確定申告を忘れた!対処法や延滞税について解説

延滞金

確定申告を期限内に行わなかった場合、延滞税が課せられる可能性があります。また単なるうっかり忘れではなく、悪質と判断される場合にはさらに別の罰金も加算される可能性があるので注意が必要です。

仮に課せられそうになった場合、どのように対処すれば良いのでしょう。また発生した場合の会計処理について疑問を抱く人もいるかもしれません。

本記事では確定申告の延滞税を中心にその他の罰則や会計処理方法、さらには延滞金との違いについても解説するので参考にしてください。

確定申告の延滞税とは

確定申告の延滞税とは、法定申告期限内に所得税の申告・納税を行わなかった場合に課せられる罰金です。

また確定申告の必要書類の提出期限は、方法によって以下のように異なります。

提出方法
期限
e-Tax 3月15日23時59分まで
※土日祝の場合は翌平日
税務署への郵送 消印が3月15日
※土日祝の場合は翌平日
税務署への窓口 ・開庁時間(17時)まで
・時間外回収箱の場合は日付が変わるまで

どのように提出するかによって期限が異なりますが、上記の期限以降は対象になるので注意してください。

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無申告は重い税が加算される

延滞税の課税条件は原則として法定納付期限までに所得税を納税しなかった場合です。

所得税を納税しなかったケースとしてさまざまな原因・状況が考えられますが、そのなかでも意図的に確定申告をしなかった場合には、重い税が加算されます。

本来の所得税額と延滞税にプラスして別の罰金も課せられるので、必然的に納税しなければならない金額は高額になるので注意してください。

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確定申告の罰金

確定申告に課せられる罰金・罰則は、以下の5つです。

  1. 延滞税
  2. 無申告加算税
  3. 重加算税
  4. 過少申告加算税
  5. 青色申告特別控除を10万円に引き下げ

それぞれの罰金・罰則を詳しく解説するので、参考にしてください。

①延滞税

延滞税は、納期限までに税金を納めなかった場合に課税される罰金です。

具体的には以下のようなケースに該当する場合に発生します。

  • 申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
  • 期限後の申告や修正申告で納税が発生した場合
  • 更正や決定処分により納税が発生した場合

出典:No.9205 延滞税について|国税庁

上記以外に中間納税額を納期限までに納めなかった場合も、延滞税の対象です。

算出する際に使用する税率は、延滞が発生してから完納するまでの期間によって以下のように異なるので早めに納税したほうが良いでしょう。

納期限翌日から完納まで
原則税率(年率)
2カ月以内 7.3%
2カ月超 14.6%

出典:No.9205 延滞税について|国税庁

ただし上記は原則税率であり、実際には特例基準割合を基準にした税率を適用します。

特例基準割合とは、毎年11月頃に告示される平均貸付割合を基準に決定される割合です。2カ月以内の場合はこれに年1%を加算したもの、2カ月越えの場合は年7.3%を加算したものと原則税率を比較して低いほうの税率を適用します。

実際に使用する税率は毎年見直しが行われているので、半永久的に同じ税率を使用して計算するわけではありません。使用する税率は国税庁の「延滞税の割合」にて、毎年公開されています。自分で金額を計算する際には、このサイトで最新の税率を確認してください。

②無申告加算税

無申告加算税とは、期間内に確定申告をしなかった場合に課せられる罰金です。財務省が公表している具体的な課税要件は、以下のように規定しています。

  1. 期限後申告や決定があった場合
  2. 期限後の申告や決定について、修正申告や更正があった場合

出典:加算税の概要|財務省

加算税を算出する際の税率は増差本税の金額によって異なり、以下の通りです。

増差本税額
税率(年率)
50万円以下 15%
50万円超300万円以下の部分 20%
300万円超の部分 30%

出典:加算税の概要|財務省

ただし、期限内に確定申告を行わなかったからといって必ずしも無申告課税が課せられるわけではありません。

要件
軽減割合(年率)
・正当な理由が認められる場合
・法定申告期限から1カ月以内の期限後申告
0%
更正や決定を予知しない修正申告や期限後申告 5%

出典:加算税の概要|財務省

上記の要件を満たしていると認められれば無申告加算税の非課税対象になったり、5%で計算されたりします。

③重加算税

重加算税とは、意図的な隠ぺい・仮装が認められる場合に課せられる罰金であり、さまざまな種類がある加算税のなかでは最も重い罰則です。

重加算税はほかの加算税に代えて課せられる罰則であり、その加算税によって使用する税率が以下のように異なります。

加算税
税率(年率)
過少申告加算税 35%
無申告加算税 40%

出典:加算税の概要|財務省

本来なら上記の加算税であっても、状況等が悪質と税務署によって判断された場合には重加算税として各税率をかけて計算した罰金が課せられるので注意してください。

④過少申告加算税

過少申告加算税とは、申告・納税した税金の金額が本来の税額よりも少なかった場合に課せられる罰金です。

加算税を計算する際に使用する税率は、以下の2通りあります。

条件
税率(年率)
原則 10%
期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分 15%

ただし、本来の納税額よりも少なく申告したからといって必ず過少申告加算税が課せられるわけではありません。以下の要件を満たしていると認められる場合は、課税対象外です。

  • 正当な理由が認められる場合
  • 更正を予知しない修正申告の場合

原則として自主的に修正を行った場合には、課税対象外になる可能性があります。

⑤青色申告特別控除が10万円に引き下げられる

加算税とは異なりますが、期限を過ぎてから確定申告を行うと青色申告特別控除は10万円しか適用されません。

青色申告特別控除とは白色申告ではなく青色申告を行う際に適用される特別控除のことであり、10万円・55万円・65万円の3種類があります。

ただし55万円以上の青色申告特別控除を受けるためには、法定申告期限内に確定申告が必要です。期限外に申告をすると仮に条件を満たしていても適用されず、10万円の控除しか利用できません。

年間所得額によっては、正しい控除額が適用できないと「納税額が高くなる」「本来なら0円のはずなのに所得税が発生する」といったリスクが発生する可能性があります。

本来の控除制度の適用を望む場合は、定められた期間内に申告を行いましょう。

延滞税の算出方法

延滞税を算出する際に使用する計算式は、以下の通りです。

延滞税=増差本税額×税率×滞納日数/365日

増差本税額とは、修正申告など追加で納税することになった金額のことを指します。この税額が1万円に満たない場合は切り捨てと定められているので、計算する必要はありません。

また上記の計算式で算出された延滞税額が1,000円未満の場合は、切り捨てです。

なお、国税庁では「延滞税の計算方法」では計算シミュレーションを公開しており、このシステムを利用すれば自分で計算する必要はありません。正確な金額が表示されるので、利用してみてください。

迅速に期限後申告を行おう

延滞税は、完納するまでは毎日加算される罰金です。また確定申告や納税が遅れた場合には、加算されるのは無申告加算税も加算されます

期限後申告は遅くなればなるほど本来の納税額とは別の加算税が増額されていくので、迅速な対応・申告が必要です。

前項目の延滞税の算出方法でも紹介しましたが、計算した金額が1,000円未満の場合は加算されません。本税と無申告加算税のみの納税で済みます。

うっかり忘れた場合は、可能な限り早めに申請書作成や必要書類を準備して提出・納税をしてください。

確定申告期限延長の特例

災害のようなやむを得ない事情で期限内に確定申告ができない場合は、申告・納付の期間延長が認められています。

期限延長を希望する場合は、「災害による申告、納付等の期間延長申請書」を管轄する税務署に提出しなければなりません。なお、インターネットの環境が整っている場合は、e-Taxでの申請手続きも可能です。

ただし、申請書を税務署に提出したからといって必ず特例が適用されるわけではありません。提出した申請書をもとに申請者の状況・実情を確認して妥当であると判断されれば延長されます。審査によっては認められない場合もあるので注意してください。

期限後に確定申告を修正する方法

期限後に確定申告の修正をする際、過少申告と過大申告とでは方法や発生する税金などが異なります。

過少・過大に分けてそれぞれの修正方法を解説するので、参考にしてください。

過少申告の場合

期限後に過少申告を修正する際は修正申告を行いますが、その方法・手順は以下の通りです。

1 確定申告書第一表および第二表を入手
2 第一表の「〇〇年分」に修正する年度、「〇〇申告書」は「修正申告書」と明記
3 名前・住所等を明記したうえで「種類」の欄で「修正」に丸印
4 正しい金額で申告書を作成
5 「修正申告」欄の「修正前第3期分の税額(53)」に修正する前の申告税額を記入
6 「修正申告」欄の「第3期分の税額の増加額(54)」に本来の納税額と(53)の差額を記入
7 第二表も第一表同様に正しい金額にて作成
8 「特例適用条文等」の欄に修正申告発生理由を明記

修正申告に期限はありませんが、遅くなればなるほど延滞税が加算するので可能な限り早めに手続きしたほうが良いでしょう。

なお、納税の期限は申告書類提出日です。このとき税額に延滞税分もプラスして納付してください。延滞税の計算は、国税庁の「延滞税の計算方法」を利用することをおすすめします。

過大申告の場合

過大申告の場合の手続きは、更正の請求です。

前述した過少申告の場合とは異なり、確定申告書を改めて作成する必要はありません。その代わり、更正の請求を行うための請求書などを入手・作成して税務署に提出します。

更正の請求は納付しすぎていた税金を還付してもらう手続きであり、延滞税などの罰金は発生しません。ただし過少申告のように無期限で手続きが行えるわけではなく、原則として法定申請期限から5年以内に行わなければ申請できなくなるので注意してください。

手続きをする際に必要な書類等については、次の項目で解説します。

還付申告と更正の請求

納めすぎていた税金を返してもらうためには、還付申告または更正の請求のいずれかの手続きを行わなければなりません。

この2つの手続きは還付という点では同じですが、対象や意味合いは異なります。

それぞれの内容や必要書類を解説するので、参考にしてください。

更正の請求

更正の請求とは、確定申告を行った人が本来の金額よりも多く納税した場合に行う手続きです。

更正の請求を行う際には、以下の申請書や書類を準備しなければなりません。

  • 所得税及び復興特別所得税の更正の請求書
  • 更正の請求の根拠となる証明書類
  • 本人確認書類

なお、申請から還付完了までの期間は手続きの方法によって以下のように異なります。

方法
還付される時期(目安)
e-Tax 3週間程度
紙媒体(窓口提出・郵送) 1~2カ月程度

上記はあくまで目安であり、確実なものではありません。確定申告の時期に手続きを行うとさらに還付される時期が遅れる可能性があります。

更正の請求の手続き時期に縛りはありませんが、請求が発生する確定申告の法定申請期限から5年以内に行わなければ請求の権利が消滅するので注意してください。

還付申告

還付申告とは、確定申告の義務がない人が超過分の税金を還付してもらう際に行う手続きです。

還付申告を行う際には以下の必要書類を準備して作成しなければなりません。

  • 確定申告書
  • 控除証明書
  • 本人確認書類

還付申告の対象者は確定申告の義務がない人であるため、確定申告と同様の手続きを行うことが原則です。なお提出の必要はありませんが、源泉徴収票がある場合は準備しておくと申告書作成時が比較的容易になるでしょう。

還付の時期については、提出方法や申請する時期によって以下のように異なります。

手続き方法
確定申告期間中
確定申告期間外
e-Tax 3週間程度 3週間程度
紙媒体(窓口提出・郵送) 1~1カ月半 1~2カ月程度

更正の請求同様に還付申告の期間に縛りはありませんが、還付発生年の翌年1月1日を起算日として5年以内に行わなければなりません。

延滞税の帳簿

延滞税を支払うことになった場合、会計処理が必要です。仕訳の方法は、法人と個人事業主で使用する勘定科目が異なります。

延滞税の帳簿表記とあわせて取り扱い上の注意点も解説するので、参考にしてください。

法人の場合

法人として延滞税を支払った場合の会計処理は、以下の通りです。

借方
貸方
摘要
租税公課 〇〇円 当座預金 〇〇円 法人税の延滞税

法人での延滞税の取り扱いは、「租税公課」の勘定科目を使用して計上します。

ただし日常的な会計処理で租税公課の勘定科目を使用することは多く、年度末決算の際に中身がわからなくなるといったことが起こらないとも限りません。

また後述しますが延滞税の取り扱いには注意が必要なため、摘要欄に法人税の延滞税であることを明記しておくことをおすすめします。

個人事業主の場合

個人事業主の場合の会計処理方法は、以下の通りです。

借方
貸方
摘要
事業主貸 〇〇円 現金 〇〇円 所得税の延滞税

法人のように「租税公課」ではなく、「事業主貸」の勘定科目を使用して計上する点に注意してください。

また個人事業主も法人同様に延滞税の取り扱いはほかの支払いと異なるため、決算時にわかるように摘要欄に「所得税の延滞税」と明記しておいたほうが良いでしょう。

取り扱い上の注意

延滞税は税法上、経費としての計上が認められていません。

例えば法人の場合は「租税公課」の勘定科目を使用して計上しますが、この勘定科目のなかには印紙税・固定資産税なども含まれており、これらは経費計上が可能です。

ひとつの勘定科目のなかに経費計上できるものとできないものが混在すると、決算時に混乱を招く恐れがあるので、摘要欄に延滞税であることを明記しておきましょう。

国民健康保険も延滞金が加算される?

延滞税と混同されがちな罰則に延滞金があげられます。「延滞」という言葉が入っていることから同じと思う人もいるかもしれませんが、この2つは別物です。

ここでは国民健康保険の延滞金に注目して、延滞税との違いなどを解説するので参考にしてください。

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延滞税と延滞金

延滞税と延滞金はいずれも「延滞」という言葉が入っていることから同じと考える人もいるようですが、これらは以下のような違いがあります。

概要
延滞税 国税の延滞が発生した場合に課せられる罰則 所得税・法人税など
延滞金 地方税の延滞をした場合に発生する罰金 住民税・固定資産税など

原則として、延滞税・延滞金のいずれも損金算入は認められていません。

ただし延滞金については例外があり、社会保険料で発生した延滞金については税法上の延滞金ではないという観点から損金算入が認められています。

このようにこの2つは言葉は似ていますが、概要などは異なるので混同しないように注意してください。

国民健康保険の延滞金

国民健康保険は地方税であるため延滞した場合に発生するのは延滞金であり、延滞税ではありません。

延滞金の税率は各自治体の条例によって独自に設定することが可能であるため、異なっている場合があります。

東京都の場合の税率は、以下の通りです。

納期限翌日から完納までの期間
税率(年率)
3カ月以内 2.4%(延滞金特例基準割合に1%を加算)
3カ月超 8.7%(延滞金特例基準割合に7.3%を加算)

出典:国民健康保険料の延滞金及び還付加算金について|杉並区公式ホームページ

保険料を延滞すると、自治体から督促状が送付されてきます。支払いが難しい場合は督促状を持って市役所に相談に行くと良いでしょう。分納などの方法をアドバイスしてもらえます。

なお国民健康保険は所得税を申告する際の控除対象ですが、延滞金は控除対象外なので申告する際に含めないように注意してください。

まとめ

確定申告における延滞税を解説しました。

延滞税は、原則として期間終了日の翌日を起算日として日数に応じて加算されていくシステムです。申告が遅れれば遅れるほど所得税以外の税金が高くなるので、早めに手続きをすることをおすすめします。

状況によっては期間延長の特例制度が適用されることもあるので、本記事を参考に知識・理解を深めて適切な対処を行ってください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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