スタートアップのマーケティング人手不足|資金と調達時期で判断

スタートアップのマーケティング人手不足|資金と調達時期で判断 マーケティング

創業者や少人数で回すスタートアップのマーケティング人手不足は、資金の残り期間と次の調達までの月数から、絞る所と人の足し方を決めます。人手不足の一般的な原因や打ち手は別の記事に任せ、この記事では調達のどの時点にいるかで、いつ・何を・どう補うかを扱います。読み終えると、いま手を付ける所とやらない所、正社員を足すか外部に頼むか、次の調達までに成果の兆しが間に合う領域を、自社の数字で決められます。求職者に選ばれるための採用広報は扱いません。

スタートアップの人手不足を重くする資金の事情

スタートアップの人手不足を重くする資金の事情

マーケの手が足りない原因の多くは、役割の広さや採用と育成の難しさなど、会社の規模を問わず共通です。スタートアップで人を足す判断を重くしているのは、それとは別の2つの事情で、固定費と資金の残り期間の関係と、創業者の時間の取り合いです。

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固定費を足すと資金の残り期間が縮む構図

正社員を1人足すと毎月の支出が増え、その分だけ資金の残り期間が縮みます。売上で人件費を賄える会社と違い、人員の判断が事業を続けられる月数を直接動かすため、採用は「人が要るか」だけでは決められません。

毎月増えるのは給与だけではありません。社会保険料などの会社負担、採用にかかった費用、PCやツールの費用も乗ります。しかも正社員の人件費は、成果が出なかった月にもそのまま続きます。

外部に頼む場合も毎月の支出は増えますが、契約の期間を区切れる点が正社員と違います。どちらを選ぶにしても、増える月額と縮む月数を数字で出してから決めると、勢いで固定費を積む失敗を避けやすくなります。

創業者の時間を製品開発と取り合う問題

創業者がマーケを兼ねると、製品開発・営業・資金調達の準備と同じ時間を取り合います。マーケに使った1時間は、ほかの3つのどれかから削った1時間です。

取り合いが表に出やすいのは、調達の準備が始まる時期です。投資家との面談や資料づくりが入ると、真っ先に削られるのは成果がすぐ見えないマーケの作業になり、続けていた発信や広告の改善が止まります。止まった施策は再開するときに、数字の読み直しからやり直しになります。

だから創業者のマーケの時間は、余った時間で回すものとして扱わず、週ごとに上限を決めて先に確保する枠にします。枠に収まらない仕事が、人を足すか外部に頼むかを考える対象になります。

調達の時点で変わる手薄な所の見極め

調達の時点で変わる手薄な所の見極め

何から埋めるかは、調達前・調達直後・次の調達前のどの時点にいるかで変わります。同じ「手が足りない」でも、使えるお金と残された月数が時点ごとに違うため、正解の補い方も入れ替わります。

戦略を考える人と手を動かす人のどちらが欠けているかは、時点より先に見分けておきます。

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調達前は創業者が使える時間から絞る

調達前は固定費を増やす余地がほとんど無いため、施策の候補から考えず、創業者がマーケに割ける週あたりの時間の上限から決めます。そのうえで、売上に直結する導線を1つだけ選び、それ以外は「やらない」と決めます。

上限の出し方は、1週間の持ち時間から製品開発と営業と調達の準備に要る時間を先に引き、残った時間をそのままマーケの上限にする形です。上限は会社ごとに違って構いませんが、決めた数字は週ごとに守ります。

導線の1つは、問い合わせや商談に一番近い所から選びます。たとえば、商談につながっている紹介経路や、すでに問い合わせが来ている検索語の受け皿です。認知を広げる発信や、複数の広告媒体を同時に試すことは、上限の時間では成果を確かめきれないので後に回します。

調達直後は採用の前に試す領域を決める

資金が入った直後は採用を急ぎやすい時期ですが、ここで増やした固定費は次の調達まで毎月続きます。人の形を正社員にするか外部にするかを決める前に、成果の兆しが早く出る領域を選び、そこで手応えを確かめます。

手応えを確かめずに専任を採ると、採った人に「何を伸ばせばよいか」から探してもらうことになり、最初の数か月が検証に消えます。先に小さく試しておけば、採用の要件を「この施策を伸ばせる人」と具体的に書けます。

試す領域は、次の調達までの月数の中で兆しが見えるかどうかで選びます。領域ごとの時期は、調達までの月数と並べて確かめると選びやすくなります。手応えが出た領域が決まった時点で、人を足すか頼むかの比較に進みます。

次の調達前は示す数字につながる所だけ残す

次の調達が近づいたら、調達の場で示す獲得の数字に結び付く施策だけを残し、成果が調達のあとにしか出ない施策は止めるか小さくします。

調達の場で問われやすいのは、問い合わせ数や商談数、顧客1件を得るのにかかった費用が、どう推移してきたかです。人手が足りないまま施策を広げると、どの数字も中途半端に伸びず、説明できる推移が残りません。

残す施策は、示したい数字を1つか2つに決め、その数字を動かす施策から順に選びます。止める施策も記録だけは残しておくと、調達のあとに再開するときの手がかりになります。

資金の残り期間から逆算する人員の判断

資金の残り期間から逆算する人員の判断

人を足すか外部に頼むかは、増える月額が資金の残り期間をどれだけ縮めるかで比べます。ツールや生成AIも、導入の固定費と使う人の工数がかかるので、同じ式に入れて比べます。

残り月数と負担の増え方を出す2つの式

使う式は2つです。どちらも自社の数字を入れれば、人員の判断が残り期間にどう響くかを出せます。

  • 残り月数 = 手元資金 ÷ 毎月の純支出
  • 負担の増え方 = 増える月額 ÷ 毎月の純支出

毎月の純支出は、毎月の支出から売上の入金を引いた額です。

項目 自社の数字
手元資金   円
毎月の純支出   円
残り月数   か月
増える月額   円
負担の増え方   %

人を足したあとの残り月数は、残り月数を「1+負担の増え方」で割ると出ます。この月数が次の調達までの月数を下回るなら、その足し方は選ばずに見送ります。

正社員1人と外部の月額で縮む残り月数の比べ方

正社員と外部の比較は、増える月額をそれぞれ式に入れ、縮んだあとの残り月数を並べて決めます。

外部側の式に入れる月額は、業務委託でマーケターに頼むとき、どの領域でも月15〜30万円のあいだに収まる依頼が多くあります。この金額は1人が週に10〜20時間ほど動く前提で、実際に動ける時間には人ごとにばらつきがあります。市場全体を調べた相場ではなく、実際の依頼で多い幅として入れてください。

比べる形 増える月額に入れる値
正社員1人 想定年収÷12+会社負担(社会保険料など)
外部 頼む人の月額

正社員はフルタイム、外部は週の一部の時間だけなので、同じ月額でも任せられる量が違います。先に頼みたい業務量を決め、それを満たす形どうしで比べます。正社員には採用費と立ち上がりの時間が、外部には契約期間の縛りと社内で確認する人の時間がかかる点も、両方の側に足して比べます。

次の調達時期と成果の兆しの照らし合わせ

次の調達時期と成果の兆しの照らし合わせ

次の調達までの月数から、着手までの期間と兆しが見えるまでの期間を引き、月数が残る領域を先に選びます。引いた残りが無い領域は、いま始めても調達の場で示す数字になりません。

兆しが見える時期を調達までの月数に並べる

式の「兆しが見えるまでの期間」に入れる値は、当社が仲介してきた依頼で見ると、領域ごとに次の月数になることが多いです。

領域 式に入れる月数(兆しが見えるまで)
SEO 約3〜6か月
リード育成・IS 約1〜2か月
広告運用 約1か月

ISは電話やメールで見込み客を商談につなぐ営業、SEOは検索からの流入を増やす施策です。期間は兆しが見え始める目安で、同様の成果を保証するものではありません。

マーケター向けの複業人財を業務委託でアサインする当社の場合、式の「着手までの期間」には相談から人が動き出すまでの2週間ほどを入れます。契約は3か月より短くは結べません。

「次の調達までの月数 −(着手までの期間+兆しが見えるまでの期間)」を領域ごとに出し、残りがある領域から選びます。最低の契約期間が調達までの月数より長いときは、調達のあとも続ける前提で頼むかを決めます。

調達に間に合わない領域を後回しにする判断

調達までに兆しが見えない領域は、やめるのではなく調達のあとに回し、いまは準備だけ進めます。成果が出るまでに時間がかかる領域ほど、始める時期が遅れた分だけ兆しも遅れるため、準備まで止めると調達後の立ち上がりが遅くなります。

準備に当たるのは、お金と人手をほとんど使わない作業です。SEOなら狙う検索語の洗い出しと既存ページの整理、リード育成なら見込み客の一覧の整備、どの領域でも計測の設定と広告アカウントなどの権限の整理が当てはまります。

逆に、準備のつもりで記事の量産や広告の出稿を始めると、調達前の資金を兆しが見えない施策に使うことになります。後回しにする領域は「調達のあと、どの順に始めるか」だけを決めて残しておけば十分です。

次の調達のあと専任を採る前に残す記録

次の調達のあと専任を採る前に残す記録

次の調達のあとに専任を採るなら、それまで外部に任せてきた判断を、新しく入る人に渡せる形で残しておきます。記録が無いと、採った人が同じ試行錯誤を一からやり直すことになります。

何を社内に残し何を外部に任せるかの線引きは、専任を採るかどうかに関わらず先に決めておきます。

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外部の判断理由を採用した人へ渡す残し方

外部に頼んでいる間は、施策の結果だけでなく、なぜその施策を選び、何をやめたかの理由まで記録に残してもらいます。結果の数字は管理画面に残りますが、理由は頼んだ人の頭の中にしか残らないためです。

残してもらう項目は次の5つです。

  • 選んだ施策と、選んだ理由
  • やめた施策と、やめた理由
  • 判断の材料にした数字
  • うまくいかなかった試みと、そこから分かったこと
  • 次に試すつもりだった案

記録は月に1回、決まった形で受け取ると、採用した人が入社した週から読み始められます。外部に任せても、成果と法律上の最終責任は発注側に残ります。記録を受け取って社内で読むことは、その責任を果たす手段でもあります。

社内へ寄せ始める目安

社内へ寄せ始める目安は、成果が安定し、判断の理由を社内の人が自分の言葉で説明できるようになった時点です。月数で区切らず、この2つがそろったかで決めます。

成果が安定する前に寄せると、数字が揺れたときに、施策のせいか担当の交代のせいかを切り分けられません。理由を説明できないまま寄せると、採った人は記録を読んでも判断の背景がつかめず、外部に頼んでいたときより判断が遅くなります。

寄せ方は、社内の人が判断を持ち、外部の人が実行を続ける形から始めると、成果を落とさずに移しやすくなります。

まとめ

スタートアップのマーケティング人手不足は、次の順で判断を進めると、資金と調達の時期に合った補い方を選べます。

  • いまが調達前・調達直後・次の調達前のどの時点かを確かめ、時点に合った絞り方をする
  • 残り月数の式に正社員と外部それぞれの月額を入れ、人を足すか頼むかを比べる
  • 次の調達までの月数と兆しが見える時期を並べ、間に合う領域から選ぶ
  • 次の調達のあとに専任を採る前提で、判断の理由を記録に残してもらう

明日できる一歩は次の3つです。

  • 手元資金と毎月の純支出を出し、残り月数を計算する
  • 創業者がマーケに使える週あたりの時間の上限を決める
  • 頼みたい業務の量を書き出し、外部に頼んだ場合の月額を式に入れてみる

外部に頼む形を比べるときは、頼みたい業務量と次の調達までの月数を手元にそろえてから相談すると、話が早く進みます。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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