事業を立ち上げると法人に関連する税金の支払い義務が生じます。しかし、ここで注意したいのが個人事業主と法人の違いです。
「事業を立ち上げる」という観点から法人も個人事業主も同じと考える人がいるようですが、税金で見た場合には大きな違いがあります。
本記事では法人と個人事業主の税金の違いを、種類・税率・計算方法などで比較して解説するので、参考にしてください。
法人にかかる税金の種類
法人にかかる税金として、以下のようなものがあげられます。
- 法人税
- 法人事業税
- 法人住民税(法人税割・均等割)
- 特別法人事業税
- 消費税・地方消費税
ほかにも会社・企業の規模によっては配当金や利子などが発生し、それに対して所得税を支払うケースもあり、上記で紹介した税金がすべてではありません。
ここでは配当金や利子に関する税金については割愛し、上記それぞれの税金についてのみ詳しくみていきましょう。
法人税
法人税とは、事業活動で得た所得に対して課税される税金で会社版の所得税です。
対象となるのは法人税法に基づいた国内に本店などの主たる事務所が存在する内国法人と、内国法人以外の外国法人ですが、ここでは内国法人に注目して解説します。
法人税の課税対象となる法人は、主に以下の通りです。
普通法人 | その他 |
・株式会社 ・合同会社 ・合名会社 ・合資会社 ・有限会社 ・医療法人 ・協業組合など |
・協同組合 ・信用金庫 ・一般社団法人 ・NPO法人 ・学校法人 ・PTA ・町内会 ・マンション管理組合など |
法人税は、以下の計算式で求められます。
なお、上記計算式に用いられる税率は区分や開業年度によって以下のように定められています。
区分 | 開業年度ごと | ||||||
2016年4月1日以降 | 2018年4月1日以降 | 2019年4月1日以降 | 2022年4月1日以降 | ||||
普通法人 | 資本金1億円以下の法人など | 年800万円以下の部分 | 適用除外事業者以外の法人 | 15% | 15% | 15% | 15% |
適用除外事業者 | 19% | 19% | |||||
年800万円超の部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
上記以外の普通法人 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
協同組合等 | 年800万円以下の部分 | 15% | 15% | 15% | 15% | ||
年800万円超の部分 | 19% | 19% | 19% | 19% | |||
公益法人等 | 公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人 | 収益事業から生じたが所得 | 年800万円以下の部分 | 15% | 15% | 15% | 15% |
年800万円超の部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
公益法人とみなされているもの | 年800万円以下の部分 | 15% | 15% | 15% | 15% | ||
年800万円超の部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
上記以外の公益法人等 | 年800万円以下の部分 | 15% | 15% | 15% | 15% | ||
年800万円超の部分 | 19% | 19% | 19% | 19% | |||
人格なき社団等 | 年800万円以下の部分 | 15% | 15% | 15% | 15% | ||
年800万円超の部分 | 23.40% | 23.20% | 23.20% | 23.20% | |||
特定の医療法人 | 年800万円以下の部分 | 適用除外事業者以外 | 15% | 15% | 15% | 15% | |
適用除外事業者 | 19% | 19% | |||||
年800万円超の部分 | 19% | 19% | 19% | 19% |
また法人にも税額控除の制度が設けられており、要件を満たすことで適用が可能です。法人税に関する主な税額控除を、その内容とともに紹介します。
税額控除 | 内容 |
所得税額の控除 | ・所得税法の既定のもとで源泉徴収された所得税 ・対象は利息、配当等 |
外国税額の控除 | ・外国税額のうち租税条約等で一定の計算をした金額 ・外国で生じた所得にかかる源泉税 ・外国支店で納税した法人税等 |
試験研究を行った場合 | ・製品の改良などを目的に発生した試験研究費 ・製品製造や技術の改良・考案発明にかかる試験研究費など |
高度省エネルギー増進施設等を取得 | ・高度省エネルギー増進設備(産業用ヒートポンプなど)を取得した場合 ・所得価格の7%相当が特別控除 ・資本金または出資額が1億円以下の法人 ・資本金や出資を有しない法人で、従業員数1,000人以下の法人 ・2019年4月1日が開始年度より開始前3年以内に各事業年度の所得額が年平均15億円以下の法人 |
上記の税額控除は一部であり、これら以外にも条件を満たすことで法人に適用できる制度はありますが、要件などが細かく定められているので税理士などに相談したほうが良いでしょう。
法人事業税
法人事業税とは、事業活動のなかで利用する道路・消防・警察などのさまざまな公共の施設やサービスの維持費や運営費の一部を負担する目的で課税される地方税です。
法人事業税は事業所得に対して課す税金であるため、事業所得が赤字の場合は納税義務が発生しません。原則として事業を行う法人すべてに納税義務がありますが、以下のように一部例外もあります。
法人に種類 | 法人例 | 課税有無 |
普通法人 | 株式会社、有限会社、合資会社、医療法人、企業組合など | 有 |
協同組合など | 労働者協同組合、信用金庫など | 有 |
公益法人 | 宗教法人、財団法人、社団法人、学校法人などの収益事業 | 有 |
人格のない社団 | PTA、実行委員会など | 収益事業による収益のみ課税対象 |
公共法人 | 地方公共法人、国立大学法人など | 無 |
法人事業税の景観式は、以下の通りです。
税率は法人の種類・課税所得・事業開始年度によって区分けされますが、税率そのものは都道府県によって異なり、一律ではありません。計算する際は事前に自治体のホームページなどで確認してください。
なお法人事業税は前述した法人税とともに確定申告を行って所得額や税額を確定させ、納税します。
申告納税期間は法人税とともに会計期末から2カ月以内となっていますが、事業年度6カ月超かつ前年分の法人税額が20万円超の普通法人は中間申告・納付も必要になるので注意してください。
法人住民税
法人住民税は、法人が所属する地域の公的サービス・施設の整備などを行うことを目的に課税される地方税です。その中身は法人税割と均等割の2種類から成り立っており、それぞれの税額を合算して法人住民税として納税します。
「法人税割」と「均等割」のそれぞれの内容や計算方法などをみていきましょう。
法人税割
法人税割は、納税する法人税額をもとに計算して算出します。その計算式は以下の通りです。
法人税割税率には国が定める「標準税率」がありますが、あくまで目安であり、以下の上限内で各自治体が自由に決められます。
都道府県民税 | 市町村民税 | |
標準税率 | 1.0% | 6.0% |
上限税率 | 2.0% | 8.4% |
例えば東京都は市町村と23区内で異なる税率を採用しており、以下がその税率です。
区分 | 不均一課税適用法人の税率 | 超過税率 |
23区内 | 1.0%(都道府県民税)+6.0%(市町村民税) =7.0% |
2.0%(都道府県民税)+8.4%(市町村民税) =10.4% |
23区内以外の市町村 | 1.0% | 2.0% |
参考:法人事業税・法人都民税 | 税金の種類 | 東京都主税局
超過税率は資本金1億円超または法人税額1,000万円超の場合に適用される税率で、それ以外の場合は標準税率で計算されます。
このように自治体によって独自の税率を設定している場合があるので、事前に確認してください。
均等割
均等割は、企業の従業員・資本金額などをもとに計算する方法です。
所得割は法人事業所得が赤字の場合は発生しませんが、均等割は課税所得に影響しないため、赤字であっても納税しなければなりません。
総務省が定める法人住民税均等割の区分と税額は以下の通りです。
資本金額 | 都道府県民税 | 市町村民税
(従業者数50人超) |
市町村民税
(従業者数50人以下) |
1千万円以下 | 2万円 | 12万円 | 5万円 |
1万円超1億円以下 | 5万円 | 15万円 | 13万円 |
1億円超10億円以下 | 13万円 | 40万円 | 16万円 |
10億円超50万円以下 | 54万円 | 175万円 | 41万円 |
50億円超 | 80万円 | 300万円 | 41万円 |
ただし東京都の場合は特別区(23区)があるため、独自の税率を設定しています。
法人区分 | 特別区内のみ | 特別区と市町村 | 市町村のみ | |||
道府県分+特別区分 | 特別区分 | 道府県分 | 特別区分 | 道府県分 | ||
1千万円以上 | 50人以下 | 7万円 | 5万円 | 2万円 | 5万円 | 2万円 |
50人超 | 14万円 | 12万円 | 12万円 | |||
1千万円超1億円以下 | 50人以下 | 18万円 | 13万円 | 5万円 | 13万円 | 5万円 |
50人超 | 20万円 | 15万円 | 15万円 | |||
1億円超10億円以下 | 50人以下 | 29万円 | 16万円 | 13万円 | 16万円 | 13万円 |
50人超 | 53万円 | 40万円 | 40万円 | |||
10億円超50億円以下 | 50人以下 | 95万円 | 41万円 | 54万円 | 41万円 | 54万円 |
50人超 | 229万円 | 175万円 | 175万円 | |||
50億円超 | 50人以下 | 121万円 | 41万円 | 80万円 | 41万円 | 80万円 |
50人超 | 380万円 | 300万円 | 300万円 |
出典:均等割額の計算に関する明細書(第6号様式別表4の3)記載の手引|東京都主税局
上記は公益法人や公共法人は省略しているので注意してください。
特別法人事業税
特別法人事業税とは、法人事業税の税率が引き下げられたことで2019年10月1日以降の事業開始年度分から適用されることになった国税です。税金の分類としては国税になりますが、申告や納付は法人事業税などと一緒に確定申告で行います。
特別法人事業税は法人事業税に税率をかけて計算しますが、その税率は以下の通りです。
課税標準 | 法人の種類 | 税率 | ||
2022年4月以降に開始する事業年度 | 2020年4月1日から2022年3月31日までに開始する事業年度 | 2019年10月1日から2020年3月31日までに開始する事業年度 | ||
基準法人所得割額 | 外形標準課税法人・特別法人以外 | 37% | ||
外形標準課税法人 | 260% | |||
特別法人 | 34.5% | |||
基準法人収入割額 | 小売電気事業等、発電事業等、特定卸供給事業または特定ガス供給事業を行う法人以外 | 30% | ||
小売電気事業等、発電事業等又は特定卸供給事業を行う法人 | 40% | 30% | ||
特定ガス供給業を行う法人 | 62.5% | 30% |
例えば普通法人で法人事業税が20万円だった場合、以下のように算出されます。
20万円(法人事業税)×37%=7.4万円
法人事業税の算出方法については、「法人事業税」の項目で紹介しているので参考にしてください。
消費税・地方消費税
消費税・地方消費税は、あらゆる商品・製品・サービスに課せられる税金です。消費税は国税ですが、地方消費税は地域の福祉社会に充てられる税金であるため、地方税に分類されます。
消費税は国税の消費税と地方税の地方消費税を合算した税率で製品やサービスにかけられており、その割合は以下の通りです。
消費税の種類 | 消費税率(国税) | 地方消費税率(地方税) |
標準税率 | 7.8% | 2.2% |
軽減税率 | 6.24% | 1.76% |
法人の場合、消費税の計算方法は原則課税と簡易課税の2通りがあります。
計算方法 | 条件 | 計算式 |
原則課税 | インボイスが必要 | 売上消費税額(課税売上高×10%または8%)-仕入れ等にかかる消費税額(課税仕入高×10%または8%) |
簡易課税 | インボイス不要 | 売上消費税額(10%または8%)-仕入等にかかる消費税額(課税仕入高×みなし仕入れ率) |
みなし仕入れ率とは、事業区分によって定められている税率のことです。
事業区分 | 事業例 | みなし仕入れ率 |
第1種事業 | 卸売業 | 90% |
第2種事業 | 小売業 | 80% |
第3種事業 | 農業、林業、漁業、建設業など | 70% |
第4種事業 | 第1~3種事業と第5種事業、第6種事業に当てはまらない事業 | 60% |
第5種事業 | 金融・保険業、運輸通信業、サービス業 | 50% |
第6種事業 | 不動産業 | 40% |
法人の場合の消費税計算は、単純に売上高から総仕入額を差し引けば良いものではありません。経費や特例なども関係するので、計算時には注意してください。
個人事業主にかかる税金の種類
個人事業主にかかる税金の種類は、主に以下の5種類です。
- 所得税
- 個人住民税
- 個人事業税
- 復興特別所得税
- 消費税・地方消費税
それぞれの税金について詳しくみていきましょう。
所得税
個人事業主が負担する所得税とは、主に事業所得に対して発生する税金です。
個人事業主として関連する所得としては、主に以下のようなものがあげられます。
所得の種類 | 内容 | 計算式 |
事業所得 | 個人事業主としての事業活動で得た所得 | 事業収入-必要経費 |
給与所得 | 個人事業主としての事業とは別に給与を得た場合 | 給与所得-給与所得控除 |
不動産所得 | ・不動産で得た収入や利益 ・アパートなどの家賃収入 ・貸駐車場の使用料など |
不動産関連の収入-不動産関連の支出(取得額など) |
譲渡所得(土地など) | 土地や家屋を譲渡した場合に得た所得 | 総収入額-(取得費+譲渡にかかった費用)-特別控除額 |
利子所得 | ・収益の分配にかかる所得 ・預貯金や公社債の利子や信託の分配金など |
利子などで得た収入の総額 |
配当所得 | ・株式や投資信託などで得る所得 ・配当金や剰余金分配や基金利息など |
配当収入-株式取得などを取得するための借入金利子 |
譲渡所得(株式など) | ・株式などを譲渡した際に得る所得 ・株式や投資信託の受益権など |
総譲渡価額-必要経費(取得費や委託手数料など) |
山林所得 | ・山林伐採や立木での譲渡で得た所得 ・伐採後の木材の譲渡など |
山林所得該当分の総収益-必要経費-特別控除 |
一時所得 | ・継続的なものではなく一時的に得た所得 ・懸賞金など |
総収益額-収入を得るためにかかった総支出額-特別控除 |
雑所得(業務やその他) | ・上記にあげたものに分類されない事業に関する所得 ・事業には関係のないFXで得た収益など |
総収益額-総支出額 |
上記にあげたものはすべて個人事業主として営んでいる事業に関連するものの場合のみですが一部であり、すべてではありません。事業とは関係のない個人的な収入は、雑所得や一般所得として計上します。
個人事業主の所得税を算出する際に使用する計算式は、以下の通りです。
- 総所得額=総収入額-年間必要経費
- 課税所得額=総所得額-所得控除額
- 基準所得税額=課税所得額×税率-税額控除額
基準所得税額を算出する際に使用される税額や税額控除額は、課税所得額の金額に応じて以下のように定められています。
課税所得額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円まで | 5% | - |
1,950,000円~3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
さらに「3」で計算した基準所得税額から復興特別所得税額を算出して合算し、支払済の現世印徴収税額などを差し引いたものが支払うべき所得税額です。
なお復興特別所得税額については後述するので、そちらもあわせて参考にしてください。
個人住民税
個人住民税は、その地域に住む人のなかで一定の所得があった場合に負担する地域税です。
個人住民税も法人住民税同様に均等割と所得割の2段階システムになっており、所得割は所得に応じて、均等割は所得に関係なく平等に負担します。
均等割の負担額は、以下の通りです。
種類 | 都道府県民税 | 市町村民税 | 森林環境税(国税) | 合計 |
金額 | 1,000円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,000円 |
森林環境税は2024年度から導入された森林の整備や促進の施策に充てるための財源確保を目的とした国税ですが、住民税に加算して徴収されます。
一方の所得割を算出する際の計算式は、以下の通りです。
(1年間の事業所得の総額-所得控除)×10%(標準税率)-税額控除の総額
上記の標準税率とは、国が定めている税率のことで内訳は以下のように設定されています。
道府県民税 | 市町村民税 | |
政令指定都市 | 2% | 8% |
上記以外 | 4% | 6% |
東京都在住で、所得金額が700万円(控除額70万円)の場合をみてみましょう。
住民税 | 計算例 |
所得割 | (700万円-70万円)×10%=63万円 |
均等割 | 1,000円(都道府県民税)+3,000円(市町村民税)+1,000円(森林環境税)=5,000円 |
合計 | 63万円+5,000円=63.5万円 |
基本的には自分で計算することはなく、計算済みの納付書が送られてきますが、目安となる金額を知るために計算する場合は事前に確認してください。
個人事業税
個人事業税とは、個人事業主が支払う地方税のひとつです。確定申告をすることで、自治体が定める対象業種での事業活動を行う納税者に対して住民税とともに事業税の納付書も送られてきます。
個人事業税={(年間総収入-必要経費)-各種控除-290万円(事業主控除)}×税率
個人事業税は上記の計算式で算出しますが、そのなかの「事業主控除」とは個人事業主として1年間事業を営んでいる場合に一律290万円が差し引かれる制度です。
一方の税率は対応業種によって以下のように異なります。
区分 | 税率 | 事業種 |
第1種事業(全37業種) | 5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、飲食店業、運送業、駐車場業、不動段貸付業、旅館業など |
第2種事業(全3業種) | 4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第3種事業(全30業種) | 5% | 医業、歯科医業、士業全般、理容業、美容業、デザイン業、コンサルタント業、クリーニング業、公衆浴場業、歯科衛生士業、薬剤師業など |
3% | 装蹄師業、あんま・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業 |
個人事業主で事業種が第1種(税率5%)、年間総収入から必要経費を差し引いた所得額600万円(特別控除65万円)の場合の個人事業税をみてみましょう。
年間総所得額が290万円以下であった場合は、課税額が0円になるので支払義務は発生しません。
復興特別所得税
復興特別所得税とは2011年3月11日に発生した東日本大震災を受け、復興支援を目的に2013年に新設された国税です。徴収期間は2013年1月1日〜2037年12月31日までとされており、基準所得税額に2.1%をかけて算出します。
徴収方法は、基準所得税額に上乗せされて確定申告時に申告・納税するため、復興特別所得税のみを金融機関やコンビニなどで納付書を持参して納める必要はありません。
消費税・地方消費税
消費税はほとんどの製品・商品・取引・サービスに課税され、消費者が負担して事業者が納税する税金です。
個人事業主は消費税込みの売上を収益として受け取る可能性があり、その場合は預かった消費税を取引先の代わりに納税しなければなりません。
ただし以下の条件に該当する場合は免除されます。
- 2年前の1月1日~12月31日までの課税売上高が1,000万円以下
- 適格請求書発行事業者に未登録
- 前年1月1日~6月30日までの課税売上高が1,000万円以下
例えば2020年の売上高が1,000万円を超えなかった場合、2022年の消費税納税義務は発生しません。
消費税の計算方法は「一般課税」と「簡易課税」の2通りがあります。
計算方法 | 計算式 | |
一般課税 | 標準税率 | 受取消費税×10%-支払済消費税×10% |
軽減税率 | 受取消費税×8%-支払済消費税×8% | |
簡易課税 | 課税売上高×10%(仕入総額×10%×みなし仕入れ率) |
簡易課税は、2年前の1月1日〜12月31日の売上高が5,000万円以下の場合にのみ選択が可能です。
課税売上高1,100万円、課税仕入高700万円の場合を標準税率でみてみましょう。
なお、みなし仕入れ率については「法人にかかる税金の種類」の「消費税・地方消費税」で紹介しているので、そちらを参考にしてください。
その他税金
その他の税金としてあげられる主な税金は、以下の2つです。
- 自動車税
- 固定資産税
これらは法人または個人事業主で必ず発生する税金ではなく、対象の所有物がある場合に発生します。
それぞれの税金について確認しましょう。
自動車税
自動車税とは、4月1日時点で自動車を所有している人に納税義務が発生する地方税です。なお法人や個人事業主は、それぞれ事業用として車両を利用している場合に限り、自動車税を経費として計上できます。
経理処理する場合は、「租税公課」の勘定科目を利用しますが、自動車税は車両の維持や管理にかかると判断できる場合もあるため、「車両運搬」の勘定科目を利用しても問題ありません。
ただし自動車税を納付し忘れた際に発生する延滞税などは経費計上できないので、注意してください。
固定資産税
固定資産税は、土地・家屋などを所有している場合に発生する税金です。対象は土地・家屋・償却資産の3種類であり、償却資産としては機械や器具などがあげられます。
法人や個人事業主が事業に関連するものとして土地・家屋・償却資産を保有している場合、それらに課税される固定資産税は経費計上が可能です。
個人事業主の場合、自宅で事業を営んでいる人もいるでしょう。その場合は固定資産税を家事按分して経費計上します。
なお経理処理する際の勘定科目は「租税公課」を使用してください。
固定資産税とは?固定資産税が上がる要因についても詳しく解説!
法人税と消費税の仕訳事例
法人税と消費税は、どのタイミングで経理処理をするかで使用する勘定科目や仕訳方法が異なります。
そこでそれぞれのタイミング別の仕訳方法をみていきましょう。
法人税
法人税の仕訳をするタイミングは「決算時」「納付時」「中間納付時」の3通りです。
法人税の具体的な内容は、「法人税」「地方法人税」「法人事業税所得割」「法人事業税資本割」「法人事業税付加価値割」「法人住民税」の6種類あります。これらを以下の条件で仮定して経理処理を行ってみましょう。
【条件】
・「法人税」「地方法人税」「法人住民税」の合計金額は2,000円
・「法人事業税所得割」は500円
・「法人事業税資本割」「法人事業税付加価値割」の合計は700円
借方 | 貸方 | ||
法人税等 | 2,500 | 未払法人税等 | 2,000 |
未払事業税 | 300 |
※未払法人税等=法人税+地方法人税+法人住民税
※未払事業税=法人事業税所得割
♦「法人事業税資本割」と「法人事業税付加価値割」の仕訳は以下の通り
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 700 | 未払法人税等 | 700 |
※租税公課=法人事業税資本割+法人事業税付加価値割
♦決算時に「未払法人税等」と「未払事業税」として計上した税金を納付する場合の仕訳は以下の通り
借方 | 貸方 | ||
未払法人税等 | 2,700 | 現金 | 3,000円 |
未払事業税 | 300 |
※未払法人税等=法人税+地方法人税+法人住民税+法人事業税資本割+法人事業税付加価値割
中間納付をする際の法人税等の仕訳にはさまざまな方法があり、一概にどれが正しいとはいえません。会社・企業によって仕訳の方法は異なるので確認してください。
ここでは3つの方法を紹介します。
方式 | 借方勘定科目 | 貸方勘定科目 |
損金経理方式 | 法人税等 | 現金 |
仮払経理方式 | 仮払経理方式 | 現金 |
納税充当金方式 | 未払法人税等 | 現金 |
上記一覧表のように、仕訳方式によって借方の勘定科目が異なるので注意しましょう。
消費税
消費税も法人税同様に決算時・納付時・中間納付時の3通りの納付タイミングがあります。また消費税の会計処理の方式は「税込方式」「税抜方式」の2つがあり、会計処理方式によって使用する勘定科目が異なります。
♦決算時のそれぞれの仕訳方式は以下の通り
方式 | 借方勘定科目 | 貸方勘定科目 |
税込方式 | 租税公課 | 未払消費税 |
税抜方式 | 借受消費税 | 仮払消費税 |
未払消費税等 |
借受消費税で処理する場合、貸方勘定科目で仮払消費税を計上して相殺しますが、差額が生じます。その差額分を「未払消費税等」で計上して後日納付する処理を行うのが一般的です。
♦消費税納付時の仕訳は以下の通り
方式 | 借方勘定科目 | 貸方勘定科目 |
税込方式・税抜方式 | 未払消費税等 | 現金 |
納付時の仕訳方法は「税込方式」「税抜方式」どちらも変わりません。
♦中間納付時の仕訳方法は以下の通り
方式 | 借方勘定科目 | 貸方勘定科目 |
税込方式 | 租税公課 | 現金 |
税抜方式① | 未払消費税等 | 現金 |
税抜方式② | 仮払消費税 | 現金 |
税抜方式で仕訳処理を行う場合、借方勘定科目は「未払消費税等」と「仮払消費税」のいずれかを使用します。
法人税でも扱う納税証明書とは?
納税証明書とは、納税の有無・納税した金額などが明記された書類のことです。金融機関への融資依頼や補助金申請を行う際には、納税証明書の提出を求められます。
税金には国税・都道府県税・市町村税の3種類があり、それぞれの納税先は国・県・市町村と同じではありません。納税証明書も納税した税金の種類によって発行元が異なるため、請求依頼をする際にはどの税金についての証明書なのかを確認したうえで、正しい発行元に請求しましょう。
また納税証明書と混同されがちな書類として、課税証明書と所得証明書があります。
証明書の種類 | 内容 | 発行元や請求先 |
納税証明書 | 納税の有無や納税金額などが明記 | 税金の種類によって国・県・市町村と異なる |
課税証明書 | ・1月1日~12月31日までの所得に基づいた課税内容証明書 ・収入額や所得額、所得控除額などに加えて住民税の課税額も明記 |
自治体 |
所得証明書 | ・1月1日~12月31日までの所得額や内訳が明記された書類 ・住民税の課税額の明記は無し |
自治体 |
これら3種類の書類は似た部分も多数あるため、混乱する人もいるかもしれません。上記の証明書の提出を求められた場合は、どの書類のことを指しているのか確認してから用意をして提出しましょう。
国税の納税証明書の種類と主な記載事項
納税証明書の発行元は税金の種類によって国・県・市町村と異なりますが、そのなかでも国が発行する国税の納税証明書には6種類あります。
納税証明書の種類 | 内容 |
納税証明書「その1」 | 納付すべき税額、納付済税額及び未納税額など |
納税証明書「その2」 | 「申告所得税及復興特別所得税」または「法人税」の所得金額 |
納税証明書「その3」 | 未納税額がないこと |
納税証明書「その3の2」 | 「申告所得税及復興所得税」と「消費税及地方消費税」の未納税額がないこと(個人) |
納税証明書「その3の3」 | 「法人税」と「消費税及地方消費税」の未納税額がないこと(法人) |
納税証明書「その4」 | 証明を受けようとする期間中に滞納処分を受けたことがないこと |
このように証明できる内容がすべて異なるため、提出が必要な場合はどのような内容を証明する納税証明書が必要なのか、証明書の種類・名称とともに確認してください。
法人の申告漏れ、納税遅延への罰則
法人が税金の申告漏れ・納税遅延をした場合には、以下のような罰則が課せられます。
- 延滞税
- 各種加算税
- 青色申告の取り消し
上記の罰則とあわせて滞納処分の猶予についても解説するので、参考にしてください。
延滞税
延滞税とは、定められた期限までに税金が納付されない場合に課せられる罰則です。
国税庁では、延滞税がかかる場合として以下のようなケースをあげています。
- 申告などで確定した税額を法定納付期限までに未完納の場合
- 期限後に申告書または修正申告書を提出し、納付義務がある税額がある場合
- 更正または決定処分を受けて、納付義務がある税額がある場合
上記いずれのケースでも、法定納期限の翌日から納付完了日までの延滞税を納めなければなりません。
延滞税の基本的な計算式は以下の通りです。
ただし実際には納付期限の翌日から2カ月を境に税率が異なるため、2カ月を超えた場合は2カ月を経過するまでと2カ月を経過した日以降とで分けて計算しなければなりません。
原則 | 特例 | ||
納期限の翌日から2カ月を経過するまで | 年7.3% | 2022年1月1日~2024年12月31日まで | 年2.4% |
2021年1月1日~2021年12月31日まで | 年2.5% | ||
納期限の翌日から2カ月を経過した日以降 | 年14.6% | 2022年1月1日~2024年12月31日まで | 年8.7% |
2021年1月1日~2021年12月31日まで | 年8.8% |
また、計算時に発生した100円未満は切り捨てになる点も注意してください。
各種加算税
税金の申告漏れや納税延滞などをすると、延滞税以外に以下のような加算税も課せられます。
加算税の種類 | 適用 | 税率・計算式 |
過少申告加算税 | ・確定申告時に本来の申告納税額よりも過少だった場合 ・国税通則法の第65条にて定義 ・納税調査前の自己申告の場合は対象外 ・加算税が5,000円未満だった場合は対象外 |
・50万円までの税額×10% ・50万円を超える税額×15% |
無申告加算税 | ・申告が必要な場合で期限内に申告をしなかった場合 ・税務調査後の申告が対象 |
・追加徴収税額×税率 ・50万円以下の部分の税率:15% ・50万円超300万円以下の部分の税率:20% ・300万円超の部分の税率:30% |
不納付加算税 | ・源泉所得税を納期限までに納付しなかった場合 ・自主的な納付でも加算対象 |
・未納分の源泉所得税×税率 ・自主納付の場合の税率:5% ・税務調査後の税率:10% |
重加算税 | ・隠ぺいなどの不正事実があったと判断される場合 ・二重帳簿や書類の改ざんや隠匿や破棄など |
・不足税額×税率 ・過少申告加算税または不納付加算税の代わりの場合の税率:35% ・無申告加算税の代わりの場合の税率:40% |
加算税は納税調査の前後で税率が変わることが多いので、気づいた時点で納税するようにしましょう。
青色申告の取り消し
税金の申告漏れや納税遅延などを行うと、青色申告が取り消される可能性があります。
法人が青色申告をした場合に得られるメリットは以下の通りです。
- 30万円未満の減価償却資産は一括経費計上が可能
- 欠損金繰越による法人税の還付
- 欠損金の繰越控除
上記のメリットを踏まえたうえで、青色申告が取り消された場合のデメリットを確認しましょう。
- 少額減価償却資産の特例が受けられなくなる
- 赤字の繰越・繰戻ができなくなる
上記のデメリットは、先に紹介したメリットがすべて取り消されることを意味しています。
滞納処分の猶予
以下の条件に当てはまる場合は、滞納処分の猶予が受けられます。
- 財産が災害や盗難にあったこと
- 納税者本人や家族が病気や負傷をしたこと
- 事業を廃業・休業したこと
- 事業が著しい損害を受けたこと
- 1~4に類する事実があったこと
- 本来の期限から1年以上経過後に、修正申告などで納税額が確定したこと
- 1~6の猶予該当事実に基づき、納税者が納付すべき国税を一時に納付できないと認められること
- 申請書が提出されていること(6の場合は納期限までに提出)
- 原則として担保の提供があること
なお猶予期間は1年の範囲内で、申請者の財産状況などに応じて完納できると認められる期間です。やむを得ない理由があると認められれば、さらに最長2年の範囲内で延長が認められる場合もあります。
まとめ
法人と個人事業主の税金の違いなどを解説しました。
個人事業主よりも法人のほうが税金の種類も多く、金額も高くなるので、法人成りをした際には個人事業主の間隔で税金関連の処理をするとミスをする可能性があります。
また申告ミスや納税漏れをすると、延滞税などのペナルティ対象になるので注意が必要です。
税金のことでわからないまたは不安に感じることがある場合は、税理士など税金の専門家に相談しましょう。
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