広告の入稿と月末のレポートに追われるマーケティング担当1人の職場では、新しい施策を足す前に、今の業務を4つに仕分けることから始めます。朝に広告の数字を確かめ、昼に記事の原稿を直し、夕方にメールの配信を設定しているところへ、急な資料の依頼が入る。そうした毎日が続くと、どれを止めてよいのかを自分だけでは決められなくなります。
答えの要点は3つです。業務を、手元に残す・人に渡す・仕組みに回す・やめるの4つに分けること。その一覧を上司と同じ表で見て、優先順位を決め直すこと。自分の1週間の稼働の内訳を見て、どこが溢れているかから次の一手を決めることです。この記事では、仕分けの基準、上司との決め直し方、稼働の内訳の見方、週の時間の組み方、成果が出る前の見せ方、休んでも止まらない引き継ぎの残し方までを順に扱います。
マーケティング担当が1人の職場で起きること

1人担当の職場では、作業の量より先に、決めることと調整することが1人に集まります。自分がどの立場に当てはまるかを確かめ、起きやすい困りごとを先に押さえておくと、どの業務から減らせばよいかが見えてきます。
ひとりマーケターに当てはまる3つの立場
ひとりマーケターとは、社内でマーケティングの実務と判断を1人で担っている人を指します。当てはまる立場は、おおむね次の3つに分かれます。
- 専任1人: マーケティングだけを担当しているが、同じ部署に施策を相談できる人がいない
- 他業務との兼任: 営業や広報、人事などの仕事と掛け持ちしながら、マーケティングも見ている
- 経営者直下: 社長や役員のすぐ下に置かれ、指示と承認を1人で受けている
どの立場でも、マーケティング担当の役割は「何を自分でやり、何を手放すかを決める人」です。手を動かす量で役割をとらえると、頼まれた仕事を足し続けることになり、手放す判断がいつまでもできません。
判断と調整まで1人に集まる仕組み
1人担当が苦しくなる原因は、作業の多さだけではありません。判断と調整が1人に集中することが、手が回らない状態を長引かせます。
- 担当範囲が広い: 広告、記事、メール、SNS、レポートのすべてで、やり方を決めるのも直すのも自分になる
- 上司と期待がずれる: 上司は来月の問い合わせの増加を見込み、担当者は半年かけて記事を積む計画を立てている、というように、成果の中身と時期の見込みが食い違ったまま進む。ずれに気づくのは評価の場面になりやすく、そこで初めて「何をしていたのか」と問われる
- 学ぶ時間が取れない: 新しい手法を試す前に、目の前の作業で1日が終わる。学ばないまま担当範囲だけが広がるので、どの施策も同じやり方で回し続けることになる
作業を速くするだけでは、この状態は軽くなりません。上司と見込みをそろえることと、学ぶ範囲を絞ることは、担当者が自分から言い出さないと始まらない仕事です。
抱えている業務の仕分け方

新しい施策を足す前に、今ある業務を書き出して仕分けます。締め切りのある実行に押されて、実行の後の見直しや引き継ぎの記録が後回しになっているなら、なおさら先に手を付けます。仕分けた結果は、上司と優先順位を決め直すときの材料にもそのまま使えます。
業務ごとに目的と締め切りと所要時間を並べる
最初に、抱えている業務を1つずつ書き出し、目的・締め切り・1週間あたりの所要時間を横に並べます。会議、確認待ち、数字の集計、急な依頼への対応も業務として書き出します。抜けやすいのはこの4つで、ここが見えないと余白を多く見積もってしまいます。
- 1週間分の予定表と、送ったメールやチャットを見返し、手を動かした仕事をすべて書き出す
- 業務ごとに、何のためにやっているかを1行で書く
- 締め切りと、1週間にかかる時間を書く
- 所要時間を合計し、週の稼働時間から引いて余白を出す
時間の見積もりは細かく測らず、おおよそで十分です。余白がほとんど無い、あるいはマイナスなら、次の基準で減らす業務を選びます。
業務を4つに振り分ける判断基準
書き出した業務は、4つの基準に照らして、手元に残す・人に渡す・仕組みに回す・やめるのどれかに振り分けます。
| 振り分け先 | 事業目標へのつながり | 遅れたときの影響 | 自分でないと判断できないか | 手順が決まっているか |
|---|---|---|---|---|
| 手元に残す | 直接つながる | 大きい | はい | 問わない |
| 人に渡す | つながる | ある | いいえ | ある程度決まっている |
| 仕組みに回す | つながる | ある | いいえ | 毎回同じ |
| やめる | 説明できない | ほとんど無い | 問わない | 問わない |
判定に迷う業務は、遅れたときの影響を先に見ます。影響が大きいのに自分でなくても判断できる業務は、人に渡す候補の筆頭です。
手放した仕事で空いた時間の行き先
人に渡す・仕組みに回すに振り分けた業務は、手放す前に、空いた時間を何に使うかを決めておきます。決めないまま手放すと、空いた時間は急な依頼で埋まり、仕分けた意味が残りません。
仕分けの一覧に「空いた時間で何をするか」の欄を足し、手放す業務ごとに、見直し・学習・引き継ぎの記録のどれに充てるかを書いておきます。行き先を書いた欄は、上司に相談するときにも、手放したい理由としてそのまま見せられます。
上司と優先順位をそろえ直す手順

断れない、後ろに回せないという状態は、担当者1人の我慢では解けません。上司と同じ表を見ながら、今週やることと後ろに回すことを一緒に決める形に変えます。
今週の依頼と必要な時間を1枚に並べる
上司への相談は、今週の依頼を1枚の表に並べてから始めます。口頭で忙しいと伝えても、何がどれだけ詰まっているかは相手に伝わりません。
| 依頼の内容 | 依頼元 | 期限 | 必要な時間 | 時間の内訳 |
|---|---|---|---|---|
| 展示会の告知メール | 営業 | 今週金曜 | 合計の時間 | 文面づくり・営業の確認待ち・配信の設定 |
| 新サービスの紹介記事 | 経営者 | 来週水曜 | 合計の時間 | 下調べ・取材・執筆・確認待ち |
必要な時間には、制作そのものだけでなく、制作前の調査と確認待ちの時間も入れます。上司には、仕上がった成果物は見えても、その前の調べものや返事待ちの時間は見えていないことが多いからです。
後ろに回す仕事と戻す条件の伝え方
新しい依頼は断るのではなく、「今週この依頼を入れるとしたら、どの仕事を待たせるか」を上司に選んでもらう形で相談します。選ぶのが上司であれば、後ろに回した仕事の責任を担当者が1人で抱えずに済みます。
相談の文は、次の型にすると伝わりやすくなります。
「◯◯の依頼を今週中に進めるには、あと△時間が必要です。いまの予定では□□と☆☆を進めています。どちらかを来週以降に回してよいでしょうか。回した仕事は、◯◯が終わった翌週に再開します。」
止めた仕事は、いつ・どの条件で戻すかまで合意し、一覧に残します。一覧には、止めた仕事、止めた日、戻す条件、決めた人の4つを書きます。戻す条件が無いと、止めた仕事は忘れられるか、上司だけが進んでいると思い込んだまま時間が過ぎます。
確認の流れと返事の期限を先に決める
優先順位と一緒に、誰が、いつまでに確認を返すかも決めておきます。1人担当の予定が崩れるきっかけは、自分の作業の遅れより、返事待ちで手が止まることにあります。
原稿や広告の文面を出しても、上司の返事が来なければ次に進めません。確認を出す前に、確認する人、返事の期限、期限までに返事が無いときの扱い(そのまま進めるか、次の会議で決めるか)を決めておくと、待ち時間を予定に組み込めます。
1週間の稼働の内訳で決める手の付け所

限界かどうかは、気合や「もう無理だ」という感覚ではなく、自分の1週間の稼働の内訳で見分けます。どの内訳が溢れ、どの内訳がゼロになっているかで、自分の手元で直せるのか、上司に体制の相談を持ち込むのかが分かれます。
1週間の稼働を6つの内訳で書き出す
1週間に使った時間を、実行・調整・確認待ち・見直し・学習・引き継ぎの6つに分けて書き出します。業務の一覧を、時間の使い方の側から並べ直す作業です。
| 内訳 | 含めるもの | 今週の時間 |
|---|---|---|
| 実行 | 広告の入稿、記事の制作、メールの配信設定 | |
| 調整 | 社内の打ち合わせ、依頼の受け付け、外部とのやり取り | |
| 確認待ち | 上司や他部署の返事を待って手が止まった時間 | |
| 見直し | 数字を見て次の手を決める時間 | |
| 学習 | 新しい手法を調べ、試す時間 | |
| 引き継ぎ | 手順や判断の理由を書き残す時間 |
書き出したら、見直し・学習・引き継ぎに時間が残っているかを確かめます。何時間を超えたら限界という線は、担当範囲や事業の段階で変わります。時間の合計ではなく、どの内訳が溢れ、どの内訳がゼロになっているかで判断します。
確認待ちを独立した行にする理由
確認待ちを実行や調整と分けて書くのは、手が止まっている原因がここに隠れやすいからです。外部のパートナーに実行を任せた案件でも、作業の担い手はそろっていたのに、社内で承認する人の返事が戻らないまま施策が進まなくなった型があります。手を動かす人を増やしても、返事を待つ時間は減りません。確認待ちが目立つ週は、作業量ではなく確認の段取りを疑います。
溢れている内訳ごとに手元で打てる一手
内訳の状態によって、自分の手元で打てる一手が変わります。
| 内訳の状態 | 手元で打てる一手 |
|---|---|
| 見直し・学習に時間が残っている | 効果の薄い施策を止め、残す施策に時間を寄せる |
| 確認待ちが溢れている | 確認する人・返事の期限・返事が無いときの扱いを上司と決め直す |
| どの内訳も溢れていない | 今は体制を変えず、仕分けと時間の組み方を続ける |

内訳は数週分そろえてから判断する
毎週同じ内訳が溢れているなら、仕事の総量が今の体制に合っていません。特定の週だけ溢れているなら、時間の組み方で吸収できる見込みがあります。
総量の問題だと分かったときは、自分の力不足と受け止めるより、数週分の内訳を並べた表を上司に見せるほうが話が進みます。商品や営業の人数、広告の予算が増えれば、作る物と確認する相手も増えます。表があれば、仕事の総量が変わったことを事実として共有できます。
施策を1〜2つに絞る基準

手持ちの施策から残すものを1〜2つ決め、残りは扱わないと決めます。扱わない施策を先に決めておくと、新しい依頼が来たときの判断が速くなります。
残す施策を見極める4つの物差し
残す施策は、4つの物差しで○△×を付けて選びます。
| 物差し | 確かめる問い |
|---|---|
| 事業への近さ | その施策の成果は、問い合わせや受注に直接つながるか |
| 今の体制で続けられるか | 自分1人の時間で、毎週止めずに回せるか |
| 成果が積み上がるか | 止めた後も、記事や顧客名簿のように残るものがあるか |
| 営業へのつなぎ方 | 集めた見込み客を、誰がどう引き継ぐか決まっているか |
手持ちの施策を縦に並べ、4つの物差しそれぞれに○△×を付けます。○の多い順に1〜2つを残し、×が2つ以上付いた施策は止める候補にします。2つの物差しで成り立たない施策は、1人の時間を割いても成果が残りにくいからです。
止める施策と再開する条件の決め方
施策ごとに、目的・見る指標・続ける条件・止める条件の4つを始める前に決めておきます。条件を決めずに始めると、うまくいかないときに止める判断ができず、時間を取られ続けます。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 新規の問い合わせを増やす |
| 見る指標 | 問い合わせ数と、その手前の流入数 |
| 続ける条件 | 決めた時期までに、指標が前月より伸びている |
| 止める条件 | 決めた時期を過ぎても、指標が動かない |
止めた施策には、再開する条件も書いておきます。1人担当の場合、施策を止める理由の多くは効果より時間です。手が空いたら戻すと書くだけでは、手が空く日は来ません。「人に渡せる業務が1つ減ったら」「上司と決めた今期の目的が変わったら」「他部署が素材づくりを引き受けてくれたら」のように、何が変われば戻すかを書きます。
着任したばかりの担当者が前任者・上司・営業に聞くこと

1人目として着任したばかりなら、施策のアイデアを考える前に、社内の3者に話を聞いて仕分けの材料をそろえます。手を付けやすい施策から増やすと、続いている業務の理由が分からないまま上に積むことになります。
前任者・上司・営業に聞くことを分ける
聞く相手ごとに、聞く中身を分けておきます。同じことを3人に聞くより、それぞれしか答えられないことを聞くほうが、短い時間で材料がそろいます。
- 前任者(いなければ、これまで施策を見ていた人): 続いている業務と始めた理由、止めてよいか迷っていたもの、資料やアカウントの置き場所
- 上司: 何が増えていれば成果と見るか、使える予算と時間、担当者が自分で決めてよい範囲
- 営業: 受注した顧客がどこで自社を知ったか、質の良い問い合わせとそうでない問い合わせの違い
上司から聞いた成果の中身は、上司と同じ言葉で言える1文にして、業務の一覧の先頭に書きます。言葉がそろっていれば、仕分けと絞り込みの基準がぶれません。
聞いた答えを業務の一覧に書き込む
聞いた答えは、メモで終わらせず、業務の一覧と施策の物差しに書き込みます。
前任者から聞いた業務は一覧に足し、始めた理由が分からない業務は、すぐに「やめる」に入れず、上司に確かめるまで残します。上司から聞いた成果の中身は、振り分けの基準の「事業目標へのつながり」を判定する物差しに使います。営業から聞いた話は、施策を絞るときの「事業への近さ」と「営業へのつなぎ方」の判定に使います。
3者の答えが一覧に入れば、着任して最初の相談から、上司と同じ表を見て話せます。
週の時間の組み方

予定表の空きを順に埋めるのではなく、仕事の性質ごとに時間を割り付けます。割り付けを先に決めておけば、急な依頼が入っても、どの枠を動かせばよいかがすぐに分かります。
手を止めずに済む時間帯の割り振り
制作や分析のように集中が要る仕事と、連絡や会議は、別の時間帯に分けます。
| 業務ブロック | 向く仕事 | 割り付ける時間帯の例 |
|---|---|---|
| 数字を見る | 広告と流入の確認、異常の発見 | 週の初めの朝 |
| 制作 | 記事・広告文・資料づくり | 会議の入らない午前 |
| 配信・入稿 | メールの配信、広告の入稿 | 締め切りの前日 |
| 見直し | 数字から次の手を決める | 週の終わり |
| 社内の連絡 | 返信、依頼の受け付け | 1日のうち決まった時間 |
この表を自分の1週間に割り付け、上司やよく依頼をくれる人に共有しておきます。連絡の時間帯が伝わっていれば、制作の途中で手を止められる回数が減ります。
同じ種類の作業をまとめて片付ける工夫
似た作業はまとめて処理し、繰り返し使う文面はひな型にします。
- まとめて処理する作業: 広告の入稿、SNSの投稿予約、請求書の処理など、手順が同じ作業を1つの枠に集める
- ひな型にするもの: メールの文面、SNSの投稿文、月次レポートの構成
作業を切り替えるたびに頭を切り替える時間がかかるため、同じ種類の作業を続けて片付けるほうが早く終わります。
ひな型には、毎回確かめる箇所を残しておきます。日付、数字、宛先、リンク先など、使い回すと誤りが起きやすい箇所に印を付けておけば、確認の漏れを防ぎやすくなります。
実行と見直しを一組で予定に入れる
実行の予定を入れたら、同じ週のうちに見直しの時間も予定に入れます。配信や入稿の後に見直しの枠が無いと、結果を見ないまま次の実行に進んでしまいます。見直しの枠では、狙った指標が動いたか、続ける条件を満たしているか、次に何を変えるかの3点だけを確かめます。

成果が出る前に上司へ見せる数字と報告

上司がマーケティングに詳しくない場合は、成果を報告する前に、何を成果と呼ぶかの物差しをそろえます。物差しが無いまま報告すると、活動の量だけが伝わり、成果として受け取ってもらえません。
活動量から受注までつながる指標の段
指標は、活動量・問い合わせ・商談・受注の4段に並べ、自社の数字を当てはめます。
| 段 | 指標の例 | 自社の先月の数字 |
|---|---|---|
| 活動量 | 配信数、記事の本数、広告の表示回数 | |
| 問い合わせ | 資料請求、問い合わせの件数 | |
| 商談 | 商談になった件数 | |
| 受注 | 受注の件数と金額 |
先月の実績を各段に入れたら、どの段の数字を自分の成果として見てもらうかを上司と決めます。広告のように短い期間で反応を見る施策と、記事やメールのように育てる施策では、数字を見る時期が違うことも先に伝えておきます。
本数のような量の目標は活動量の段に置き、評価は問い合わせより後ろの段で見ると決めておきます。量だけで合意すると、本数を達成しても評価につながらず、本数が落ちたときだけ問われます。
問い合わせが増える前に見せる手前の数字
育てる施策は、問い合わせの段が動くまでに時間がかかります。その間に何も見せられないと、上司からは止まっているように見えます。
問い合わせの手前で動く数字を、先に上司と選んでおきます。
- 記事: 狙った検索語からの流入、記事から資料や料金のページへ進んだ数
- メール: 開封より、本文のリンクが押された数
- 広告: 表示回数より、問い合わせのページまで進んだ数
毎月上司に出す報告1枚の中身
報告は月に1回、1枚にまとめます。載せるのは、4段の先月の数字、手前の数字の動き、来月の一手の3つです。
来月の一手には、続ける施策と止める施策、その理由を1行ずつ書きます。数字だけを並べると、上司は良いのか悪いのかを判断できません。担当者がどう読んで何をするかまで書いてあれば、上司は承認するか、別の手を指示するかを選ぶだけで済みます。
毎月同じ形で出すと、先月との比べ方も上司に伝わります。形を変えないことが、成果の出る前の期間を待ってもらう材料になります。
休んでも止まらない引き継ぎ

引き継ぎは、すべての仕事を文書にする必要はありません。止まると困る仕事から順に残していけば、少ない時間で休める状態に近づきます。
止まったときの影響を3段で付ける
業務ごとに、止まったときの影響を大・中・小の3段で付け、大の業務から手順を書きます。
| 影響 | 目安 | 業務の例 |
|---|---|---|
| 大 | 1日止まると顧客や売上に影響が出る | 広告の予算の管理、問い合わせへの一次対応 |
| 中 | 1週間止まると困る | メールの定期配信、週ごとの数字の確認 |
| 小 | 戻ってから対応すれば足りる | 記事の手直し、資料の整理 |
大の業務の手順を書き終えた時点で、短い休みなら取りやすくなります。中と小は、手が空いた週に少しずつ書き足します。
引き継ぎ書に残す3つの情報
残すのは、作業の手順・資料の置き場所・迷ったときの確認先の3つです。あわせて、その施策を選んだ理由も1行残します。理由が無いと、代わりの人は止めてよいかどうかを判断できません。
| 項目 | 記憶頼みの状態 | 残した状態 |
|---|---|---|
| 作業の手順 | 担当者の頭の中にだけある | 操作の順に箇条書きになっている |
| 資料の置き場所 | 個人のフォルダやメールに散らばる | 共有フォルダの1か所にまとまっている |
| 確認先 | 誰に聞けばよいか分からない | 判断ごとに確認する人が書いてある |
| 選んだ理由 | 前任者のやり方として続いている | 目的と続ける条件が書いてある |
判断に迷ったときの相談先と頼み先

相談相手がいないと感じるときは、相談したい中身を分けると、持ち込む相手が見えてきます。予算と優先順位は社内の決める人、実務の進め方は社外の相手、作業への協力は他部署、と分けて考えます。
予算と優先順位は社内で決める人へ
予算・優先順位・施策を止める判断は、上司や経営者に持ち込みます。担当者だけで決めると、後から覆されたときにそれまでの作業が無駄になります。
持ち込む前に、次の3つをそろえます。
- 迷っている点を1文にしたもの
- 自分の仮説(どちらを選びたいかと、その理由)
- 判断に使う数字の表(稼働の内訳や指標の段)
3つがそろっていれば、上司は選ぶだけで済み、相談の時間も短くなります。
実務の迷いを持ち込める社外の相談相手
施策の進め方の迷いは、同じように1人で担当している人や、その領域に詳しい人に話すと具体的な答えが返ってきやすくなります。ただし他社のやり方はそのまま当てはめず、自社の数字で小さく試してから取り入れます。
営業や開発に協力を頼む範囲
他部署への頼みごとは、頼む中身と期限を絞って伝えます。「記事のネタをください」のような広い頼み方では、相手は何をすればよいか分かりません。
- 営業へ: 商談でよく聞かれる質問を3つ、今週金曜までに
- 開発へ: 新機能の仕様のうち、記事に書いてよい範囲を、公開の1週間前までに
もらった情報をどう使ったかを後で伝えておくと、次に頼むときも協力を得やすくなります。
学ぶことを絞る考え方

忙しくて学べないときは、学ぶ範囲を先に決めます。範囲を決めずに情報を追うと、読むだけで時間がなくなり、仕事に戻ってきません。
今の困りごとから学ぶ範囲を決める
学ぶのは、いま担当している施策で困っていることに限ります。新しい手法やツールの情報を、すべて追う必要はありません。
困りごとを1つ選び(広告の獲得の費用が上がっている、記事の流入が伸びない、など)、それに答える情報だけを集めて、試して結果を見ます。
専門を1つ深めるか、広く浅くかは、担当範囲で選びます。施策を1〜2つに絞った後なら、その施策を深く学ぶほうが成果に結びつきやすくなります。広告もSEOもメールも自分で見る状態が続くなら、各領域の基本を押さえ、深い部分は社外の専門家に聞く前提にします。
学んだことで困りごとが解けたかを見直す
学習も業務の一覧に1行足し、どの困りごとを解くための学習かを書いて、週の予定に枠を取ります。
月に1回、その困りごとが解けたかを見直します。解けていれば、次の困りごとへ範囲を移します。解けていなければ、範囲が広すぎないかを確かめ、1つの施策の1つの数字まで狭めます。それでも進まない場合は、自分で調べ続けるより、社外の詳しい人に聞くほうが早く片付きます。
よくある質問
Q. 兼任でもこの進め方でよいですか。
同じ進め方でかまいません。兼任の場合は、マーケティング以外の業務も同じ一覧に書き出し、稼働の内訳に入れます。マーケティングの業務だけで仕分けると、他の業務に取られている時間が見えず、余白を多く見積もってしまいます。
Q. 上司に相談しても仕事が減らないときはどうすればよいですか。
相談が「忙しい」という訴えで終わっていないかを確かめます。今週の依頼と時間を並べた表に、後ろに回す候補を添え、上司に選んでもらう形に変えます。それでも減らないときは、稼働の内訳を数週分そろえ、調整や確認待ちが溢れている事実を示したうえで、増員や外部の相談に進みます。
Q. 増員を求めても採用が決まらないときはどうすればよいですか。
経験のあるマーケターの採用は、思うように進まないことがあります。待つ間は施策を絞って続けながら、採用を続けるか、外部の力を借りるかを並行して考えます。

まとめ
- 業務を、手元に残す・人に渡す・仕組みに回す・やめるの4つに仕分ける
- 今週の依頼と必要な時間を1枚の表に並べ、上司と後ろに回す仕事を決め直す
- 1週間の稼働の内訳を数週分並べ、溢れている内訳から次の一手を決める
来週の月曜の朝は、予定表とメールを見返して、抱えている業務を書き出すところから始めてください。目的と締め切りと所要時間を並べたその一覧が、上司との相談にも、外の力を借りるかどうかの判断にも、そのまま使えます。
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この表は、機械的に業務を止めるための道具ではありません。やめるに入った業務でも、上司や他部署が必要としている場合があります。表の結果は自分だけで決め切らず、上司に相談するときの材料として持ち込みます。