住民税は年収いくらから納める?住民税の計算から控除まで徹底解説

税金関連

居住地域に納める地方税のひとつとしてあげられる住民税ですが、すべての人に課せられているわけではありません。また、負担金額も人によって違います。

そもそも住民税とはどういう目的の税金で、年収がいくらになったら課税されるのでしょうか。

本記事では住民税の計算や控除の方法もあわせて解説します。「住民税について詳しく知りたい」「安く抑える方法があれば知りたい」という人も、ぜひ参考にしてください。

住民税とは

住民税とは、その地域に住む人が負担する地域税のひとつです。納税負担者は一定の所得がある人で、すべての地域住民に課せられているわけではありません。

住民税には「道府県民税」と「区市町村民税」の2種類があり、毎年1月1日に居住地域に納付します。

住民税は会社・企業などが負担する「法人住民税」と個人負担の「個人住民税」に分けられますが、この記事で取り上げるのは「個人住民税」である点に注意してください。

住民税と所得税の違い

住民税と混同されがちな税金として、所得税があげられます。

この2つの税金の違いは、主に以下の通りです

住民税 所得税
納める場所 自治体
税率 所得割と均等割 累進課税
支払時期 所得があった年の翌年6月から 所得があった年または翌年の2月16日~3月15日
上記以外にも適用される控除制度の種類にも違いがあり、混同しないように注意しなければなりません。
税金というくくりでは同じですが、2つには上記一覧のような大きな違いがあるので覚えておきましょう。
▼所得税について詳しく知りたい方はこちら
所得税はいくらから発生する?税率や控除などをケース別に紹介

住民税の用途

住民税はどのような目的で徴収され、どのような場所に使用されているのか気になる人もいるかもしれません。

その使い道として、教育・福祉・消防・救急・ゴミ処理などがあげられます。このような行政サービスを運営・維持するには費用が必要であり、その金額を利用する地域住民に負担してもらうための税金が住民税です。

徴収方法

住民税の徴収方法は、特別徴収と普通徴収の2通りあります。

会社・企業から給与が支給されている会社員の場合は、給料支給時に差し引かれる「特別徴収」が適用されているので自分で納税する必要はありません。
一方の普通徴収は、自宅に送られてくる納付書を用いて金融機関やコンビニなどで納税する方法です。

住民税の徴収方法を変更したい場合は、確定申告時に申告書第二表の「住民税に関する事項」の徴収方法で「自分で納付」に丸印をつけて提出しなければなりません。

給与所得のある会社員の場合、住民税の徴収方法は特別徴収が原則である点に注意してください。
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納付額の大体の計算

住民税は以下の2つで構成されています。

住民税の構成 内容
所得割 前年に一定の基準を超えた所得があった場合に課税
均等割 前年に一定の所得がある人全員が一律負担

住民税は一定の所得がある人に支払いが生じますが、その中身は2段階方式になっており、所得が多くなればなるほど負担額が多くなるシステムです。

所得が少ない場合は均等割のみの負担となり、所得割の負担額は0円になるでしょう。しかし前年所得が多い場合は所得割が加算され、こちらは所得金額に応じて負担額が加算されます。

詳しい住民税の計算方法については後述するので、そちらもあわせて参考にしてください。

定額減税について

定額減税とは、2024年の税制改正で納税者本人と扶養家族1人につき、2024年分の所得税と個人住民税を減税する経済施策ですが、ここでは住民税だけに注目して解説します。

実施された最大の理由は世界的な物価高です。コロナ禍以降エネルギーや食料などさまざまなものの値段が上がり、生活困窮に陥る人たちが増加しました。この状況を打開するために税金の一部還元を目的に決定されたのが定額減税です。

なお2024年6月から1年間と期限が定められており、半永久的に継続して行われるものではありません。

また以下のような要件が設けられており、それを満たした場合に限り一定の金額が減額されます。

要件 2023年の合計所得が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)の2024年納税者
減税額 ・納税者本人:1万円
・生計を同一とする配偶者または扶養家族:1万円(1人につき)

例えば、家族構成が納税者と配偶者の子2人の場合を計算してみましょう。

本人:1万円
配偶者:1万円
子(2人):1万円×2人=2万円

上記それぞれの金額を合計した4万円が減額されることになります。

住民税が発生するのは年収いくらから?

住民税は年収でいくらになったら発生するのか、気になる人もいるでしょう。

具体的な金額は、在住する自治体によって異なるので一律ではありません。ただ目安となる金額だけでも知りたいと思う人もいるかもしれないので、均等割と所得割にわけて紹介します。

住民税の種類 課税対象となる年収の目安
均等割 93~100万円以上
所得割 100万円以上

均等割のボーダーラインとなる金額に差があるのは、自治体によって非課税ラインとなる金額が決められるからです。多くの自治体は100万円がラインですが、一部ではそれ以下の金額に設定しているところもあるので自治体で確認したほうが良いでしょう。

所得割は、給与所得控除(55万円)や基礎控除(43万円)や非課税限度額(45万円)が関係しています。

給与所得額のパターンで、控除額を確認してみましょう。

給与所得額 控除額
給与所得100万円未満 55万円(給与所得控除)+45万円(非課税限度額)=100万円
給与所得100万円以上2,400万円以下 55万円(給与所得控除)+43万円(基礎控除)=98万円
上記一覧の控除額から、給与所得が100万円以内なら住民税の所得割の負担がないことがわかります。
これらから住民税が発生する年収のおおよその目安は100万円からといえるのです。

住民税の計算方法

住民税は、以下のような手順で計算して算出されています。

  1. 総所得金額を計算
  2. 所得控除の有無の確認
  3. 課税所得額を計算
  4. 所得割の課税額を算出
  5. 税額控除金額をマイナス
  6. 均等割分を付加

各手順について解説するので、参考にしてください。

総所得金額を計算する

住民税は前年分の総所得金額をもとに決定するため、前年の1月1日〜12月31日までの総所得額がいくらだったのかを計算しなければなりません。

なお総所得金額とは経費や損失などを差し引いた金額のことであり、総収入額ではない点に注意してください。

所得と差し引く分の項目としては以下のようなものがあげられます。

所得の一例 差し引き分(経費)の一例
・給与
・事業所得
・不動産で得た利益
・株式などの配当金
・利子
など
・事業で利用している建物の家賃
・光熱費(事業分)
・通信費(事業分)
・繰越損失
など

また給与所得がある場合は、金額に応じた以下の計算式で給与所得控除を算出しなければいけません。

給与などの総収入 給与所得控除額
162.5万円まで 55万円
162.5万円超180万円まで 収入額×40%-10万円
180万円超360万円まで 収入額×30%+8万円
360万円超660万円まで 収入額×20%+44万円
660万円超850万円まで 収入額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

(出典:No.1410 給与所得控除|国税庁

給与所得者は上記の一覧表から控除額を算出し、1年間の給与収入から差し引いて総所得額を計算します。

所得控除があるか確認する

住民税を計算するために用いる課税所得額を計算するには、所得控除も考慮しなければなりません。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
上記は所得控除の一例であり、これら以外にも「ひとり親控除」などさまざまな減額・控除制度が設けられています。
どのような控除を適用させるのか確認し、その金額を合算しておきましょう。

課税所得額を計算する

適用させる所得控除の確認と控除総額が算出できたら、総所得金額からその分を差し引いて課税所得額を計算します。

課税所得額=総所得金額-所得控除の総額

上記の計算式にあてはめて計算しましょう。

所得割の課税額を算出する

所得割の課税額を算出する際には、以下の計算式を用います。

所得割課税額=課税所得額×10%(税率)

所得割で用いられる税率(10%)は課税所得額に関係なく一律であり、変動はありません。

税額控除金額を差し引く

所得割には以下のような税額控除が適用できます。

  • 寄附金税額控除
  • 住宅借入金等特別税額控除
  • 配当控除
  • 配当割額・株式等譲渡所得割額控除
  • 外国税額控除

該当する控除がある場合は減額されるので、前述で算出した所得割課税額から差し引いておきましょう。

均等割を付け加える

最後に均等割分を加算して、住民税を算出します。

なお均等割については自治体によって税率が異なるので、各自治体のホームページなどで確認してください。

住民税を抑えるにはどうすればいいの?

住民税は一定の所得があれば負担が生じる地方税ですが、可能な限りその税額を安く抑えたいと思う人もいるでしょう。

定められている要件を満たしたり別の制度を利用することで、住民税を抑えることは可能です。

ここでは住民税を抑える方法やコツを紹介するので、参考にしてください。

住民税が非課税になる条件に当てはまるか確認する

住民税にはいくつかの非課税制度が設けられており、要件を満たせば納税義務が発生しません。

その非課税になる条件についてみていきましょう。

未成年は年収が約204万円まで非課税

未成年者なら、年間所得が135万円未満に抑えると住民税の所得割・均等割のいずれも支払い義務は発生しません。

アルバイトなどをして所得が給与のみの場合は、年間所得の限度額が約204万円まで引き上げられます。

ここでの「未成年」とは18歳までのことを指しますが、既婚者の場合は年齢が18歳未満であっても成人とみなされてしまい、該当しないので注意してください。

勤労学生控除を適用適応すると126万円まで非課税

勤労学生控除は、以下の条件を満たすことで26万円の住民税控除が適用される非課税制度です。

  • 給与などの勤労所得があること
  • 合計所得額が75万円以下かつ勤労以外の所得が10万円以下
  • 学校教育法に規定する学校・国や地方公共団体や私立学校法に規定する学校法人・職業能力回診促進法の規定による認定職業訓練法人など特定の学校の学生やまたは生徒

(参考:No.1175 勤労学生控除|国税庁

この制度を利用すると、給与所得控除(55万円)と給与所得100万円未満の非課税限度額(45万円)も加算されて合計126万円の控除が適用されるので超えなければ住民税の納税義務は発生しません。

ほかにも様々な条件がある

ほかにも生活保護受給者やひとり親・寡婦などの世帯は、住民税が非課税になる可能性があります。

非課税制度やその条件・要件は自治体によって異なるので、入念に調べることが重要です。

市役所に問い合わせると条件にあった非課税制度を紹介してもらえるので、確認してください。

ふるさと納税を利用する

ふるさと納税をすると、寄附金から2,000円を差し引いた金額が翌年分の住民税控除に適用できます。

その理由は本来住んでいる自治体に納める住民税を、寄附という形でほかの自治体に収めているからです。

年間の医療費が10万円を超えるか確認する

所得税計算時に年間10万円までの医療費が課税所得額から差し引かれる医療費控除は、住民税にも適用されますが、適用される医療費には以下のような範囲が定められており、どのような医療費でも対象になるわけではありません。

  • 医師や歯科医師による診察・治療代
  • 治療などに必要な医薬品の購入代
  • 病院や診療所への入院費
  • 介護老人保健施設などへの入所日
  • あんまマッサージ指圧師や柔道整復師などによる施術料
  • 松葉杖・義手・義足などの購入費
国税庁の「No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁」に対象の範囲となるものが明記されているので、医療費控除を適用させる際には事前に確認してください。
▼その他節税方法についてこちらで詳しく解説しています
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納税額確認方法

住民税納税額の計算方法などを解説してきましたが、本来は自治体が確定申告や年末調整などのデータをもとに対象となる年の所得額を確認して算出するため、自分で納税額を計算する必要はありません。

決定した住民税の納税額は、毎年5〜6月頃に納税者または給与支払者宛に納税通知書(住民税決定通知書)が送付されます。

なお給与所得者の場合は特別徴収になるため給与支払者に納税通知書が送付されますが、この通知書は納税義務が発生している本人にも通知されるので、確認してください。

住民税を納税するタイミング

住民税を納付するタイミングは、徴収方法や納税義務者の状況によって異なります。

  • 普通徴収
  • 特別徴収
  • 退職後
  • 海外滞在中
  • 公的年金受給者

ここでは上記それぞれの納税するタイミングをみていきましょう。

普通徴収の場合

普通徴収の場合、毎年6月頃に納税通知書(住民税決定通知書)とともに納付書が送られてきます。

納付書には負担額と納付期限が明記されているので、その期限までに金融機関・役所などの窓口やコンビニエンスストアで納付しましょう。

特別徴収の場合

会社・企業に所属して給与を受け取っている場合、住民税は特別徴収が原則です。

特別徴収とは、給料支払い時に負担すべき住民税が差し引かれて企業・会社が代わりに納付します。

納税者に代わって納付してくれるので、忘れていたということはなく、安全・安心な支払方法といえるでしょう。

退職して納税する場合

退職した人の場合は、以下のいずれかで納付します。

  • 再就職先での特別徴収
  • 6~12月に退職した場合は前職での特別徴収または普通徴収
  • 1~5月に退職した場合は前職でまとめて特別徴収
  • 自営業への切り替えや再就職なしの場合は普通徴収
6〜12月の間に退職する場合は、一括徴収が可能なところと退職月まで特別徴収して残りは普通徴収に切り替わるところがあり、会社によってその方法が異なるので確認してください。

海外滞在中に納税する場合

海外滞在中は、国内に住所がある場合のみ住民税の納税義務が発生します。納税通知書は国内の住所に届くので、そこに書かれた金額を期限までに納めてください。

なお対象年の1月1日以前から1年以上海外外滞在であり、日本国内に住所を持たない場合は納税義務が発生しません。

公的年金受給者が納税する場合

公的年金受給者の場合は、年金からの特別徴収になります。納税通知書は送付されてきますが、納付書は同封されず、自分で金融機関などに支払う必要もありません。

住民税納税の注意点

住民税納税の注意点を紹介するので、参考にしてください。

所得税の確定申告を行う場合は住民税の申告が不要

確定申告を行う際は所得税と住民税の両方の申告を行うことになるので、住民税のみの申告は不要です。

確定申告は所得税額を決定させるための手続きですが、この手続きには住民税の申告も含まれています。申告書の第二表には住民税に関する項目が設けられていますが、これは住民税の申告も同時に行うからです。

なお確定申告をしない場合は、市役所で住民税の申告をしなければなりません。

ふるさと納税には控除の上限がある

住民税にはふるさと納税を行った際の控除が適用できますが、無制限に控除額が適用できるわけではありません。

住民税の控除が適用されるふるさと納税の金額は、総所得金額の30%までに上限が設定されているので注意しましょう。

住民税の納税遅れは罰則の対象

住民税には納期があり、これを過ぎると延滞料などのペナルティが科せられます。

特別徴収の場合は給与や公的年金から自動的に差し引かれるので、納税遅れになることはないでしょう。

しかし普通徴収の場合は、自分で金融機関やコンビニに納付書を持ち込んで支払わなければなりません。年4回の支払いが発生するので、忘れないようにしてください。

まとめ

住民税について解説しました。

住民税は、居住する地域の公共サービス維持などを行う重要な財源となる税金です。

給与や公的年金の受け取りがある場合は支払期日を気にする必要はありませんが、フリーランスや自営業を営んでいる場合は普通徴収になるので、自分で支払わなければなりません。忘れると罰則分が追加されるなどのペナルティが科せられるので、忘れないようにしましょう。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

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