事業拡大のマーケティング人材|方向別の役割と人数の逆算

事業拡大のマーケティング人材|方向別の役割と人数の逆算 マーケティング

事業拡大で要るマーケティング人材は、拡大の方向から最初に任せる役割を1つ決め、売上目標から人数を、拡大の開始日から確保の期限を逆算して決めます。拡大を決めたものの、誰を・何人・いつまでにそろえるかで手が止まっている方は少なくありません。人数を感覚で決めると、足りない機能が空いたまま拡大が始まります。

この記事では、拡大の方向ごとに最初に任せる役割、売上目標から必要な人数を出す式、確保が間に合わないときに開始を延ばすか、範囲を絞るか、外部で先に埋めるかの選び方を順に示します。マーケティング人材の定義や採用・育成の進め方は、判断に要る要点だけにとどめます。

事業拡大の方向とマーケティング人材の関係

事業拡大の方向とマーケティング人材の関係

最初に要るマーケティング人材は、何を広げるかで変わります。既存の顧客を深めるのか、新しい市場へ出るのか、新しい商品を足すのかを先に1つに決めると、任せる役割と人数の見積もりが具体的になります。

市場と商品で分ける4つの拡大の方向

拡大の方向は、売る相手(市場)と売るもの(商品)が既存か新規かで4つに分けられます。経営の分野で広く使われる、アンゾフの成長マトリクスの考え方です。

方向 市場 商品 拡大の中身
市場浸透 既存 既存 今の顧客への追加販売や、同じ顧客層での取引先の数を増やす
市場開拓 新規 既存 今の商品を新しい地域・業種・企業規模へ売る
新製品開発 既存 新規 今の顧客に新しい商品・サービスを売る
多角化 新規 新規 新しい市場に新しい商品で入る

自社の拡大計画がどれに当たるかを、まず1つ選んでください。複数に当たるときは、売上目標の増加分を最も多く担う方向を選びます。最初の人材の役割は、その方向で決まるためです。

多角化と新規事業を別に考える理由

多角化は、新しい市場に新しい商品で入る立ち上げ(0から1)です。既存の顧客も販売の実績もない所から始めるため、要るのは売り方の仮説を立てて検証していける人で、既存事業を広げるときとは人の選び方が変わります。この記事では残りの3つの方向を扱い、多角化と新規事業のマーケティングは別の記事で扱います。

▼新規事業のマーケティングで最初に何から手を付けるかを知りたい方はこちら
新規事業のマーケティングの始め方|最初の3か月とやめる基準
何から手を付けるか迷う新規事業のマーケティングは、仮説で小さく試し、売れる状態を確かめてから集客に投資するのが基本です。顧客データも認知も無い段階で広告や展示会に予算を入れると、商談にならないリードが増えるだけで終わりやすくなります。先に狙...

拡大の方向ごとに最初に任せる役割

拡大の方向ごとに最初に任せる役割

最初の1人に任せる役割は、拡大の方向ごとに違います。既存の顧客を深めるなら顧客データを使う運用、新しい層へ広げるなら小さく試して反応を測る集客、新しい商品を足すなら訴求づくりから入ります。全部を同時に埋めようとせず、方向に合う1つから始めます。

方向別に任せる役割の早見表

3つの方向で最初に任せる役割を、表にまとめました。実績を集計したものではなく、方向ごとの仕事の違いから組んだ目安です。自社の行を見て、最初の役割を1つ決めてください。

方向別の役割と残す判断

拡大の方向 最初に任せる役割 社内に残す判断 先に足す機能の例
既存の顧客と市場を深める 既存顧客の購買・利用のデータから、追加の提案や継続の打ち手を決めて回す どの顧客に何を案内するか(顧客ごとの事情と関係を持つ営業が決める) リード育成(既存顧客への案内の設計)、既存顧客向けのコンテンツ
新しい地域や顧客層へ広げる 新しい層に届く集客を設計し、小さく試して反応を測る どの地域・業種・規模を狙うかと、そこで受注を受ける営業の体制 広告運用、その層向けのSEOとコンテンツ
新しい商品を足す 新商品の価値を言葉にし、誰にどう案内するかを作る 商品の仕様・価格と、最初に売る相手 訴求を試すコンテンツと広告、既存顧客への新商品の案内

その役割が最初になる理由

深める方向では顧客はすでにいて、足りないのは誰に何をいつ案内するかの設計です。データを扱う人がいないと、追加の売上の打ち手が営業の勘に頼ったままになります。

広げる方向では、新しい層が商品にどれだけ反応するかがまだ分かりません。小さく試して測る役を先に置くと、狙う層を早く絞り込めます。

新しい商品を足す方向では、価値が言葉になっていないと広告も記事も作れません。訴求づくりがほかの機能の前提になります。

方向を決めきれないときや、拡大を始めたのに伸びが止まっているときは、方向を問わず戦略から任せます。何を広げるかが決まらないまま実行の人を足しても、作業が増えるだけで打ち手が定まらないためです。

最初に戦略を任せた事業拡大の事例

拡大がうまく進まない局面で、外部のマーケターにまずマーケティング戦略からの提案を任せた例があります。

SEIRYOが外部のマーケターに任せたこと

株式会社SEIRYOは、アフィリエイト事業の拡大を目指していたものの思うように進まず、外部からプロのマーケターに入ってもらいました。そのとき任せたのは、マーケティング戦略からの提案でした。インタビューでは、現状の運用内容の改善や顧客との関係構築も、今後相談していきたいと語っていました。運用の改善はその時点での今後の意向で、取り組みを終えたことを示すものではありません。

戦略を先に任せ、運用の改善を次の相談にした順番は、方向を決めきれないときは戦略から入るという考え方と重なります。1社の事例で、同様の効果を保証するものではありません。事業の状況や任せた人によって結果は変わります。

▼SEIRYOが外部のマーケターに何を任せたかを詳しく読みたい方はこちら
【株式会社 SEIRYO】SOKKIN MATCH企業インタビュー記事
SOKKIN MATCH 企業インタビューVol.11 株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区 代表取締役:本間亮平)は、マーケター・クリエイターに特化した人財マッチングサービス SOKKIN MATCHの業務委託人財を活用している企業に...

今の体制で欠けている機能の洗い出し方

早見表で自社の行に並んだ機能ごとに、今いる人が週に何時間回せているかを書き出し、時間が最も少ない機能を最初に埋める1つにします。

STEP1:早見表で自社の方向の行を選び、「先に足す機能の例」にある機能を書き出す

STEP2:機能ごとに、今その仕事をしている人と、実際に使えている週の時間を書く(兼務の人は、本来の業務を除いた時間)

STEP3:時間が0か最も少ない機能を、最初に埋める1つに選ぶ

担当者の名前ではなく時間で書くのは、「担当はいる」という記入だけでは、兼務で実際には手が回っていない機能を見落とすためです。ここで書いた週の時間は、必要な人数を出すときに、社内で回せている分として差し引きます。

売上目標から必要な人数を逆算する手順

売上目標から必要な人数を逆算する手順

人数は「何人いれば足りそうか」で決めず、売上目標から受注数、リード数、工数、人数の順に割り算をつないで出します。途中の率や時間を自社の実績で置くので、感覚で決めるより根拠を説明しやすく、社内で予算を通すときの材料にもなります。

目標の売上から必要なリード数を出す

出発点は、拡大で増やしたい売上を受注1件あたりの売上で割った、必要な受注の増加数です。

必要な受注の増加数=(拡大後の売上目標−現在の売上)÷受注1件あたりの売上

売上目標と現在の売上は、月あたりなど期間をそろえます。新しい商品や新しい顧客層では1件あたりの売上が既存と違うことがあるので、見込みの値を分けて置いてください。リード数へは、必要な受注数÷(商談化率×受注率)で直します。商談化率(届いた問い合わせが商談まで進んだ比率)と受注率は、自社の直近の実績で置きます。

リード数を機能ごとの工数に直す

必要なリード数に、1リードあたりの作業時間を掛けると、機能ごとの必要な工数になります。

機能ごとの必要工数=必要なリード数×1リードあたりの作業時間

1リードあたりの作業時間は、機能によって何を1件として測るかが違います。

機能 時間を測る単位 1リードあたりへの直し方
広告運用 設定・調整・報告にかけた月の時間 月の時間÷その月に広告から来たリード数
SEOとコンテンツ 記事・資料1本の企画から公開までの時間 1本の時間÷1本から来たリード数
リード育成 育てるリード1件への案内・フォローの時間 1件あたりの時間をそのまま使う

作業時間は自社の実績で置きます。実績が無い機能は、1か月だけ試して時間を記録してから見積もります。他社の標準時間を当てはめないのは、商材や体制で大きく変わり、計画が外れやすいためです。

工数を人数に換算し増やすペースを決める

外部で埋める人数は、必要な工数から社内で回せている時間を引き、外部の1人が受けられる稼働で割って出します。割った結果が1人を超えたら機能ごとに人を分け、一度に増やす人数は社内が受け止められる範囲にとどめます。

外部で埋める人数の式

外部で埋める人数=(必要工数−社内で回せている時間)÷外部の1人が受けられる稼働

工数と稼働は週あたりにそろえます。外部のマーケターが受けられる稼働は、事務局の聞き取りでは週10〜20時間がひとつの基準になります。ただし人ごとの差が大きいので、候補ごとに確かめてから割ってください。仮の数字で計算すると、必要工数が週60時間、社内で回せている時間が週20時間なら、差の週40時間を埋めるのに2〜4人が要ります。

1人を超えたら機能ごとに分ける

結果が1人を超えるときは、広い専門を持つ1人を探すより、機能ごとに別の人へ分けます。広告運用とSEOとリード育成は求められる経験が違い、限られた稼働の1人に全部を任せると、どの機能も薄くなりやすいためです。

一度に増やす人数の上限

一度に増やす人数は、社内の窓口と成果物の確認者が受け止められる範囲に収めます。外部の人は社内の判断や確認を待つ時間が長いほど手が止まり、人数を増やしても工数が伸びないためです。

確認者が1人しかいないなら、まず1機能から始め、成果の兆しが見えてから次の機能を足します。

人材の確保が拡大に間に合わないときの判断

人材の確保が拡大に間に合わないときの判断

確保を始める期限は、拡大の開始日を先に固定し、そこから引き算で出します。開始日から逆に数えると、今日の時点で間に合うかどうかがすぐ分かり、間に合わないときに延ばすか絞るか先に埋めるかを選ぶ時間を残せます。

拡大の開始日から確保を始める期限を引く

確保を始める期限は、開始日から最初の1機能の期間だけを引いて出します。

確保を始める期限=拡大の開始日−最初の手応えが出るまでの期間−確保にかかる期間

入れる期間は、早見表と洗い出しで選んだ最初の1機能の分だけです。全部の機能の期間を入れると期限が必要以上に早まり、最初の1機能の判断まで遅れるためです。

1機能で当てはめた例

最初の1機能が広告運用なら、手応えが出てくるのは一つの目安として1か月程度です。外部の人で埋める場合、事務局の実務では相談から着手までおおむね2週間です。要望の聞き取り、候補者の選定、発注側と候補者と事務局の三者での面談を経るためです。どちらも成果を保証する期間ではありません。この例では、開始日のおよそ1か月半前が確保を始める期限です。採用で埋めるなら、自社の過去の採用で、求人を出した月から入社した月までが何か月だったかを入れます。

拡大の開始日は、商材の繁忙期や取引先の予算の時期など、市場の都合で決まることが多い日付です。その日を動かせるかどうかで、間に合わないときに取る道が分かれます。

▼ほかの機能で成果の兆しが見えるまでの期間と、着手後に人を増やす時期を確かめたい方はこちら
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延ばすか絞るか先に埋めるかの選び方

期限を過ぎていたら、社内に判断者と窓口を置けるか、開始日を動かせるか、既存の顧客で先に試せるかの3つで道を選びます。どの道を取っても、見直す時点を先に決めておきます。

条件ごとに取る道

表の上の行から順に当てはめ、最初に当たった行の道を取ります。

条件 取る道 理由
判断者と窓口を置けず、開始日を動かせる 開始を延ばす 外部の人を入れても判断が返らず手が止まるので、先に社内の体制を整えるほうが早い
判断者と窓口を置けず、開始日を動かせない 社内で回せる範囲まで絞って始める 開始日を逃すとその時期の売上の機会がなくなり、外部の人を入れても動かせない
判断者と窓口を置け、開始日を動かせない 外部で先に埋める 採用を待つと開始日に間に合わず、着手の早い手段で最初の1機能を埋められる
判断者と窓口を置け、開始日を動かせ、既存の顧客で試せる 範囲を絞り、既存の顧客から始める 少ない人数でも反応を確かめられ、外れたときの損失が小さい
判断者と窓口を置け、開始日を動かせ、既存の顧客で試せない 開始を延ばし、その間に確保する 急いで埋めるより、確保の手段を比べる時間に使える

判断者と窓口を最初に見る理由

判断者と窓口を最初に見るのは、置けないまま人を足しても確認待ちで手が止まり、期限に間に合わせた意味がなくなるためです。

判断者は優先順位と成果物の可否をその場で決められる人、窓口は外部の人の質問に日々答える人を指します。

見直す時点を先に決める

どの道を取っても、最初の1機能で手応えが出てくる目安の時期を、見直す日として先に予定に入れます。その日に、続けるか、次の機能を足すか、やめるかを決めます。決めておかないと、成果が見えないまま続けるか、兆しが出る前に打ち切るかのどちらかに傾きやすいためです。

範囲を絞るときに先に残す機能

範囲を絞るときは、早見表で最初に任せる役割に当たる1機能だけを残します。残りの機能は、拡大の開始後に足す順番を決めて書き出しておきます。例えば既存の顧客を深める方向ならリード育成を残し、既存顧客向けのコンテンツを次に足す、のように方向の行の並びで決めます。順番が決まっていれば、最初の機能で兆しが見えた時点で迷わず次へ進めます。

マーケティング人材の確保で押さえる基本

マーケティング人材の確保で押さえる基本

人材の定義、不足の背景、確保の手段と費用は、拡大の判断に要る要点だけを押さえます。詳しい比べ方は関連する記事で確かめてください。

マーケティング人材が担う仕事の範囲

マーケティング人材の仕事は、何を誰にどう売るかの戦略から、広告運用、SEOとコンテンツ、リード育成まで幅があります。拡大の局面でこの全部を1人に求めると、採用でも外部でも当てはまる人が見つかりにくくなります。早見表で選んだ最初の役割を中心に、求める範囲を絞って人を探してください。

人材が足りなくなりやすい背景

マーケティングの担い手が埋まりにくいのは、求められる仕事の幅が広く、1人で全部を担える人が限られるうえ、経験者を求める会社が多いためだと考えられます。拡大期は仕事の量が一度に増えるので、不足がまず表に出るのは、早見表で最初に任せると決めた役割です。そこが空いたままだと、ほかの機能を足しても拡大の打ち手が動き出しません。

確保する手段と費用の比べ方

確保の手段は、既存メンバーの担当を広げる、採用する、社内で育てる、業務委託で外部の人に任せるの4つです。

既存メンバーの拡張は早く始められますが、本来の業務との兼務で時間が足りなくなりやすい手段です。採用と育成は社内に経験が残る一方、戦力になるまで時間がかかります。業務委託は着手が早く機能ごとに分けて頼めますが、社内に判断者と窓口が要ります。費用は月額や年収の金額だけで比べず、同じ業務範囲と期間で自社の数字を入れて比べてください。外部に任せた業務でも、成果と最終的な責任は発注する側に残ります。

▼人が足りなくなる理由と、外部に頼む場合と採用する場合のどちらが割安かの見積もり方を知りたい方はこちら
マーケティング人材不足の対策|費用と期間で選ぶ打ち手
応募が来ない、担当が回らないというマーケティング人材不足は、自社で直せる原因から手を付け、短期は外部の力、中長期は採用と育成で埋めるのが現実的な対策です。不足は一時的なものではないため、打ち手を1つに絞る必要はありません。大事なのは、足りな...

まとめ

事業拡大のマーケティング人材は、方向、人数、期限の順に決めます。
  • 方向ごとの役割: 既存の顧客を深めるなら顧客データを使う運用、新しい層へ広げるなら小さく試して測る集客、新しい商品を足すなら訴求づくりを最初に任せます。方向を決めきれないときは戦略から入ります。
  • 人数: 売上目標から受注、リード、工数の順に割り算をつなぎ、社内で回せている時間を引いてから外部の稼働で割ります。
  • 間に合わないとき: 開始日から最初の1機能の期間を引いて期限を出し、判断者と窓口、開始日を動かせるか、既存の顧客で試せるかで、延ばす・絞る・先に埋めるを選びます。

拡大の計画書を開いたら、まずこの4つを書き込んでください。

  • 自社の拡大計画を、4つの方向のどれか1つに決める
  • 自社の方向の機能ごとに、今回せている週の時間を書き出す
  • 拡大の開始日を書き、最初の1機能で確保を始める期限を逆算する
  • 見直す日を先に予定に入れる
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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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