法人は所得税の代わりに法人税の申告・納税が必要であり、その際に用いられることが多い申告方法が青色申告です。
確定申告の方法には青色・白色の2通りがあり、法人も個人同様にどちらを採用するか選択できます。しかし実際には白色申告を選択する法人は少ないでしょう。

本記事では法人税の青色申告全般について解説します。白色申告との違い・青色申告のメリット・申告の流れなどを網羅するので、参考にしてください。
青色申告とは?
青色申告とは確定申告のひとつであり、白色申告と比較されることの多い方法でもあります。
青色申告には対象者が限定されており、どのような所得に対しても適用できるわけではありません。国税庁で公表されている青色申告対象の所得の種類は以下の3つです。
所得の種類
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概要
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不動産所得 | ・土地や建物などの不動産貸付(賃貸料・家賃収入など) ・借地権など権利設定および貸付 ・船舶や航空機の貸付 ・不動産売却益は対象外 |
事業所得 | ・事業活動によって得られる所得 ・小売業、サービス業、卸売業、漁業、製造業、農業、その他の事業が対象 |
山林所得 | ・山林の伐採や立木の譲渡によって得た所得 ・山林取得5年以内の譲渡所得については対象外 |
(出典:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁、No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁、No.1480 山林所得|国税庁)
上記3種類の年間所得が発生かつ青色申告承認申請書を管轄する税務署に事前提出していれば、確定申告の申告書類を青色申告として処理してもらえます。
法人も青色申告できる?
青色申告の主な条件は以下の通りです。
2.青色申告承認申請書の事前提出あり
3.法定期限内に申告・納税を完了
上記3つの条件を満たしていれば、法人・個人事業主・フリーランスなどの事業形態に制限はありません。
白色申告との違いは?
確定申告には青色申告以外に白色申告もありますが、2つの主な違いは以下の通りです。
違い
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青色申告
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白色申告
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所得の種類の制限 | あり | なし |
事前申請の有無 | あり | なし |
節税関連のメリット | 多い | 少ない |
記帳方法 | 複式簿記 | 単式簿記 |
白色申告には対象となる所得の制限がなく、雑収入や会社員の副業収入などの申告・納税を行う際にも申告書類を提出すると白色申告として処理されます。また、税務署に事前申請が不要な点も青色申告との違いとしてあげられるでしょう。
法人税を青色申告にする際の主なメリットについては次の項目で解説するので、そちらもあわせて参考にしてください。
▼ 白色申告の申請方法やメリットについて詳しく知りたい方。

▼ 青色申告の申請方法やメリットについて詳しく知りたい方はこちら。

法人税を青色申告する主なメリット
法人税の申告を青色申告で行う際に発生する主なメリットは、以下の通りです。
2.欠損金繰戻しによる還付金
3.少額減価償却資産の全額費用計上
ほかにも、青色申告を行う中小企業が機械などを購入した際に適用される特別償却または税額控除などがありますが、ここでは上記3つのメリットを詳しく確認していきましょう。
1,欠損金の繰越控除
法人税の青色申告では、赤字(欠損金)の各事業年度の所得金額への繰越控除が可能です。この制度の適用を受けるためには、以下の条件を満たさなければなりません。
2.欠損金(赤字)が生じた事業年度において青色申告書を提出
(参考:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁)
上記の条件を満たしていれば原則として欠損金(赤字)が発生した翌事業年度を起算日として10年の繰越が認められます。

例えば2020年度に1,000万円の赤字が発生したとしましょう。2021年度と2022年度の事業所得はいずれも500万円の黒字でした。この場合それぞれの黒字分を2020年度に発生した赤字で相殺できるので、法人税の納税義務は発生しません。
2,欠損金の繰戻しによる還付
欠損金の繰戻しによる還付とは、欠損金(赤字)が生じた年度以前の事業年度に繰戻しを行い、黒字と相殺して納税済みの法人税を還付する制度のことです。適用を受ける際には、以下の条件を満たさなければなりません。
2.青色申告書を提出する事業年度の欠損金(赤字)
3.欠損金の繰越控除を未適用
例えば2022年度後期に500万円の赤字が発生したとしましょう。前期で1,000万円の黒字が発生していた場合、前期分の黒字を後期分の赤字で相殺して納税済み法人税の超過分を還付金として受け取ることが可能です。
前項目で紹介した繰越控除と還付の併用は原則として認められていません。
3,30万円未満の減価償却資産を全額費用にできる
原則として、10万円以上または1年以上の耐用年数が認められる資産については減価償却を行わなければなりません。
しかし以下に掲げる条件を満たす場合のみ、全額の費用計上が可能です。
2.青色申告書を提出
3.常駐従業員数500人以下
4.取得価額が30万円未満の減価償却資産
5.2006年4月1日~2026年3月31日までに事業用として取得かつ使用
6.損金経理
7.確定申告時に取得価額に関する明細書を添付
(参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁)
取得価額は30万円未満と限定されていますが、年間合計額が300万円を超えると適用されなくなるのでこの点も注意してください。
青色申告のデメリット
青色申告の主なデメリットは以下の2つです。
2.複式簿記による記帳
青色申告で法人税の確定申告を行う際には、事前に税務署に申請書を提出して申告する必要があります。申請書については後述するので、そちらもあわせて参考にしてください。
また青色申告は原則として複式簿記です。複式簿記とは借方とか仕方にわけて記帳する方法であり、手書きで帳簿作成をする際には困難に感じることもあるかもしれません。
青色申告を選択するデメリットはほとんどないので、法人税の確定申告をする際には青色申告を検討をおすすめします。
青色申告する流れについて
青色申告をする際の主な流れは以下の通りです。
2.複式簿記による記帳
3.決算書の作成
4.申告書の作成・提出
それぞれの手順を具体的に確認していきましょう。
青色申告承認申請書の提出
青色申告は白色申告とは異なり、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出しなければなりません。申請書の提出を忘れて確定申告を行うと、所得の種類などの条件を満たしていた場合でも白色申告として処理されてしまいます。
申請書の提出期限は以下の通りです。
提出期限
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設立1期目から適用を受ける場合 | 設立日以降3カ月を経過した日または設立第1期の事業年度終了日のいずれか早い日の前日 |
2期目以降から適用を受ける場合 | 青色申告を行う事業年度開始日の前日まで |
(参考:No.5100 新設法人の届出書類|国税庁、C1-19 青色申告書の承認の申請|国税庁)
設立1期目から青色申告を行う場合、新設法人の届出書類とともに提出することが望ましいとされています。忘れると青色申告のメリットが適用されなくなるので、早めに申請書を作成して税務署に提出しましょう。
複式簿記による記帳
複式簿記とは、借方と貸方に分けて資産の増加及び減少を記録する方法です。
複式簿記とは別に単式簿記もありますが、こちらは家計簿のような記帳方法であり、単純に収入と支出を明記するだけなので簿記・経理などの知識がない人でも容易に記帳できます。しかし詳細な内訳・支出入額の把握が難しく、資金の動きなども明確になりません。

複式簿記は借方と貸方に分けて明記することから資産の動きが明確になり、これをもとに損益計算書・貸借対照表といった法定調書の作成も容易です。
ただし収入・支出だけではなく、資産・負債の増減も記帳する必要があり、単式簿記と比較すると手間がかかる点にデメリットを感じる人もいるでしょう。
しかし青色申告に対応した会計ソフトなどが多く出回っており、導入すれば購入費・維持費などは経費として計上できます。手書きによる帳簿記帳を選択しない場合は、さほどの手間を感じることはないかもしれません。
決算書の作成
法人税の青色申告には確定申告書が必要ですが、申告書を作成する際には各決算書を参考にします。そのため、先に以下にあげる決算書の作成に取り掛からなければなりません。
種類
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概要
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貸借対照表 | ・「資産」「負債」「純資産」の状態をあらわす書類 ・別名「バランスシート」 ・会社の資金調達や運用の状況などの財政状態を示す書類 |
損益計算書 | ・一定期間の収益と費用をまとめた財務諸表 ・決算期間の売上から費用と利益率をまとめた経営成績表 |
株主資本等変動計算書 | ・事業年度の純資産のみの変動を一覧にした決算書 ・資本金や剰余金の変動を把握するための書類 ・株主に帰属する資本の変動やその理由を報告するために使用 |
勘定科目内訳明細書 | ・貸借対照表および損益計算書の勘定科目の内訳を示す決算書 ・法人税施行規則第35条にて提出を義務付け |
法人税の青色申告をする際には申告書に上記4つの決算書を添付しなければならないので、必ず先に作成しましょう。
申告書の作成・提出
各決算書の作成が完了後は、青色申告書の作成に取り掛かります。申告書は先に作成した各決算書の数字等を転記すれば完了しますが、記入場所や数字の誤りといった転記ミスをしないように注意してください。
法人は個人事業主とは異なり、事業年度を自由に設定できるからです。
提出方法は「税務署に持参」「税務署に郵送」「e-Taxによる電子申告」の3パターンが用意されています。
青色申告の承認申請書の書き方について
法人・個人に限らず、青色申告を行う場合には事前に承認申請書を税務署に提出しなければなりません。ただし法人と個人で承認申請書の書式が異なるので、注意してください。
法人税の場合は、国税庁の「C1-19 青色申告書の承認の申請」にPDFファイルのリンクが掲載されており、ここからダウンロードして入手します。
次の見出しから各項目の書き方を解説するので、参考にしてください。
青色申告の承認申請書参考:青色申告申請書|国税庁
1,日付
日付欄には提出日を記入しますが、提出方法によって以下のように異なります。
提出方法
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日付欄
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窓口提出 | 税務署に持参する日 |
郵送 | ポスト投函または発送する日 |
2,税務署長殿
「日付」と「税務署長殿」の間に大きな空欄が設けられていますが、ここには申請書を提出または法人税を納税する税務署名を記載しましょう。
法人所在地を管轄する税務署の名称がわからない場合は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」にて検索が可能です。
3,納税地
納税地の欄には、法人の所在地と電話番号を明記します。なお法人のなかには本店以外に支店もあるかもしれませんが、その場合は本店の住所と電話番号を記入してください。
また電話番号欄は固定電話に限定されていません。固定電話を持たず、携帯電話のみで事業展開を行っているところもあるでしょう。その場合は、事業用として使用している携帯の電話番号を明記してください。
4,法人名等、法人番号、代表者氏名、代表者住所、事業種目、資本金又は出資金額
「法人名等」~「資本金又は出資金額」については以下の通りです。
項目名
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主な記載内容
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法人名等 | 法人の名称 |
法人番号 | ・「国税庁法人番号公表サイト」にて検索 ・未指定の場合は記載不要 |
代表者氏名 | ・代表者の名前をフルネームで記載 ・ふりがなはカタカナ表記 |
代表者住所 | 代表者の住所を記載(郵便番号含む) |
事業種目 | ・定款に記載された主な事業目的を記載 ・登記されているすべての種目の列挙は不要 |
資本金又は出資金額 | ・登記上の資本金額を記載 ・法人の経済的基盤の指標 ・税務署が経済状況などを把握するために利用 |
5,自令和年月日〜至令和年月日
この欄は、青色申告を開始したい事業年度を記載します。原則として会計年度=青色申告希望年度であることから、法人の会計年度を明記してください。
6,「記」1. 次に該当するときには(以下略)
明記されている6つの項目のいずれかに該当する場合に、チェックと日付を記載する欄です。
例えば設立初年度から青色申告を行う場合は、上から2段目にチェックを入れて法人設立日を記入します。
正確な設立年月日がわかる証明書を入手したうえで記入したほうがよいでしょう。
7,「記」 2. 参考事項 (1)帳簿組織の状況
青色申告では総勘定元帳と仕訳帳の作成が必須条件です。そのため「伝票又は帳簿名」の欄に総勘定元帳と仕訳帳の2つは忘れず明記してください。これ以外に現金出納帳などの作成も予定している場合は、それらも記入します。
「左の帳簿の形態」とはどのような媒体で作成するかを記載する欄です。ノート形式の帳簿を使用する場合は「ノート」と明記し、ソフトウエアやクラウドサービスの利用を検討している場合は「会計ソフト」と記入するとよいでしょう。
「記帳の時期」は帳簿に記帳する時期を記載しますが、申請書提出時点での予定であるので神経質になる必要はありません。記載内容と実際のタイミングが異なっていても問題ないので、目安の時期を記載しておきましょう。
8,「記」2. 参考事項 (2)特別な記帳方法の採用の有無
この欄は、青色申告を申請する法人がどのような記帳方法を利用しているかを、税務署が把握するための項目です。
前項目の「左の帳簿の形態」にて「会計ソフト」と記載した場合には、「電子計算機利用」にチェックを入れてください。
9,「記」2. 参考事項 (3)税理士が関与している場合におけるその関与度合
法人が税務関連業務を税理士に委託しているかどうか、税務署が把握するための項目です。
依頼内容によって「記帳から決算書作成までの一連業務」や「伝票処理から確定申告までの一連作業」などと記入しましょう。
10,税理士署名
青色申告の承認申請書を税理士が作成した場合には、作成した税理士本人が自筆で署名します。
まとめ
法人税を青色申告で行う場合の全般について解説しました。
確定申告には白色と青色の2種類がありますが、法人税の場合には青色申告選択時に発生するデメリットはほとんどなく、節税対策などのメリットは多いといえます。

ただし承認申請書の提出には期限があるので、確実に青色申告で法人税の申告・納税を行いたい場合は早めに申請書を作成して、税務署に提出してください。
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