リードナーチャリングの手法と体制|外注できる範囲と社内に残す範囲

リードナーチャリングの始め方 マーケティング

展示会や広告でリードは集まっているのに、商談の数だけが増えない。配信するメールの本数と、送り先リストを整える時間ばかりが積み上がっていく。

リードナーチャリングとは、すでに獲得した見込み客に継続して接触し、商談できる状態まで購買意欲を引き上げる活動です。ただし全社で一斉に始めるものではありません。着手するかどうか、社内に残す範囲をどこに引くかを先に決める作業から始まります。

手法を並べる前に扱うのは、着手すべき企業の条件、回すために必要な人員と体制、外に出せる業務と社内に残す業務の線引きです。読み終えたときに、今すぐ着手する、範囲を絞って着手する、人を確保してから着手する、見送る、の4つから自社の答えを1つ選べる状態を目指します

リードナーチャリングの役割と獲得との違い

リードナーチャリングの役割と獲得との違い

リードナーチャリングは、リードを集める活動とは別の仕事です。集める側は接点の数を増やし、育てる側は接点の中身を変えて購買意欲を引き上げます。ここを1つの業務としてまとめると、必要な人も、成果が出るまでの時間も、外に出せる範囲も違うまま設計することになります。役割の違いを先に押さえておくと、あとの判断がすべて楽になります。

集めたリードが商談に変わらない理由

BtoBの購買では複数の部署が関わり、比較と社内稟議に時間がかかります。資料を1本ダウンロードした担当者が、その月のうちに発注まで進むことはほとんどありません。情報収集がオンラインで完結するようになったぶん、営業に問い合わせる前の検討期間が長くなっています。

つまり、獲得した直後に商談化しないことは異常ではなく前提です。問題になるのは、その前提に対して手が打たれていない状態です。名刺と問い合わせフォームの情報が営業のフォルダに眠り、半年後に別の会社から提案を受けて決まる。この取りこぼしを減らすのがリードナーチャリングの役割です。

デマンドジェネレーションでの位置づけ

商談を作るまでの流れは3つの工程に分かれます。獲得、育成、選別の順に進み、それぞれ担い手と評価する数字が変わります。

工程 やること 主な担い手
リードジェネレーション(獲得) 展示会・広告・資料ダウンロードで接点を作る マーケティング
リードナーチャリング(育成) 継続した接触で購買意欲を引き上げる マーケティングとインサイドセールス
リードクオリフィケーション(選別) 商談に進む確度で絞り込み営業へ渡す マーケティングと営業の合意

3工程のうち、自社がどこで詰まっているかで打ち手が変わります。接点の数が足りないなら獲得、接点はあるのに反応がないなら育成、反応はあるのに営業が動かないなら選別の設計に原因があります。なお選別の場面では、マーケティング側が商談化しそうだと判断したリードをMQL、営業側が商談として受け取ったリードをSQLと呼び分けます。

獲得と育成で変わる成果の出方

獲得は手を入れた月のうちに数字が動きます。広告の配信量を増やせばリードの件数はその週から変わります。育成はそうはいきません。読者の検討期間そのものが挟まるため、商談化率に表れるまでには時間がかかります。成果の出方が違うものを同じ月次の指標で並べると、育成の施策から先に打ち切られます

もう1つ違うのは、外に出しやすさです。獲得は成果の判定が早く、依頼する内容も切り出しやすいため、外部の力を借りやすい領域です。育成は自社の顧客が何で迷うかという知識が中心にあるため、社内に残りやすい領域になります。この線引きが、あとで扱う外注の判断の土台になります。

ナーチャリングに着手すべき企業の条件

ナーチャリングに着手すべき企業の条件

ナーチャリングは、どの会社にも今すぐ必要なわけではありません。判断は2段階に分けると迷いません。第1段は必要性、つまりそもそも育てる余地がある商材とリードを持っているか。第2段は実行力、つまり手を動かす人と社内の合意があるか。必要性が満たされていない状態で実行力だけを揃えても、成果の出ない配信が続きます

着手判定の5つのチェック項目

まず必要性を2問で確認します。どちらか一方でも当てはまらないなら、この時点で着手しません

記号 設問 何を見ているか
N1 検討期間が1か月を超える商材である 即決される商材には育てる余地がない
N2 いま商談になっていないリードが手元にある(過去の名刺・問い合わせ・資料請求を含む) 育てる対象があるか。件数の多い少ないは問わない

N1とN2の両方が当てはまった場合だけ、実行力を3問で確認します。

記号 設問
E1 週の稼働の半分以上をリード対応に充てられる人が1人いる
E2 マーケティングと営業のどちらが何を担うかが決まっている
E3 送る中身、つまり自社の顧客が何で迷うかを書ける人が社内にいる

判定は次のとおりです。

結果 判定 最初にやること
N1・N2のどちらかが当てはまらない 見送る 育成ではない打ち手に切り替える
N1・N2が両方当てはまり、E1〜E3が3つとも当てはまる 今すぐ着手 セグメントを1つ決めて配信を始める
N1・N2が両方当てはまり、E1〜E3のうち1〜2つ 範囲を絞って着手 1施策・1セグメントだけに絞る
N1・N2が両方当てはまり、E1〜E3が0 人を確保してから着手 必要な手をどこから持ってくるかを決める

この表の要点は、必要性と実行力を足し算にしていないところにあります。人も分担も揃っているのに検討期間が1週間で決まる商材なら、判定は見送るです。育てる時間そのものが存在しないため、実行力の高さは判定を変えません。

まだ着手しない方がよい状況

見送るという結論は、何もしないという意味ではありません。当てはまらなかった設問によって、代わりに機能する打ち手が変わります。

N1が当てはまらない場合、つまり検討期間が短く問い合わせから数日で決まる商材なら、育成ではなく即応の体制を先に整えます。問い合わせから初回連絡までの時間を短くする、担当が不在でも一次返答が出る当番を決める、初回の打ち合わせで見積もりまで出せる資料を用意する。この3つのほうが受注に直結します

N2が当てはまらない場合、つまり育てる対象のリードが手元にない場合は、獲得の入り口を先に増やします。ここで配信の仕組みだけを作っても、送る相手がいません。展示会の名刺、過去の問い合わせ、資料ダウンロードのいずれかで、月ごとに一定の件数が入ってくる状態を作るのが先です。

先に整えるべき獲得側の土台

獲得の入り口を増やす場合も、闇雲に件数を追うと後で困ります。最低限、どこから来たリードかが記録として残ること、連絡先とあわせて会社名と役職が取れていること、この2つは押さえておきます。この情報が欠けていると、あとでセグメントを切ろうとしたときに切る軸がありません

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ナーチャリングを回す人員と体制

ここで扱うのは人の話です。誰が、週にどれだけの時間を使い、何を持つのか。ナーチャリングが止まる原因の多くは機能の不足ではなく、担当が決まっていないことと、営業との間の取り決めがないことにあります最小構成でいえば3つの役割が必要で、そのうち2つは兼任できます

最小構成の役割分担

必要な役割は、設計する人、作る人、話す人の3つです。

役割 持つ仕事 外に出しやすさ
設計する人 誰にいつ何を送るかを決める。営業への引き渡し基準を決める 社内に残す
作る人 メール本文・資料・ウェビナーの中身を作る 中身の骨子は社内、制作は外に出せる
話す人 反応した相手に電話やメールで接触し、商談化まで運ぶ 外に出せる

設計する人は兼任で構いませんが、決める権限は必要です。作る人と話す人は、社内に手がなければ外の力を借りられます。逆に設計する人が空席のまま制作と架電だけを外に出すと、送る相手と中身が毎回ぶれます

マーケティングと営業で決める3つの合意事項

部門をまたぐ運用は、口頭の了解では回りません。次の3つを文章で決めておきます

合意事項 決める内容 決めていないと起きること
引き渡し基準 どの状態になったら営業へ渡すかを共通のものさしで決める 営業が全件に対応して疲弊し、質が悪いという評価だけが残る
対応スピード 渡されたリードに24時間以内で一次連絡を入れる 熱が冷めたあとに連絡が入り、育成の効果が消える
定例振り返り 週1回、渡した件数と商談化した件数を突き合わせる 基準がずれたまま数か月が過ぎ、原因の特定ができなくなる

3つのうち最も後回しにされやすいのが定例振り返りです。ここを飛ばすと、引き渡し基準が正しかったのかを検証する材料が残りません。まずは15分の枠を週に1つ取るところから始めます。

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兼任で回すときの限界

兼任で回るかどうかの境目は、判断の頻度にあります。月1回の配信を決まった型で回すだけなら、他業務との兼任で成立します。セグメントごとに中身を変え、反応を見て翌週の打ち手を変えるところまで踏み込むと、兼任では持ちません。判断が週単位で発生した時点が、人を増やすか外の手を借りるかを考える合図です

もう1つの限界は、繁忙期に真っ先に止まることです。兼任の担当は本業の締め切りを優先するため、配信が2か月空きます。育成は接触の間隔が空くほど効きが落ちるため、止まった時点でそれまでの積み上げの一部が失われます。兼任で始めるなら、止まっても影響が小さい月1回の型から入るのが現実的です

外注できる範囲と社内に残す範囲

外注できる範囲と社内に残す範囲

ここからは、着手すると決めた読者に向けた判断です。今すぐ着手する、範囲を絞って着手する、人を確保してから着手する、のいずれかに着地した場合に読み進めてください。ナーチャリングは全部を外に出すことも、全部を社内で持つこともできます。分かれ目は業務ごとにあり、自社の顧客理解が判断に効く仕事だけが社内に残ります

外に出しやすい業務と出しにくい業務

前提として、範囲を絞って着手する場合も含め、最初は1施策・1セグメントから始めます。全業務をいちどに振り分けようとすると、決まらないまま止まります。

振り分けは2つの軸で見ます。軸Aはその業務の判断に自社の顧客理解が要るか、軸Bは決まった手順の反復か都度判断かです。

軸Aと軸Bの組み合わせ 一次判定 該当する業務の例
顧客理解が要る × 都度判断 内製 セグメントの定義/シナリオの意思決定/スコアリング基準/送る送らないの最終判断
顧客理解が要る × 反復 併用 コンテンツ制作/インサイドセールスの架電/事例取材
顧客理解が薄い × 反復 外注 メール配信のオペレーション/配信ツールの初期設定/レポート整形/リストのデータ整備
顧客理解が薄い × 都度判断 外注 ツールの選定支援/単発の制作

一次判定が外注または併用になった業務には、もう1つ関門を置きます。その業務について、何を・どの頻度で・何をもって合格とするかを1枚に書けるかどうかです書けない業務は保留とし、外に出す前に社内で決めます

ここで押さえておきたいのは、外に出す業務であっても、発注要件を決める仕事は社内に残るという点です。手を外に出すことと、判断を外に出すことは別です。振り分けた結果として外注が半分を超えても、何を合格とするかを決める人は社内にいます。

担い手別の向き不向き

手を確保する方法は4つあり、どれが優れているという話ではありません。同じ軸で並べると選びやすくなります。

手段 向いている状況 向かない状況 社内への蓄積
現メンバーの兼任 月1回の型が決まった配信を回す 週単位で判断が発生する 残る
中途採用 中長期でマーケティング機能そのものを持つ 3か月以内に立ち上げたい 最も残る
代行会社 作業量が読める定型業務をまとめて任せる 都度判断が多く仕様が動く 残りにくい
業務委託の個人 設計と実務の両方を任せたいが、常勤の枠は置けない 大量の定型作業を安く回したい 進め方次第で残る

この表には自社に不利な補足も入れておきます。単発の作業量が読める仕事は、まとめて発注できる代行会社のほうが単価は下がります社内に人を置ける余力があるなら、採用が最も蓄積します。外部の手を借りる話は、この2つが成立しないときの選択肢です。

判断が切り替わる条件は2つです。1つ目は、発注要件が1枚に書けるかどうか。書けないうちは、まだ外に出しません。2つ目は、その業務の稼働が週単位で読めるかどうか。読めるなら代行会社や業務委託に渡せますし、読めないなら社内に残すか、1か月だけ試す形から入ります。

外注先を見極める確認質問

代行会社や業務委託の候補を比べるときは、実績の件数よりもヒアリングの中身で見極めます。自社の顧客が何で迷うかを尋ねたときの返答に、送る中身の精度がそのまま表れるためです

確認すること 望ましい返答 避けたい返答
自社の顧客が何で迷うか尋ねると 現状をヒアリングしてから仮説を返す 聞く前からテンプレートの型を提案する
配信の本数や頻度の決め方を聞くと 反応を見ながら本数を決めると答える 「まず何通で組みましょう」と即答する
営業への引き渡し基準を聞くと どの基準で渡すかをこちらに質問してくる 一切質問せず全件を配信すると答える
過去の実績を聞くと 業界や商材が近い事例を具体的に挙げる 抽象的な成功事例しか出てこない

4つすべてで望ましい返答が返ってくる相手には、送る中身の判断を任せられます1つでも避けたい返答があった場合は、その項目を深掘りして確認するか、候補から外してください。代行会社にも業務委託の個人にも、同じ基準がそのまま使えます。

外に出しながら社内に残すという進め方も成立します。株式会社SEIRYOの事例では、戦略提案の資料づくりと営業のディレクションを外部のマーケターに任せながら、社内の担当者への教育と提案プロセスの伴走を同時に受け、新規案件の獲得と社員の力量の向上まで到達しました。同社は今後、戦略の設計から新規提案までを自社で進めたいという考えを示しています。

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【株式会社 SEIRYO】SOKKIN MATCH企業インタビュー記事
SOKKIN MATCH 企業インタビューVol.11 株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区 代表取締役:本間亮平)は、マーケター・クリエイターに特化した人財マッチングサービス SOKKIN MATCHの業務委託人財を活用している企業に...

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SOKKIN MATCH 企業インタビューVol.7 株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区 代表取締役:本間亮平)は、マーケター・クリエイターに特化した人材マッチングサービス SOKKIN MATCHの業務委託人材を活用している企業に、...

いずれも公開しているインタビューで語られた内容であり、同様の効果を保証するものではありません。

費用の目安としては、架電などの実務を代行会社や業務委託の個人に任せる場合、固定報酬型で担当者1人あたり月額50万円から70万円程度、成果報酬型ならアポイント1件あたり数万円程度が相場です。想定する月間のアポイント件数に単価を掛け合わせれば、成果報酬型でかかる費用感を試算できます

▼ 外注とツールにいくらかかるかはこちら

リードナーチャリングの費用はいくら?MAツール・外注の相場と費用対効果の計算方法
リードナーチャリングとは、獲得した見込み客(リード)に対して継続的にアプローチし、購買意欲を高めて商談や成約につなげるマーケティング活動を指します。 このナーチャリングとは「育成」を意味し、中長期的な視点で顧客との関係を築く重要なプロセスで...

丸投げが成果に結びつかない理由

複業のマーケターを企業へつないできた立場で見ると、外注がうまくいかない分かれ目はここに集中します。獲得だけを外に出し、育成の設計を空席のままにしている状態です

広告運用を外に出すと、CPA、つまりリード1件の獲得にかかった費用は下がります。件数も増えます。ところが受注は動きません。増えたのは今すぐ客ではないリードであり、それを商談まで運ぶ工程が社内にないためです。獲得側だけを強くする部分最適は、下流の詰まりをむしろ悪化させます。営業には対応しきれない件数が流れ、質が悪いという評価だけが残ります。

もう1つの型は、獲得後のプロセスが決まっていないまま配信の実務だけを外に出すケースです。送る相手の切り方も、営業へ渡す基準も決まっていないため、外部の担当者は全員に同じ内容を送るしかありません。

こうしたミスマッチは仲介する側の問題として見えますが、依頼する側から見ると別の読み方もできます。何を頼むかが決まっていなければ、受ける側にどんな知識と経験が必要かも決まりません。外注が回らない理由は、多くの場合、発注側が何を頼むかを決めていないところに戻ってきます。

立て直しの最初の1手は、外注先を替えることではありません。誰に何を送るかの判断を社内の誰が持つかを決めることです

外注しても発注側に残る責任

外注しても、成果と法律上の最終責任は発注側に残ります。送信するメールの内容、表示する価格や条件、取得した個人情報の扱いは、実務を誰が担っていても発注側の責任です。制作物の権利の帰属と、配信リストの管理方法は、契約の時点で文章にしておきます。

責任が残るということは、確認の工程も残るということです。外部に任せた配信であっても、送信前に社内の誰かが内容を見る枠を1つ置いてください。この枠を省いた運用は、送信後に問題が見つかったときに止める手段がありません。

目的別の代表的な手法と選び方

手法は数多くありますが、並べても選べるようにはなりません。選ぶ基準は2つです。相手が検討のどの段階にいるか、そしてその手法を社内に残す必要があるか。この2つで整理すると、自社が最初に手を付けるものが1つに絞れます。

検討段階別の手法の対応

検討段階を3つに分け、代表的な手法と、社内に残す度合いを並べます。

検討段階 代表的な手法 社内に残す度合い
認知・興味づけ 業界動向のメール/入門ガイド/ウェビナー テーマの選定は社内、制作と配信は外に出せる
比較・検討 導入事例/比較資料/ステップメール どの事例を誰に見せるかは社内、制作は外に出せる
決定支援 個別相談の案内/試算資料/インサイドセールスの架電 話す内容の設計は社内、架電の実務は外に出せる

表の右列が示しているのは、どの段階でも社内に残るのは判断の部分だという点です。テーマを決める、見せる事例を選ぶ、話す筋道を組む。この3つを外に出すと、手法を何種類増やしても中身が揃いません。逆にいえば、この3つさえ社内にあれば、実務の担い手は柔軟に決められます。

なお、認知の段階に偏った配信ばかりを続けると、読まれてはいるのに商談が生まれない状態になります。3つの段階に1つずつ手が置かれているかを、四半期に1回は確認してください

最初に選ぶ1施策の決め方

1施策目は、自分たちで接触の頻度を作れるものから選びます。具体的には、既存のリストに送るメールです。理由は3つあります。相手を自社で選べること、送る間隔を自社で決められること、そして反応が数字で返ってくることです。ウェビナーや広告は、開催や配信の枠に予定が縛られるため、立ち上げの1本目には向きません

送る中身に迷う場合は、直近で受注した商談で相手が最も長く悩んだ論点を1つ選び、それに答える内容にします。営業に3件ヒアリングすれば材料は揃います。新しい資料を作るところから始めると、1本目の配信が数か月先になります。

立ち上げの手順とスコアリング設計

立ち上げの手順とスコアリング設計

立ち上げの手順そのものは複雑ではありません。目的を決め、リード情報を1か所に集め、送る相手を切り、施策を実行し、結果を確認する。詰まるのは手順の途中ではなく、それぞれの段で決めきれないところです。ここでは各段の詰まりどころと、営業へ渡す基準の作り方を扱います。

セグメントとシナリオの決め方

情報の一元管理でつまずくのは、システムの選定ではなく項目の不揃いです。展示会の名刺、問い合わせフォーム、資料ダウンロードで取得している項目が違うと、集めた時点で切る軸がありません。会社名、役職、流入元の3つだけは全経路で揃えます

セグメントで詰まるのは、細かく切りすぎることです。最初は2つに切れば十分です。過去に商談まで進んだが失注した層と、資料だけ取って接触が途切れた層。この2つは必要な内容がはっきり違います。前者には失注理由に答える情報を、後者には課題の整理に使える情報を送ります。

シナリオで詰まるのは、送る本数を先に決めてしまうことです。5通の型を用意しても、2通目で反応が集中していれば3通目以降は不要です。決めるのは本数ではなく、次の行動が起きたときに何をするかです。資料をもう1本ダウンロードした、料金のページを見た、といった行動ごとに、誰が何をするかを1行で書いておきます。

ツールが担う範囲と人が担う範囲

MA、つまりマーケティングオートメーションと呼ばれるツールが担うのは4つです。スコアの自動計算、決めたシナリオに沿った配信、サイト上での行動の記録、そして営業側のシステムへの受け渡し。CRMやSFAと連携させると、営業がどこまで対応したかまで1つの画面で追えます。

人が担うのは、誰に何を送るかの判断と、送る中身を書くことです。ここはツールを入れても空きません。スコアの点数を決めるのも人ですし、配信の結果を見て翌月の内容を変えるのも人です。ツールは手を速くしますが、判断を代わりに下すことはありません

導入の見極め方は、手作業の限界で測ります。配信先の仕分けと配信の準備に毎月まとまった手作業が発生し、送り漏れや二重送信が起きるようになったら、ツールに任せる段階です。反対に、対象のリストを目で確認できる規模のうちは、表計算ソフトとメール配信ツールで足ります。件数の閾値を先に決めるより、自社の作業が回っているかどうかで判断するほうが外しません

スコアリングの配点と合格ライン

営業へ渡す基準は、点数にすると部門間で共有できます。属性と行動の2軸で持つのが基本形です。

種類 項目 配点
属性スコア 決裁権を持つ役職 20点
属性スコア 想定しているターゲット業界 15点
属性スコア 想定している企業規模 10点
行動スコア 料金ページの閲覧 10点
行動スコア 事例資料のダウンロード 15点
行動スコア 問い合わせ 30点

合計点での扱いは3つに分けます。60点以上は営業へ即パス、30点以上60点未満は育成を継続、30点未満は長期育成に回します。属性だけで45点に届く相手でも、行動が伴わなければ60点には届きません。役職が高いだけの名刺が営業に流れるのを防ぐのが、2軸で持つ意味です。

この配点は出発点であり、自社の受注データで調整します。過去1年に受注した商談を10件並べ、それぞれが受注前にどの行動を取っていたかを見れば、点数を足すべき行動と、実は関係がなかった行動が分かります。他社の配点をそのまま運用すると、営業に渡る相手の顔ぶれが自社の受注実績とずれます

成果が出ない典型パターンと立て直し

成果が出ない典型パターンと立て直し

うまくいかないときの形は3つに収束します。追う数字を間違えている、ツールを入れたところで止まっている、部門の間で引き渡しが決まっていない。どれも施策の巧拙ではなく設計の欠落なので、施策を増やしても解決しません。それぞれ立て直しの最初の1手が違います。

数だけを追う施策の行き詰まり

主指標をリードの獲得件数に置いている組織では、件数が伸びているのに受注が変わらない状態が続きます。件数はコントロールしやすい数字なので、目標として扱いやすく、達成もできてしまいます。達成しているのに事業が動かないため、原因の議論が始まりません。

行き詰まりの見分け方は簡単です。リード件数と商談件数を同じグラフに並べ、線が同じ方向に動いているかを見ます。片方だけが伸びているなら、獲得と育成の間で切れています。

立て直しの最初の1手は、マーケティング側の主指標を商談化した件数に置き換えることです。件数は補助指標に下げます。指標を替えると、獲得の量を増やすより、既存のリードから商談を作るほうが早いという判断が自然に出てきます。

ツール導入で止まる運用

ツールを入れたのに使われていないケースには、原因が3つあります。

起きていること 原因 立て直しの最初の1手
導入したが自動化しきれない 送る筋道が決まっていない 顧客が検討で通る道筋を1枚に書き出す
多機能な製品を選んだが形骸化した 現在の運用レベルに合っていない 使っている機能を数え、不要な機能を運用から外す
出てくる数字が信用されない 重複や欠損のあるデータのまま運用している 会社名の表記ゆれと重複の統合を先に済ませる
3つに共通するのは、ツールの側でなく運用の側に原因があることです製品を乗り換えても同じ状態が再現します。乗り換えを検討する前に、上の表のどれに当てはまるかを先に確かめてください。

部門連携の欠落

営業に渡す基準がないと、マーケティング側は反応のあったリードを片端から渡します。営業は全件に対応しきれず、優先順位を自分でつけ始めます。しばらくすると、マーケティングから渡ったリードは後回しにされ、渡す側は成果が出ないと感じ、受ける側は質が悪いと感じます。どちらも相手の問題として見えているため、話し合っても平行線になります

立て直しの最初の1手は、基準の合意ではなく事実の共有です。先月渡した件数と、そのうち営業が接触した件数、商談になった件数を1枚に並べます。この3つの数字を同じ画面で見た時点で、議論は感情から運用の話に移ります。基準を決めるのはそのあとです。

効果測定の指標と見直しの間隔

効果測定の指標と見直しの間隔

測る目的は、成果を報告することではなく、どこを直すかを決めることです。指標は段階ごとに置き、悪い数字が出たときに直す先まで対応させておきます。KPI、つまり途中経過を測る指標を並べただけでは、翌月の打ち手は決まりません。

段階別に見る指標

段階 見る指標 悪いときに直す先
届く 到達率・配信停止率 送信先リストの鮮度と配信の頻度
読まれる 開封率 件名と送信するタイミング
反応する クリック率 送る中身と相手の切り方
営業へ渡る MQLからSQLへの転換率 引き渡しの基準と点数の配分
商談になる 商談化率 渡したあとの初動の速さ
受注する 受注率 商材と相手の適合そのもの

上から順に見ていくのがコツです。開封率が低い状態でクリック率を議論しても、母数が動くだけで原因は分かりません。1段目から順に、想定と離れている最初の段を探します。

配信停止率だけは、他と扱いが違います。低ければよい数字ではあるのですが、極端に低い場合は送信の頻度が足りていない可能性もあります。反応も停止もほとんど起きていないなら、届いていない、あるいは読まれていないと考えて1段目に戻ります。

見直しの頻度と打ち切りの判断

見直しの間隔は、指標の段階によって変えます。開封率とクリック率は配信ごとに見て、その場で件名や送信時刻を変えます。転換率と商談化率は月次で見ます。受注率は四半期単位です。受注は件数が少ないため、月次で追うと偶然の変動に振り回されます。

打ち切りの判断は先に決めておきます。1つの施策について、3回続けて反応が想定の半分に届かなければ止めます止めるのは施策であって、育成そのものではありません。中身を変えて続けるか、別の段階の施策に差し替えるかを、止めた時点で決めます。

判断基準を持たない運用では、成果の出ない配信が惰性で続きます。続けている限り工数は消え続けますが、止めた瞬間に空いた時間で次の施策が作れます。止める基準を決めることは、施策を減らすためではなく、次を始めるために要ります。

よくある質問

本文で扱いきれなかった論点をまとめます。判断に迷いやすいところから順に並べています。

Q. リードナーチャリングとリードジェネレーションの違いは何ですか。

ジェネレーションは接点を作る活動、ナーチャリングは作った接点の中身を変えて購買意欲を引き上げる活動です。評価する数字も違い、前者はリードの獲得件数、後者は商談化率で見ます。両方をまとめて1人の担当に持たせる場合は、月ごとにどちらの数字を優先するかを決めておくと、片方が放置される事態を避けられます。

Q. BtoCでも有効ですか。

検討期間が長く単価の高い商材であれば有効です。住宅、自動車、学習サービス、保険などが該当します。反対に、その場で決まる日用品や低単価の商材では、育成に使う時間の間に購入が終わります。BtoCで取り組む場合は、法人よりも意思決定に関わる人数が少ないぶん、送る回数を絞って1通あたりの中身を厚くする設計にします。

Q. MAツールは必須ですか。

必須ではありません。送る相手を目で確認できる規模なら、表計算ソフトとメール配信ツールで運用できます。ツールに移すのは、仕分けと準備の手作業が毎月まとまって発生し、送り漏れや二重送信が起き始めてからで間に合います。導入を検討するときは、機能の多さではなく、いま手作業でやっている工程のどれが消えるかで比べてください。

Q. 効果が出るまでどのくらいかかりますか。

段階によって違います。開封率とクリック率は最初の配信から動きます。商談化率が動くのは、読者の検討期間そのものが挟まるためもっと後です。自社の平均的な検討期間を1回分待つのが最短の目安になります。過去の受注案件で、初回接触から受注までの日数を10件分平均すれば、待つべき期間が自社の数字で出ます。

Q. リードが少なくても始められますか。

始められます。母数が少ないほど1件あたりに手をかけられるため、手作業でも回せます。件数が少ないことは着手しない理由になりません。ただし、過去の未商談リードも継続して入ってくる流入も両方ゼロなら、育成より先に獲得の入り口を増やすほうが効果が大きくなります。手元のリストを数えて、1件もないのか、少ないだけなのかを先に確かめてください。

Q. 休眠リードはどこから手を付けますか。

過去1年分から始めます。手を付ける順番は、接触が新しい順ではなく、当時の検討理由が今も残っている可能性が高い層からです。具体的には、失注の理由が予算や時期だった商談を先に見ます。機能が合わなかった、他社に決まった、という理由の相手は優先度を下げます。最初の1通は営業からの近況伺いではなく、当時の論点に関する情報の提供にすると反応が取りやすくなります。

Q. 失敗したら元に戻せますか。

配信そのものは止めれば止まります。戻しにくいのは、送りすぎて配信停止された相手との接点です。そうした相手には別経路での接触も届きにくくなるため、頻度を上げる変更は、対象を絞って1か月試してから全体に広げてください。立て直す場合は、配信を止める、反応があった相手だけのリストを作り直す、そのリストに月1回から再開する、の順で進めます。

まとめ 着手と外注の判断軸

ナーチャリングの判断は、着手の可否と、社内に残す範囲の2つに分かれます。着手の可否は、検討期間が1か月を超える商材か、育てる対象のリードが手元にあるかの2問で決まり、どちらかが欠けていれば見送るのが正解です。着手する場合の結論は、人と分担の揃い方によって、今すぐ着手する、範囲を絞って着手する、人を確保してから着手する、の3つに分かれます。

社内に残す範囲は、自社の顧客理解が判断に効くかどうかで決めます。誰に何を送るかの判断、営業へ渡す基準、送る中身の骨子。この3つは外に出しません。制作、配信のオペレーション、架電の実務は外に出せます。外に出す業務であっても、何を・どの頻度で・何をもって合格とするかを1枚に書くのは社内の仕事です。書けないうちは、まだ外に出しません

明日からできることは4つあります。

  • 過去1年の未商談リードを1つの表に集め、件数と失注理由を数える
  • 営業と、どの状態になったら渡すかの合格ラインを1行で決める
  • 外に出す候補の業務を1つ選び、発注要件を1枚に書いてみる
  • 最初の1施策を1つだけ選び、既存のリストへの配信から始める
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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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