副業としての収入が増加して本業を上回ると、個人事業主として事業展開を視野に入れる人もいるでしょう。その際に忘れてはならないのが税金回りであり、特に個人事業税は切り離せません。
会社・企業に所属して給与収入を得ている人にはあまりなじみがない個人事業税ですが、そもそもどのような税金なのでしょうか。
本記事では個人事業税そのものはもちろん、計算方法をシミュレーションも含めて解説します。
個人事業税とは?
個人事業主とは、個人で営んでいる事業で一定の収入があった場合に発生する地方税です。
個人で事業を営む際、自治体のゴミ回収などを利用しています。このような行政サービスを維持・管理するには一定の費用が必要であり、その財源確保を目的として徴収される税金が個人事業税です。
事業所税とは何が違う?
個人事業税は「事業税」に大別されます。この事業税と混同されがちな税金に「事業所税」がありますが、異なる税金です。
個人事業税を含む「事業税」とは、個人または法人の収入・所得などに応じて発生する地方税のことで、個人事業主の場合は個人事業税、法人の場合は法人事業税と名称が変わります。
一方の事業所税とは、事業規模に応じて課税される税金です。事業所税は「資産割」と「従業員割」の2つから成り立っており、以下のように税率が定められています。
事業所税 | 内容・税率 |
資産割 | ・使用する事業所などの床面積1平方メートルあたり600円を課税 ・事業所床面積が1,000平方メートル以下の場合は免除 |
業員割 | ・従業員に支払う給与や報酬に対して0.25%をかけて課税 ・従業員数100人以下の場合は免除 |
個人事業税の対象は?
個人事業税は、すべての個人事業主が対象というわけではありません。では、誰が支払う税金なのでしょう。
ここでは納税義務が発生する対象やボーダーラインの金額などについて解説するので、参考にしてください。
誰が払う?いくらから払う?
個人事業税は「個人事業」という言葉が名称の中に含まれているため、個人事業主だけが負担する税金と思っている人もいるかもしれません。
しかし納税義務は「対象となる業種の事業を営み、年間総所得額が290万円を超えた場合」の原則に当てはまるすべての人が対象です。フリーランスや副業で収入を得ている会社員でも、対象となる業種に当てはまれば、納税義務が発生します。
対象となる業種については次の項目で紹介するので、ぜひ参考にしてください。
対象となる業種
個人事業税が発生する対象業種を「法定業種」といい、70業種が対象です。この70業種は3つの事業に大別されており、分類によって税金を計算する際の税率が以下のように定められています。
事業種 | 税率 | 事業の種類 |
第1事業 (37事業) |
5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、飲食店業、不動産売買業、駐車場業、代理業、広告業、請負業、電気供給業、冠婚葬祭業、運送業など |
第2事業 (3事業) |
4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第3事業 (30事業) |
5% | 医療、歯科医業、士業、歯科衛生士業、薬剤師業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、経理士業、理容業、美容業、クリーニング業など |
3% | あんま・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業事業、装蹄師業 |
営んでいる事業内容がどれに該当するのかわからない場合は、自治体などに問い合わせをしてください。
どこまで課税される?
個人事業税は「事業」という言葉が入っているため、事業所得のみに課せられる税金と思う人もいるかもしれません。
しかし実際には事業所得以外の不動産所得・雑所得も対象となるケースがあります。
例えば駐車場を営んでいる場合には不動産貸付業の対象になりますが、このとき発生する駐車場の賃貸料は不動産所得として計上され、事業所得ではありません。しかし個人事業税の第1業種に含まれるため、個人事業税が発生します。
個人事業税の計算方法は?
個人事業税の計算方法は、以下の通りです。
①年間総所得額を算出・・・・・年間総収入-1年分の必要経費
↓
②課税所得額を算出・・・・・・年間総所得額-控除額の合計
↓
③所得額を算出・・・・・・・・課税所得額×法定業種別の税率
個人事業税の控除対象は?
個人事業税に対して設けられている控除制度は以下の通りです。
- 法定業種外
- 事業主控除
- 赤字繰り越し(3年分)
- 譲渡損失
- 損失繰り越し控除
- 専業専従者給与控除(青色・白色)
それぞれの控除制度を詳しく確認していきましょう。
法定業種外
個人事業税は、個人事業主・フリーランス・副業を行う会社員などが一定の収入を得た際に課せられる税金ですが、一部対象外とされているものがあり、その事業を営んでいる場合には納税義務が発生しません。対象外となっている主な業種は以下の通りです。
- 農業
- ライター
- 画家
- 漫画家
- システムエンジニア
- プログラマー
- 翻訳家
- スポーツ選手
上記に該当する場合は、個人事業税が発生しないので気にする必要はありません。
事業主控除
個人事業税は290万円をボーダーラインとしていますが、それは事業主控除の上限が290万円に設定されているからです。
事業主控除とは個人事業税を計算する際に年間収入から差し引かれる控除制度のことで、原則として一律290万円が1年分の収入からマイナスされます。
例えば個人事業主として事業を始めた期間が4カ月だった場合の事業主控除は以下の通りです。
290万円(事業主控除額)×4/12カ月=96.666万円
100円単位は切り上げになるので、事業主控除額は96.7万円と算出されます。
前3年の赤字繰り越しがある
赤字損失がある場合は、損失が出た翌年を起算年として3年間の繰り越しが可能です。
例えば、2023年度分の総所得額が450万円あったとしましょう。しかし2021年に赤字分として240万円を計上していた場合、450万円から240万円を差し引いた210万円が2023年度分の事業所得となり、個人事業税の対象外なので納税義務は発生しません。
ただし、赤字の繰り越しができるのは青色申告者のみで白色申告では繰り越し相殺ができないので、注意してください。
譲渡損失の控除
資産の売却時に譲渡損失が発生した場合、年間総所得額からの控除が可能です。
対象は不動産・上場株式・投資信託などで何らかの事情で、資産価値が購入時よりも低い金額で売り払わなければならないこともあるでしょう。その際に発生する損失を譲渡損失といい、年間総所得から差し引くことが可能です。
青色申告の場合は、前述した赤字損失同様に譲渡損失が発生した翌年を起算年として3年間の繰り越しができます。
被災事業用資産の損失
被災事業用資産に損失を受けた場合には、その分を年間総所得額から控除可能です。
被災事業用資産の損失は発生した年の翌年を起算年として3年間の繰り越しが可能です。
なお、この限定的な控除制度は白色申告者のみが対象となっており、青色申告の場合は純損失(不動産所得・譲渡所得などを含む)全額の繰り越しが可能であるため、被災事業用資産の損失のみに限定されません。
青色・白色専従者給与
個人事業税の控除のひとつとして、専従者における制度もあります。
青色申告の場合は「青色事業専従者給与」というものがあり、白色申告には「事業専従者控除」という制度が用意されており、経費範囲や控除額は以下の通りです。
青色事業専従者給与 | 事業専従者控除 | |
対象 | 青色申告者 | 白色申告者 |
経費範囲や控除額 | 家族に支払う対価全額 | 配偶者は最高86万円、15歳以上のその他の親族は最高50万円まで |
参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
個人事業税の申告方法は?
個人事業税は、確定申告や住民税の申告をした場合には手続きで提出されたデータをもとに納税対象か否かの判断がされるので申告手続きをする必要はありません。
個人事業税の支払い方法は?
個人事業税の支払い方法は、以下の5通りです。
- 現金決済
- クレジットカード決済
- 口座振替
- eLTAX
- スマートフォン決済
それぞれの支払方法やメリットを解説するので参考にしてください。
現金決済
個人事業税の納税義務が発生すると、税務署から納付書が送付されてきます。その納付書と現金を持参して支払う方法が、現金決済です。
現金決済できる場所は納付書の裏側に明記されており、金融機関の窓口以外にコンビニでも支払いができます。
納付書と現金を持ち込めば支払いができるので、容易な支払い方法といえるでしょう。
クレジットカード決済
自治体によっては、クレジットカード決済に対応しているところがあります。
納付書に「地方税統一QRコード(eL-QR)」が印刷されている場合は、クレジットカード決済が可能です。QRコードを読み取ると自治体が運営するクレジットカード決済専用ページへのアクセスが可能になり、表示される手順に沿って納付できます。
窓口支払のような日時に縛りがなく、自宅や勤務先といった好きな場所から納付できる点はメリットといえるでしょう。
口座振替
個人事業税の振込は口座振替も選択でき、その際は以下のいずれかの方法で手続きを行います。
- 管轄する税事務所に口座振替申込書を取り寄せる
- 「預金口座振替依頼書」を利用する
- Web口座振替受付サービスで申し込む
個人事業税の納税義務が発生すると、通知書とあわせて「預金口座振替依頼書」のはがきが同封されているので、これに必要事項を書いて投函しましょう。
また自治体によってはWeb口座振替受付サービスを展開しているところもあり、その場合はインターネットでの申込が可能です。
eLTAX
eLTAXとは、インターネット上で地方税の申告・申請・納税ができるシステムです。地方税共同機構という地方公共団体が運営しており、全国の自治体で導入されています。
このシステムを利用すれば、各自治体などへ赴くことなく自宅や勤務先を含む好きな場所から個人事業税の納税が可能です。
支払方法は「インターネットバンキング」「クレジットカード」「ダイレクト方式」の3種類が用意されており、「インターネットバンキング」「クレジットカード」を選択すると、「F-REGI公金支払い」のリンク先へ移動して手続きを行います。
スマートフォン決済
「地方税統一QRコード(eL-QR)」が印字された納付書の場合、スマートフォン決済アプリの利用が可能です。
スマートフォンのカメラ機能を使ってQRコードを読み取り、手順に従って手続きを行いましょう。
利用可能なスマートフォン決済アプリの一部は以下の通りです。
- au Pay
- ファミペイ
- PayPay
- 楽天銀行アプリ
- 楽天ペイ
- d払い など
今後も対応するスマートフォン決済アプリは増えていく可能性があるので、こまめにサイトをチェックしてみてください。
よくある質問
個人事業税におけるよくある質問とその回答を紹介します。
個人事業税に青色申告書控除はある?
個人事業税に青色申告控除はありません。
しかし確定申告時に青色申告を選択すると事業専従者給与控除の対象になり、家族に支払う給与・賞与などの対価はすべて経費計上できます。経費計上できる金額が多くなれば課税所得額が抑えられるので、個人事業税の金額も下がるでしょう。
個人事業税は経費になる?
個人事業税は、所得税法上の経費として計上可能です。
仕訳を行う際には「租税公課」に分類されるので、個人事業税を支払った際には忘れず租税公課として計上しておくと良いでしょう。支払った金額は課税所得額からマイナスできるので、個人事業税の金額が下がります。
まとめ
個人事業税について解説しました。
「個人事業」という言葉が入っているため、対象は個人事業主のみと思っている人もなかにはいるかもしれません。しかし、実際はフリーランスや副業を行っている会社員も事業種や年間収入によっては支払義務が発生する可能性があります。
本記事で紹介した対象事業などを参考に、支払いの義務が発生するかどうか確認してください。
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