【源泉徴収】確定申告をしたい会社員、個人事業主、年金受給者など全員が知っておくべきことを解説!

源泉徴収

源泉徴収を行った会社・企業は、従業員に対して源泉徴収票の発行義務があります。これは確定申告をする際に必要な書類でもあるからです。

しかし、受け取った側のなかには「どのように利用するのか」「見方がわからない」などの悩みをお持ちの人もいるでしょう。

本記事では、源泉徴収の仕組みや確定申告時の徴収票の見方などを解説します。源泉徴収票を使った確定申告が必要な人は、ぜひ参考にしてください。

源泉徴収とは?

給与所得者や年金受給者は、給与や支給される年金から源泉徴収されます。また個人事業主は契約内容によって、受け取る報酬から差し引かれることがあるでしょう。

この源泉徴収とはそもそもどのようなものなのでしょう。

源泉徴収と年末調整はセット

基本的に源泉徴収と年末調整はセットで行われます。その理由は、年末調整時に所得税の納税額を確定させて過不足を調整するからです。

所得税は「申告納税制度」を原則としており、納税者自身が年間総所得額と納税額をあわせて申告しなければなりません。

しかし特定の所得に対しては源泉徴収制度が適用されており、定められた方法で仮の所得税を計算して徴収できます。

ただし徴収された金額はあくまで仮であり、本来の納税額ではありません。そこで1年間の所得が確定した時点で所得税額を計算し、徴収税額と比較して過不足を調整します。
▼所得税について詳しく知りたい方はこちら
所得税はいくらから発生する?税率や控除などをケース別に紹介

源泉徴収の対象所得

源泉徴収税はいわば所得税の前借りのようなものですが、どのような報酬に対しても適用されるわけではありません。可能な対象所得は、以下のとおりです。

  1. 原稿料や講演料など(賞金等については1人の支払額(1回分)が5万円以下であれば不要)
  2. 弁護士や公認会計士など特定の資格(士業など)に支払う報酬
  3. 診療報酬
  4. プロのスポーツ選手やモデル、外交員などに支払う報酬
  5. 芸能人や芸能プロダクションに支払う報酬
  6. コンパニオンやホステスなど、接待業務をする人に支払う報酬
  7. 役務提供のための一次契約金(プロ野球選手への契約金など)
  8. 広告宣伝や競馬の賞金(馬主が法人である場合を含む)

出典:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

上記以外にも国税庁では利子や配当金・給与(手当や賞与を含む)・退職手当・公的年金・保険契約に基づく年金なども対象としてあげています。
また上記にあげている「報酬」については、金銭だけではありません。金銭の代わりに経済的利益として判断される物品も報酬・料金に含まれるため、対象になることがあるので注意してください。

源泉徴収の対象にならないケース

一方で源泉徴収の対象にならない報酬もあります。

国税庁が定めている給与所得者の場合の対象外は、以下の通りです。

  • 通勤手当
  • 出張旅費
  • 交際費
  • 宿日直料(1回4,000円未満)

出典:給与所得の範囲|国税庁

上記以外にも給与所得者だけではなく、個人事業主や年金受給者にも関連がありそうなものとして以下の例があげられます。

  • 冠婚葬祭の祝金や見舞金
  • 源泉徴収義務を有しない個人が支払う報酬
  • 家事使用人のみに個人的に支払う給与

出典:No.2502 源泉徴収義務者とは|国税庁

さらに、社会保険料等が控除された月額給与が8.8万円未満の場合も対象外です。

源泉徴収はいつされてるの?

源泉徴収は所得が支払われるタイミングで行い、実際の支払いが行われない場合は仮に所得が確定していても原則として徴収の義務はありません。

ただし配当金や分配金の場合は支払が実行されなくても一定期間が経過すると支払われたとみなされるため、義務付けられています。

例えば、勤務先から支払われる給与が月末締め翌月25日払いだったとしましょう。1月に勤務した給与は、1月31日に締めが行われて支払金額が確定します。このとき徴収税分も同時に計算されていますが、徴収自体はまだ行われていません。翌月の2月25日に指定の銀行口座に1月分の給与が振り込まれますが、このときに事前に計算されていた徴収分が差し引かれます。

一方、個人事業主やフリーランスの場合はどうでしょうか。この場合も支払時に徴収される点は、変わりありません。個人事業主やフリーランスは成果物などを納品後に報酬の支払いが行われるケースが多くありますが、指定の口座などに報酬が振り込まれた時点で徴収されます。

源泉徴収の流れ

源泉徴収は対象所得の支払いが発生するごとに行われますが、主な流れは以下の通りです。

  • 給与や報酬などを計算
  • 定められた算出方法で徴収税額を確定

詳しい流れについては種類別に以下の項目で紹介するので、参考にしてください。

1.毎月の源泉徴収

源泉徴収税額は、どのように決定しているのでしょう。

給与や賞与などの種類によって異なるので、各計算方法を解説します。

給与

企業・会社が支払う給与にかかる分は、国税庁がその金額に応じてあらかじめ定めており、これを参考にして算出しなければなりません。

手順 作業内容
1 総支給額を算出 基本給・宿日直料(1回4,000円以上)・諸手当など
2 総支給額から社会保険料等を控除 健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料
3 「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」から算出 国税庁の「パンフレット・手引」内の「源泉徴収税額表関係」の項目内にて毎年最新の一覧表を公開
税額表には「甲」と「乙」があり、明記されている金額が異なります。これは勤務先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を事前提出の有無の違いです。

事前に提出済の場合は「甲」、未提出の人は「乙」の金額が給与から差し引かれます。

報酬

個人事業主やフリーランスの場合、出来高払いのことが多いでしょう。企業や徴収の義務がある個人と取引した場合は、支払時に差し引かれます。
ただし、上記で紹介した給与所得の源泉徴収税額票などはありません。

徴収税額を計算する際には、以下のように報酬額によって異なる税率を用いて算出します。

税率 報酬額
10.21% 100万円の場合
20.42% ・100万円を超える場合
・100万円を超える部分に適用

参照:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

例えば報酬が114万円だった場合の、徴収税額と実際の支払額を計算してみましょう。

手順 算出金額 計算式
1 10.21%分 100万円×10.21%=102,100円
2 20.42%分 14万円×20.42%=28,588円
3 源泉徴収税の合計 102,100円+28,588万円=130,688円
2 支払報酬額 114万円-130,688円=1,009,312円
なお税額を計算する際には、小数点が発生したり割り切れなかったりするかもしれません。国税庁は小数点以下は切り捨てと定めているので、切り捨てて計算してください。

賞与

会社・企業などの賞与も源泉徴収対象であることから、支払う前に定められた一定の金額が差し引かれます。

手順 作業内容
1 支給額を計算
2 総支給額から社会保険料等を控除 健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料
3 「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から算出 国税庁の「パンフレット・手引」内の「源泉徴収税額表関係」の項目内にて毎年最新の一覧表を公開

賞与の徴収方法は、給与の手順と同じです。

ただし参考にする一覧表は賞与分であり、給与分同様に国税庁が毎年1年分を公開しています。

退職金

退職金も徴収対象であることから、支給前に徴収税を調べて差し引かなくてはなりません。

手順 作業内容 計算式・参照方法など
1 退職所得控除額を算出 ・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
(80万円未満は80万円)
・勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
2 課税退職所得額を算出 ・計算式:(徴収前の金額-控除額)×1/2
・「控除額」は「源泉徴収のための退職所得控除額の表」を参照
3 徴収税額を算出 ・計算式:(課税退職所得額×所得税率-控除額)×102.1%
・「源泉徴収のための退職所得控除額の表」に掲載されている「退職所得の源泉徴収税額の速算表」の税率と所得額を確認
・国税庁の「パンフレット・手引」内の「源泉徴収税額表関係」の項目内にて毎年最新の税額表を公表

参照:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和6年分)|国税庁

退職金の計算方法は、給与・賞与と比較すると少し複雑です。また、徴収税額を算出する際は一般退職と障害退職によって控除額が変わるので注意してください。

源泉徴収税の納付方法

源泉徴収税は給与支払者に納税義務が発生するので、報酬を受け取った側は納税する必要がありません。

徴収した税金は会社・企業や、徴収義務のある個人がまとめて納税します。

源泉徴収税の納付期限

納付期限は徴収日の翌月10日と定められているため、原則としてそれまでに納付しなければなりません。

ただし給与支給者が常時10人未満の、納期特例制度の適用を受けようとする徴収義務者なら、事前に申請手続きを行うと以下の期間での納付が可能です。
  • 1月~6月徴収分は7月10日
  • 7月~12月徴収分は翌年1月20日
特例を受ける場合は「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を管轄の税務署に提出してください。

源泉徴収税の納付手続き

納付方法は大別すると以下の3通りです。

納付方法 内容
窓口 ・金融機関や税務署窓口を利用
・手数料不要
・領収書発行あり
コンビニ バーコード ・税務署交付のコンビニ専用納付書を使用
・最寄りのコンビニに納付書と現金を持参して納付
・手数料不要
・領収証書発行なし
・クレジットカードや電子マネーの利用不可
QRコード ・「コンビニ納付用QRコード作成専用画面 納付情報の入力」にて自宅でQRコードのPDFを作成・出力
・最寄りのコンビニに出力したQRコードと現金を持参して納付
・手数料不要
・領収証書発行なし
・クレジットカードや電子マネーの利用不可
キャッシュレス ダイレクト ・e-Taxによる口座振替
・事前に専用届出書を税務署に書面にて提出
インターネットバンキング ・インターネットバンキング口座などから納付
・税務署にて事前にe-Taxの利用開始手続きが必要
・ATM等の利用時に手数料がかかる場合あり
・領収証書発行なし
クレジットカード ・インターネットのクレジットカード支払を利用
・「国税クレジットカードお支払サイト」から納付
・83円~418円の決済手数料が必要
・領収証書発行なし
スマホアプリ ・「国税スマートフォン決済専用サイト」から納付
・Pay払いのみ(PayPay、d払い、auPay、LINEPayなど)
・決済手数料不要
・領収証書発行なし

参考:源泉所得税の納税手続|国税庁

2.年末調整

年末調整は、対象年に実施された徴収金額と本来の所得税額を比較して調整する作業のことです。対象者は給与が支払われる際に税金を事前に徴収されている従業員であり、以下のようなスケジュールで実施されます。

手順 目安となる時期 内容
源泉徴収票の提出 11月上旬~中旬 年途中で転職した従業員は前職分の源泉徴収票を勤務先に提出
会社側は年途中で退職した元従業員で源泉徴収の発行希望があった場合、発行・送付
必要書類の提出 11月中旬~下旬 会社側は以下の3つを対象従業員に配布
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・基礎控除申請書など
・保険料控除申請書
従業員は以下の書類をそろえて期限までに会社に提出
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・基礎控除申請書など
・保険料控除申請書
・住宅借入金等特別控除申請書(必要に応じて)
・控除証明書など
所得税額の算出 12月 会社側で提出された書類をもとに処理
源泉徴収票の発行 12月下旬~1月末 会社側が所得税額算出後、従業員に源泉徴収票の作成と発行
申告書類の提出 1月 会社側が各自治体等に申告書類を提出
年末調整では、配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除などの控除制度の適用が可能です。生命保険料控除・地震保険料控除などは控除証明書も添付しなければならないので、事前に準備しておきましょう。

源泉徴収票の発行

源泉徴収票は、対象年の年間所得額と所得税額が確定して徴収税額との調整・精算が完了した後に発行されます。

徴収を行った企業・会社などは従業員に源泉徴収票の発行が義務付けられており、通常なら前項目の一般的なスケジュールで紹介したように12月下旬から翌年1月末までには発行・配布される予定です。

ただし退職や発行依頼があった際には、その都度作成して渡さなければなりません。

所得税控除のなかには確定申告のみ適用可能なものもあり、その際には源泉徴収票が必要になるので保管しておきましょう。

3.年末調整済みの人の確定申告

 

所得控除のなかには、年末調整では手続きができず、確定申告でしか適用されない制度があります。

例えば医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)は利用者が多い控除制度ですが、確定申告でしか控除適用ができません。そのため年末調整終了後、勤務先から発行される源泉徴収票をもとに確定申告が必要です。

また、副業などで20万円を超える所得があった場合も確定申告をしなければなりません。

期限内に納付して延滞税は避けよう!

すべての税金には納付期限が設けられており、その期限を過ぎると延滞税が発生します。

国税庁が定めている延滞税発生の条件は、以下の通りです。

  • 確定税額を法定期限までに未完納
  • 期限後の申告(修正含む)で納税額が発生した場合
  • 更正や決定処分により納税額が発生した場合

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

なお延滞税を計算する際の税率は、納付完了期間によって以下のように異なります。

法定期限翌日を起算日として完納までの期間 税率(年率)
2カ月以内 7.3%
2カ月超 14.6%

参考:No.9205 延滞税について|国税庁

2カ月を超えると年率が倍になるので、早めに完納してください。

源泉徴収票を徹底解説!

12月下旬ごろから順次発行・配布される源泉徴収票ですが、見方や使い方や使うタイミングがわからない人もいるでしょう。

紛失した場合の対処法も含めて解説するので、参考にしてください。

源泉徴収票とは?

源泉徴収票は、1年間の収入額・納税額をして会社・企業などの勤務先が従業員に対して発行する書類です。

本来は納税者に義務付けられている申告・納税ですが、誤り・漏れなどのリスクを軽減させるために勤務先が代わりに行います。

一般的に年末調整完了後に発行されることが多く、従業員の手元に配布されるのは12月下旬〜1月下旬ごろになるでしょう。

従業員の代わりに申告・納税を行った会社・企業は、原則として源泉徴収票を発行しなければなりません。徴収対象なら契約形態に関係なく発行されるので、配布されない場合は勤務先に確認または発行依頼してください。

源泉徴収票はいつ必要?

源泉徴収票が必要になる主なケースは、以下の通りです。

  • 年途中で退職した際
  • 所得控除や税額控除など受ける際
  • 副業で20万円以上の所得がある場合

年途中で転職した場合は、新しい勤務先に前職分の源泉徴収票を提出しなければなりません。提出しなかった場合は自分で確定申告をしなければならず、その際にも必要になります。

医療費控除や税額控除は年末調整での手続きができず、確定申告でしか制度の利用ができません。申告の際に添付する必要はありませんが、徴収票に明記された金額をもとに申告書類を作成します。

副業で20万円以上の所得がある場合は確定申告が義務付けられており、その際の申告書類作成時には徴収票を参考にしなければならないので必要です。

源泉徴収票を紛失した場合

源泉徴収票を紛失した場合、勤務先に依頼すれば再発行してもらえます。

現職者だけではなく退職者の場合も同様であり、原則として依頼すると必要枚数分を無料で再発行可能です。

ただし「会社の倒産」「再発行拒否」などの理由で手に入らない場合は、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出します。届出受理完了後に税務署から行政指導などが入り、再発行してもらえるでしょう。

届出書を提出する際、給与支払明細書がある場合はコピーを添付するとスムーズに手続きが進みます。

源泉徴収票の見方

源泉徴収票の見方を解説します。

①基本情報

一番上の基本情報の項目と書かれている主な内容は以下の通りです。

項目名 記載内容
住所または居住 支払を受ける人の住所
役職名 ・支払を受ける人の役職名
・「課長」や「係長」など
氏名 ・支払を受ける人のフルネーム
・「フリガナ」欄はカタカナで明記

②給与額と源泉徴収税額

基本情報の下の段は「給与額」と「源泉徴収税額」の欄で、各項目に対して以下のような内容が明記されています。

項目名 記載内容
種別 ・支払われる金額の種類
・「給料・賞与」など
支払金額 ・勤務先が支払った年間総額
・基本給や賞与、残業代などを含む
・非課税分(通勤手当など)は対象外
給与所得控除後の金額(調整控除後) ・給与所得者の必要経費にあたる金額
・国税庁にて給与所得控除の金額設定あり
・所得金額調整控除の適用がある場合はその金額も控除
所得控除の額の合計額 ・適用可能な各所得控除の合計額
・「配偶者控除」「扶養控除」など
源泉徴収税額 ・会社が徴収した総額
・年末調整後の金額が明記

給与所得控除は給与などの総収入額によって異なり、金額や計算式は以下の通りです。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

出典:No.1410 給与所得控除|国税庁

また調整所得控除は、国税庁にて以下のように定められています。

対象者 ・本人または生計を同一とする配偶者や扶養親族が特別障害者
・扶養親族が23歳未満
計算式 (給与等の総収入額(上限1,000万円)-850万円)×10%
※1円未満は切り上げ

出典:No.1411 所得金額調整控除|国税庁

③控除額

控除額の欄を確認しましょう。

項目名 記載内容
(源泉)控除対象配偶者の有無等 「有」「従有」「老人」の該当項目に丸印
配偶者(特別)控除の額 適用される配偶者(特別)控除の金額
控除対象扶養親族の数(配偶者を除く) 「特定」「老人」「その他」の該当欄に人数
16歳未満扶養親族の数 該当する場合は人数
障害者の人数(本人を除く) 「特別」「その他」の該当欄に人数
非居住者である親族の数 該当する場合は人数
社会保険料等の金額 給料や賞与から差し引かれた社会保険料の総額
生命保険料の控除額 「一般生命保険(新旧)」「介護医療保険」「個人年金保険(支給)」の総支払金額
地震保険料の控除額 ・「地震保険料(上限5万円)」「旧長期損害保険料(上限1.5万円)」の年間総支払金額
・両方の場合は上限5万円まで
住宅借入金等特別控除の額 住宅ローンの支払済金額
「(摘要)」より下の欄は、内訳などが明記されます。
項目名 記載内容
生命保険料の全額の内訳 「新生命保険料」「旧生命保険料」「介護医療保険料」「新個人年金保険料」「旧個人年金保険料」の各控除額
住宅借入金等特別控除の額の内訳 居住開始日・ローン残高など
国民年金保険料等の金額 家族分の国民健康保険や国民年金を支払った場合の総額
旧長期損害保険料の金額 該当する場合
所得金額調整控除額 該当する場合
「未成年者」~「勤労学生」 該当する場合は丸印
中途就・退職 ・対象年で該当する場合のみ
・「就職」「退職」のいずれかに丸印
・「年」「月」「日」に数字が記載
受給者年月日 源泉徴収票を受け取る人の生年月日

④扶養家族

扶養家族の欄は以下の通りです。

項目名 記載内容
控除対象配偶者 「氏名」「配偶者の合計所得」などを明記
控除対象扶養親族 ・対象者の氏名
・「フリガナ」はカタカナ
・「区分」は海外に住んでいる場合に丸印
16歳未満の扶養親族 該当する場合に記載

⑤給与の支払者

給与支払者の欄は、基本は給与を受け取っている会社の住所・名称・電話番号が記載されます。

年途中転職者で前職分と合わせて年末調整をした場合、この欄に記載される内容は転職先の会社です。

源泉徴収票から確定申告書に転記しよう!

源泉徴収票から確定申告書への転記方法を紹介します。

確定申告書の第一表に転記

確定申告書の第一表への転記場所と内容は以下の通りです。

確定申告書 源泉徴収票の項目 その他
給与(オ) 支払金額
給与(6) 給与所得控除後の金額(調整控除後)
社会保険料控除(13) 社会保険料等の金額
生命保険料控除(15) 生命保険料の控除額
地震保険料控除(16) 地震保険料の控除額
寡婦・ひとり親控除(17)~(18) 「未成年者」~「勤労学生」の丸印を確認 丸印がある場合は各控除額を自分で計算して記載
勤労学生、障害者控除(19)~(20)
配偶者(特別)控除(21)~(22) 「控除対象配偶者」と「配偶者の合計所得」を確認 控除額を自分で計算して記載
扶養控除(23) 「控除対象扶養親族」を確認 控除額を自分で計算して記載
住宅借入金等特別控除(34) 住宅借入金等特別控除の額
源泉徴収税額(48) 源泉徴収税額
配偶者の合計所得金額(56) 配偶者の合計所得

上記一覧表は源泉徴収票を転記または参考にして記載できる確定申告の項目のみ掲載しています。

確定申告書の第二表に転記

確定申告書の第二表への転記場所と内容は以下の通りです。

確定申告書 源泉徴収票の項目 その他
所得の内訳 所得の種類 「給与」と記載
種目 「給料」と記載
給与などの支払者の「名称」及び「法人番号または所在地」等 「支払者」の「住所または所在地」及び「氏名または名称」
収入金額 支払金額
源泉徴収税額 源泉徴収税額
(13)社会保険料控除

(14)小規模企業共済等掛金控除

保険料等の種類 「源泉徴収票のとおり」と記載
支払保険料等の計 社会保険料等の金額
(15)生命保険料 「生命保険料の金額の内訳」欄の各金額を転記
(16)地震保険料 地震保険料 支払った金額を記載
旧長期損害保険料 旧長期損害保険料の金額
本人に関する事項 「未成年者」~「勤労学生」を確認
配偶者や親族に関する事項 「控除対象配偶者」と「控除対象扶養親族」

個人事業主の源泉徴収には注意が必要?

源泉徴収の対象は、給与所得者だけではありません。個人事業主も報酬が支払われる際に徴収されることがあります。その対象報酬となるのが、「源泉徴収の対象所得」で紹介した所得です。

徴収業務そのものは支払者が行うことであり、される側の個人事業主は報酬そのものに対して何らかの事務手続きをする必要はありません。

しかしいくつかの注意点があり、以下で解説するので参考にしてください。

①請求書に源泉徴収税額を記載する

個人事業主が報酬を受け取る際、基本的には受取者が請求書を支払者に発行します。

このとき、請求書には「小計(本来の支払額)」「消費税」「源泉徴収税額」「合計金額(最終的な支払額)」の4項目を設けてそれぞれの数字を明記しなければなりません。

なお徴収税額を計算する際は「源泉徴収の流れ」の「報酬」項目で解説しましたが、100万円以下と100万円超で税率が変わるので注意してください。

例えば200万円(税別)の報酬を受け取る際の請求書は、以下のように作成します。

手順 計算項目 計算の方法や式
1 小計 ・項目ごとに記載された単価を合計
・今回は200万円
2 消費税 200万円(小計)×10%=20万円
3 源泉徴収料 (100万円×10.21%)+{(200万円-100万円)×20.42%}=306,300円
4 合計金額 200万円+20万円-306,300円=1,893,700円
請求書に計算式まで明記する必要はありません。ただし、算出されたそれぞれの金額は項目を設けて明記してください。

②確定申告で源泉徴収税額を申告

個人事業主がクライアントから源泉徴収をされた場合は、確定申告時にその金額を申告しなければなりません。「申告しない」または「記載漏れ」があると税金の二重納付になってしまうからです。

なおクライアント側は、徴収した側にその金額がわかる書類を発行する義務はありません。依頼すれば支払調書を発行してもらえる可能性もありますが、これも義務ではないので断られることもあるでしょう。

報酬支払者に請求書を発行した際は、確定申告時の必要書類として必ず手元に保管しておいてください。

公的年金や原稿料など雑所得の源泉徴収

雑所得が源泉徴収の対象になることがあります。

雑所得とともに、含まれる収入の種類なども解説するので参考にしてください。

雑所得って何?

雑所得は国税庁が定める事業所得や不動産所得のような9種類のどれにも該当しない所得のことです。

国税庁では雑所得に含まれる例として、以下のようなものをあげています。

  • 公的年金等
  • 非営業用賃金の利子
  • 副業にかかる所得

参考:No.1500 雑所得|国税庁

上記の雑所得のなかには、原則として支払時に源泉徴収をすると定められているものがあり、それが後述する「公的年金等」や「原稿料・講演料」です。これら以外の雑所得については、確定申告時に納税額を申告・確定・納付します。

年金

前項目で公的年金等は、源泉徴収対象の雑所得と紹介しました。ただし、徴収対象となる支払金額は年齢によって以下のように異なります。

年齢 徴収対象となる支払金額
65歳未満 108万円以上
65歳以上 158万円以上

参考:年金から所得税および復興特別所得税が源泉徴収される対象となる人は、どのような人でしょうか。|日本年金機構

公的年金からの徴収税額の算出方法は、原則として以下の通りです。

  1. 年金総支給額から社会保険料等をマイナス
  2. 一定の控除額を差し引く
  3. 5.105%を乗じて徴収額を算出

参照:No.1600 公的年金等の課税関係|国税庁

上記の「2」は基礎控除額以外に配偶者控除や扶養者控除の適用も可能ですが、事前に「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を年金支払者に提出しなければなりません。提出を忘れた場合は、確定申告をすれば各控除の適用が受けられます。

なお公的年金の源泉徴収では年末調整は行われないため、自分で確定申告をしなければなりませんが、主に必要となるのは以下のようなケースです。

  • 公的年金等の総収入額400万円超
  • 公的年金以外の総所得額20万円超
  • 「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」未提出で適用可能な控除制度がある場合

参考:高齢者と税(年金と税)|国税庁

上記に当てはまらない場合は、確定申告をする必要はありません。

原稿料・講演料

原稿料・講演料は原則として支払時に源泉徴収が義務付けられています。

個人事業主やフリーランスの場合、これらを報酬として得る際には事業所得に分類され、雑所得ではありません。

しかし本業が会社員の人がこれらを受け取った場合は副業になり、雑所得に分類されます。所得区分は事業所得とは異なりますが、雑所得のなかでも業務に関するものは源泉徴収対象であり、原稿料・講演料はその対象です。そのため、税金が差し引かれた金額が支払われます。
なお、会社・企業の場合は年末調整をしてもらえますが、副業として得たこれらの報酬は自分で確定申告しなければなりません。副業所得が20万円以下なら申告の必要はありませんが、多くのケースでは本来の支払額よりも徴収額のほうが高いため、自分で計算してみると良いでしょう。

仮に本来の所得税額よりも徴収税額のほうが多かった場合、確定申告をすれば還付金として返金されます。

よくある質問

最後に源泉徴収にまつわるよくある質問をみてみましょう。

会社員以外も源泉徴収される?

源泉徴収の対象は、会社・企業などの勤務先から給与を受け取っている会社員だけではありません。

「源泉徴収の対象所得」で紹介した所得がある場合や、「公的年金や原稿料など雑所得の源泉徴収」で紹介した雑所得がある場合は、徴収が義務付けられているので実施されます。そのため、実際に受け取る金額は本来の支払金額よりも少なくなるので注意してください。

対象となる所得については、本記事の「源泉徴収の対象所得」と「公的年金や原稿料など雑所得の源泉徴収」で紹介しているので、参考にしてください。

個人事業主も源泉徴収される?

個人事業主も「源泉徴収の対象所得」で紹介した報酬を受け取っている場合は、実施されています。

ただし、給与所得者のように支払者側で年末調整が行われるわけではありません。個人事業主に対して実施される税額は10.21%や20.42%と高めに設定されており、本来の所得税額よりも多めに徴収されているケースが多くあります。

年間総所得額にもよりますが、確定申告後に超過分が還付される可能性があるので、仮に所得額が48万円を超えていなくても確定申告をしておくと良いでしょう。

なお支払者側は源泉徴収票の発行義務がなく、支払調書を発行してくれることもありますが、これも発行義務がありません。確定申告時には徴収額と正式な支払者名が必要になるので、事前に確認しておいてください。

源泉徴収と年末調整は何が違うの?

源泉徴収と年末調整は基本的にはセットで行われるものであり、「源泉徴収と年末調整はセット」内で解説しています。

ただし前述したように個人事業主の場合は、支払者側で年末調整が行われません。

徴収や年末調整の流れは「源泉徴収の流れ」で解説しているので、そちらを確認してください。

源泉徴収は誰が行うの?

源泉徴収は給与や報酬支払者が行い、納税義務も支払者に発生します。

なお徴収のタイミングは、原則として給与・報酬などの支払が実行されるときです。

ただし配当金や分配金は一定期間が過ぎると支払が実行されたとみなされ、支払が行われなくても徴収されます。

年末調整は誰が行うの?

年末調整の事務作業は会社・企業などの給与支払者が行いますが、申請書の記入や必要書類の提出は従業員が行わなければなりません。

年末調整の手順や誰が何をするのかなどの詳細は、「年末調整」で紹介しているので参考にしてください。

まとめ

源泉徴収や発行される徴収票の見方・確定申告書への転記方法などを紹介しました。

給与・報酬などを受け取る際に税金が徴収されている場合は、支払者が企業・会社なら源泉徴収票が発行されます。この書類は、税額控除や一部の所得控除を適用させる際の確定申告時に必要です。

申告書をする際に必要な内容の多くは、徴収票に明記されています。本記事では転記方法も紹介しているので、参考にしてください。

なお源泉徴収は給与所得者だけではなく、年金受給者や個人事業主でも実施されることがあります。その際は年末調整は行われないので、年間総所得額にもよりますが、確定申告を行いましょう。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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