対象年の間に急激な収入の増加がない場合は、年末調整で還付金が発生することが多いでしょう。ただし、賞与などの突発的な収入が多かったり大幅な基本給の増加があったりした場合にはそれまでの源泉徴収税額では足りず、追加徴収されることもあります。

大幅な収入増加があった場合には、本記事で紹介した計算方法をもとに目安となる金額を算出してみてください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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