年末調整で受けられる控除って何があるの?控除別に書き方も解説!

控除

会社や企業に所属していると10月頃から手続きが始まる年末調整ですが、この手続きで適用可能な控除制度があることをご存じでしょうか。

控除制度は内容を理解したうえで利用すると年間所得額が下がり、支払うべき所得税の金額を抑えることが可能です。その結果、年末調整後に納めすぎていた税金が還付されるかもしれません。

本記事では年末調整で受けられる控除制度を紹介します。控除別の申告書類の書き方も解説するので、勤め先で年末調整を受けている場合はぜひ参考にしてください。

そもそも年末調整は何をやっているの?

年末調整は何のために毎年行われているのか、疑問を抱いている人もいるかもしれません。その理由は、正しい年間所得額を確定させて所得税を計算したうえで申告するためです。

給与所得者は、毎月支払われる給料から源泉徴収税が差し引かれています。この源泉徴収税はいわば所得税の前借り分です。

所得税は12月分の支払給与額が確定した時点で年間総所得額を計算し、納税額が算出されなければなりません。一連の手続きのなかで各控除制度も適用させることから源泉徴収税は本来の所得税納税額と差額が出ることが一般的です。これらの手続きを年末調整といいます。

なお対象者は勤め先から源泉徴収された給与を受け取っている人であり、正社員だけではありません。給与明細を確認して源泉徴収されていれば、契約社員やパート・アルバイトなども含まれます。

確定申告って何?

年末調整は年間総所得額を確定させて所得税を申告するためのものですが、確定申告も同様の手続きです。

年間総所得額を確定させて所得税の申告をするところまでは、確定申告も年末調整も同様ですが、本来の目的が異なります。

確定申告は1年間で得た総所得額を毎年2月15日〜3月16日までに確定させて所得税の納税額を申告かつ納税する手続きであり、差異を調整するための年末調整とはこの部分が異なる点です。

また対象者は個人事業主・自営業以外に、年末調整をされていない給与・報酬を受け取っている人も含まれます。

さらに控除制度のなかには確定申告でしか適用できないものがあり、このような制度を利用する場合には年末調整対象者も確定申告をしなければなりません。

控除で税金を減らせる!

1年間で一定の所得を得た人は年末調整や確定申告が必要ですが、その際に控除制度の適用が可能です。

控除制度とは年間総所得額や税額から一定の金額が差し引かれる制度であり、要件を満たすことで所得税や住民税の納税額が少なくなります。

控除制度は大きくわけて経費・所得控除・税額控除の3つに分類されますが、それぞれに複数の種類が用意されており、各控除の要件を満たせば誰でも利用可能です。

身近なものでは医療費控除・配偶者控除・扶養者控除・生命保険料控除・住宅ローン控除などがあげられるでしょう。これ以外にも一定の年間所得があればすべての人に適用可能な基礎控除や給与所得控除などもあり、これらを適用させることで所得税や住民税の納税額が減額されます。

それぞれの控除制度は後述するので、ぜひ参考にしてください!

はじめに所得税の計算方法を知ろう!

控除は「経費」「所得控除」「税額控除」の3つに大別されますが、差し引くタイミングが異なることから、所得税の計算方法を知っておいたほうが良いでしょう。所得税は以下のような計算式と手順で算出します。

手順 内容 計算方法・計算式
1 給与所得額を算出 給与所得額=年間総収入額-経費(給与所得控除など)
2 課税所得額を算出 課税所得額=総所得額-所得控除の総額
3 所得税額を算出 所得税額=課税所得額×税率-控除額
4 基準所得税額を算出 基準所得税額=所得税額-税額控除の総額
5 復興特別所得税額を算出 復興特別所得税額=基準所得税額×2.1%
6 所得納税額を算出 所得納税額=基準所得税額+復興特別所得税額
※2037年12月31日まで課税
所得控除は課税所得額を算出する際に差し引き、税額控除は基準所得額を算出する際に適用させる点に注意してください。

収入の対象

給与所得者は毎月の給料としてさまざまな種類の支払い分が含まれますが、そのなかには収入の対象になるものとならないものがあります。

給与収入の対象になるもの 給与収入の対象にならないもの
・基本給
・賞与(ボーナス)
・残業手当
・休日出勤手当
・職務手当
・扶養(家族)手当
・住宅手当
・通勤手当(一定金額以上)
・出張費
・交際費
・宿直や日直手当(一定金額以上)
・冠婚葬祭費

上記以外にも国税庁では一部の現物支給も対象になると定めており、以下は現物給与と判断される際の要件です。

  1. 物品などの無償または低い価額での譲渡
  2. 土地・家屋・金銭の無償または低い価額での貸付
  3. 福利厚生施設の利用など
  4. 個人的債務の免除または負担

引用:No.2508 給与所得となるもの|国税庁

判断が難しい場合は、専門家に相談するのもいいでしょう。

年末調整で受けることのできる控除

年末調整での適用が可能な控除制度は、以下の2つに大別されます。

  • 給与所得控除
  • 所得控除
なおここで紹介する控除はすべて年末調整での手続きが可能なものであり、確定申告でしか適用できないものについては含まれていません。

確定申告のみ適用可能な控除制度は後述するので、ここでは年末調整で適用可能な控除制度を確認していきましょう。

給与所得控除

給与所得控除とは、会社・企業などの勤め先で給与を受け取っている人全員を対象とした控除制度です。

個人事業主や自営業の場合は経費分として年間総収入から支出した金額を差し引くことが可能ですが、給与所得者にはそのような支出分は存在しません。その経費の代わりとして導入されている制度が給与所得控除です。

源泉徴収票の給与支払額 給与所得控除額
1,62.5万円まで 55万円
1,62.5万円超180万円まで 収入金額×40%-10万円
180万円超360万円まで 収入金額×30%+8万円
360万円超660万円まで 収入金額×20%+44万円
660万円超850万円まで 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円

引用:No.1410 給与所得控除|国税庁

控除額は上記一覧の表に源泉徴収票に記載された給与支払額に応じて段階的に定められています。

年間の給与支払額が150万円と500万円の場合のそれぞれの控除額を計算してみましょう。

給与支払額 給与所得控除額
150万円の場合 55万円
500万円の場合 500万円×20%+44万円=144万円

所得金額調整控除

所得金額調整控除とは当該年の給与収入額が850万円を超える国内居住者で、以下の要件のいずれかを満たす場合に適用される制度です。

  1. 納税者本人が特別障害者
  2. 満23歳未満の扶養親族を有する
  3. 生計を同一とする配偶者や扶養親族が特別障害者

引用:No.1411 所得金額調整控除|国税庁

控除額は以下の計算式を用いて算出します。

所得金額調整控除額={年間給与総収入額(1,000万円まで)-850万円}×10%

※なお1円未満は切り上げて計算してください。

所得控除

所得控除とは、一定の要件を満たすことで課税所得額から差し引かれる金額のことです。

年間給与総収入額から給与所得控除を差し引いて課税所得額を算出し、その金額から所得控除分の金額を差し引きます。

以下で11種類の所得控除を確認していきましょう。

基礎控除

基礎控除とは当該年で一定の所得があった全納税者を対象に適用される控除制度のことです。年間総収入から経費や給与所得控除などを差し引いた年間総所得額に応じて、以下のように段階的に控除額が定められています。

納税者本人の年間総所得額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

引用:No.1199 基礎控除|国税庁

扶養控除

扶養控除とは所得税法で対象と認められる扶養親族が存在する場合に適用が認められる所得控除であり、該当範囲と控除額は以下のように定められています。

  1. 配偶者以外の親族または里子や養護老人
  2. 納税者本人と同一生計
  3. 年間総所得額が48万円(給与所得の場合は103万円)以下
  4. 事業専従者以外

引用:No.1180 扶養控除|国税庁

区分 控除額
16歳以上30歳未満または70歳以上、もしくは障害者や38万円以上の生活費等を受けている一般の控除対象扶養親族 38万円
控除対象扶養親族のうち19歳以上23歳未満の特定扶養親族 63万円
老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円
同居老親等 58万円

引用:No.1180 扶養控除|国税庁

「同居老親等」については、老人ホーム入居などをしている場合は対象になりません。

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者控除とは、納税者本人に生計を同一としている年間総所得額48万円以下の配偶者が存在する場合に適用される制度です。

一方の配偶者特別控除は納税者本人の年間総所得額が1,000万円以下かつ年間総所得額が48万円以上133万円以下の配偶者が存在する場合に適用されます。

それぞれの控除額は以下の通りです。

<配偶者控除>

控除を受ける納税者本人の

合計所得金額

控除額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

引用:No.1191 配偶者控除|国税庁

<配偶者特別控除>

納税者本人の年間総所得額
900万円以下 900万円超

950万円以下

950万円超

1,000万円以下

配偶者の年間総所得額 48万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円

引用:No.1195 配偶者特別控除|国税庁

納税者本人の年間総所得額356万円と仮定した場合、2通りの控除額をシミュレーションしてみましょう。

配偶者の年間総所得額 控除額
0円 38万円
120万円 11万円

障害者控除

障害者控除とは、納税者本人または生計を同一とする配偶者やその他の扶養親族が障害者であると認められる場合に適用される制度です。

一般障害者の場合は27万円が控除され、特別障害者と認められる場合には40万円が控除されます。

また同居特別障害者の場合の控除額は75万円です。例えば納税者本人が単身赴任中であり、その配偶者が特別障害者と認められる子と同居しているケースなどに適用されます。

ひとり親控除

ひとり親控除とは、納税者本人がひとり親であると認められる場合に利用可能な控除制度です。

事実上婚姻関係と認められる存在がいない年間総所得額が500万円以下の納税者であり、配偶者や扶養家族になっていない年間総所得額48万円以下の生計を同一とする子がいる場合には、35万円が控除されます。

例えば年間総所得額356万円の納税者に収入がない子が存在した場合には35万円が控除されますが、子に年間総所得額103万円があった場合は適用されません。

寡婦控除

寡婦控除とは、納税者本人が寡婦であると認められる場合に適用される控除制度です。

年間総所得額が500万円未満の納税者本人が、離婚後に婚姻していない状態で扶養親族がいる、または死別や生死が明らかではない(扶養親族の要件なし)場合に27万円が控除されます。

勤労学生控除

勤労学生控除とは、納税者本人が勤労学生と認められる場合に利用できる制度です。

年間合計所得額75万円以下かつ勤労以外の所得が10万円以下で、特定の学校の学生や生徒であった場合には27万円が控除されます。

なお「特定の学校」とは学校教育法に規定した学校・学校法人・認定職業訓練を行う法人などを指し「No.1175 勤労学生控除」に詳しく明記されているので確認してください。

社会保険料控除

社会保険料控除とは、納税者が本人または生計を同一とする配偶者やその他親族の社会保険料を支払った場合に全額が控除される制度です。

社会保険料の範囲としては健康保険・国民健康保険・国民年金・介護保険法規定の介護保険・高齢者医療の保険料などが該当しますが、納税者本人が支払っていない場合は控除対象にならないので注意してください。

例えば年間総所得額365万円の納税者が対象年に国民健康保険料20万円と厚生年金保険料35万円を支払っていた場合、合計55万円が所得額から控除されます。

生命保険料控除

生命保険料控除とは、納税者本人が「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」を支払った場合に一定額の所得控除が受けられる制度です。

契約した時期により新制度と旧制度にわけられており、支払保険料による控除額は以下のように異なります。

新制度(2012年1月1日以降の契約分) 旧制度(2011年12月31日までの契約分)
年間支払済保険料の合計額 控除額 年間支払済保険料の合計額 控除額
2万円以下 支払済保険料全額 2.5万円以下 支払済保険料全額
2万円超4万円以下 支払済保険料×1/2+1万円 2.5万円超5万円以下 支払済保険料×1/2+1.25万円
4万円超8万円以下 支払済保険料×1/4+2万円 5万円超10万円以下 支払済保険料×1/4+2.5万円
8万円超 一律4万円 10万円超 一律5万円

引用:No.1140 生命保険料控除|国税庁

新制度と旧制度が混在している場合はそれぞれで計算することが可能ですが、上限は12万円までなので注意してください。

地震保険料控除

地震保険料控除とは、納税者本人が地震の損害にかかる保険料や掛金を支払った場合に適用可能な制度です。

控除額は2007年以降に締結した地震保険料と、2006年12月31日までに締結済みの旧長期損害保険料とで以下のように異なります。

区分 年間の支払保険料の合計 控除額
(1)地震保険料 5万円以下 支払金額の全額
5万円超 一律5万円
(2)旧長期損害保険料 1万円以下 支払金額の全額
1万円超2万円以下 支払金額×1/2+5千円
2万円超 1.5万円
(1)・(2)両方がある場合 (1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高5万円)

引用:No.1145 地震保険料控除|国税庁

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除とは、「小規模企業共済」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」「心身障害者扶養共済」のいずれかの掛金を支払った場合に、全額が控除される制度です。

控除額は支払額全額となっていますが、実際の掛金は月額上限が7万円までに定められているため、実際には84万円を上限額として控除されます。

確定申告でのみ受けることのできる控除

控除制度の多くは、年末調整の手続きで適用が可能です。しかしすべての控除制度が年末調整に対応しているわけではなく、なかには確定申告のみでしか申請できないものもあります。

年末調整の手続きを行った後で自分で確定申告で申請をしなければならない控除制度を紹介するので、参考にしてください。

特定支出控除

特定支出控除とは、給与所得者において業務上の支出が一定の金額を超える場合に給与所得控除後の所得額から差し引くことが可能な制度です。

適用範囲は通勤費・転居費用・単身赴任者の帰宅費用・研修費用・資格取得費用・業務用図書購入費・業務用衣類購入費・交際費の8種類に限定されており、控除額は該当年の給与所得控除額の2分の1と定められています。

所得控除

確定申告での所得控除は、年間給与所得から給与所得控除や上記の特定支出控除を差し引いた金額から差し引く金額です。

雑損控除・医療費控除・寄附金控除(寄附金特別控除)について解説するので、参考にしてください。

雑損控除

雑損控除とは、納税者本人または年間総所得額48万円以下の生計を同一とする配偶者やその親族が所有する生活に必要と認められる資産に自然災害・盗難・横領などの被害があった場合に適用される制度です。

控除額は以下の計算式で求められる金額のうち多いほうを適用します。

  1. (損害金額+災害関連支出総額-保険金等)-年間総所得額×10%
  2. (災害関連支出総額-保険金等)-5万円

以下の条件で雑損控除額をシミュレーションしてみましょう。

条件 損害額:50万円(自然災害損失)
損害に対する保険金:20万円
年間総所得額:300万円
災害関連支出額:10万円
「1」の場合 (50万円+10万円-20万円)-300万円×10%=10万円
「2」の場合 (10万円-20万円)-5万円=-15万円

上記の計算から「1」のほうが「2」よりも金額が高いので、雑損控除額は10万円です。

なお雑損控除の適用要件に詐欺・恐喝は含まれないので注意してください。

医療費控除

医療費控除とは、当該年に納税者本人または生計を同一とする配偶者やその他の神速が支出した医療費が一定の金額を超えた場合に適用される制度です。

控除額は以下の計算式を用いて算出します。

医療費控除額=(支払済医療費総額-保険金などの補てん金額)-{年間所得総額×5%(上限10万円)}

2通りのパターンで控除額をシミュレーションしてみましょう。

条件 年間総所得額:365万円
医療費:30万円
補てん金額:11.75万円
医療費控除額 (30万円-11.75万円)-10万円=8.25万円
※365万円×5%=18.25万円で上限を超えているので、10万円を差し引く
条件 年間総所得額:100万円
医療費:20万円
補てん金額:15万円
医療費控除額 (20万円-15万円)-(100万円×5%)=0円

寄付金控除・寄附金特別控除

寄附金控除とは、国や地方自治体などに寄附をした場合に適用される所得控除です。

一方の寄附金特別控除は公益社団法人やNPO法人などに寄附をした際に適用される税額控除であり、所得税額から差し引くため控除のタイミングは同じではありません。

なお多くの会社員などが節税対策の一環として行っているふるさと納税は所得控除のひとつである寄附金控除に含まれており、以下の計算式で算出します。

控除額=(ふるさと納税額-2千円)×所得税率

以下の条件でふるさと納税を行った場合の控除額を計算してみましょう。

条件 ふるさと納税額:10万円
年間総所得額:356万円
所得控除総額:1.96万円
計算式 控除額=(ふるさと納税額-2千円)×所得税率
控除額 356万円-1.96万円=354.04万円(課税所得額)
※所得税率は20%
(10万円-2千円)×20%=1.96万円

税額控除

税額控除とは、所得控除を差し引いた課税所得額に一定の税率をかけた後に差し引くことが可能な金額のことです。

税額控除には複数の種類がありますが、なかでも外国税額控除・配当控除・住宅ローン控除の3つについて解説するので、参考にしてください。

外国税額控除

外国税額控除とは、海外で日本の所得税に類する税金を支払っていた場合に二重課税を防ぐことを目的として適用される控除制度です。

控除限度額は原則として以下の計算式で算出します。

控除限度額=当該年の総所得税額×当該年の海外所得総額/当該年の年間所得総額

しかし外国によっては上記の限度額より高い税金を課している可能性もあり、その場合は上記の金額だけでは足りません。その際は「当該年の総所得税額」を「当該年の復興特別所得税額」に変更した計算式で算出した金額分も控除額に加算されます。

配当控除

配当控除とは、国内の株式配当金や投資信託分配金などを受け取った場合に適用される税額控除です。

課税所得額は原則として課税所得額が1,000万円以下の部分は10%、超える部分は5%で計算します。

よって課税所得額が1,000万円以下の場合は以下の計算式は以下の通りです。

配当控除額=(剰余金配当所得額×10%)+(投資信託分配金の配当所得額×5%)

課税所得額が1,000万円を超えている場合は、原則として計算式で計算します。

配当控除額=(剰余金配当額のうち、課税所得額から1,000万円と投資信託分配金の合計額を差し引いた金額(A)×5%)+(剰余金配当額のうち(A)を超える金額×10%)+(投資信託分配金×2.5%)

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅の新築・購入・増改築をした場合に適用される控除制度です。

要件として「完成または取得などをした日から6カ月以内に住み、継続して住み続けること」や「10年以上のローン返済がある」といった内容が定められています。

控除額は以下の計算式で算出しますが、上限が40万円までである点に注意してください。

住宅ローン控除額=住宅ローン残高×1%(控除率)

例えば住宅ローンの残高が2,000万円があった場合、その1%の20万円が控除額として差し引かれます。

なお2年目からは年末調整での適用が可能ですが、1年目のみ確定申告を行わなければなりません。

年末調整における控除の申告方法

年末調整で提出する書類は以下の4種類です。

  1. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  2. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  3. 給与所得者の保険料控除申告書
  4. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書

上記それぞれの控除を適用させるための記入方法を解説するので、参考にしてください。

1.給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

この申告書で申請できる控除制度は基礎控除・配偶者控除(配偶者特別控除)・所得金額調整控除の3つです。

なおこの書類は、源泉徴収された給与所得者全員の提出が求められます。

「基礎控除」欄

「給与所得者の基礎控除申告書」は、源泉徴収された給与所得者全員が対象の基礎控除を申請するための記入欄です。

項目 記入内容・例など
あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算 (1)給与所得 収入金額 ・勤め先から配布された場合は記載されている可能性あり
・前年分の源泉徴収票や給与明細書などを参考に対象年の給与収入額を合計
所得金額 ・「収入金額」から給与所得控除を差し引いた金額
・「給与所得の計算欄」を使用して計算
(2)給与所得以外の所得の合計 ・給与所得以外の収入がある場合
・経費などを差し引いた金額
見積額 (1)と(2)の所得金額の合計金額
控除額の計算 判定 「見積額」の金額から判断してチェック
区分Ⅰ 「判定」欄でチェック項目が(A)~(C)のいずれかだった場合はそれを記入
基礎控除の額 「判定」欄の控除額を記入

「配偶者控除・配偶者特別控除」欄

「給与所得者の配偶者控除等申告書」では、配偶者の収入・所得を記入したうえで控除額を計算します。

項目 記入内容・例など
氏名など 氏名やマイナンバーなどを記入
配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算 (1)給与所得 収入金額 源泉徴収票や給与明細書に記載されている金額を合計
所得金額 「収入金額」から給与所得控除額を差し引いた金額
(2)給与所得以外の所得の合計 ・給与所得以外の収入がある場合
・経費などの支出額を差し引いた金額
見積額 (1)と(2)の所得金額の合計
控除額の計算 判定 「見積額」の金額を参考にチェック
区分Ⅱ 「判定」でチェックを付けた数字を記入
配偶者控除の額/配偶者特別控除の額 「区分Ⅱ」の一覧表に書かれた金額を記入

「所得金額調整控除」欄

「所得金額調整控除申告書」は、所得金額調整の要件を満たしている場合に記入する項目です。

控除適用要件に該当する人の氏名・マイナンバーなどの個人情報を記入します。

2.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

この申告書では、扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除の申請が可能です。

各控除を申請する際の記入場所や記載方法を確認していきましょう。

「扶養控除」欄

「B 控除対象扶養親族(16歳以上)」欄は、扶養控除を受ける際に対象者の個人情報などを明記する項目です。

「老人扶養親族」や「特定扶養親族」に該当する場合はチェックをしてください。

住所欄は同居している場合は納税者本人と同じ住所を記入しますが、非居住者親族の場合は「非居住者である親族」欄にチェックをしたうえで住所を明記しましょう。

「障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生控除」欄

「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄は、該当する扶養親族が存在する場合に記入します。

障害者の場合は項目にチェックをつけたうえで「区分」「該当者」の一覧表にも該当する欄にチェックをつけてください。

寡婦・ひとり親・勤労学生のいずれかに該当する場合もチェックをします。

「障害者又は勤労学生の内容」欄には障害者手帳の交付日や該当する人の名前などを明記してください。勤労学生の場合も同様に該当する人の名前などを記入します。

3.給与所得者の保険料控除申告書

この書類は、生命保険料・地震保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金の各控除制度を利用する際に提出が必要です。

保険の種類や保険料などを記入する欄が設けられており、控除証明書などを参考にしながら記入します。

それぞれの控除制度を利用する際に必要な記入項目や書き方などを確認していきましょう。

「生命保険料控除」欄

「生命保険料控除」は一般生命保険・任意で加入する介護医療保険・個人年金保険の掛金などを支払っていた場合、一定の条件を満たすことで控除制度が適用される欄です。

項目 記入内容・例など
保険会社等の名称 契約している保険会社の正式名称を記入
保険等の種類 ・控除証明書の「保険種類」に記載されている内容を記入
・一般生命保険の場合:養老など
保険または年金支払期間 控除証明書の「保険期間」の内容を記入
新・旧の区分 ・控除証明書の「適用制度」の名称を参考
・例えば「新」と書かれていれば「新」に丸印
あなたが本年中に支払った保険料等の金額(a) 控除証明書の「証明額」の金額を記入
生命保険料控除額(ハ) ・(イ)+(ロ)+(ハ)の合計額
・上限は12万円まで

「地震保険料控除」欄

「地震保険料控除」は、地震の損害にかかる保険料や掛金を支払っている場合に適用される地震保険料控除を利用する際に記入が必要な欄です。

項目 記入内容・例など
保険会社等の名称 契約している保険会社の正式名称
保険等の種類(目的) ・控除証明書の「保険の対象」や「被保険者」の欄を参考
・書き方例:地震(建物)
地震保険料または旧長期損害保険料区分 控除証明書の「保険の種類」を参考
あなたが本年中に支払った保険料等のうち左欄の区分にかかる金額 控除証明書の「控除対象保険料」を参考

「社会保険料控除」欄

国民健康保険料や介護保険料など納税者本人が支払った社会保険料がある場合は、この欄に金額などを記入することで控除が適用されます。

項目 記入内容・例など
社会保険料の種類 「国民健康保険」や「後期高齢者医療保険」など
保険料を負担することになっている人 本来保険料を支払うべき配偶者や扶養親族などの名前と続柄を記入
あなたが本年中に支払った保険料の金額 納税者本人が支払った保険料の金額を記入

給料から天引きされている社会保険料や厚生年金基金は対象外です。

また社会保険料控除の適用を受ける際には、支払いを証明する書類も添付して提出しましょう。

「小規模企業共済等掛金控除」欄

この欄は「種類」に明記されているいずれかの掛金を支払った際に、支払済金額を記入することで控除が適用される項目です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金を支払っている場合は、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄に1年間で支払った掛金の総額を記入してください。

4.給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書

この申告書類は、住宅ローンを利用して新築・取得・増改築をした場合に適用される住宅ローン控除の手続きに必要な申請書です。

初年度は、勤務先での年末調整対象者であっても確定申告をしなければなりません。しかし2年目からは年末調整での手続きで適用が可能になるため、勤務先にこの書類を提出します。

住宅ローン控除の申請方法については後述するので、そちらを参考にしてください。

住宅ローン控除について徹底解説!

住宅ローン控除は住宅ローンを利用して新築や増改築などをした場合に利用可能な税額控除ですが、申請方法はほかの控除制度と少し異なった点があります。

1年目と2年目で手続きの方法が違うので、以下の解説を参考にしてください。

1年目は確定申告が必要

住宅ローン控除は初年度のみ、確定申告が必要です。

勤務先での年末調整対象者であっても、住宅ローン控除を利用する初年度は別途確定申告を行って申請しなければなりません。

一般的に年末調整は12月末ごろには終了し、1月上旬ごろから順次源泉徴収票が発行されます。この源泉徴収票を勤務先から入手し、確定申告用の書類を国税庁のホームページからダウンロードするなどして準備してください。

なおe-Taxを利用すると紙の申告書類は不要になり、好きな場所・タイミングで作成・申告が可能です。

申告期間は毎年2月16日〜3月15日までの1カ月間なので、それまでに必要書類を入手してそろえておきましょう。

2年目以降は年末調整で申告

2年目以降は年末調整での申告が可能です。

管轄する税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書」が送付されてくるので、必要事項を記入して年末調整用の申告書類とともに勤務先に提出してください。

申請書の「新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高」の項目の(A)~(C)のいずれかに証明書の「年末残高」に記載された金額を記入します。

なお、(A)~(C)のいずれに該当するのかは、証明書の「住宅借入金等の内訳」欄に明記されているので、そちらを参考にしてください。

まとめ

年末調整で受けられる控除を紹介しました。

多くの控除制度が年末調整で適用可能ですが、なかには確定申告でしか対応できないものや初年度のみ確定申告が必要なものもあります。

控除制度の適用要件とあわせて申告方法なども確認したうえで、手続きを行ってください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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