法人税は、事業の利益が増えるほど税額も増えますので、節税対策が重要です。
法人税を節税したい経営者、法人税対策を任された担当者の方は、以下のような疑問をお持ちの人も多いでしょう。
- 法人税の対策方法や節税方法が知りたい
- 効果的な経費計上の方法が知りたい
- 経費計上以外で法人税対策になるテクニックが知りたい
- 法人税を節税する際の注意点を知りたい
そこで、この記事では、法人税の節税方法について、効果的な22種類の方法をまとめて紹介します。法人税の節税をするにあたって、気を付けるべき注意点も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- そもそも法人税とは
- 法人税のオススメ節税対策22選!
- 1.役員報酬を増やしたり、役員退職金を支給する
- 2.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入する
- 3.経営者や従業員の家を社宅にして経費計上する
- 4.未払費用を漏れのないように計上する
- 5.赤字を繰り越す
- 6.減価償却資産の特例を活用する
- 7.保険に加入する
- 8.本社家賃を年払いにする
- 9.健康診断を制度化する
- 10.社員旅行を制度化する
- 11.経営者が所有する車を社用車にする
- 12.不要な在庫を処分する
- 13.別会社を設立する
- 14.取引先との交際費を経費にする
- 15.事業に必要な設備投資を行う
- 16.レバレッジドリースへの投資を検討する
- 17.決算期の変更を検討する
- 18.賃上げ促進税制を活用する
- 19.売上計上のタイミングを確認する
- 20.経営者に旅費日当を支給する
- 21.含み損のある株式の売却や評価損の計上を検討する
- 22.貸倒引当金を損金として計上する
- 法人税を節税する上での注意点とは?
- 法人化することで投資系の利益も節税できる!
- まとめ
そもそも法人税とは
法人税
企業など、法人の事業によって発生した所得に課税される税金です。
株式会社や有限会社のような一般企業だけでなく、医療法人や組合なども法人税が課税される対象となります。税金は主に国税と地方税に分類されますが、法人税は国に納税する国税です。
また、法人税は以下のような式で求められます。
【税金の種類】身の回りの税金から法人税までわかりやすく解説!
法人税のオススメ節税対策22選!
法人税の節税は、基本的には税額計算のもとになる所得額を減らすことで実現できます。
そのためには、効果的な経費計上を行ったり、赤字を繰り越したりなどの処理が重要になります。
以下で、おすすめの法人税対策22選を紹介しますので参考にしてください。
1.役員報酬を増やしたり、役員退職金を支給する
役員報酬を増やしたり、役員退職金を支給することで法人税の節税が可能です。
役員報酬は、法人経営者の給与に相当するものですが、一定の条件を満たせば損金に計上することができます。法人の所得から経費として差し引けますので、その分法人税が安くなります。
ただし、役員報酬を損金計上するためには、報酬額を株主総会で決定し、毎月の支給額は一定である必要があります。金額が不当に高額な場合は損金計上が認められない可能性もありますので注意しましょう。
2.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入する
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入すると、掛金の全額を経費にできますので、法人税の節税にもなります。
経営セーフティ
共済取引先の企業が倒産した際に、掛金の最大10倍までの金額を無担保で借入できる制度です。
取引先の倒産により売掛金の回収ができなくなったとしても、自社も連鎖して倒産することを防ぐことができます。
掛金は、5,000円から20万円の範囲で、5,000円単位で選ぶことができます。掛金を前納することも可能で、たとえば1年分を前納して一括で損金に算入することもできます。
経営上のリスクを軽減しつつ、掛金により法人税の負担も軽減されますので、メリットの大きい節税方法です。
3.経営者や従業員の家を社宅にして経費計上する
経営者や従業員の家を社宅にして経費計上するという節税方法も効果的です。
仕組みとしては、まず会社の名義で賃貸住宅の契約を行い、経営者や従業員が入居します。会社が支払った賃貸料から、入居者から会社に支払われた賃貸料を引いた差額を経費として計上するという流れとなります。
条件として、入居する人(経営者または従業員)が会社に対して、自己負担として一定額の賃料を支払う必要があります。一般の賃貸住宅より安い賃料に設定することで従業員の福利厚生の充実につながります。
4.未払費用を漏れのないように計上する
未払費用の計上を漏れなく行うよう徹底することも効果的な節税方法となります。
未払費用
今期に発生した費用のうち、実際に支払いを行うのが来期になるもののことです。
たとえば、オフィスの光熱費や業務で使うサービスの利用料などが代表的な未払費用となります。また、従業員の給与・賞与なども未払い費用に計上できるため、経費とすることができます。
5.赤字を繰り越す
事業を経営していて赤字になった場合は、当期の赤字を翌年度以降に繰り越すことで、将来黒字になった際の利益と相殺できます。黒字になった期の、所得額の50%を上限として損金に参入できるため、赤字額の大きさによっては大幅な節税になります。
法人の赤字の繰り越し可能期間は最大で10年間なので、個人事業主と比べて大幅に長くなっています。
また、条件を満たすことで赤字の前年が、黒字である場合に、過去の年度にさかのぼって相殺できる制度もありますので活用を検討するとよいでしょう。
6.減価償却資産の特例を活用する
減価償却資産の特例を活用することでも節税が可能です。中小企業向けに「少額減価資産の取得価格の損金算入の特例」がありますので、活用することで利益を圧縮できます。
少額減価資産の取得価格の損金算入の特例
30万円未満の減価償却資産について、取得した年度で一括損金計上できるという制度です。
例として、業務用のパソコンや事務機器、電気機器など、様々なものが考えられます。
年間で300万円までが上限となりますが、不要な固定資産の処分をして買い替えることでも特例を使えます。
通常は、取得費用を耐用年数で割った金額を毎年計上していきますので、それと比べると一度に課税所得を大きく減らすことができるので、積極的に活用したい特例です。
7.保険に加入する
法人保険に加入すれば、保険料を損金に計上することで節税の効果が期待できます。事業を行う際に起こりうる損害に対するリスクを軽減したり、経営者の病気などへの備えをしながら、法人税も減らすことができます。
法人保険は主に、生命保険、損害保険、第三分野の保険(医療保険など)の3種類があります。これらの必要不可欠の保険の加入を検討することで、いずれも毎月の保険料を経費計上できます。1年分を前払いした場合は、短期前払費用として一括で計上することもできます。
8.本社家賃を年払いにする
本社家賃を年払いにすると、家賃12ヶ月分が一括で経費となりますので、今期分の法人税が節税できます。このように1年間などの短い期間で前払いする費用のことを短期前払費用と呼びます。
複数年度で見ると基本的にはトータルの納税額は同じですが、課税の時期が1年遅くなりますので、資金繰りにはメリットがあります。たとえば、売上が大きく資金に余裕があるときに本社家賃を年払いにすることで、法人税を節税しつつ将来に備えることができます。
9.健康診断を制度化する
健康診断を制度化すれば、福利厚生費として会社負担で従業員の健康診断を行うことができます。従業員の健康管理を行い、労働環境を改善した上で法人税も軽減されます。人間ドックも対象となります。
10.社員旅行を制度化する
社員旅行を制度化することで、一定の条件を満たした社員旅行の費用を福利厚生費として計上できます。
社員旅行は従業員のモチベーションアップにも繋がります。節税を行いながら生産性向上に効果的なので、積極的に検討したい方法です。
11.経営者が所有する車を社用車にする
経営者が所有する車を社用車にするのも節税につながります。社用車として会社で管理することで維持費を経費として計上できます。
たとえば、車の購入費用や車検費用、ガソリン代、自動車保険の保険料などを会社経費として計上できます。
12.不要な在庫を処分する
不要な在庫を処分することは、経営状態を改善するだけでなく、節税効果も期待できます。
不要な在庫を、取得時の費用よりも低い価格で売却した場合、売却損として計上可能です。同時に資産の管理や維持にかかるコストも削減できますので、経営の改善が見込めます。また、売却ではなく廃棄処分した場合も、処分に要した費用を損金として計上できます。
13.別会社を設立する
別会社を設立することで、課税所得が分散されることから節税につながる場合があります。
別会社にするメリットは以下のように複数あります。
- 法人税の軽減税率
- 新規法人の消費税
- 交際費などの特例の限度額
法人税の税率は原則として23.2%ですが、中小法人について、所得800万円以下の部分に対しては軽減税率として15%となります。また、新しく設立した法人は、2年間は法人税の非課税事業者となります。別法人にした事業については、一時的に消費税がかからなくなります。
また、交際費や少額減価償却資産には限度額がありますが、別法人にすると、法人ごとに限度額が設定されますので、トータルで適用できる金額が増えます。
ただし、法人設立のコストや、複数法人の運営コストの問題がありますので、総合的に判断する必要があります。
14.取引先との交際費を経費にする
取引先との交際費を経費にすることも法人税の節税に効果的です。
交際費が経費と認められるのは、たとえば接待費(飲食代)、贈答品代、取引先とのゴルフ費用などがあります。もちろん、会社の事業に必要な支出だけが経費と認められます。
15.事業に必要な設備投資を行う
事業に必要な設備投資を行うことで節税が可能です。突発的に利益が大きくなった年度などに、積極的に設備投資を行えば、法人税を軽減しつつ将来を見据えた先行投資ができます。
設備投資に要した費用は当然経費となりますので、利益を圧縮することで法人税が安くなります。また、中小企業を対象ととした投資促進税制を活用すれば、税額計算で優遇措置を受けることができます。
中小企業の投資促進税制
中小企業の生産性向上を目的とした中小企業庁の施策で、対象の設備投資費用について、全額の即時償却が認められたり、投資額に応じた税額控除が受けられるというものです。
制度の適用にあたっては事前の書類作成や申請が必要となりますので、計画的に準備を行いましょう。
16.レバレッジドリースへの投資を検討する
レバレッジドリースは、利益が上振れして法人税が高くなることが予想されるときに効果が期待できる節税方法です。
レバレッジドリース
高額な資産を取得して、他社に貸し出しを行い、リース料を受け取ることで利益を出す方法です。
リースする資産は航空機やヘリコプターなど非常に高額なものであることが特徴です。
銀行から借入を行いながら、高額資産を複数の会社で出資して取得し、リースを行うことから、「てこの原理」を意味する「レバレッジ」という言葉が使われています。
節税につながる理由は、資産を取得するために高額な出費が必要となり、減価償却費も計上できることから、まとまった額の課税所得を減らせるからです。一時的に利益が大幅に上振れした際に、節税対策を兼ねて行われることがあります。
17.決算期の変更を検討する
決算期の変更により節税するという方法もあります。
仕組みとしては、決算期の期末の利益が次の決算期に持ち越されるため、一時的に法人税が安くなります。
また、事業に応じて決算期を見直すことは、資金繰りの改善にも役立つでしょう。
決算期の変更は、税務署への届け出を行うことで簡単にできますが、一度変更を行うと一定期間は再変更できなくなりますので、慎重に決定するようにしましょう。
18.賃上げ促進税制を活用する
賃上げ促進税制
従業員に支給する給与を前年度より増加させた際に、増加分の一部を法人税から税額控除できる制度です。
必須条件は、給与支給額が前年と比べて1.5%以上増加していることです。
増加率が2.5%以上になると、控除額も大きくなります。また、教育訓練費の額が5%以上増加などその他の条件を満たすことで控除額の上乗せも可能です。
従業員の給与の見直しを検討している場合は、この制度の条件を満たすように調整することで同時に節税も実現できます。
一度賃上げを行うと、長期的に資金繰りに影響が出るため慎重な判断が必要ですが、従業員の待遇を改善しつつ法人税の節税にもなる制度です。
19.売上計上のタイミングを確認する
売上計上のタイミングを確認して変更することでも節税が可能です。
具体的には、発生した売上の計上を次の期に遅らせることで、今期の所得を減らして法人税を減らすことができます。遅らせた売上にかかる法人税は次の期に課税されますが、1年間遅らせることで資金繰りではメリットがあります。
売上計上のタイミング調整は、税制改正で課税のルールが変更されたり、新しい制度が導入される場合にも効果的です。
中小企業の負担を軽減するような特例が始まることが予定されているときは、売上計上のタイミングをずらすことで特例を最大限に活用できるようになります。
20.経営者に旅費日当を支給する
経営者に旅費日当を支給することで経費として計上できるため、節税につながります。
旅費日当
出張費用のうち交通費以外の出費のことです。たとえば、出張先のホテル代や食費、通信費用など経費にできます。
個人事業主の場合は、従業員の旅費日当は経費にできますが、本人の費用は対象外となります。しかし、法人の場合は経営者の旅費日当を経費にできますので、個人事業主から法人化した経営者は活用するとよいでしょう。
ただし、旅費日当の名目で過剰な支払いを行うと、給与の扱いとなる場合がありますので注意が必要です。
21.含み損のある株式の売却や評価損の計上を検討する
含み損のある株式の売却や評価損の計上を検討することも節税につながります。
含み損
時価が取得時の価格よりも下がってしまい、損失が出ているときの差額のことです。
まず、株式を売却した際に含み損があった場合は、損失の額を損金として計上可能です。原則として売却した時点で計上可能となるため、株式を保有している間は損金にできないことに注意が必要です。
ただし、特別な事情が発生した場合には、保有中の株式の評価損の計上が認められる場合があります。
特別な事情とは、株価が半分以下に下がって回復の見込みがない場合や、発行している会社の資産状態が著しく悪くなり時価が下がった場合などがあります。
まずは保有している株式について時価を把握したうえで、含み損がある場合は節税につなげられないか検討してみましょう。
22.貸倒引当金を損金として計上する
売掛金の額が大きい法人に効果的なのが、貸倒引当金を損金として計上する方法です。
貸倒引当金
将来に取引先の未払いや倒産の可能性がある場合に、将来の損失を会計上であらかじめ計上するものです。
将来のリスクに備えると同時に損金計上できるため法人税の節税にもつながります。
新たに支出を行わず経費の計上ができるため、資金繰りに影響がないのも特徴です。
法人税を節税する上での注意点とは?
上記で法人税の節税方法を紹介しましたが、過剰な節税対策によってデメリットが生じる可能性もあります。
以下で法人税を節税する上で気を付けるべき注意点について解説します。
銀行などからの評価が低くなる可能性がある
経費を支出する節税方法を行うと、利益が減少することになります。利益が減少することで課税される税額も減少するのですが、銀行などからの評価が低くなり、融資が受けにくくなる可能性があります。
銀行などの金融機関が融資を行うか検討する際には、貸し倒れになるリスクがどの程度あるのか評価が行われます。その際に事業の利益率なども考慮されます。
余計な出費や投資のやりすぎに注意!
節税のための出費や投資は、過剰になりすぎると、経営を悪化させたり、事業の成長を遅らせてしまう場合がありますので注意が必要です。
この記事で紹介したとおり、法人税の節税方法の多くは、何らかの形で経費を増やす仕組みになっています。節税対策に力を入れすぎると手元に残る資金が少なくなり、資金繰りが悪くなってしまいます。
ただし、節税自体が目的になって本来は必要のない支出や投資を行うのは控えるようにしましょう。
やりすぎると追徴課税される可能性が高くなる
不自然なほど節税対策を行ったり、悪質な方法で節税を行うと、税務署から調査を受ける可能性もあります。
調査の結果、経費と認められないという結果となると、本来よりも少ない金額を納税していることになりますので、ペナルティとして追徴課税を受けることになります。
特に、架空の経費を計上したり、通常は経費と認められることがないような支出を無理やり計上すると、節税の範囲を超えて脱税になってしまいます。
法人化することで投資系の利益も節税できる!
個人事業主が投資系で利益をあげている場合は、法人化することにより節税できる場合があります。
一般的には投資の利益などで所得額が年間800万円程度を超えると法人化により税金が安くなる場合が多いです。
これは、所得税の税率が累進課税のため、所得が一定以上増えると法人税の税率の方が低くなるからです。
所得税(累進課税) | 5%〜45% |
法人税 | 原則として23.2% |
ただし、法人化を行うにもコストがかかりますので、トータルでどちらがよいかを総合的に判断することが大切です。
法人化以外にも、経費計上を行ったり、所得控除を受けることで節税することもできます。
個人事業主の節税方法も、基本的な仕組みは法人税の節税と同じです。適度な節税対策を行うことで税金の負担が軽くなるようにしましょう。
まとめ
この記事では、法人税の節税方法や節税のコツ、注意点などを詳しく紹介しました。
法人税とは、法人の利益に対して課税される税金なので、経費計上や赤字の繰り越しなどの処理で所得を減らすことが、基本的な節税方法となります。その他に、節税につながる公的な制度を活用したり、投資によって節税できる方法もあります。
この記事で紹介したように、法人税対策の方法は多数ありますので、どんな節税方法があるのか一通り把握して、自社に合った対策を行うことが大切です。
ただし、節税対策が過剰になりすぎると銀行からの評価が下がったり、税務署から調査を受ける可能性もありますので注意が必要です。
ぜひこの記事でまとめたことを参考にしていただき、法人税の節税に役立ててください。
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