確定申告は毎年2月16日から3月15日までの期間で行われ、個人の所得税の金額を申告して納税するための手続きです。
確定申告は主に個人事業主やフリーランスなどの人が毎年行っていますが、会社員の場合でも医療費控除や住宅ローン控除の申請、ふるさと納税をした場合、年末調整ができなかった場合、副業で給料以外の収入があったときなどに確定申告が必要なります。
確定申告が初めての人にとっては、以下のような疑問も出てくるのではないでしょうか?
そこで、この記事では確定申告の流れや手順、やり方などについて詳しく解説します。
確定申告の対象者や年末調整との違い、手続きの期限、確定申告をしなかったらどうなるのかといった細かい点についても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
確定申告とは
確定申告は個人の所得税の金額を申告して納税するための手続きです。
その人の1月1日から12月31日までの1年間の収入を合計し、経費や各種の控除を差し引いた金額から所得税の納税額を計算して、税務署に申告します。具体的には、確定申告書という決められた書式の書類に収入や経費、控除額を順番に記入していき、完成した申告書を税務署に提出する手続きを行います。
同時に、申告した金額の所得税を金融機関の窓口や口座振替などで税務署に納税する手続きも行います。確定申告書の提出と所得税の納税の2つを、毎年2月16日から3月15日までの期間に行うのが確定申告の手続きです。
確定申告を行うのは主に個人事業主やフリーランス、副業をしている人、株や不動産投資の利益がある人などが行います。ただし、給料をもらって生活をしている会社員でも、医療費控除などで還付を受けるために確定申告が必要になる場合があります。
確定申告の対象となる人とならない人は?
確定申告は所得税の納税をする大切な手続きですが、すべての人が毎年行うわけではありません。
以下のように、確定申告の対象となる人とならない人がいます。
- 対象となる人(確定申告をするのが義務)
- 対象にならない人(確定申告をしなくてもよい)
- 確定申告をしたら得する人(した方がよい)
どのような人が対象になり、どのような人が対象にならないのか以下で解説します。
対象となる人
確定申告の対象となる人をまとめると以下の表のようになります。
収入の種類 | 確定申告の対象となる条件 |
サラリーマン | ・給料が年2,000万円を超えている人 ・給料のほかに所得があり、年20万円を超えている人 ・医療費控除などを受ける場合 |
アルバイト・パート | ・給料のほかに所得があり、年20万円を超えている人 ・医療費控除などを受ける場合 |
個人事業主 | ・所得が年48万円を超える場合 |
年金受給者 | ・年金のほかに所得があり、年20万円を超えている人 ・医療費控除などを受ける場合 |
サラリーマンやアルバイト・パートの場合は基本的に確定申告の対象外ですが、例外として年末調整で対応できない手続きが発生する場合に確定申告が必要となります。
具体的には、給料の年収が2,000万円を超えた場合と、副業などで勤務先の給料以外の所得がある場合は、勤務先の年末調整では手続きができませんので確定申告の対象となります。また、医療費控除や雑損控除など、年末調整で対応できない所得控除を受けるときも確定申告が必要です。
個人事業主やフリーランスの場合は、その年の所得が48万円を超えるなら確定申告の対象です。所得とは収入から経費を差し引いて残った金額のことです。
対象にならない人
確定申告の対象にならない人をまとめると以下のようになります。
収入の種類 | 確定申告の対象とならない条件 |
サラリーマン | ・年収2,000万円を超えず、年末調整を行った場合 |
アルバイト・パート | ・給料が103万円以下の場合 |
個人事業主 | ・所得が年48万円以下の場合 |
年金受給者 | ・年金以外に所得がない場合 |
このように、確定申告が不要なのは、主に源泉徴収されている人と、所得が少ないため所得税が発生しなかった人の2つのケースです。
サラリーマンやアルバイト・パートで働いている人は毎月もらっている給料から所得税が天引きされています。さらに、年末調整で各種控除の申請もしています。この2つの手続きですでに所得税の納税が完了していますので、改めて確定申告をする必要はありません。
個人事業主の場合は、所得が48万円以下で所得税が発生しなかった場合は確定申告が不要となります。これはすべての人に適用される基礎控除の控除額が48万円だからです。所得が48万円以下の人に基礎控除を適用すると課税所得が0円となるため、所得税が発生せず、確定申告をする必要もなくなります。
所得税はいくらから発生する?税率や控除などをケース別に紹介
確定申告したら得する人、申告した方がいい人とは?
確定申告の義務はないものの、確定申告をした方がいい人もいます。たとえば、以下のような人です。
- 医療費控除が受けられる人
- 住宅ローン控除の初年度の手続き
- ふるさと納税の手続き
医療費控除は年間で一定以上の医療費を支払った場合に受けられる控除です。年末調整では申告できないため、確定申告をすれば給料から天引きされた税金が戻って来る場合があります。
住宅ローン控除については2年目以降は年末調整で手続きができますが、初年度は確定申告が必要です。
ふるさと納税では確定申告が不要になるワンストップ特例制度がありますが、寄付する自治体が5か所以内など条件があります。ワンストップ特例を利用しない場合は、自分で確定申告をして寄付金控除を申請すれば税金の還付を受けることができます。
確定申告の手順ややり方とは?
ここからは確定申告の手順とやり方を具体的に詳しく解説していきます。
まず確定申告の手順を簡単にまとめると以下のようになります。
このように、全体の流れはシンプルです。それぞれの手順を詳しく見ていきましょう。
1.必要な書類を用意する
確定申告をするために必要な書類は、主に以下のようなものがあります。
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 確定申告書
- 銀行口座がわかる書類
- 所得を証明できる書類
- 控除証明書
- 領収書やレシート、帳簿
以下でそれぞれの書類について詳しく紹介します。
本人確認書類(マイナンバーカードなど)
確定申告に必要な本人確認書類は、以下の表のようにマイナンバーカードを持っているかどうかで変わります。
マイナンバーカードの有無 | 必要な本人確認書類 |
持っている | マイナンバーカードのみで手続き可能 |
持っていない | 以下の2点が必要
・マイナンバーが確認できる書類 |
確定申告を行う際に、確定申告書にマイナンバーを記載します。マイナンバーを通知する際に、本人確認書類を提出する必要があります。
マイナンバーカードを持っている場合は、カードにマイナンバーが記載されており、さらにマイナンバーカード自体が本人確認書類となります。そのため、マイナンバーカードが1枚あればそれ以外の本人確認書類は必要ありません。
マイナンバーカードを持っていない人は、住民票の写しなどマイナンバーカードが記載された番号確認書類と、運転免許証など身元の確認ができる本人確認書類がそれぞれ1点ずつ必要となります。
確定申告書
次に、確定申告書を用意します。確定申告書とは、納税者の氏名や住所、個人番号や収入、所得、所得控除などを記入して所得税の税額を申告するための書類です。
確定申告書の入手方法は以下の3つがあります。
- 税務署などに取りに行く
- 郵送で送ってもらう
- インターネットで入手する
まず、税務署や役所の窓口や、商業施設の催事コーナーなどで準備されている紙の確定申告書を取りに行くという方法があります。
また、管轄の税務署に申請して自宅に郵送で送ってもらうという方法もあります。手書きで記入して提出したいときはどちらかの方法をとるとよいでしょう。
国税庁ホームページや会計ソフトを使ってインターネットでダウンロードして入手する方法もあります。
銀行口座がわかるもの
税金の還付を受けるときは、銀行口座がわかる書類を準備します。
これは、所得税の還付が発生したときに、税務署からの還付金の振込口座として登録するために必要です。
所得を証明できるもの
所得金額を証明できる書類も必要です。
会社員やアルバイトの人は、勤務先から源泉徴収票という書類が発行されますので、そこに所得金額が記載されています。同様に、年金を受給している人も、年金機構などから源泉徴収票が発行されます。
これらの書類を作成するもとになる日々の取引を記帳した帳簿や、収入や報酬を受け取るときの請求書、経費の支払いをしたときの領収証やレシートなどが所得を証明する書類となります。
控除証明書
控除証明書とは所得控除を適用できることを証明する書類のことです。
たとえば以下のような書類を証明書として準備します。
所得控除の種類 | 準備する控除証明書 |
医療費控除 | 病院や薬局の領収証、医療機関からの医療費の通知 |
社会保険料控除 | 健康保険組合、市町村、日本年金機構などが発行する領収証や証明書 |
生命保険料控除 地震保険料控除 |
保険会社が発行する証明書 |
寄付金控除 | 寄付金の受領証 |
住宅ローン控除 | 年末残高等証明書、計算明細書、登記事項証明書など |
医療費控除や各種の保険料控除は1年間で支払った金額によって控除額が決まりますので、申告内容を証明できる書類を準備する必要があります。
申告書を作成するときは、証明書に記載された金額を見ながら書き写せば、勘違いや記入ミス・入力ミスを防げるでしょう。
住宅ローン控除のように多数の書類が必要になる控除もあります。申告する所得控除の種類によって必要な書類が変わりますので、早めに準備するようにしましょう。
領収書・レシートや帳簿
事業所得や不動産所得、山林所得がある人は領収書やレシート、帳簿の用意も必要です。
これらの所得の申告では青色申告決算書または収支内訳書を作成して、実際に発生した収入と経費の合計を正確に記入する必要があります。そのためには、1年間の取引の記録をまとめた帳簿や、記載内容の証拠となる領収書やレシート、請求書などが必要です。
帳簿には報酬や売上などの収入と、事業用に支払った経費を日々記録しておきます。確定申告の時期になって1年分をまとめて処理するのは大変なので、普段から記録をつけておき、帳簿を整理しておくことが大切です。
2.青色申告か白色申告どちらを使うか決める
事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかがある場合は、申告方法として青色申告と白色申告のどちらを使うかを選択できます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、どちらの方法で申告するか選びましょう。
青色申告とは
青色申告とは事前に税務署に開業届を出して、青色申告の申請をすることで節税制度が利用できるようになる申告方法です。
対象の所得の種類は事業所得や不動産所得、山林所得の3種類なので、これらの所得が長期的に継続して発生する場合は青色申告の申請を検討しましょう。
白色申告とは
事前に青色申告の申請を行っていない場合、事業所得の申告は白色申告となります。
青色申告で義務となる複式簿記は不要で、収支内訳書というシンプルな書式で売上や経費などをまとめて申告します。
3.確定申告書の作り方を4種類から選ぶ
書類の準備が完了し、申告方法が決まったら確定申告書の作成を行います。
確定申告書の作り方は主に以下の4種類がありますので、自分に合った方法を選びましょう。
- 紙の申告書を入手して手書きで記入する
- 会計ソフトを使い、自分で作成する
- 国税庁ホームページの「確定申告作成コーナー」で作成する
- 税理士に依頼して作成してもらう
それぞれの方法のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
作り方 | メリット | デメリット |
手書き(無料) | パソコンやプリンターがなくても作成できる | 金額計算を自分で行う必要がある |
会計ソフト(有料) | 自動的に計算してくれるので計算ミスの心配がない | 費用がかかる |
確定申告書作成コーナー(無料) | 自動的に計算してくれるので計算ミスの心配がない 費用がかからない |
会計ソフトと比べると若干使いにくい |
税理士(有料) | 専門家に任せられる | 高額な費用がかかる |
4.確定申告書を作る
税理士に任せる場合以外は、確定申告書を自分で作成します。確定申告書には第一表と第二表がありますので、それぞれ必要な項目を埋めていきましょう。
第一表では納税者の氏名や住所、生年月日、個人番号などを記入し、収入や所得、所得控除の控除額を記入していきます。たとえば個人事業主なら帳簿から収入や所得を記入し、会社員なら源泉徴収票に記載された金額を転記することになります。
第二表では所得の内訳や、各種控除の控除額の元になる保険料や寄付金の支払額、配偶者控除や扶養控除を申請する場合は該当する人の氏名などを記入していきましょう。
手書きの場合は紙の確定申告書にボールペンで記入します。確定申告書作成コーナーや会計ソフトを使う場合は、パソコンのキーボードで文字や金額を入力していき、e-Taxで送信するかプリントアウトして確定申告書を作成します。
5.税務署に提出する
確定申告書ができたら、それを税務署に提出します。
提出方法は以下の3種類から選びましょう。
- e-Tax
- 郵送
- 税務署の窓口に持参する
e-Taxはインターネットを通じてオンラインで確定申告書を提出する方法です。申告内容をデータで提出できますので、紙の申告書を提出する必要がなくなります。会計ソフトを利用している場合は、会計ソフトにe-Taxで提出する機能がそなわっていることが多いので、申告の作業が楽になり、ペーパーレスで手続きできます。ただし、マイナンバーカードを読み込む必要がありますので、対応するICカードリーダーまたはスマートフォンが必要になります。
作成した申告書をプリントアウトしたり、紙の申告書に手書きで記入したりして郵送で送ることもできます。返信用の封筒と切手を同封すれば収受印が押された控えを返送してもらうことができます。
税務署の場所が近いなら、作成した申告書を直接窓口に持参することもできます。受付は17時までですが、時間外収受箱に投函することもできます。
6.税金を納付する、または還付を受ける
最後に、計算した所得税を納付します。または、還付が発生する場合は還付を受ければ手続き完了となります。
それ以外の場合は所得税の納税が必要となります。確定申告書の記入時に計算した金額の所得税を納税して手続き完了となります。
以下で税金の納税方法や還付手続きについて解説します。
税金の納付方法を紹介!
確定申告での所得税の納付方法は以下の6種類があります。
- 現金納付
- コンビニ納付
- 振替納税
- インターネットバンキング
- スマホアプリ
- クレジットカード
現金納付は税務署窓口や銀行などの金融機関で納税する方法です。パソコンの画面での決済が苦手な人におすすめです。
振替納税は銀行口座を登録して引き落としで納税する方法です。振替日は4月下旬なので、支払いの期日を3月15日よりも後に伸ばすことができます。ただし口座の残高不足には注意しましょう。
銀行口座の残高から即時引き落としして納税するには、インターネットバンキングでの支払いを選択しましょう。
スマホアプリでの納付は、PayPayやd払いなどスマホ決済で納税する方法です。普段からキャッシュレス決済をよく利用する人におすすめです。
クレジットカードで納税する方法もあります。後日クレジットカード会社からの請求となりますので、実際の支払いを3月15日以降にすることができます。
税金が納付されるときの流れとは?
税金が還付されるときは、税務署から銀行口座に振込を受けるか、またはゆうちょ銀行の窓口で受け取る方法があります。
還付金を振込で受け取るには、確定申告書に受取用の口座を記入します。申告から約1ヶ月から2ヶ月程度で登録した口座に振り込まれます。
なお、e-Taxで確定申告を行った場合は、還付金の振込が早くなり、目安として2週間から3週間程度で受け取れます。
ゆうちょ銀行または郵便局で受け取るには、確定申告書に受取希望の郵便局名を記入して提出します。後日郵送で通知書が届きますので、郵便局に持参して受け取りの手続きを行いましょう。
確定申告はスマホでも出来る?
確定申告はスマホでもできます。パソコンを持っていない人も、スマホを使って確定申告書を作成すれば、手書きで記入するよりも手間が少なく、計算ミスのリスクも減らすことができます。
スマホで確定申告をするには、国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーを利用しましょう。パソコンの大きな画面で操作した方が見やすいですが、スマホで申告書の作成もできます。
確定申告の期間はいつ?
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までと決まっています。この期限までに以下の2つの手続きを済ませる必要があります。
- 確定申告書の提出
- 所得税の納税
申告書の提出はe-Taxや郵送、窓口に持参という方法がありますが、方法によって厳密な締切の違いがあります。
提出のやり方 | 期限 |
e-Tax | 3月15日中(日付が変わるまで) |
郵送 | 3月15日の消印 |
税務署に持参 | 窓口での手渡しは17時まで 時間外収受箱は翌朝まで |
所得税の納税についても3月15日までが期限となります。金融機関での納付やコンビニ納付、クレジットカード、インターネットバンキングなど様々な方法がありますが、3月15日までに納付したうえで申告書の提出を行いましょう。
確定申告をしないとどうなる?
確定申告をする義務があるのにしなかった場合は、以下のような罰則の対象となる場合がありますので注意しましょう。
- 無申告加算税
- 延滞税
無申告加算税は対象の所得税に15%〜20%の金額が上乗せで加算されるものです。延滞税は最大で年14.6%の割合で延滞期間に応じて継続的に加算されます。
確定申告の義務がなく、確定申告をした方が税金の負担が軽くなるという場合は、上記のような罰則はありません。
たとえば、還付申告で控除の申請をすればお金が戻って来る場合は、還付申告をしなかったからといってペナルティがあるわけではありません。ただし、還付申告の期限が過ぎると払いすぎた税金の還付を受けられなくなりますので注意しましょう。
各種控除の確定申告のやり方を紹介します!
ここでは各種控除の確定申告のやり方について紹介します。
医療費控除の確定申告のやり方
医療費控除は年間の医療費の支出が多かった場合に税負担を軽減してくれる制度です。1年間で支払った医療費が10万円を超えた場合に最大200万円までの控除を受けることができます。
医療費控除は年末調整で申告できませんので、確定申告が必要です。年間に支払った医療費の金額から控除額を計算して確定申告書に記載します。医療費控除の明細書を作成し、申告書と一緒に税務署に提出します。支払った医療費の通知や領収証などは保管しておくようにしましょう。
住宅ローン控除の確定申告のやり方
住宅ローン控除では、住宅ローンを契約してマイホームを新築したり購入したりした場合に、ローンの残高によって控除が受けられます。正式名称は住宅借入金等特別控除です。
ローンの返済期間が10年以上で、自分が住むための住宅であることなど条件がありますが、ローン残高の1%に相当する金額の控除を最大13年間受けることができます。
住宅ローン控除を初めて申請する初年度については確定申告が必要です。住宅ローンの年末時点の残高が記載された証明書や、登記事項証明書などの書類を準備し、確定申告書と一緒に税務署に提出する手続きが必要です。
ふるさと納税の確定申告のやり方
ふるさと納税は自分が選んだ自治体に寄付をすることで、寄付した金額のうち2,000円を超える部分の控除を受けられる制度です。応援したい自治体に寄付を行い、返礼品も受け取れることから人気のある制度です。
ふるさと納税で自治体に寄付した場合、所得税の寄附金控除の対象となります。確定申告書の寄付金控除の項目に控除額を記入し、寄付金受領証明書を添付して提出します。
なお、ふるさと納税にはワンストップ特例という制度があり、条件を満たせば確定申告書が不要になります。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」という書類を寄付した自治体に提出することで、全額が住民税から控除されるという仕組みです。
外国税額控除の確定申告のやり方
外国税額控除は外国で発生した所得について、外国ですでに所得税に相当する税金を納めている場合に、日本の所得税の確定申告で所得控除を受けられる制度です。外国と日本で二重に課税されるのを防ぐことができます。
外国税額控除は年末調整では申告できませんので、会社員であっても確定申告が必要です。
確定申告のやり方は、外国税額控除に関する明細書(居住者用)という書類を作成し、確定申告書に添付して提出します。その際に外国で所得税を課税されたことを証明できる書類も準備しておく必要があります。
インボイスの影響で確定申告のやり方は変わる?
インボイス制度は2023年10月から始まった消費税についての新しい制度です。事業者が消費税の仕入税額控除を受けるためには適格請求書が必要となり、適格請求書を発行するにはインボイス発行事業者として登録する必要があります。
売上が1,000万円以下の場合は消費税の免税事業者となりますが、インボイス発行事業者の登録をすると、売上が1,000万円以下でも消費税の確定申告が必要になります。手続きの流れとしては、「消費税及び地方消費税の申告書」という書類を作成して4月1日までを期限として提出し、消費税の納税を行います。
【インボイス制度とは?】わかりやすく解説
確定申告と年末調整の違いとは?
確定申告と年末調整はどちらも所得税の計算を行い、所得控除の申告をするための手続きなので、どのような違いがあるのか分かりにくいかもしれません。
年末調整は会社員やアルバイト、パートなど勤務先から給料を受け取って生活している人だけが行う手続きです。このような人は毎月の給料から所得税が天引きされていますので、自分で確定申告をしなくても勤務先が代わりに所得税を納税しています。所得控除の申請をするために勤務先で年末調整を行い、正確な所得税の金額に調整しています。
一方で、確定申告は個人事業主やフリーランスなど給与所得者出ない人は、所得税の源泉徴収は行われていません。そのため、収入や経費から自分で所得税の納税額を計算して納税しています。この税額の申告と納税を行う手続きが確定申告です。
年末調整のやり方まとめ!対象者や提出書類、忘れた場合の対処法まで完全解説!
年末調整をしてない人の確定申告のやり方は?
事情があって年末調整ができなかったということもあるでしょう。年末調整の書類を出し忘れてしまったり、申請できる所得控除の項目を記入し忘れたなどの場合が考えられます。このようなときは、まずは勤務先の担当者に年末調整の手続きの修正などができないか相談してみましょう。
勤務先での対応が難しい場合は、自分で確定申告をするという方法があります。この場合は以下の2つの手続きがあります。
- 確定申告を行う(翌年3月15日まで)
- 還付申告を行う(5年間)
確定申告書を使って所得控除の申告をすることで、年末調整で行うはずだった手続きを自分で行うことができます。勤務先から受け取っている源泉徴収票にその年の給料の金額と天引きされた所得税の金額が記載されていますので、その数字をもとに確定申告書を作成しましょう。
改めて行うのが所得控除の申告のみで、払いすぎた所得税が戻ってくる場合は、還付申告の手続きとなります。この場合は、翌年の1月1日より5年間までが期限となります。
所得税はどのように計算すればいい?
ここでは、所得税の計算方法について解説します。
所得税の税額は、確定申告の記入欄を順番に埋めていけば算出されるようになっていますが、基本的な計算式は以下のようになります。
- 所得税額 = (所得 – 所得控除) × 税率 – 税額控除
所得から所得控除を引いて求められる課税所得に税率を掛け、得られた数字から税額控除を引いた金額が所得税の金額です。このように、所得税額は単純な引き算と掛け算だけで計算することができます。
あとは、「所得控除」「税率」「税額控除」について理解できれば簡単に所得税額が計算できるようになりますので、以下で具体的に解説します。
所得控除とは
所得控除は、条件に当てはまる場合に所得から差し引くことができる控除のことです。
配偶者や家族を扶養する人や、保険料や医療費を支払った人など、その人の状況に応じて税負担を軽減してくれる制度です。
所得控除は以下のような種類があります。
- 基礎控除
- 扶養控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 医療費控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
このように、所得控除は15種類あり、条件に当てはまるものはいくつでも申告することができます。
税率とは
所得から所得控除を引いた金額に税率を掛けると所得税額が計算されます。
日本の所得税の税率は累進課税になっており、所得が大きいほど税率も高くなっていきます。
具体的な税率を国税庁ホームページから引用したものが以下の表です。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用元:所得税の税率|国税庁
税額控除とは
税額控除とは、一定の条件を満たしたときに、課税所得に所得税率を掛けて計算した金額から、さらに差し引くことができる控除のことです。
税額控除の例を挙げると以下のようなものがあります。
- 外国税額控除
- 住宅耐震改修特別控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 認定住宅等新築等特別税額控除
- 配当控除
- 認定NPO法人等寄附金特別控除
- 公益社団法人等寄附金特別控除
- 政党等寄附金特別控除
年末調整で申告できる控除とできない控除
会社員やアルバイト・パートで働いている人は、毎年11月ごろから勤務先で行われる年末調整で所得控除を申告できます。
たとえば配偶者の所得や社会保険料の支払額など、一般的な控除については勤務先で手続きができますので、会社員やアルバイト・パートで働いている人は基本的には確定申告をする必要はありません。
しかし、一部の控除は勤務先の年末調整では申告できないため、適用するためには確定申告をする必要が出てきます。
以下で年末調整で申告できる控除とできない控除について解説します。
申告出来る控除
年末調整申告できる所得控除は以下のとおりです。
- 基礎控除
- 扶養控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 小規模企業共済等掛金控除
これらの控除は勤務先の年末調整で申告できます。その年に申告する必要がある控除が上記にあるものだけの場合は、確定申告をする必要はありません。
申告出来ない控除
年末調整では申告できない所得控除は以下の3つがあります。
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
医療費控除は一定額以上の医療費がかかった場合に申告できる控除で、家族の医療費も含めて計算できますのでよく使われる控除です。
確定申告のソフトは導入すべき?
確定申告ソフトは、申告書に記載する項目をパソコンやスマホの画面上で入力できるソフトです。
e-Taxや手書きでの確定申告書作成と比べて、申告書の作成や申告手続きをサポートしてくれる便利な機能がありますので、手間がかからずスムーズに手続きを完了できます。
確定申告のソフトを導入するメリットとは
確定申告のソフトを導入することで以下のようなメリットが期待できます。
確定申告ソフトを使えば画面に表示される案内に従って必要事項を入力していくだけで申告書が完成します。初めて確定申告を行う人でもスムーズに作成できるでしょう。
自動で金額の計算が行われるので計算ミスを防げるのもメリットです。金額計算やチェックにかかる時間が節約できますので、申告書作成の作業時間も短くなります。
確定申告ソフトの選び方のコツとは
確定申告ソフトを選ぶときは、以下のようなポイントで検討するとよいでしょう。
- オンラインで使うクラウド型か、インストールしてローカルで使うソフトか
- 青色申告と白色申告の両方に対応しているかどうか
- スマホでの操作に対応しているか
- 他のソフトやサービスと連携できるか
- 無料トライアルの有無
- ユーザーサポートが充実しているか
ブラウザでアクセスしてオンラインで使うクラウド型と、パソコンにインストールしてローカルで使うタイプがあります。クラウド型はパソコンやスマホなど複数のデバイスからアクセスできてデータをサーバーに保存できるため利便性が高くなります。
事業所得などを申告する人は、青色申告と白色申告の両方に対応可能かも確認しておきましょう。
スマホでの操作に対応しているか、他のソフトと連携する機能があるかも重要なポイントです。スマホ対応しているソフトは経費の領収書などをカメラで撮影して画像で保存できて便利です。
使い勝手を実際に試せる無料トライアルがあるかどうかや、使ってみて不明点があるときに問い合わせできるユーザーサポートが充実しているかどうかも重要なポイントです。
おすすめの確定申告ソフトを紹介!
おすすめの確定申告ソフトとそれぞれの特徴について紹介します。
サービス名 | タイプ | 青色申告/白色申告 | スマホ対応 | 無料トライアル | サポート |
弥生会計オンライン | クラウド型 | 青色申告と白色申告のいずれかを選択 | スマホアプリあり | ・無料プランあり ・有料プランの最初の1年間無料 |
電話・メールサポート(有料プランのみ) |
クラウド会計freee | クラウド型 | 両方対応 | スマホアプリあり | 30日間無料お試し | メール・チャットサポート |
マネーフォワード クラウド確定申告 | クラウド型 | 両方対応 | スマホアプリあり | 1ヶ月無料お試し | メール・チャットサポート |
ジョブカン会計 | クラウド版・デスクトップ版 | 両方対応(クラウド版は青色申告のみ) | スマホアプリあり | 30日間無料お試し | メールサポート |
上記の表でまとめた確定申告ソフトはいずれも利用者が多く評価も高いためおすすめです。
確定申告ソフトはクラウド型が主流で、スマホアプリも配信されているサービスが多いです。クラウド型は法改正や新機能アップデートがあると自動的に適用されるというメリットがありますが、料金は買い切りではなく月単位または年単位で継続的に課金が発生するサブスク型のプランとなります。
確定申告ソフトの料金が気になるなら、ずっと無料で使えるプランがある弥生会計オンラインがおすすめです。
ただし無料プランにはサポート対応がありませんので、不明な点は自分で調べて解決する必要があります。
困ったときのサポート付きで安心して利用するには、有料プランの契約を検討しましょう。ここで紹介した確定申告ソフトにはいずれも無料トライアルがありますので、実際の使い勝手を試してから自分に合ったサービスを選びましょう
まとめ
この記事では、確定申告のやり方や手順、申告しないとどうなるかなどの点について詳しく解説しました。
確定申告の対象になるのは主に個人事業主やフリーランスなどの人ですが、医療費控除など年末調整で申告できない所得控除を申請する場合や、副業をしている場合は会社員も対象となります。
確定申告の主な手続き内容は、確定申告書の作成と提出、所得税の納税です。確定申告書の作成方法には、国税庁の確定申告書作成コーナーや会計ソフト、紙の申告書に手書きなどがあります。
納税方法は金融機関での現金払いや口座振替、PayPayなどのスマホアプリ、コンビニ払い、クレジットカードなど様々ありますので、自分に合った方法を選びましょう。
確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までと決まっています。約1ヶ月間の期間がありますが、できるだけ事前に準備をしておき、早めに手続きを完了させましょう。
確定申告が必要なのに申告しなかった場合、無申告加算税や延滞税が加算されて本来より税金が高くなってしまいます。還付申告のみの場合でも、期限は5年間となり、過ぎてしまうと払いすぎた税金が戻ってこなくなりますので注意しましょう。
確定申告の細かいやり方について理解は深まりましたでしょうか?ぜひこの記事を参考にしていただき、スムーズに確定申告の手続きを完了させてください。
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