見積もりは届いたのに、手数料の内訳がどこまで運用に含まれているのか読み切れない。いまの代理店の数字にも納得できていないが、担当を替えたら振り出しに戻るのではという不安から動けずにいる。そんな状態のまま次の一手を決めかねている担当者は少なくありません。
リスティング広告の運用代行で外部に渡るのは、日々の入札調整や広告文づくりといった実務です。広告アカウントの権限をどちらが持つか、効率と量のどちらを優先するかを誰が決めるか、出てきた数字を誰が読むか。この3つは任せたあとも自社に残ります。任せ方を決めるのは料金の安さでも会社の規模でもなく、この3つを契約前に決められるかどうかです。
読み終えるころには、いまの代理店に続けて任せるのか、別の代理店に替えるのか、業務委託の個人に一部の範囲を任せるのか、自社の運用に戻すのか、あるいはいまは何も変えないのか、その判断を自分でつけられるようになります。あわせて、手数料の内訳の読み方、広告アカウントの権限と所有者の決まり方、代理店を変えたときに運用の履歴がどうなるのか、成果をいつ判断してよいのかまで扱います。
リスティング広告の運用代行で任せられる業務

電通ほか「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、リスティング広告(検索連動型広告)はインターネット広告媒体費の広告種別の中で構成比が最も高く、全体の38.7%を占めています。同じ運用型広告でもディスプレイ広告や動画広告とは事情が違うため、この記事では検索連動型に絞って扱います。
運用代行に含まれる作業の範囲
運用代行が担う作業は、アカウントの土台づくりから日々の調整、成果の報告まで一続きです。どこまでを外部が決め、どこからを発注側が決めるかを、作業の単位で先に押さえておきます。
| 作業 | 何をするか | 決めるのは誰か |
|---|---|---|
| アカウント設計 | アカウントの中にキャンペーンと広告グループをどう分けるかを組む | 代理店側が組み、発注側が目的をすり合わせる |
| キーワードと除外の設定 | 検索されたい語句を登録し、無関係な検索を除外する | 代理店側 |
| 入札の設定 | 自動入札の目標値や上限を設定・調整する | 代理店側が調整し、目標値そのものは発注側が決める |
| 広告文とLPの改善 | 広告の文言や遷移先ページを見直す | 代理店側(会社によって範囲外のこともある) |
| 計測タグとレポート | 成果を計測するタグを設置し、数字をまとめる | 代理店側が作成し、発注側が読む |
広告アカウントは、アカウントの下にキャンペーン、その下に広告グループ、さらにその下に広告文が並ぶ4つの階層で組まれています。この階層をどこまで細かく分けるかは設計の一部で、分けすぎると1つあたりのキャンペーンや広告グループに集まるデータが薄くなり、自動入札の判断材料が不足します。どの単位でデータを溜めるかは代理店側の設計次第で決まり、任せる相手が変わればこの設計も変わります。
任せても自社に残る3つの持ち物
作業のほとんどは外部に任せられますが、任せても自社から離れない持ち物が3つあります。広告アカウントの権限、効率と量のどちらを優先するかという目的の決定、そして出てきた数字をどう読むかという判断です。
同じ予算を使っても、運用型の広告は担当する人の腕によって成果に差が出ることが知られています。配信条件があらかじめ固定されている予約型の広告と違い、運用型は日々の調整の質がそのまま結果に反映されます。だからこそ、任せる相手によって成果が変わる一方で、目的を決めることと数字を判断することは、誰に運用を任せていても自社の役割として残ります。この3つの持ち物は、この記事全体を通じて繰り返し出てくる軸になります。
運用代行の手数料の型と実質負担率の出し方

手数料には業界共通の決まった正解の料率がありません。だから提示された料率の大小をそのまま比べるより、自分の見積書がどの型で組まれているかを読むほうが実利があります。
手数料に分かれる3つの型
日本広告業協会が定める「インターネット広告における運用型広告取引ガイドライン」(平成26年9月一部改定)では、広告会社が受け取る手数料を3つの型に分けています。1つは媒体に出した広告費の額に比例して発生するもの、もう1つは広告費の額とは比例せずに発生するもの、そしてもう1つは業務内容の追加や成果を超えた対応に対して生じる付加価値への対価です。同ガイドラインは、これらの名目や金額の決め方について、受託する段階で広告会社と広告主が個別に取り決めるものだと明記しています。
つまり手数料の金額そのものに、業界として決まった相場は存在しません。見積書を比べるときは、金額の大小より先に、その見積もりがどの型を組み合わせているのかを確認したほうが、次の交渉がしやすくなります。あわせて同ガイドラインは、営業日や営業時間を超える業務に追加の手数料を請求する場合、広告会社は事前にその条件を広告主へ通知しなければならないとも定めています。営業時間外の対応に追加費用が発生するかどうかは、見積もりの段階で確認しておく項目です。
見積書から実質負担率を出す手順
料率の数字を鵜呑みにする代わりに、自分の見積書から実質の負担率を計算する方法があります。次の4ステップで出せます。
- 見積書に載っている、1か月に自社が支払う総額を書き出します。媒体費、運用手数料、初期費用の月割り分、レポート費用など、名目にかかわらずすべて含めます。
- そのうち、実際に広告として配信される金額(媒体に出ていく分)を分けます。
- 「媒体に出ていかない金額 ÷ 媒体に出ていく金額」を計算します。これが実質の負担率です。
- 提示されている料率と、3で出た数字を比べます。
たとえば媒体費が月100万円、それ以外の費用が月20万円だとすると、実質負担率は20%で、提示されている料率とほぼ一致します。一方、媒体費が月30万円しかないのに、それ以外の費用が同じ20万円かかるとすると、実質負担率は約67%まで跳ね上がります。広告費が小さいほど、固定でかかる部分の負担率は目に見えて重くなるということです。
この計算結果をどう読むかは、次の基準で判断します。
| 見積書の状態 | 次にすること |
|---|---|
| 媒体費と手数料の内訳が分かれていない | 内訳を分けた見積書を出してもらう |
| 媒体に出ていく金額が0円の月がある | その月だけ発生している前提を確認する |
| 実質負担率が提示料率とほぼ同じ(目安として数%以内の差) | 料金体系の説明と請求の中身は一致している |
| 実質負担率が提示料率よりはっきり大きい | 差の内訳を項目ごとに確認する(最低手数料の有無、別立ての費用項目、媒体費の表示を広告費に上乗せする「外掛け」と広告費に含めて出す「内掛け」の違いなど) |
| そもそも料率の提示がない | 料率の提示を求める |
差が出やすい典型的な原因の1つが、多くの代理店が設ける最低手数料です。広告費が小さいと運用にかかる手間に見合わないため、一定額を下回らない形で手数料を設定している場合があります。最低手数料があるかどうかと、その水準は、見積もりの段階で確認しておく価値があります。
手数料に含まれる作業の確かめ方
手数料の額だけを比べても、業務範囲が違えば実際の負担感は一致しません。広告文の制作、遷移先ページの改善提案、レポートの粒度、計測タグの設置がどこまで含まれているかで、同じ料率でも受け取れるものは変わります。比較するときは、金額の前に業務範囲をそろえてから見ることが必要です。
▼ 広告費と代理店に払う費用の相場はこちら

運用の任せ方4つの選択肢と向く状況

任せ方には4つの選択肢があり、どれが正解ということはありません。ここでは「誰に任せるか」を扱い、「いま任せるべきか」はこの記事の後半で改めて判定します。
4つの選択肢の比較
いまの代理店に続けて任せる、別の代理店に替える、業務委託の個人に特定の範囲を任せる、自社の運用に戻す。この4つを同じ評価軸で並べると、それぞれの向き不向きが見えてきます。
| 選択肢 | アカウントに必要な手続き | 目的を決めるのは誰か | 数字を判断するのは誰か | 事故を止める仕組み |
|---|---|---|---|---|
| いまの代理店に続けて任せる | 発生しない | 発注側と代理店の合意次第 | 代理店の報告を発注側が確認 | 既存の担当体制に依存する |
| 別の代理店に替える | 権限の引き継ぎが必要 | 契約時に発注側が示す | 代理店の報告を発注側が確認 | 新しい体制の確認が必要になる |
| 業務委託の個人に特定の範囲を任せる | 権限の範囲を絞って渡す | 発注側が決める必要がある | 発注側が主体的に読む | 個人の稼働に依存する |
| 自社の運用に戻す | 発生しない(すでに自社にある場合) | 発注側が決める | 発注側が読む | 社内の体制に依存する |
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選択肢ごとに向く状況と向かない状況
いまの代理店に続けて任せる形は、アカウントの履歴と運用の連続性がそのまま保てて、切り替えの手続きが一切発生しません。数字に大きな不満がなく、体制も安定している場合に向いています。逆に、担当者の対応や提案の質に不満が積み重なっている場合は、続けることが最適とは言えません。
自社の運用に戻す選択肢には、見落とされがちな落とし穴があります。いま依頼している代理店の担当レベルがそもそも低かった場合、社内の人材を1から育成しても、代理店に依頼していたときと同じレベル感にしかならないことがあります。内製化はノウハウを社内に残せる利点がある一方で、育成には時間がかかり、外部の情報が入らなくなるという弱みも抱えます。内製に戻すかどうかは、いまの代理店の水準そのものへの評価と切り離して考える必要があります。
広告アカウントの権限と所有者の決め方

広告アカウントの権限は、契約書の交渉で決まるものではなく、誰がそのアカウントを作ったかで決まります。この事実を知らないまま契約を始めると、あとから自社の意思で動かせない状態に気づくことになります。
アクセス権の5段階と管理者だけができること
Google 広告ヘルプの「Google 広告アカウントのアクセス権の概要」によると、Google広告のアカウントには、メール専用、お支払いとご請求、読み取り専用、標準、管理者という5段階のアクセス権があります。広告の配信内容そのものを編集できるのは標準と管理者の権限を持つユーザーだけで、アクセス権の付与や変更、他社のアカウント(MCC)とのリンクの承認や解除は、管理者の権限を持つユーザーにしかできません。読み取り専用の権限では閲覧はできても、契約を終えるときにリンクを外すことも、誰かに権限を渡すこともできないため、乗り換えの局面で自力で動けなくなります。
アカウントを誰が作るかで変わる所有者
Google 広告ヘルプの「クライアント アカウントのオーナー権限について」によると、管理者が新しいアカウントを作成すると、その管理者が自動的にそのアカウントの所有者になります。一方、すでにある既存のアカウントを別の管理者がリンクした場合、その管理者にオーナー権限は自動では付与されません。つまり所有者が誰になるかは、契約後の交渉ではなく、最初にどちらがアカウントを作ったかでほぼ決まってしまいます。自社でアカウントを作ってから、運用のための権限だけを代理店に渡す形にできるかどうかを、契約前に決めておく必要があります。
契約前に書面で決める5項目
権限の所在は口頭の合意ではなく、契約書や覚書の形で確認しておく必要があります。次の5項目を、面談の場でそのまま質問文として使えます。
| # | 確認項目 | 面談で使う質問 | 危険なNG回答 |
|---|---|---|---|
| 1 | アカウントを誰が作るか | 広告アカウントは当社で作成し、そちらに運用のアクセス権をお渡しする形にできますか | 弊社で作成して運用します |
| 2 | 自社に管理者のアクセス権が残るか | 当社の担当者に管理者のアクセス権を付けていただけますか | 閲覧用の権限をお出しします |
| 3 | 契約終了時のリンク解除の手順と期限 | 契約終了のとき、管理アカウントとのリンク解除はどちらが、いつまでに行いますか | そのときにご相談ください |
| 4 | 共有していた仕組みの扱い | 共有のリマーケティングリストとコンバージョン測定のタグは、そちらの管理アカウント側のものを使いますか | 弊社の共通タグでまとめて管理します |
| 5 | Yahoo!広告も出す場合の名義 | Yahoo!広告のアカウントは当社の企業名義で契約しますか | 弊社の企業名義でまとめます |
5項目すべてに書面で答えが得られれば、この形で発注や乗り換えを進めてよいと判断できます。1項目でも書面で確認できなければ、書面に追記されるまで進めないという扱いにします。4つそろっていても残り1つが欠けている場合は同じ扱いにし、多数決では判断しません。Yahoo!広告(LINEヤフー広告)を出していない場合、5項目目は該当なしとして扱ってかまいません。
代理店を変えるときの履歴とデータの扱い
代理店を変えることと、アカウントを作り直すことは同じではありません。この違いを知っているかどうかが、乗り換えを迷う最大の理由を解消します。
リンク解除でも残る運用履歴
Google 広告ヘルプの「MCC アカウントからのアカウントのリンク解除について」によると、代理店の管理アカウント(MCC)とのリンクを解除しても、そのアカウントの履歴が失われることはありません。解除したあとは、別の管理アカウントに改めてリンクすることができます。つまり相手を替えるためにアカウントを作り直す必要はありません。
ただし、このリンク解除を行うには、管理アカウントかクライアントアカウントのどちらかの管理者権限が必要です。自社側に管理者権限を持つ人が誰もいなければ、既存の管理者に依頼するしかありません。だからこそ、契約を始める時点で自社側に管理者のアクセス権を残しておくことが、あとで自分の意思で動けるかどうかを左右します。
解除のときに止まる3つの仕組み
リンクを解除すると、代理店の管理アカウントと共有していた仕組みの一部が止まります。次の3つは事前に確認しておくべき代表的なものです。
| 共有していた仕組み | 解除したときに起きること |
|---|---|
| 共有リマーケティングリスト | そのリストに依存していた広告グループやキャンペーンで、広告の掲載が止まる |
| クロスアカウントのコンバージョン測定 | 解除後に発生したクリックによるコンバージョンが計測されなくなる(通常30日の計測期間が影響を受ける) |
| お支払い元アカウント | 支払い設定を代理店側のアカウントに紐づけていた場合、解除後に広告の掲載が停止する |
これらはいずれも「共有していたものは、共有先とのつながりを切ると使えなくなる」という単純な話です。解除の前にこの3点を確認し、必要であれば自社側の設定に切り替えてから手続きを進めます。
Yahoo!広告の移管に必要な条件
Yahoo!広告(LINEヤフー広告)は、Google広告とは仕組みが異なります。LINEヤフー広告 ヘルプの「アカウントを移管する」によると、アクティブアカウント移管という公式の制度があり、過去の実績や履歴を含めてアカウントを他の企業へ移すことができます。ただし、移管は毎月1日にしか行えず、申請は移管日の5日前までに済ませる必要があり、移管元の企業(いまの代理店)の承諾も必要です。
同ヘルプの「アカウント移管時の注意点」には、移管の落とし穴も記載されています。管理アカウント(MCC)そのものは移管の対象外で、移管したあともMCCとのつながりは自動では切れず、移管元の企業から情報の一部が参照できる状態が残ります。利用権限を持つビジネスIDもシステムによって自動で解除されるわけではないため、意図しない相手がアカウントを見られる状態が続く可能性があります。移管日の前後は配信が一時的に止まることもあります。Google広告に比べて、Yahoo!広告のほうが移管に手続きと相手の協力が必要になる分だけ、前もっての準備が求められます。
成果を判断してよい時期の決め方

初月の数字が思わしくなくても、それがすぐに失敗だと判断できるわけではありません。自動入札には仕組み上の学習期間があり、この期間を無視して数字を見ると、判断そのものを誤ります。
入札の学習に必要な期間
Google 広告ヘルプの「キャンペーンの学習期間の長さと、それに影響を与える要因」によると、スマート自動入札は、新しい目標に合わせて調整されるまでに、最長で3週間、または1〜2回のコンバージョンサイクルが必要になることがあります。学習期間の長さは、コンバージョンの数、コンバージョンが発生するまでのサイクルの長さ、そして選んでいる入札戦略という3つの要素で変わります。
アカウントの構造をどれだけ細かく分けるかも、この学習速度に影響します。細分化しすぎるとキャンペーンや広告グループごとのデータが薄くなり、学習に必要なコンバージョン数が集まりにくくなるためです。つまり学習に必要な期間は、媒体側の仕様だけでなく、アカウントの設計にも左右されます。初月の数字が伸びないことと、設計そのものが悪いことは、分けて見る必要があります。
目標値の調整と入札戦略の変更の違い
Google 広告ヘルプの「Google の入札アルゴリズムによる学習の仕組み」によると、目標の獲得単価や目標のROASといった数値を変更しても、学習中のステータスに戻ることはなく、それまでに学習した内容がリセットされることもありません。一方で、入札戦略そのものを新しく設定し直したり、キャンペーンや広告グループの構成を大きく変えたりすると、学習期間に入る理由として扱われます。つまり、目標の数字を動かすことと、入札戦略そのものを差し替えることは、成果への影響がまったく違います。担当者に設定変更を依頼するときは、目標値の調整なのか、戦略そのものの差し替えなのかを確認しておくと、想定外の学習期間の発生を避けられます。
自社の獲得までの日数から出す判断時期
いつから成果を判断してよいかは、自社の商材の特性を当てはめて決めます。手順は次のとおりです。
- 自社の広告で、クリックが発生してからコンバージョンが発生するまでに、通常どれくらいの日数がかかるかを出します。
- その日数の1〜2周分の期間を出します。
- そこに入札の学習に必要な期間(最長3週間程度)を足します。
- その期間が終わるまでは主要な指標が安定しない前提で、契約後の最初の見直し時期を決めます。
コンバージョンまでの日数が短い商材ほど早く判断できますし、検討期間が長いBtoB商材ほど、判断してよい時期は後ろにずれます。学習が終わっただけで成果が保証されるわけではありませんが、少なくともこの期間が終わるまでは、指標がぶれることを前提に見る必要があります。
検索広告の運用体制の確かめ方
相手が信頼できる体制かどうかは、会社の規模や実績の数だけでは判断できません。提案書や見積書に表れる、体制そのものの作り方を見る必要があります。
これまで支援の現場を見てきた中では、運用コンサルタントはGoogle、Yahoo!、Meta、LINE、アフィリエイト、SEOといった媒体単位で専門化していく傾向があります。2023年前後の実務の傾向としては、Googleの自動入札はアカウント内で複数の広告グループや広告が競合しながら最適化されるフルオート型に近く、Yahoo!広告は一定の表示回数に届かないと正当に評価されにくいルール型に近い性質がありました。こうした型の違いは仕様の更新で変わり得るものですが、媒体ごとに前提となる考え方が違うこと自体は変わらないため、検索広告を専門に見ている人と、他の媒体を主に見ている人が同じかどうかを確認する価値があります。担当者が複数の媒体をまたいでフロントも兼任している場合、検索広告に割ける時間が薄くなっていないかを聞いておくとよいでしょう。
媒体ごとの担当体制の見方
体制を確かめる質問として、次のようなものが使えます。「検索広告を担当する方と、他の媒体を担当する方は同じですか」「その方は検索広告以外の業務をどれくらい兼任していますか」。担当者が1人で幅広く見ている体制自体が悪いわけではありませんが、検索広告に割ける時間が実際にどれくらいあるかを確認しておくことが重要です。
検索広告で起きる設定事故の型
検索広告の運用では、いくつかの典型的な設定事故が起こり得ます。入札単価の桁を1つ間違える、指定していた日に配信を停止できていなかった、コンバージョンタグが二重に計上されていることに長期間気づかない、除外しておくべきキーワードの設定が漏れている、といった型です。こうした事故が起きたときの損失は、広告費を払う発注側だけでなく、信頼を落とす受注側の代理店にも及びます。だからこそ、事故そのものをゼロにする体制よりも、事故が起きたときにすぐ気づいて止められる体制があるかどうかが選定の基準になります。
事故を止める仕組みへの質問
体制を確かめるには、確認してほしい対象を限定して質問することが有効です。「入稿の前に誰がどこを確認しますか」「確認の手順は文書になっていますか」「配信の開始日と停止日はどう管理していますか」。あいまいに「大丈夫か確認してください」と聞くより、確認対象を具体的に絞った質問のほうが、相手の体制がどこまで整っているかが見えてきます。
代理店から切り替えた企業の事例
上位に並ぶ多くの記事は、代行会社側の実績数字を並べています。ここでは逆に、発注する側が何に困り、何を変え、何が起きたかを見ていきます。
代理店2社で効果が出ず切り替えた例
株式会社ウィルゲートは、M&A事業のリスティング広告を代理店に依頼していたものの、期待した効果を得られませんでした。別の代理店に依頼し直しても、結果は同じだったといいます。次の委託先を選ぶ過程では、この企業がすでに「拡大」を主な目的に据えており、その過程で獲得単価が多少上昇することは許容する方針を先に固めていたことが分かれています。他の候補が獲得単価の改善に注力する提案を出す中で、拡大を重視した視点の提案は少なかったとのことです。目的を先に決めていたからこそ、提案同士を同じ基準で比較できたわけです。運用を業務委託の個人へ切り替えてから約1か月半で、獲得単価は取り組み前と比較して約半分に減少し、広告の出稿量は約1.3倍に伸びたと公開されています。同様の効果を保証するものではありませんが、切り替え前に目的をはっきりさせておくことの効果を示す例といえます。
▼ 代理店から業務委託人財へ切り替えた企業の話はこちら

代理店を3社替えた企業が気づいたこと
株式会社manebiでは、これまで依頼していた代理店がすでに3社目だったといいます。ある程度の期間を一緒に動く中で、成長の壁を感じるたびに施策や依頼先を替えてきたとのことです。この企業では、社内よりも代理店側のほうが広告運用の知見が高いため、受け取ったフィードバックをそのまま試していく状況が続いていました。その結果、社内で高い品質の進行管理ができていなければ、外部のパートナーをいくら増やしても効果はそこまで上がらないという課題が見えてきたと述べられています。同様の結果を保証するものではありませんが、相手を替えることだけでは解決しない問題があることを示す例です。
▼ 代理店を3社替えた企業が体制を見直した話はこちら

相手を替える前に自社で決めること
2つの事例に共通するのは、相手を替える前に、効率と量のどちらを優先するのかと、出てきた数字を誰が読むのかを自社側で決めておく必要があるという点です。この2つを決めないまま相手だけを替えると、替えた回数が増えるだけで状況が変わらないことがあります。
いま任せるかを決める3段の判定

ここまでの内容を踏まえ、いまの状態から「続ける・替える・替えない」のどれに向かうかを判定します。
判定の順番とその理由
判定は4つの問いを順番に確認していく形を取ります。最初に確認するのは、いまの成果に不満があるかどうかという点です。ここで問題がなければ、以降の問いを飛ばして「相手は替えない」という結論に進みます。問題があると答えた場合だけ、次の問いに進みます。
次に確認するのは、広告アカウントの管理者権限を自社の誰かが持っているかどうかです。この権限が自社になければ、代理店を替えたくなったときに自力でリンクを解除できず、既存の管理者に頼るしかありません。目的を決めることや数字を判断することより先に、この権限の有無を確認する理由はここにあります。
その次に確認するのは、効率(獲得単価を下げる)と量(獲得件数を増やす)のどちらを優先するかが社内で1つに決まっているかどうかです。目的が定まっていなければ、どんな提案を受けても比べる基準がありません。最後に確認するのは、出てきた数字を見て続ける・変えるを判断できる人が社内にいるかどうかです。判断する人がいても、何を良しとするかが決まっていなければ判断できないため、目的の確認をこの問いより先に置いています。
いまの状態を確かめる3つの問い
次の4つの問いに順番に答えていきます。
- 直近3か月の獲得単価と獲得件数は、両方とも自社の目標の範囲に収まっていますか。
- 自社の誰かが、広告アカウントの管理者のアクセス権を持っていますか。
- 効率(獲得単価を下げる)と量(獲得件数を増やす)のどちらを優先するかが、社内で1つに決まっていますか。
- 出てきた数字を見て「続ける・変える」を決められる人が、社内にいますか。
判定の流れは次のとおりです。
問い1で範囲内と答えた場合、問い2だけを確認し、権限があれば「相手は替えない」、権限がなければ「相手は替えない・アクセス権の状態だけ確かめる」という結論になります。いまの数字に不満がなくても、権限の確認だけは残しておく理由は、満足している間はこの確認を後回しにしがちで、いざ替えたくなったときに自力で動けなくなるからです。
問い1で範囲外、または答えられないと答えた場合は、問い2に進みます。権限がない、またはわからない場合は「アクセス権の状態を確かめる」という結論で止まります。権限があれば問い3に進み、目的が決まっていなければ「目的を1つに決める」で止まります。目的も決まっていれば問い4に進み、判断できる人がいなければ「運用先とは別に数字を読む役を置く」となり、判断できる人がいて初めて「任せてよい・任せ方は4つの選択肢から選ぶ」という結論に着地します。
この4つの問いをすべて確認すると、実行条件がどれだけ整っていても、権限の確認が済んでいなければ「任せてよい」には進みません。実行条件の数がそろっているかどうかを単純に数え上げる判定ではなく、順番に確認していく判定である点が重要です。
判定結果ごとの次の一歩
判定の結果ごとに、次に取る一歩を示します。
| 判定結果 | 次にすること |
|---|---|
| 相手は替えない | いまの体制を継続する。定期的な確認だけ続ける |
| 相手は替えない・アクセス権の状態だけ確かめる | 契約書や覚書でアクセス権の所在を確認しておく。いますぐ動く必要はない |
| アクセス権の状態を確かめる | 前の章で示した5項目を、契約書や覚書の形で確認する |
| 目的を1つに決める | 効率と量のどちらを優先するかを社内で決めてから、次の相手探しに進む |
| 運用先とは別に数字を読む役を置く | 社内で育成するか、運用は変えずに数字を読む役割だけを別に置く |
| 任せてよい・任せ方は4つの選択肢から選ぶ | 前の章で示した4つの選択肢から、状況に合う任せ方を選ぶ |
「相手は替えない」という結論に着地しても、それは何もしなくてよいという意味ではありません。アクセス権の状態を確認しておくことは、いま満足していても後で必要になる備えです。
外注しても発注側に残る責任
運用そのものを外部に任せても、広告の内容が正確かどうか、そこから生まれる問い合わせや契約の説明責任は、法律上は発注側に残ります。実務を代理店や業務委託の個人に任せていても、公開する広告の内容を最終的に確認する枠を社内に1つ置いておくことが必要です。
よくある質問
Q. 運用代行に最低の広告費はありますか。
業界共通の下限は決まっていません。手数料は受託する段階で広告主と広告会社が個別に取り決めるものであり、最低手数料を設けているかどうかは会社によって異なります。金額の目安を探すより、自社の見積書から実質負担率を出して確かめるほうが確実です。
Q. 代理店を変えると成果は落ちますか。
アカウントのリンクを解除して移すだけであれば、運用の履歴は失われません。ただし新しい担当者が入札戦略そのものを設定し直すと、その時点で学習期間に入ります。目標の数字だけを調整する場合は学習がリセットされないため、成果が落ちるかどうかは何を変えるか次第です。
Q. アカウントは自社で作るべきですか。
公式には、アカウントを新しく作った側が自動的にその所有者になり、既存のアカウントをあとからリンクしただけでは所有者にはなりません。自社でアカウントを作ってから運用の権限を代理店に渡す形にしておくと、所有者を自社側に残すことができます。
Q. 手数料の相場はどのくらいですか。
料率は提示のされ方や含まれる作業の範囲によって意味が変わるため、一律の相場を出すより、自社の見積書から実質負担率を計算するほうが確実です。広告費全体の相場は別の記事で扱っています。
Q. 成果が出るまでどのくらいかかりますか。
入札の学習だけを見ると最長3週間、または1〜2回のコンバージョンサイクルとされています。自社の商材でクリックからコンバージョンまでにかかる日数を当てはめ、その1〜2周分に学習期間を足した期間が終わってから判断します。
Q. 個人に任せても大丈夫ですか。
特定の媒体や工程に絞って任せる分には選択肢になります。ただし1人に任せる形は休みや離任のときに運用が止まりやすく、複数の媒体を横断して見る体制は組みにくい点に注意が必要です。
Q. 解約するとデータは消えますか。
データは引き続き自社のアカウントが所有しており、リンクを解除することで外部からのアクセス権を削除する形になります。ただし共有していたリマーケティングリストやコンバージョン測定の仕組みは解除とともに止まります。Yahoo!広告には別に移管の手続きが用意されています。
まとめ 任せ方を決める順番と次の一歩
任せ方を決める軸は3つです。広告アカウントの権限を誰が持つか、効率と量のどちらを優先するかを誰が決めるか、出てきた数字を誰が読むか。この3つを先に決めておくと、相手が代理店であっても業務委託の個人であっても、同じ基準で比べられます。
明日からできることは次の4つです。
- 管理画面のアクセス権を確認する
- 見積書から実質負担率を出す
- 契約前に書面で決める5項目を面談で聞く
- 自社のコンバージョンまでの日数から初回の見直し時期を決める
いまの数字に大きな不満がなければ、無理に相手を替える必要はありません。そのうえでアクセス権の状態だけは確認しておくと、必要になったときに自力で動けます。
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サービスの詳細を見る隣接する論点は、次の記事でも扱っています。
▼ 検索広告そのものの費用と予算の決め方はこちら

