確定申告で経費にできるものって?経費対象や按分、申告方法まで徹底解説!

経費

確定申告で申告する収入や年間所得額に応じて納税額が高くなる所得税ですが、経費を計上して収入か差し引くことで所得税額が安くなります。

経費は一般的に事業収入を得るために支出したものですが、どのようなものでも計上できるわけではありません。では、どのようなものが経費として計上できるのでしょう。

本記事では経費として認定されているものと認定されていないものや、会社員であっても経費計上できるケースを紹介します。ぜひ参考にして、正しい方法で税金を安く抑えてください。

経費とは

経費とは、事業収益を得るために必要な支出のことです。

例えば食料品の販売店を営んでいる場合、店舗に並べるための商品を仕入れなければなりません。また店舗を維持するための地代や家賃、店内を明るくするための電気代なども必要です。

また仕事で他県へ行く必要が出た際、新幹線・飛行機の代金や現地での宿泊代なども業務上必要な支出といえます。

このように事業や仕事で収益・収入を得るために必要不可欠な支出が経費であり、これらはすべて確定申告の際に年間収入から差し引くことが可能です。

経費は仕事上で支出した金額と、ひとまずは覚えておくと良いでしょう。

経費は税金に関わる重要なもの

経費は税金に関わる重要なものといえます。なぜなら、所得税や住民税は年間所得額に応じて納税額が決定されるからです。

納税額を決定づける年間所得額とは、年間収入から対象年の経費全額を差し引いて算出します。これは、年間収入から差し引く経費の金額が多くなれば年間所得額の金額が下がり、納税額も低くなると言い換えることが可能です。

個人事業主や自営業を営んでいる場合、後述する経費をすべて計上すれば年間総所得額の総額が下がり、所得税や住民税を安く抑えられるでしょう。

ただし企業・会社などの勤務先から給与を受け取っている会社員は、経費として給与所得控除が適用されます。そのため、仕事で交通費や出張費などを支出しても経費として計上できません。

経費に上限額はあるのか?

経費に上限額があるのか、気になる人もいるでしょう。結論からいうと、経費に上限はありません。そのため、事業での収益を得るために必要と認められる支出はすべて経費として計上できます。

事業で得た収益が、必ず年間経費を上回るとは限りません。経営状態によっては年間収入が経費の総額を下回ることもあり、その場合は赤字として申告します。課税所得が赤字の場合は原則として所得税は課税されない仕組みになっているため、納税義務は発生しません。

また年間所得額が赤字だった場合、青色申告者ならその金額を翌年の黒字分から差し引けるので、翌年の課税所得額も抑えられます。

必要経費の指標

経費に上限はありませんが、どのようなものでも経費として計上して良いわけではありません。経費の基本的な考え方として、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。

  • 事業活動で必要なもの
  • 事業収益や売上につながる支出
  • 税務調査で計上した理由などの説明が可能

経費の考え方の根本にあるのは「事業」です。

例えば仕事で新たな契約を獲得するために他県に赴いたとしましょう。その際には交通費や宿泊費などの支出が生じます。これらは仕事上での契約を得るという事業活動に必要なものであり、収益や売り上げにつながる支出であることから経費計上が可能です。

一方、仕事での疲れを癒すために他県に旅行に行った場合の旅費や交通費はどうでしょう。疲れを癒すことで業務効率が上がるなど、幅広い視点でとらえた場合は収益や売上につながるといえるかもしれません。しかし、疲れを癒すなら何も旅行を選択する必要はなく、睡眠時間を増やしたり入浴をしたりする方法もあります。また、直接事業の収益・売上につながるともいえないでしょう。

この場合は事業で必要な支出とは認められず、経費として計上できません。

経費と認定されるもの

経費として認定されるものとして、主に以下のようなものがあげられます。

  1. 税金
  2. 保険料
  3. 商品の発送費用
  4. 通信費
  5. 備品の購入費
  6. 雑費
  7. 福利厚生費
  8. 従業員の給与
  9. 家族の給与
  10. 地代家賃
  11. 水道光熱費
  12. 未回収債権
  13. 書籍や雑誌、新聞
  14. 支払手数料
  15. 寄附金
  16. 外注費
  17. 交際費
  18. 旅費交通費
  19. 資産の維持管理費・修理費
  20. 資産
  21. 修繕積立金
  22. 繰延資金
  23. 広告宣伝費

これらのなかには、経費として認められるものと認められないものもあり、判断が難しいと感じる人もいるでしょう。

それぞれの具体的な例などを紹介するので、参考にしてください。

①税金

経費として計上できるものとして「税金」と聞いたとき、驚く人もいるかもしれません。

一部の税金は「租税公課」という勘定項目で計上が可能です。租税公課として計上が認められている税金として、以下のようなものがあげられます。

  • 印紙税
  • 自動車税・軽自動車税(事業用のみ)
  • 固定資産税(事業利用資産のみ)
  • 不動産取得税(事業用のみ)
  • 個人事業税
  • 事業所得税
  • 登録免許税
  • 都市計画税
  • 地価税
  • 税込方式の消費税
なお上記のうち「自動車税・軽自動車税」「固定資産税」「不動産取得税」は、事業用のみが対象です。例えば営業車の自動車税は租税公課として経費計上が認められますが、プライベート用の自動車に対するものは計上できません。
「固定資産税」と「不動産取得税」も同様で、事業用としての土地や不動産の場合は計上できますが、自宅などのプライベートの場合は認められないので注意してください。

②保険料

保険料も事業用として認められる場合は、経費として計上できます。経費計上が可能な保険料の主な例は以下の通りです。

  • 火災保険料(事務所・倉庫など)
  • 自動車保険料(事業用自動車)
  • 地震保険料(事務所や事業用として使用している部分)
  • 損害保険料(従業員用)
  • 生命保険料(従業員用)
  • 社会保険料(従業員用)

※「社会保険料」「生命保険料」「損害保険料」は従業員のみであり、事業主や専従者は対象ではありません。

またこれらの経費を計上する際は「保険料」または「保険積立金」の勘定科目を用います。

③商品の発送費用

商品の発送にかかる費用も経費として計上可能です。勘定科目は「荷造運賃」であり、計上できる内容として、以下のようなものがあります。

  • 郵便料金
  • 宅急便などの配送料
  • トラックや船舶などの運賃
  • ガソリン代
  • 人件費
  • 梱包資材
  • ダンボールやガムテープなどの購入費
荷造運賃は運賃だけではなく荷造りに必要な支出分も含まれるため、発送費用以外の梱包資材費やガソリン代なども含めて計上しても問題ありません。

④通信費

「通信費」の勘定科目で計上できる経費の主な例は以下の通りです。

  • 電話料
  • インターネット使用料(開設工事費を含む)
  • 切手代
  • 年賀状や電報(取引先宛)

インターネット使用料は開設工事費も通信費として含めることが可能ですが、事業用で利用する場合であり、プライベートで利用する場合は認められません。

⑤備品の購入費

事業用の備品を購入した際は、金額などで経理上の処理方法や勘定科目名が異なります。

以下の条件に当てはまる場合の勘定科目は「事務用品費」や「消耗品費」です。

  • 使用可能期間1年未満
  • 取得価額10万円未満

例えば以下のようなものがあげられます。

  • 文房具
  • コピー用紙
  • 事務所用のティッシュやトイレットペーパー
  • 乾電池

以下の要件に当てはまる場合は原則として固定資産であり、減価償却の対象になるので備品として計上できません。

  • 取得価額10万円以上
  • 使用可能期間1年以上
例えば事務机や事業用のパソコンなどで10万円以上するものは、備品ではなく減価償却対象です。

ただし、会社・企業によっては社内ルールで「備品費」という勘定項目を設けて減価償却対象の備品を経費として計上する場合があります。

⑥雑費

事業用の支出であっても、対応する勘定科目がないものについては「雑費」として経費計上が可能です。

主な例として以下のようなものがあります。

・振込手数料
・臨時的な出費
・事業用クレジットカードの年会費
雑費として計上できるのは突発的・臨時的・一時的なものであり、継続的なものについては勘定科目を設定して計上したほうが良いでしょう。

⑦福利厚生費

以下の条件を満たしている場合は、福利厚生費として計上可能です。

  • 機会の平等性
  • 金額の妥当性
  • 現金や換金性の高いもの以外の支給

具体的な例として、以下のようなものがあります。

  • 交通費・通勤手当
  • 出張手当
  • 健康診断
  • 食事補助
  • 慶弔見舞金
  • 慰安旅行
  • 忘年会や新年会など
  • 保養所や別荘
保養所や別荘は従業員に対して無料または低額で利用可能な場合に、購入費や借り上げ費用を「福利厚生費」として計上可能です。ただし、利用料が高い場合は認められない可能性があるので注意してください。

⑧従業員の給与

従業員を雇用している場合、その人たちに支払う給与は経費です。勘定科目は「給与手当」を使用しますが、その際に含まれる主な内容には以下のようなものがあげられます。

  • 基本給
  • 賞与
  • 通勤手当
  • 時間外労働手当(残業手当)
  • 食事手当
  • 家族手当
  • 皆勤手当

これ以外にも特別な技術を要する仕事に従事している人に技術手当を支払っている場合は、それも人件費です。

所定内外の給与以外に、「特別手当」など番らか理由で特別に支払われた給与も含む点に注意してください。

⑩地代家賃

事業で使用している店舗・社宅などは地代家賃として経費計上が可能です。具体的な内容として以下のようなものがあげられます。

  • 事務所や店舗の家賃
  • 管理費
  • 共益費
  • 社宅の家賃
  • 更新料
  • 権利金
  • 礼金・敷金(20万円未満)
  • 賃借料(倉庫・駐車場・土地など)

上記のなかで「礼金・敷金」は20万円未満としていますが、20万円以上の場合は繰延資産と認識され、経費ではありません。

⑪水道光熱費

事務所などがある場合は、水道や電気を利用することがあるでしょう。その場合は「水道光熱費」の勘定項目で経費計上が可能です。

種類
水道代 水道料金、下水道料金など
電気代 東京電力など
ガス代 都市ガス、プロパンガスなど
暖房燃料費用 暖房・冷房費、灯油、薪など
これらはすべて事業用として利用した場合のみであり、プライベートや自宅で使用したものは含まれません。

⑫未回収債権

事業を営んでいると、取引先の倒産などで債権が回収できなくなることがあります。このような未回収債権は「貸倒損失」という勘定項目で経費計上が可能です。具体的には、以下のような取引の債権回収ができなくなった場合に「貸倒損失」を利用します。

  • 売掛金
  • 手形
  • 未収金
  • 貸付金
  • 立替金

なお貸倒損失で処理したものについては、同年に回収できたものについては取り消し処理ができますが、翌期に回収できた場合には取り消しできません。その場合は回収できた年度の新たな収益として「償却債権取立益」で計上します。

⑬書籍や雑誌、新聞

事業・仕事上で必要な書籍・雑誌・新聞を購入した際には、「新聞図書費」や「図書費」の勘定項目で経費計上が可能です。

近年では紙媒体のものだけではなく、電子書籍・メールマガジン・サブスクリプションなどの普及率も高まりました。仕事や業務で必要な知識・情報を得るために利用した場合は、これらの購読料・使用料も「新聞図書費」や「図書費」として計上できます。

⑭支払手数料

事業を営む際に取引で手数料が発生することがありますが、このような支出は「支払手数料」という勘定科目で経費計上が可能です。ただしどのような手数料でも計上できるわけではなく、具体的には以下のようなものがあげられます。

  • 銀行の振込手数料
  • 代引手数料
  • 為替手数料
  • 事務手数料
  • キャンセル料(解約手数料)
  • 不動産関連の仲介手数料
  • 証明書などの発行手数料

ただし以下のような支出が発生した場合は「雑費」で処理するため、「支払手数料」では処理しません。

  • 年会費
  • 一時的・突発的に発生した手数料
例えば事業用クレジットカードの年会費は「雑費」の項目でも例としてあげましたが、「支払手数料」の勘定項目ではない点に注意してください。

⑮寄附付金

原則として、個人事業主が寄附を行った場合はその金額の経費計上はできません。個人事業主が寄付をした場合には、事業としてではなく個人としての行動と判断されるからです。

しかし以下にあげる特定の団体に寄附した場合は、その全額または一部の経費計上が認められています。

全額または一部 要件
全額 国・地方自治体 国立または公立大学法人、赤い羽根募金など
一部 特定公益増進法人など 独立行政法人、認定NPO法人
その他 宗教法人、政治団体、日本商工会議所、神社仏閣など

⑯外注費

自社では困難な作業内容を他社または個人に業務委託などをした場合には、「外注費」または「外注工賃」として経費計上可能です。

外注費として計上できる例として、以下のようなものがあります。

  • ホームページ作成
  • 派遣社員の派遣料
  • アプリのコンテンツ作成
  • 物品や商品の運送
  • 倉庫などの建築
  • オフィス内の清掃業務

混同されがちな勘定項目として「支払手数料」「給与」「販売促進費」などがあげられますが、請負契約を締結したものについては「外注費」「外注工賃」として計上すると覚えておくと良いでしょう。

⑰交際費

取引先などと会食や接待をした場合には、「接待交際費」として経費の計上が可能です。

具体的には以下のようなものがあげられます。

  • 取引先との飲食費(1人あたり5,000円超)
  • 取引先を招待したパーティーや親睦会の開催費用
  • 贈答品代(お中元・お歳暮など)
  • 慶弔費
  • 取引先の接待を目的とした旅行費用
  • タクシー代(取引先が利用したもののみ)
なお1人あたり5,000円以下の取引先との飲食費は「会議費」として計上することが一般的であり、「接待交際費」ではありません。

⑱旅費交通費

業務上で移動や宿泊が必要になった場合は、「旅費交通費」として経費計上が可能であり、その主な例は以下の通りです。

  • 電車・バス代
  • タクシー代
  • 航空運賃
  • 高速道路・有料道路の利用料や通行料
  • ガソリン代
  • レンタカー代
  • 有料駐車場代・コインパーキング代
  • 宿泊費や滞在費
  • 転勤や帰省に関する旅費
  • 出張手当
  • 出張先での食事代
これらは一部ですが、これら以外にも業務上で移動した際に発生した費用や宿泊先での出費は基本的に「旅費交通費」として経費に算入できます。

⑲資産の維持管理費・修理費

会社・事業として所有する有形固定資産の修理や維持管理を目的とした回収を行った場合には、「修繕費」として経費計上可能です。

例えば以下のような修理などを行った場合には、「修繕費」として計上します。

  • 事務所外壁の塗り替え
  • 災害時の原状回復工事
  • エレベーターの改修
  • ソフトウエアのアップデート
  • 事業用ソフトの年間サポート契約
  • パソコンの保守契約
ただし耐震工事のような「資産価値を高めるもの」と判断される修理・修繕については、「修繕費」ではなく「減価償却費」で計上するので注意してください。

⑳資産

一定の条件を満たす固定資産や資産価値を高める修理・修繕については、減価償却費として経費計上します。

減価償却費として認識される固定資産の条件は以下の通りです。

  • 取得価額が10万円以上
  • 1年以上の使用期間が見込まれるもの
例えば建物・車などの有形資産や、ソフトウエア・商標権といった無形資産が含まれます。また畜産業や農業を営んでいる場合は、家畜や果樹なども減価償却費の対象です。

㉑修繕積立金

事業としてマンションなどの不動産を保有している場合、修繕積立金を支払うことがあります。積立金として支払っている場合は、原則として経費計上できません。ただし、以下の要件をすべて満たす場合のみ「修繕費」として計上可能です。

  1. 不動産所有者が管理組合に修繕積立金支払義務を負う
  2. 管理組合は修繕積立金の所有者返還義務を有しない
  3. 将来の修繕等のみに使用する
  4. 修繕積立金額は合法的な方法により算出されている

上記4つの要件をすべて満たす場合は、修繕積立金を使用した修繕等が行われていない場合でも「修繕費」としての計上が認められています。

㉒繰延資産

個人事業主や企業などがその効果が1年以上に及ぶサービス・商品に支出した場合、その費用は繰延資産としていったん計上してから、毎年「~償却」として一定の金額を経費として処理することが可能です。

繰延資産には会計上と税法上の2種類があり、それぞれ以下のようなものがあげられます。

会計上 税法上
創立費、開業費、開発費など 賃借権利金、公共的施設の設置・改良費、役務提供権利金など

経費計上する際には「創立費償却」などの勘定科目を利用して処理してください。

㉓広告宣伝費

事業で取り扱っている商品・サービスなどを多くの消費者に広めるために支出した費用は「広告宣伝費」として計上可能です。

費用の種類は具体例として、以下のようなものがあげられます。

種類
媒体を使用したもの ・テレビやラジオや新聞などの利用料
・インターネット広告料
・CMなどの制作費
セルフプロモーション関連 ・チラシやポスターなどの製作費
・配布用ノベルティなどの制作費
・キャンペーン用の制作費や運用費
会社広報関連 ・求人広告関連費用
・自社サイトの運用費や制作費
・公式SNSの運用費

不特定多数を対象とした宣伝・広告は「広告宣伝費」として計上すると覚えておくと良いでしょう。

経費と認定されないもの

個人事業主や自営業を営んでいると、経費計上できないものの判断が難しいと感じることもあるかもしれません。基本的に事業とは関係ないものや事業者本人に関するもの、根拠がない一定常識範囲を超えたものは不可と覚えておくと良いでしょう。

具体的にどのようなものが経費と認定されないのか紹介するので、参考にしてください。

事業者のプライベートで利用されたもの

事業者のプライベートで利用されたものは、すべて経費として認められません。

例えば事業者の生活費はプライベートな支出であり、事業とは関係ないものであるため、経費計上不可です。

それ以外にも、事業者の趣味に関する支出もプライベートなものとして判断されます。

事業者の税金

事業者の税金も経費として認められないもののひとつです。

例えば事業者が支払う所得税や住民税は、事業単位ではなく事業主個人の税金であるため、経費に算入できません。

ただし自宅兼事務所として使用している家屋に課せられる固定資産税は、按分して事務所分のみ経費計上できます。

事業者の福利厚生費

従業員の福利厚生費は経費として計上できますが、事業者の福利厚生は認められていません。

例えば健康診断は従業員だけではなく、事業者も受診することがあるでしょう。この場合、従業員の健康診断料は「福利厚生費」として計上できますが、事業者の受診料はプライベートなものとして判断されて計上できないので注意してください。

家族への給与

家族に支払った給与は、原則として経費と認められていません。そのため、通常は家族分の給与は経費計上できませんが、青色申告者の場合は特例が適用されるので「専従者給与」という勘定科目で経費に算入できます。

家族の給与を経費として計上するための特例の条件は、以下の通りです。

  • 納税者が青色申告者
  • 青色申告者と生計を同一とする配偶者または親族
  • 給与受取者が15歳以上
  • 専従期間6カ月超

特例適用を受けるためには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を管轄の税務署に提出しておかなければなりません。また、扶養控除と配偶者控除は利用できなくなる点も注意してください。

敷金

敷金はその支出が仮に事業に関するものであったとしても、原則として経費計上できません。その理由は経費ではなく、資産計上するからです。

敷金は全額返済が前提となっていることが多く、その場合は経費ではなく資産として計上するとされています。

ただし原状回復に充てられた場合など、返還されない金額については経費として認められるため計上できます。

借りたお金の返済金

借金の返済金は、例え事業用であっても経費計上できません。その理由として、主に以下の2つがあげられます。

  • 返済金は負債の一種である「借入金」として処理
  • 金融機関に返金するものであり、売上に直結しない費用

ただし借入金に対する支払利息は経費として計上できるので、処理を忘れないでください。

事業に関わりがないと思われるもの

事業にかかわりがないものは、原則として経費として認められません。

経費はあくまで事業に直接関係すると認められる支出のみで、それ以外のものはすべてプライベートとして認識されます。

例えば事業主が事業として農業を営んでいない場合の、農地用の土地購入に関わる支出はすべてプライベート分として判断され、経費計上できません。

事業と私生活の支出が重なる場合の処理

個人事業主や自営業の場合、自宅の一部を作業場所や事務所として利用することがあるでしょう。

その場合、家賃・水道光熱費などが事業用とプライベート用で重なってしまいます。

経費は事業・仕事上で支出した分のみであり、プライベート用で使用した分については計上が認められていません。

このような場合、どのように処理するのでしょうか。

仕事とプライベートで支出が重なるケースの処理方法について解説します。自宅で仕事をしている個人事業主や居住スペースと事務所が一体型となった場所で事業を営んでいる自営業者は、ぜひ参考にしてください。

「按分」という考え方

事業スペースと居住スペースが混在している場合、家事按分で経費分を算出します。

家事按分で経費を算出する際には、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 必要経費と生活費の同一部分のうち、支出の50%を超える金額が所得を得るために必要不可欠
  • 所得を得るために必要不可欠であることを示す根拠の明確な提示が可能
  • 経費分が50%以下の場合、業務に必須である部分の明確な区別が可能

引用:〔家事関連費(第1号関係)〕|国税庁所得税法施行令 | e-Gov 法令検索

簡単にいえば税務調査などで指摘を受けた際、業務上とプライベートの区別が明確に説明できる場合は家事按分で経費分を算出して計上して良いということです。

家事按分で計上する場合は、誰がみても納得できる判断材料を残したうえで処理してください。

自宅が事務所の場合

自宅の一部を事務所として利用している場合の、「家賃」と「水道光熱費・通信費」それぞれの按分計算をシミュレーションしてみましょう。

①家賃の按分計算

以下の条件で、家賃の按分計算を行います。
  • 自宅兼事務所全体の占有総面積は60平方メートル
  • 事務所として利用している面積は20平方メートル
  • 全体の家賃は12万円/月
この場合、事務所として利用している面積は全体の3分の1であることから、12万円の家賃のうちの3分の1にあたる月額4万円が経費として計上可能です。

②水道光熱費・通信費の按分計算

水道光熱費と通信費の按分計算をシミュレーションしてみましょう。これら2つは基本的に事業用の専有面積と使用時間を考慮して計算します。

例えば事務所の専有面積が全体の3分の1だったとすると、水道光熱費や通信費の1カ月分の料金の3分の1が仮の経費分です。

また1日を通しての電気などの使用時間が10時間で、そのうち8時間が仕事時間だったと仮定します。

事業として実際に使用していた時間は全体の80%なので、仮の経費分として算出した1カ月の3分の1の料金の80%が経費として計上可能な金額です。

水道光熱費・通信費の按分計算をする際は先に1カ月分の料金を占有率で仮計算し、そこから1日の使用時間に対しての仕事時間の割合分を算出しましょう。

自動車が兼用の場合

自動車が兼用だった場合、按分計算で計上可能なものは自動車税・自動車の減価償却費・ガソリン代などです。

自動車税・自動車の減価償却費・ガソリン代は、1カ月の走行距離で按分する方法が合理的といえるでしょう。

例えば1カ月の走行距離が300キロメートルでそのうちの100キロメートルが事業用だった場合、3分の1が経費として計上できる金額です。

なお高速代は事業用か否かの用途がはっきりしているので、按分して算出する必要はありません。事業用で高速を使用した分のみ経費計上してください。

2種類の申告方法

確定申告には白色申告と青色申告の2種類があります。

どちらも年間所得額を確定して所得税の納税額を申告・納税するための方法ではありますが、その中身はかなり違っており同一ではありません。

白色申告と青色申告のそれぞれのメリット・デメリットや書き方を紹介するので、参考にしてください。

白色申告とは

白色申告とは、経理作業がシンプルな申告方法のことです。

以前は白色申告のメリットとして、年間事業所得300万円以下は帳簿義務がありませんでした。しかし2014年1月以降は税制改正により、年間事業所得額に関係なく白色申告者も帳簿保存が義務付けられています。これにより、白色申告のメリットと呼べるものはないといっても過言ではないでしょう。

一方のデメリットは主に以下のようなものがあげられます。

  • 青色申告のような特別控除の特典がない
  • 事業専従者の上限がある(配偶者86万円、その他の親族は1人につき50万円)
  • 災害時以外の赤字の繰越し・繰戻しができない
  • 取得価額30万円未満の少額減価償却資産の一括計上ができない
  • 一括貸倒引当金の計上ができない
白色申告のメリットをあえてあげるなら、税務署への事前申告が不要なことくらいです。むしろデメリットのほうが大きいといえるかもしれません。

白色申告の書き方

白色申告で必要な提出書類は、確定申告書・収支内訳書・控除用の証明書類の3種類です。このうち経費を計上する書類が収支内訳書であり、経費の各項目に沿って金額を記入します。

1枚目は以下の通りです。

科目 書き方・例など
収入金額(1)~(4) ・収入に関する金額をそれぞれ記入
(例:売上、その他の収入など)
売上原価(5)~(9) 収入を得るために必要な支出など
(例:仕入など)
経費(11)~(16)、(イ)~(レ)、(17)、(18) ・該当する勘定科目の金額を記入
・(17)は(イ)~(レ)までの合計金額
・(18)は(11)~(16)と(17)の合計金額
専従者控除前の所得金額(19) (10)から(18)を差し引いた金額
専従者控除(20) 専従者がいる場合に記載
給与賃金の内訳 (11)に計上した場合に記入
税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳 税理士・弁護士などに報酬を支払った場合
専業専従者の氏名等 (20)に記載した場合

2枚目も確認していきましょう。

科目 書き方・例など
売上(収入)金額の明細 ・取引先ごとに金額を記入
・金額が大きい順
・書ききれない分は合算して記入
仕入金額の明細
減価償却費の計算 固定資産ごとの面積・取得価額などを記入
利子割引料の内訳 経費(16)に金額を記入した場合
地代家賃の内訳 経費(15)に金額を記入した場合

青色申告とは

青色申告とは、事業・不動産・山林の所得がある人を対象にした申告制度のことです。

青色申告のメリットとデメリットとして、それぞれ以下のようなものがあげられます。

メリット デメリット
・青色申告特別控除(最大65万円)
・赤字の繰越や繰戻が可能
・青色事業専従者給与の経費算入
・減価償却の特例
・貸倒引当金の条件なし
・家事関連費の経費算入条件なし
・事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出
・複式簿記での記帳が必要
・提出時に添付しなければならない書類多数

青色申告をする際には、あらかじめ管轄の税務署に申請書を提出しておかなければなりません。

また、白色申告に比べて会計処理が複雑になる点がデメリットとしてあげられますが、それを差し引いてもメリット面は白色申告に比べて多いといえるでしょう。

青色申告の書き方

青色申告での経費計上は、「青色申告決算書」(全4ページ)に必要事項を記入して提出します。

1ページ目は損益計算書の基本情報を記載するための決算書です。

科目 書き方・例など
売上金額と売上原価 売上金額・仕入金額などを記入
経費 該当する勘定科目の金額を記入
各種引当金・準備金 貸倒引当金や専従者給与の金額を記入
青色申告特別控除額(44) 10万円・55万円・65万円のいずれかの金額を記入

損益計算書の詳細な金額は決算書の2ページ目に記入します。

科目 書き方・例など
月別売上(収入)金額及び仕入金額 月別の売上(収入)と仕入金額を記入
貸倒引当金繰入額の計算 貸倒引当金として計上した金額を計算
給与賃金の内訳 従業員別の給与情報を記入
専従者給与の内訳 専従者別の給与情報を記入
青色申告特別控除額の計算 (7)の欄:青色申告特別控除を差し引く前の金額
(9):10万円または65万円を記入

3ページ目は減価償却や地代家賃の詳細を記入するための決算書です。

科目 書き方・例など
減価償却費の計算 減価償却資産ごとの情報・金額を記入
利子割引料の内訳 借入金がある場合の利子額
地代家賃の内訳 ・家賃や駐車場の料金
・権利金や更新料は区別して記載
税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳 税理士や弁護士に支払った報酬額
本年中における特殊事情 前年と比較して急激に売上が伸びた場合の理由などを明記

4ページ目は貸借対照表であり、資産・負債などの情報を記入します。

科目 書き方・例など
資産の部 該当項目の期首と期末の金額を記入
負債・資本の部
製造原価の計算 製造業の場合に記入

延滞税は避けよう!

確定申告は2月16日〜3月15日ですが、この期間は所得税の納税期間でもあるので、納税義務が発生している場合は3月15日までに完納しなければなりません。期間内に税金が完納できなかった場合は、延滞税が発生します。

また3月15日までに申告・納税が完了していても、期間外に修正申告や更生手続きをして納税額が増えた場合も延滞税の対象です。

なお納付期限の翌日を起算日として2カ月以内に完納すると延滞税の税率は原則として年7.3%で計算されますが、2カ月を超えると年率14.6%になるので早めに完納しましょう。
会社員であっても経費計上できる?

会社・企業から給与を受け取っている会社員は年間給与収入から経費の代わりとして導入されている給与所得控除が差し引かれるため、原則として経費計上はできません。

ただし以下のような冷害に当てはまる場合は、経費計上が可能です。

  • 特定支出控除
  • 副業収入あり
  • その他の収入あり

それぞれのケースについて解説するので、参考にしてください。

会社員の必要経費「特定支出控除」

特定支出控除とは、給与所得者が一定額以上の業務支出をした場合に適用される控除制度です。

通勤費・転居費用・単身赴任者の帰宅費用・研修費用・資格取得費用・業務用図書購入費・業務用衣類購入費・交際費の8種類に適用範囲が限られており、該当年の給与所得控除額の2分の1を限度額として差し引きます。

副業をしている場合

会社員のなかには、副業をしている人もいるでしょう。副業で収入を得るために支出した金額については、経費として計上可能です。

例えば、副業として自宅でWebデザインの仕事を受注して収入を得たとしましょう。収入を得るためにWebデザインのツール購入費や資格取得費、インターネット利用料などは経費として計上して収入額からマイナスできます。

その他収入がある場合

その他の収入がある場合も、その収入を得るために必要な支出であると認められるものについては会社員であっても経費計上可能です。

例えば不動産所得がある場合は、不動産を維持管理するための費用や取得費などは経費として計上できます。

また不動産の譲渡所得があった場合には、仲介手数料や登記費用などを経費計上して収入から差し引くことが可能です。

まとめ

確定申告で経費にできるもの・できないものを紹介しました。

経費は年間収入から差し引くことが可能な金額であり、年間収入が少なくなれば所得税や住民税などの納税額が低く抑えられます。そのため、税金を安く抑えたい場合にはさまざまな支出を経費計上する節税対策の一環ともいえるでしょう。

ただし、計上しすぎたり経費として認められないものを計上したりすると税務署から指摘を受けてしまい、延滞税などの罰金が科せられる可能性があります。

経費として認められるか否か判断に迷う場合は、税理士のような専門的知識を有している人に相談してください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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