確定申告で医療費控除を受けるためには?対象者や申請方法をわかりやすく解説!

控除

確定申告の際にはさまざまな控除制度の適用が可能ですが、そのなかでも多くの人たちに関連性の高いものとして医療費控除があげられます。

しかし医療費控除そのものを知らなかったり、制度名は聞いたことがあるけれど具体的な内容はわからないといった人も少なくありません。

本記事では、確定申告で医療費控除を受けるための申請方法や対象者をわかりやすく解説します。医療費控除を受けたい人やスマホで申請を行いたい人は、ぜひ参考にしてください。

医療費控除とは

医療費控除とは
所得控除のひとつで、1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合、その一部が課税所得から控除される制度です。
なお年間総所得額が200万円未満の場合は、課税所得額に5%を超えた金額が控除されます。

支払済医療費が控除されると課税所得が減額されるので支払うべき所得税の金額は少なくなり、所得税を可能な限り抑えたいと考える場合には、節税対策として効果的な制度といえるでしょう。

なお医療費控除の適用を受けるためには確定申告が必要であり、給与収入を得ている場合に実施される年末調整では適用できません
医療費控除の申請手順については後述しますが、年末調整時に必要書類を提出しても適用が受けられない点は覚えておいてください。

医療費控除の適用条件

医療費控除を受けるためには、以下の適用条件を満たさなければなりません。

・納税者本人または生計を同一とする配偶者やそのほかの親族が支払った医療費
・対象年の1月1日~12月31日の期間に支払った医療費
(参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
上記の条件のなかに「生計を同一とする」とありますが、これは生活するうえで発生する費用を支出するための資産が同一であるという意味です。
こんな時は?
子が遠方の学校に通学するために下宿をしていたとしましょう。
このとき納税者本人や配偶者が子に生活費の仕送りをしていた場合は、子が支払った医療費も控除対象です。

このように医療費控除の対象要件として、同居の有無は関係ありません

生活するうえで必要な資産を同一としているかがポイントになるので、混同しないように注意してください。

医療費控除の対象になるもの

医療費として支払ったすべての金額が、医療費控除の対象になるわけではありません。

国税庁では医療費控除の対象になるものとして、以下のように定めています。

対象となる医療費
注意事項
医師または歯科医師による診察料や治療費 健康診断費用や医師などに対する謝礼は原則として含まない
治療または療養に必要な医薬品の購入費 ・病気予防や健康増進のために用いる医薬品の購入費は対象外
・セルフメディケーション税制の対象になる場合あり
病院・診療所・介護施設・老人福祉施設・助産所への入院費や入居費
あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費用 疲れを癒す、体調を整えるといった目的での施術は対象外
保健師、看護師、准看護師などによる療養上の世話への対価 ・家政婦による病人の付き添いは対象
・家族や親族による付き添いは対象外
助産師による分娩の介助費用
介護福祉士などによる一定の喀痰吸引および経管栄養の対価
介護保険等制度で提供された施設・入居サービスの自己負担額
医師の指導により治療・施術などに必要な医療器具や介助用品の購入費 ・公共機関利用ができない場合のタクシー代は対象
・自家用車で通院する際のガソリン代や駐車場代は対象外
日本骨髄バンクに支払うあっせん費用
日本臓器移植ネットワークに支払うあっせん費用
特定健康診査および特定保健指導の自己負担額

(参考:No.1122 医療費控除の対象となる医療費|国税庁

上記とは別に近年、歯科の審美治療の一環としてインプラント治療を行う人が増加中です。

インプラント治療
インプラントは
一定の条件を満たさなければ保険が適用されず、治療を受ける際には自費が多いでしょう。
インプラントは医療費控除の対象なので、高額な治療費を支払った際には申請手続きを行うと還付金として一部が戻ってきます。
申請方法は後述するので、そちらもあわせて参考にしてください。

医療費控除の対象にならないもの

原則として、「医療費控除の対象になるもの」以外の支出については対象になりません。

具体的な例として、以下のようなものがあげられます。

対象にならないもの
例外・注意事項
病院などへ通院する際の交通費 公共交通機関を利用した通院が困難と判断される場合のタクシー代は対象
健康診断費用や医師への謝礼 重大な病の治療発見に起因した場合の健康診断費用は対象
自家用車で通院した場合のガソリン代・駐車場代
自主的に利用した病院の差額ベッド代 治療に必要と医師が判断した場合は対象
自己判断で購入した眼鏡や補聴器などの費用
病気予防・健康増進目的の医薬品購入費
体調改善や疲れを癒すことを目的とした治療費
上記のなかで判断が難しいのは、健康診断にかかった費用かもしれません。
原則として、健康診断全般にかかった費用は医療費控除の対象外です。
ただし健康診断を受けたことで重大な疾病が見つかり、その治療を始めた場合には、病気の治療費はもちろん発見のきっかけとなった健康診断の費用も医療費控除の対象になります。
交通費も同様に原則として医療費控除の対象外です。
例外があり、電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場所にある病院にタクシーで通院した場合も、やむを得ない事情があると判断されるので申請が可能です。

このように対象にならないとされているものでも、必要に迫られてやむを得ない場合や医療費控除の対象になる治療・施術のきっかけになったものについては、対象として認められる可能性があります。

判断が難しい場合は、税務署や税理士といった専門的な知識を有する機関・人物に相談してください。

対象期間

医療費控除の対象期間:1月1日〜12月31日までの1年間
この期間に支払った医療費を翌年に実施される確定申告で手続きします。
医療費控除で払い過ぎた税金が戻ってくる場合は「還付申告」となり、さかのぼっての申請・申告が可能です。

過去にさかのぼって行う還付申告の期間は該当する年の翌年1月1日を起算日として5年以内であり、この期間内なら過去分の還付申告に限って好きなタイミングで手続きができます。

原則では確定申告期間に前年分の医療費控除申請を行うとしていますが、還付申告の場合はこの期間に縛られることがありません。

過去分を確認して還付金があるとわかった場合は、気づいた段階で手続きを行いましょう。

医療費控除の申請手順

医療費控除の申請手順は以下の通りです。

  1. 医療費控除対象の可否
  2. 還付額の計算
  3. 明細書と申告書の作成
  4. 提出

準備するものとあわせてそれぞれの手順を詳しくみていきましょう。

準備するもの

医療費控除の申請を行うにあたって、いくつか準備しなければならない書類があります。

準備する書類
内容
提出の要不要
医療費控除の明細書 ・医療を受けた人や病院の名称、金額などを記入する内訳書
・国税庁または税務署にて入手
必要
確定申告書 ・医療費控除をする際の申告用紙
・国税庁または税務署にて入手
必要
医療通知書 ・療養年月日や療養を受けた場所、金額などが明記された通知書
・加入している健康保険組合から送付
・添付すれば明細書の記入省略が可能
原則不要
マイナンバーカード ・本人確認書類として使用
・ない場合は身分証明書等が必要
必要(コピー)
本人確認書類 ・マイナンバーカードがない場合
・「通知カード」「住民票の写しまたは住民票記載事項証明書」のいずれかを必ず提出
・上記2つの書類と合わせて「運転免許証」「被保険者証」「パスポート」「身体障害者手帳」「在留カード」「確定申告お知らせのはがき」のいずれかも提出
必要
源泉徴収票 ・給与収入がある場合に勤務先から入手
・確定申告書作成時に必要
不要
医薬品・治療薬等を購入した際のレシートなど ・明細書作成時に必要
・5年間保存
不要
本人確認書類については、マイナンバーカードの提出が可能な場合は用意する必要がありません。
「通知カード」はマイナンバーカードとして認められていないため、その場合は本人確認書類の例としてあげた書類を準備してください。

手順1 医療費控除の対象であるか確認

申請する前に、医療費控除の対象であるかどうかの確認が必要です。

【対象であるか確認】
1.本人と家族全員分の医療通知書を用意
2.本人・配偶者・扶養家族など対象となる家族全員分の領収書を集める
3.医療費の領収書のなかで対象となるものだけ残す
4.医療費を合計
5.10万円を超えていれば対象

基本的に医療費通知書に明記されている内容については医療費控除の対象になりますが、それ以外の領収書やレシートは確認しなければなりません。

「医療費控除の対象になるもの」や「医療費控除の対象にならないもの」で紹介しているので、こちらを参考にしながら仕訳を行ってください。

また「5」の10万円は年間所得合計が200万円を超えている場合であり、未満の場合は所得合計金額に5%をかけた金額を超えていれば対象です。

手順2 医療費控除額を計算する

医療費控除額の算出によって、所得から差し引くことができる所得控除の一部を算出することができます。

以下の手順で医療費控除額を求めることができます。

1 年間医療費総額を計算 ・本人と家族分の医療通知書
・本人や家族の支払済医療費の領収書やレシート(対象分のみ)
2 補てん金の総額を計算 ・生命保険からの保険金
・高額医療費
・出産育児一時金
など
3 医療費総額と補てん総額の差額を算出 年間医療費総額-補てん金の総額
4-1 医療費控除額を算出(年間総所得額が200万円超の場合) 「3」の差額-10万円
4-2 医療費控除額を算出(年間総所得額が200万円未満の場合) 「3」の差額-(年間総所得額×5%)

手順3 医療費控除の明細書と確定申告書作成

医療費控除の適用を受ける際には、明細書の作成とともに確定申告もしなければなりません。

そこで医療費控除の明細書と確定申告書のそれぞれの作成方法を解説するので、参考にしてください。

手順3-1 医療費控除の明細書

医療費控除の明細書は「1.医療費通知に記載された事項」「2.医療費(1以外)の明細」「3.控除額の計算」の3つに大別されます。

医療費控除の明細書を先にダウンロードしておき、本記事を読みながら記入することで、効率的に明細書を完成させることができます。

▼ 医療費控除の明細書のダウンロードはこちらから
医療費控除の明細書【内訳書】
「1.医療費通知に記載された事項」
項目
内容・注意事項
住所・氏名 納税者本人の住所と氏名を記入
(1)医療費通知に記載された医療費の額 医療費通知に明記されている金額を記入
(2)対象年中に支出した医療費の金額 医療費通知に記載された金額と対象年中の医療費が異なる場合あり
(3)(2)のうち保険などでの点される金額 生命保険などの保険金や給付金などの合計額
「2.医療費(上記1以外)の明細」
項目
内容・注意事項
(1)医療を受けた方の氏名 医療を受けた配偶者や扶養家族などの氏名を記入
(2)病院・薬局などの支払先の名称 診療を受けた病院・医薬品を購入した薬局の名前を記入
(3)医療費の区分 該当区分にチェック(すべて該当する場合4つ全部)
(4)支払った医療費の額 医療費控除の対象になる金額を記入
(5)(4)のうち生命保険や社会保険(高額療養費など)などで
補てんされる金額
「1」の(3)同様
(4)と(5)の欄を合計してそれぞれの列の合計欄に記入

A欄には「医療費通知に記載された医療費」と「通知に記載された以外の医療費」の支払った医療費を合算した金額
B欄には「医療費通知に記載された医療費」と「通知に記載された以外の医療費」の補てん金を合算した金額をそれぞれ記入します。
AとBのそれぞれの金額は、次の計算で使用する際に使用するので間違えないように注意してください。
「3.控除額の計算」
「支払った医療費」欄には先ほど算出したA
「保険金などで補てんされる金額」欄にはBをそれぞれ記入します。

項目通りに計算を進めます。
給与所得がある人は、会社から発行される源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」の欄に記載されている金額を転記しましょう。
▼ 所得金額の計算方法はこちらからご確認ください
所得税について知ろう あなたの年収に対する所得税額を計算してみよう

手順3-2 確定申告書の書き方

給与所得者の場合は会社・企業の勤務先から源泉徴収票を入手し、それを参考にして必要事項に記入していきます。

源泉徴収票と確定申告書(第一表)を対応させて記入方法をみていきましょう。

確定申告書(第一表)
記入内容
住所・氏名など 現在の住所や氏名などを明記
「収入金額等」の「給与(カ)」 源泉徴収票 支払金額
「所得金額等」の「給与(6)」 給与所得控除後の金額
「所得から差し引かれる金額」の(15) 所得控除の額の合計額
「税金の計算」の「源泉徴収税額(48)」 源泉徴収税額
「所得から差し引かれる金額」の「医療費控除(27) 「医療費控除の明細書」の「医療費控除額(G)」

確定申告書は、第二表も必要事項を記入して提出しなければなりません。

確定申告書(第二表)
記入内容
住所・屋号・氏名 現在の住所と納税者本人の氏名
「所得の内訳」の「所得の種類」 「給与」と記入
「所得の内訳」の「給与などの支払者の「名称」及び
「法人番号又は所在地」等
勤務先の住所と名称を記入
「所得の内訳」の「収入金額」 源泉徴収票の「支払金額」欄の金額を記入
「所得の内訳」の「源泉徴収税額」 源泉徴収票の「源泉徴収税額」の金額を転記
「配偶者や親族に関する事項」 配偶者や扶養家族の氏名、マイナンバー、続柄(配偶者など)、生年月日を記入
源泉徴収票から転記した金額についても、自分で計算して記入しなければならないので注意してください。
上記の書き方の例は給与所得者の場合であり、給与所得がない人は記入しなければならない項目や内容が異なります。
例えば個人事業主の場合は、第一表の「収入金額等」や「所得金額等」は「給与」ではなく「事業」の「営業等」に対応する金額を記入します。
▼ 確定申告書の書き方はこちらをご確認ください
【確定申告書】完全攻略!書き方を項目別にわかりやすく解説!
▼ 確定申告書のダウンロードはこちらから
申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】(PDF/767KB)

手順4 医療費控除申告書類の提出方法

紙の申告書を使用して医療費控除の申請を行う場合の医療費控除申告書類の提出方法は以下の通りです。

提出方法
メリット
デメリット
税務署窓口へ持参 ・郵送料などが不要
・記載事項に誤りがないか直接確認できる
・税務署の開庁時間のみ
・近くに税務署がある場合のみ
税務署へ郵送 ・税務署へ行く必要なし
・開庁時間に縛られない
・郵便代が必要
・郵便事故を想定する場合は、書留で送らなければならない
税務署への窓口持参の場合、確定申告の期間(2月16日〜3月15日)の間は土日も開帳しているので提出が可能です。また、時間外には投函ポストが設置されていることもあります。
申告方法には紙での申告書を使用する以外に、e-Taxでの申請方法もあり、その場合は税務署の窓口へ持参したり郵送したりする必要はありません。
e-Taxでの医療費控除の申請方法については後述するので、そちらを参考にしてください。

医療費控除を受ける際の注意点

医療費控除は要件を満たすことで誰でも利用できる控除制度ですが、受ける際にはいくつか注意しなければならないポイントがあります。

  • セルフメディケーション税制との併用不可
  • 控除対象の自由診療あり
  • 医療費控除は過去分も申請可能な場合あり
  • 領収書は5年間保存

上記それぞれの注意点を解説するので、医療費控除の適用を受けようと考えている人はぜひ参考にしてください。

セルフメディケーション税制

医療費控除と混同されがちな控除制度にセルフメディケーション税制があげられますが、この2つは同じ制度ではありません。

セルフメディケーション制度とは
処方箋不要で購入できる医薬品(OTC医薬品)の購入総額が高額になった場合に一定の条件を満たすことで所得控除が受けられる医療費控除の特例です。
導入の背景
・医療費控除は病院や診療所などでの診察治療が前提としており、処方箋なしの医薬品は対象外
・医療施設を利用せずに売薬のみで体調回復する人が多い
導入の目的
・医療費控除の適用対象外の人たちとの不平等さを解消
・2017年1月から導入スタート
・本来は5年間だったが、2022年1月にさらに5年間延長
適用要件
1.医療用の医薬品からOTC医薬品に転用されたもの(スイッチOTC)
2.
1以外の外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、風邪薬、鼻炎用内服薬・点鼻薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳去痰薬またはその他のアレルギー薬として効果・効能を有すると認められるもの
控除内容
・処方箋不要の医薬品購入代が年間12,000円を超えた場合
・上限は88,000円
・所得税・住民税の負担額が軽減
・所得税還付の可能性あり
注意点
・医療費控除との適用不可
・確定申告のみ申請可能

厚生労働省では、対象となる医薬品の成分や対応商品の一覧表をリスト化して公開しています。

主な対象品目としてアレグラFXやイブクイック頭痛薬、ガスター10などがあげられますが、品目数は多いのですべてを覚えたり把握したりすることは困難でしょう。

対象となる医薬品すべてを覚える必要はありません。
薬局などで処方箋なしの医薬品を購入した際に受け取るレシートは、セルフメディケーション税制に対応した商品がわかるように印がつけられています

レシートをよく確認し、マークが付けられているものを合算して12,000円以上なら制度の利用が可能です。

【セルフメディケーション税制の適用を受ける方法】
指定の様式に必要事項を記入して確定申告時に提出します。
「セルフメディケーション税制の明細書」は国税庁の「No.1131 セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」内に関連リンクが掲載されているので、そちらから各自入手してください。

明細書をダウンロードすると、具体的な記入の仕方も添付されています。
なかでも「2.特定一般用医薬品等購入費の明細」は、領収書や明細書に記載された医薬品のうち星印のついているもののみが対象である点に注意してください。

控除の対象になる自由診療がある

医療費控除は原則として保険が適用された診察・治療のみを対象としており、自由診療は含まれません。

しかしすべての自由診療が対象外というわけではなく、以下のような一部の診察・治療は対象です。

対象の自由診療
内容・注意点
インプラント
小児歯列矯正 成長を阻害しないことが目的
歯の治療費 ゴールドやポーセレンを使用した歯の被せもの
歯の治療のための通院費 自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代は対象外
出産費用 ・妊娠中や出産後の診療費(検査代含む)
・分娩費用
・出産入院する際のタクシー代
・入院時に使用するパジャマなどの身の回り購入品は対象外
レーシック手術 近視治療を目的としたもの
角膜矯正療法 近視治療を目的としたもの

歯科治療については国税庁の「No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」にて、詳しい要件が掲載されています。こちらもあわせて参考にしてください。

医療費控除は過去の分も申請ができる

医療費控除は過去分も申請できる可能性があり、条件は還付金がある場合です。

確定申告の場合、還付申告は過去5年間ならいつでも申請できるとしており、医療費控除の申請も還付申告になる場合は5年分をさかのぼって申請すれば納めすぎていた税金が戻ってきます。

なお還付申告は、控除を適用させたい年の翌年1月1日を起算日として過去5年間です。

この期間を超えると、たとえ還付金があったとしても申告はできないので注意してください。

領収書は5年保管する

医療費控除の明細書で参考にした領収書・レシートなどは、申請時に提出する必要はありません

しかし、自宅での5年間保存が義務付けられています。

どのような事情・タイミングで提出を求められるかわからないので、5年間はすぐに取り出せるような場所に保管しておいてください。

スマホで簡単e-Tax

医療費控除や確定申告をはじめとするさまざまな税金関連の申請・申告は、以前は紙の書類のみでした。

しかし「近くに税務署がない」「申告書に書き込むのが面倒」などの理由から、手続きに苦痛を感じる人もいるでしょう。

その場合はe-Taxをおすすめします。

インターネットがつながる環境ならパソコン・スマホ・iPadなどのさまざまなデバイスを使用して申請・申告が可能です。
メリット
・申請用紙が不要
・パソコンやスマホなどのさまざまなデバイスで申請・申告可能
・好きな場所や時間に手続き可能
・申請書作成の途中保存が可能
・税務署への持参や郵送不要
・納税方法の選択肢が増える
向いている人
・好きな時間や場所で手続きをしたい人
・近くに税務署がない人
・手軽に申請や申告をしたい人
e-Taxで申請・申告ができるものは、確定申告医療費控除だけではありません!

前述で紹介したセルフメディケーション税制の申請・申告も可能となっており、e-Taxで申請することで納税方法の選択肢が増えるなど多くのメリットがあります。

具体的なe-Taxについては後述で解説するので、参考にしてください。

e-Taxとは

e-Taxとは
国税に関する手続きをインターネットなどを利用して電子手続きができるシステムのことです。
e-Taxで手続きが可能なものとして以下のような手続きがあります。
1.所得税・相続税・贈与税・法人税(地方法人税)・消費税(地方消費税)・酒税・関節諸税にかかる申告
2.全税目の納税
3.申請・届出等
(参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
e-Taxは作成した申請書類を送信できる点がメリットであり、「日中は仕事で税務署に持参できない」「管轄する税務署まで遠い」「申請書類の郵送代をかけたくない」などの理由がある人におすすめです。

また国税庁が運営するシステムにはe-Taxソフト「確定申告等作成コーナー」があり、これらを利用することで申請に必要な書類を作成すれば、提出まで一括で行えます

スマホで申請する医療費控除

スマホで医療費控除を申請する際の手順は以下の通りです。

  1. 事前準備
  2. 確定申告申請等作成コーナーから申告書作成
  3. 医療費控除明細書のアップロード

なお確定申告書等作成作成コーナーでの申告書作成方法についても掘り下げて解説するので、合わせて参考にしてください。

手順1 事前準備

スマホで医療費控除を申請する場合はe-Taxの利用が前提となりますが、そのe-Taxを利用するために利用者識別番号と電子証明書を取得しなければなりません。

これらの取得もスマホで可能なので、まずはマイナポータルアプリをダウンロードしてください。
マイナポータルはどのスマホにも対応しているわけではありません。iPhoneはiOS14以上がインストール済みのiPhone7以上、Androidの場合は6.0以上を搭載したもので利用できます。

ダウンロードが完了したら、スマホでブラウザ版のe-Taxソフト「受付システムログイン」にアクセスします。

手順
操作方法
1 マイナポータルアプリを立ち上げておく
2 「マイナンバーカードでログイン」をタップ
3 「スマートフォンで読み取り」をタップ
4 マイナポータルアプリのQRコード読み取り機能で、表示されているQRコードを読み取り
5 案内画面に従ってマイナンバーカードを読み取り
6 「マイナンバーカード方式の利用開始」画面に移動
7 「利用者情報の登録」画面に移動するので画面に従って入力
8 マイナンバーカード方式の登録完了

これでe-Taxとマイナポータルの連携が完了しました。

連携しておけば、医療費控除・確定申告に必要なデータの一括取得と申告書類への自動入力が可能になるので便利です。

自分で入力するとヒューマンエラーのリスクが高まりますが、自動入力することでミスも最小限に抑えられるでしょう。

手順2 確定申告書等作成コーナーから申告書の作成

【確定申告書等作成コーナーから申請書類の作成】
作成開始ボタンをタップしスタートです。

作成のステップが表示されるので確認し、次へをタップしてください。

作成したい申告書の選択画面が表示

申告書類を選択するします。

作成する年代や「提出方法等に関する質問」が表示されるので、それぞれ該当するものを選びましょう。

なおここから先は以下の手順を解説します。

  1. 提出方式の選択
  2. 医療費通知を添付
  3. 収入金額・所得金額の入力
  4. 入力方法の選択
  5. 医療費控除の計算結果を確認

それぞれの内容を詳しく確認するので、参考にしてください。

手順2-1 提出方式を選択

作成したい申告書を選択すると申告書類を作成する年代の下に「提出方法等に関する質問」と表示され、以下3つから選択が可能です。

  • e-Tax(マイナンバーカード方式)
  • e-Tax(ID・パスワード方式)
  • 書面

それぞれどのような方式なのか解説します。

  • e-Tax(マイナンバーカード方式)
方法
・マイナンバーカードの読み取り
・利用者証明用電子証明書の4桁の暗証番号でログイン
メリット
・16桁の利用者識別番号が不要
デメリット
・マイナンバーカードが必要
・IC読み取り機やマイナンバーカードに対応したスマホが必要
おすすめの人
・近くに税務署がない人
・マイナンバーカードを持っている人
・マイナンバーカードに対応したスマホを持っている人
マイナンバーカードに対応したスマホとはiOS14に対応したiPhone7以上または6.0以上のAndroidであり、これら以外のスマホの場合はマイカードリーダライタなどのIC読み取り機を用意しなければなりません。
  • e-Tax(ID・パスワード方式)
方法
・税務署で取得するIDとパスワードでログインする方式
メリット
・マイナンバーカード不要
・IC読み取り機不要
・マイナンバーカードに対応したスマホ不要
デメリット
・事前に申請書の書類を提出しなければならない
・税務署にて本人確認の手続きをしなければならない
・郵送やオンラインの手続き不可
おすすめの人
・近くに管轄する税務署がある人
・マイナンバーカードがない人
・IC読み取り機やマイナンバーカードに対応したスマホがない人

ID・パスワード方式を選択すると、マイナンバーカードやIC読み取り機は不要です。

しかし事前に管轄する税務署に赴いて手続きをしなければなりません。
対面式でしか手続きができない点は、近くに税務署がない人や時間が取れない人にとってデメリットといえるでしょう。
  • 書面
方法
・申請書の作成はe-Taxを使用
・作成後は「印刷(P)」をクリックして帳票を印刷
・管轄する税務署に持参または郵送
メリット
・マイナンバーカードやIC読み取り機などは不要
・税務署での事前手続き不要
・申請書の作成は途中保存が可能
デメリット
・印刷しなければならない
・持参する場合は近くに税務署がなければならない
・郵送する場合は郵送料が必要になる
おすすめの人
・マイナンバーカードがない人
・IC読み取り機の準備をしたくない人
・スマホがマイナンバーカードに対応していない人
・近くに管轄する税務署がある人
・郵送料を負担しても問題ない人
印刷する場合は自宅にプリンターがなくても、USBメモリにデータを保存すればコンビニでの印刷が可能です。

手順2-2 医療費通知を添付源泉徴収票の入力

医療費通知のデータがある場合は添付します。

なお添付できるデータはxmlデータのみで、郵送による通知書のスマホカメラを利用した画像読み取りはできません。

xmlデータがある場合は「ファイルを選択する」のをタップしてファイルを選択して読み込みます。

データの読み込みが完了したら次へをタップしてください。
xmlデータの読み込みはこの段階でしかできないので、事前に健康保険組合などから受け取っている場合は忘れず添付しておきましょう。

なお医療費通知を通知書ではなくデータで受け取りたい場合は、事前に健康保険組合などに問い合わせしてください。

手順2-3 収入金額・所得金額の入力

収入金額・所得金額の入力方法ですが、給与所得者で源泉徴収票があることを前提として解説を進めます。

給与所得をタップ

「源泉徴収票(年末調整済み)」または「源泉徴収票(年末調整未済)」のいずれかを確認

オレンジ色の丸印のなかにをタップ

カメラで読み取りを選択

スマホのカメラで源泉徴収票を作成

撮影した画像を確認し、読み取りにミスがあれば
取り直す、良ければ読み取るをタップ

OCR読み取り処理が自動開始

読み取り内容の補正画面が表示されるので確認し、問題がなければ確定をタップ

給与入力画面に反映

源泉徴収票から収入・所得金額が反映されました。

このように源泉徴収票が手元にあると自分で入力する必要がないので、ケアレスミスなどのリスクが軽減されて便利です。
ただし源泉徴収票には、年末調整済みのものと年末調整がまだ終わっていないものの2種類があります。
選択を間違うと正しい金額が反映されないので、勤務先から発行された源泉徴収票がどちらなのか確認しておきましょう。

次に医療費控除の選択を行います。

医療費控除と選択できるものとしてセルフメディケーション税制があり、この2つは併用ができません。

どちらの制度を利用したほうが良いのか確認したうえで、選択してください。

どちらのほうが良いのかわからない場合は、「控除額を試算する」をタップすると確認できるので利用をおすすめします。

手順2-3 入力方法の選択

医療費控除の入力方法は、「医療費通知、領収書、医療費集計フォームから入力する」「医療費の合計のみ入力して別途作成した明細書を提出する」の選択が可能ですが、実際には「医療通知(xmlデータ)」「医療費通知(書面)」「医療費の領収書」「医療費集計フォーム」「医療費の合計額のみ」の5通りです。

それぞれの入力方法やメリット・デメリットなどをみていきましょう。

  • 「医療費通知(xmlデータ)」
入力方法
・医療費通知xmlデータを直接読み込む方法
・詳しい方法は「手順2-2 医療費通知を添付」にて解説済み
メリット
・自分で入力する必要がない
・保管する必要がない
デメリット
・書面をスマホのカメラ機能を使用して読み取ることは不可能
・事前にxmlデータの入手が必要
・健康保険組合にてxmlデータに対応していなければならない
向いている人
・加入する健康保険組合からxmlデータの入手が可能な人
・自分で入力することに不安がある人
・手軽にデータを取り込んで入力したい人
xmlデータを使用する場合は、入力のタイミングがほかの方法と異なるので注意してください。

また医療費通知データにない医療費は、領収書などを参考にしながら画面上で入力しなければなりません。

読み取りと入力のタイミングには時間差があるので、忘れないようにしましょう

  • 「医療費通知(書面)」
入力方法
・医療費通知を書面で受け取った場合
・「医療費通知の入力」画面で入力
・「A」「B」「C」それぞれの項目に対応する金額を入力
・入力の仕方がわからない場合は「入力方法が分からない方はこちら」をタップ
メリット
・医療費通知と領収書の金額を同時に入力できる
・入力のタイミングが同じなので忘れるリスクが軽減される
デメリット
・計算や入力のミスをする可能性がある
・領収書は自宅などで5年間保管しなければならない
向いている人
・健康保険組合からxmlデータがもらえない人
・医療費通知以外にも医療費が複数ある人

健康保険組合からxmlデータをもらってもどのように添付すれば良いのかわからない場合も、「医療費通知(書面)」を選択することで解決できます。

スマホでの複雑な作業が苦手な場合は、こちらの入力方法を選んでも良いでしょう。
  • 「医療費の領収書」
入力方法
・「医療を受けた人の氏名」「病院・薬局などの名称」「支払済医療費の金額」などを1件ずつ入力
・「医療を受けた人の氏名」を大項目として「病院・薬局などの名称」ごとに入力
メリット
・領収書が多い場合はまとめて入力可能
・通院費などのその他の医療費もまとめて入力可能
デメリット
・計算ミスをするリスクがある
・入力忘れの可能性がある
向いている人
・領収書が多い人
・診療や治療などの医療費以外の費用が多い人
・自分でまとめて計算して入力したい人
  • 「医療費集計フォーム」
入力方法
・表計算ソフトを使用して入力や集計をする方法
・「医療費集計フォーム」に入力や保存したデータを入力画面に読み込む
メリット
・日頃から表計算ソフトに入力しておけば申請時に読み込むだけで良い
・表計算ソフトに慣れていれば管理も申請も簡単
・医療費の件数が多い場合はスキマ時間を利用して入力できる
デメリット
・表計算ソフトになれていなければならない
・医療費の件数があまり多くない場合は労力と利便性が釣り合わない
向いている人
・表計算ソフトになれている人
・日頃からこまめに医療費の管理をしている人
・医療費の件数が多い人
表計算ソフトはスマホ版も無料で配布されており、パソコンやタブレットがなくても利用可能です。
エクセルなどで利用されている関数にも慣れている人のほうが良いでしょう。
入力ミスや「医療費集計フォーム」にあらかじめ入力されている関数を触ってしまうと、正しく集計されない可能性が高くなります。
  • 「医療費の合計のみ入力」
入力方法
・「支払済医療費の合計」「保険で補填される金額」の合計のみ入力
・「医療費控除の明細書」は別途書面で提出
メリット
・あらかじめ書面で「医療費控除の明細書」を作成している場合はそのまま利用可能
・国税庁の様式と同等であれば自分で作成した明細書でも問題なし
・確定申告ソフトを利用している人は作成した書類が利用可能
デメリット
・「医療費控除の明細書」の書面提出が必要
・書面提出は持参または郵送のいずれか
・郵送の場合は別途送料が必要
向いている人
・確定申告ソフトを利用している人
・書面で「医療費控除の明細書」を作成済の人

以上5つの入力方法を解説しました。

インターネットの環境などそれぞれの状況に合わせて利便性の高い方法を選択してください。

手順2-4 医療費控除の計算結果を確認

医療費控除の計算結果を確認します。

xmlデータを添付した場合はこのタイミングでこのタイミングで訂正が可能です。
医療費通知の金額と支払った金額が異なる場合もあるので、確認したうえで必要な場合は訂正しましょう。
医療費の修正・訂正が必要な場合は修正したい部分の訂正をタップします。

B欄は「支払済医療費額」、C欄は「保険などの補てん総額」を入力してください。

修正・訂正の必要がない場合は、入力は完了です。

手順3 医療費控除明細書のアップロード

医療費控除の明細書がない場合は、「入力方法の選択」で紹介した「医療費集計フォーム」を利用すると便利です。

また、マイナポータルを連携して自動入力する方法もあります。
「手順1 事前準備」にて連携は完了しているので、マイナポータルにて医療通知情報を事前に取得しておきましょう。
その後、「確定申告書等作成コーナー」にて医療通知情報のデータを取り込むと自動で転記されます。

通常、医療費控除で使用した医療費通知書は5年間保存が義務付けられていますが、マイナポータルから取得してオンライン申請した場合は保存不要です。

スマホで申告する場合の添付書類

スマホで申告する場合に必要となる添付書類として「医療費通知データ」「医療費控除の明細書」があげられますが、それ以外にも控除に関する証明書として以下の書類を郵送で提出しなければなりません。

  • おむつ使用証明書
  • ストマ用装具使用証明書
  • 在宅介護費用証明書
  • 運動療法実施証明書
  • 温泉療養証明書
  • 処方箋(治療用眼鏡の購入費)
  • 医師の診断書(B型肝炎のワクチン接種費用)

上記はデータでの添付が認められていないので注意してください。

まとめ

確定申告で医療費控除を受ける際の方法を解説しました。

スマホを利用してオンライン申請すると、関係書類の5年間保存が免除されるなど多数のメリットがあります。

オンライン申請をする際にはさまざまな準備が必要なので、難しい場合は書面での申請をおすすめします。

在住する地域やネット環境などを考慮して、便利な方法で申請してください。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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