消費税に控除ってあるの?適用要件や控除額の計算など完全ガイド

控除

インボイス制度が導入されたことで、消費税で控除を受けるための方式・適用要件が大幅に変更されました。消費税の控除制度にあることをご存じない人はピンと来ないかもしれませんが、自営業や個人事業主にとっては重要な内容です。

本記事では消費税の控除制度はもちろん、対象となる範囲や適用要件を解説します。関係がある人もこれから関係がありそうな人も、ぜひ参考にしてください。

消費税の仕入税額控除とは?

消費税の仕入税額控除とは、消費税を計算するときに課税売上の消費税額から課税仕入の消費税額をマイナスすることです。

商品やサービスの取引時に消費税が課税されますが、税金を負担するのは消費者ですが納税は事業者が行います。しかし事業者が消費税を納税すると生産・流通の取引時に消費税が累積してしまうため、重複納税を防ぐために取り入れられた仕組みが仕入税額控除です。
生産業者 製造業者 卸売業者 小売業者
売上金額 3万円 7万円 8万円 11万円
売上消費税額 3,000円 7,000円 8,000円 1.1万円
仕入額 3万円 7万円 8万円
仕入消費税額 3,000円 7,000円 8,000円
納税額 3,000円 7,000円-3,000円=4,000円 8,000円-7,000円=1,000円 1.1万円-8,000円=3,000円

消費者は、小売業者から消費税1.1万円を加算した12.1万円で商品を購入します。上記一覧表の納税額を合計すると1.1万円であり、消費税の負担者は消費者ですが納税者は各事業者であることがわかるでしょう。

仕入税額控除の対象

仕入税額控除の対象は国税庁で以下のように定められています。

対象取引 具体例
棚卸資産の購入 商品の仕入れなど
原材料等の購入 パン屋さんの小麦粉など
事業用資産の購入や賃借 ・作業用の機械
・事務所や倉庫
・車両運搬具
広告宣伝費 ・チラシやパンフレットの作成費
・新分野情報誌などへの広告掲載費
厚生費 ・従業員の健康診断やインフルエンザの予防接種費用
・従業員の通勤費
接待交際費 ・取引先との飲食代
・取引先に送るお歳暮やお中元の費用
通信費 ・固定電話代
・インターネット利用料
水道光熱費 ・水道代
・ガス代
・電気代
事務用品費 ・コピー用紙
・文房具
消耗品費 ・蛍光灯代
・トイレットペーパー代
・事務所で使用する洗剤代
新聞図書費 ・定期購読の新聞
・雑誌
・書籍
修繕費 ・工作機械のオーバーホール代
・パソコンの修理費
外注費 ・下請費
・加工費
・業務委託費
・人材派遣費

人材派遣費は派遣社員に対して給与を支払うのは派遣会社であり、事業主は派遣会社に人材派遣費として支払うことになるので外注費に区分され、給与ではありません。

給与の場合は非課税対象ですが、人材派遣費は外注費に分類されることから消費税かつ仕入税額控除の対象になります。

経費も控除の対象になる

「仕入税額控除」という名称から対象になるのは仕入だけと思う人もいるかもしれませんが、実際は経費も控除対象です。

ここで仕入と経費の原則を確認しておきましょう。

勘定項目 原則
仕入 売上に直結する費用 ・販売目的の商品
・販売目的の商品を作成するための原材料
・商品や原材料の輸送費
経費 事業を行ううえで必要な費用 ・交通費
・水道光熱費
・従業員の給料や賞与

 

原則や主な例は異なりますが、いずれも事業上は必要な支出であることから経費も仕入同様に仕入税額控除の対象です。

ただし経費のなかには課税対象外のものもあり、その場合は仕入税額控除に含まれません。前述した「仕入税額控除の対象」を参考に、経費の取引が課税されるかされないかで判断してください。

仕入税額控除の対象にならないもの

仕入税額控除の対象にならないものは原則として非課税取引であり、国税庁では以下のようなものを非課税となる取引としてあげています。

非課税取引 概要または主な例
土地の譲渡・貸付 借地権なども含む
有価証券等の譲渡 ・国債や株券
・抵当証券
・社員の持分
・金銭債権など
支払手段の譲渡 ・小切手
・約束手形
・銀行券
利子 ・預貯金
・貸付金
保険金・共済金 ・保険料全般
・共済掛金
日本郵便株式会社や地方公共団体などが行う譲渡 ・郵便切手
・印紙
・証紙
金券 ・商品券
・プリペイドカード
法令に基づいた役務提供の
手数料
・登記簿の手数料
・特許の取得や登録にかかる手数料
・証明書や公文書の交付手数料
外国為替業務にかかる役務提供 ・外国為替の取引
・旅行小切手の交付
税金 ・法人税や所得税
・固定資産税
・自動車税

(参照:No.6201 非課税となる取引|国税庁No.6921 控除できなかった消費税額等(控除対象外消費税額等)の処理|国税庁

上記以外にも従業員・取引先への慶弔費や社宅などの目的で契約した不動産の家賃なども、仕入税額控除の対象外です。

国税庁は非課税取引の原則として「事業としての対価が発生する取引であっても、社会政策的配慮や課税になじまないと考えられるもの」と定義しています。

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仕入税額控除の計算方法

仕入税額控除の計算方法を紹介するうえで欠かせないのが、課税売上割合です。計算する方法は全部で4つありますが、これらすべてにおいて課税売上割合が重要なカギを握っています。

課税売上割合とは、当該期間中の総売上高から消費税が課税される課税売上高がどれくらいあるかを示す割合のことです。

課税売上割合=当該期間中の税抜課税売上高/当該期間中の税抜総売上高

税抜課税売上高とは通常の売上など消費税の課税対象となる収入のみを指し、店舗に陳列した商品を消費者が購入した場合の金額などがこれにあたります。

一方の総売上高とは消費税の課税対象ではない収入も含めた金額のことであり、預貯金の受取利息などが対象です。

なお計算式は4つあると説明しましたが、具体的には以下のような条件によって選択する計算方法が異なります。
前々年度の課税売上高 課税方式 期間中の課税売上高 計算方法
5,000万円以下 一般課税 期間中の課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95% 全額免除
期間中の課税売上高5億円超かつ課税売上割合95%未満 課税仕入の消費税額区分が不可能 一括比例分配方式
課税仕入の消費税額区分が可能 個別対応方式または一括比例分配方式
簡易方式 簡易方式
5,000万円超 期間中の課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95% 全額免除
期間中の課税売上高5億円超かつ課税売上割合95%未満 課税仕入の消費税額区分が可能 一括比例分配方式
課税仕入の消費税額区分が不可能 個別対応方式または一括比例分配方式

(出典:No.6401 仕入控除税額の計算方法|国税庁

上記一覧表は、左から順番に該当する項目を選択してください。選択した状況に応じて、該当する計算式がわかります。

簡易課税

簡易課税を利用する際には、事前に税務署へ「消費税簡易税制度選択届出書」を提出しなければなりません。適用課税期間の前日までが締切なので、早めに届出書を所轄の税務署へ提出しましょう。

仕入控除税額=課税仕入等の消費税額×みなし税率

簡易課税の場合の税額は上記の計算式で算出しますが、「みなし税率」は国税庁にて以下のように定められています。

事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第1種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)
第2種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く
第4種事業 60% 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業など。
なお、第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業。
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除く
第6種事業 40% 不動産業

(出典:No.6509 簡易課税制度の事業区分|国税庁

課税仕入等の消費税額を500万円と仮定して、第1事業と第2事業それぞれと事業区分していないケースの控除額を計算してみましょう。

事業区分 控除額
第1種事業 500万円×90%=450万円
第1種事業(300万円)と第2種事業(200万円) 500万円×(300万円×90%+200万円×80%)÷500万円=430万円
第1種事業と第2種事業のそれぞれに該当するが
事業区分を指定な場合
500万円×80%=400万円
※最も低いみなし仕入率で計算

 

個別対応方式

個別対応方式は、最初に消費税額を以下の3つに分類してそれぞれ計算します。

仕入消費税額 対応
1 課税売上対応分 材料費、外注費など 全額控除
2 非課税売上対応分 販売用土地購入の事務手数料など 控除なし
3 「1」「2」共通の仕入 光熱費、福利厚生費など 課税売上割合相当額

 

上記3つで算出した金額をもとに控除額を求める計算式は以下の通りです。

仕入税額控除=「1」+(「3」×課税売上割合)

以下の2パターンでシミュレーションしてみましょう。

条件 控除額
「1」50万円
「2」20万円
「3」10万円
割合:50%
50万円+(10万円×50%)=55万円
「1」30万円
「2」20万円
「3」10万円
割合:70%
30万円+(10万円×70%)=37万円

一括比例配分方式

一括比例配分方式は、個別対応方式のように「1」「2」「3」と区別できない場合やあえて選択した場合に一括比例分配方式で控除額を計算します。

仕入税額控除=課税仕入消費税額(=「1」課税売上対応分)×課税売上割合

上記の計算式に前述の条件を当てはめてシミュレーションしてみましょう。

条件 控除額
課税仕入消費税額:50万円
割合:50%
50万円×50%=25万円
課税仕入消費税額:30万円
割合:70%
30万円×70%=21万円

全額控除

消費税の計算は複雑なことから常時厳密に行うと経理上の処理負担が大きくなり、ほかの事務作業が滞ったり従業員の給料などの経費が高くなったりします。

このような事態を避けるため、「仕入税額控除の計算方法」で紹介した条件に該当する場合のみ消費税の全額控除が可能です。

対象として認められやすいのは起業したばかりの個人事業主や課税売上規模があまり大きくない事業者であり、該当しないと判断された場合は前述したいずれかの方法を選択しなければなりません。

以下の条件の場合をシミュレーションしてみましょう。

条件 金額 控除対象部分
課税売上対応分の課税仕入の消費税額 700万円 全額控除
非課税売上対応分の課税仕入消費税額 200万円 控除なし
共通部分の消費税額 100万円 課税売上割合95%分

上記で計算しなければならないのは共通分であり、100万円の95%は95万円と計算できます。これと全額控除になる700万円を足した795万円が控除額です。

仕入税額控除の適用要件

仕入税額控除の適用要件を確認しましょう。

2023年10月1日からの適用要件

2023年10月1日からインボイス制度が導入されたよね。
これによって仕入税額控除の適用要件で変わったことはあるの?

はい、このことにより仕入税額控除の適用要件も大幅に変更されました。
適用要件のひとつとして事業用として保存する帳簿への取引情報の記載があげられ、以下の内容が記録されていなければなりません。

・取引相手の名称(仕入先店舗や氏名)
・購入年月日
・取引内容(軽減税率対象品目)
・税率区分ごとの取引金額

(参考:適格請求書等保存方式の概要|国税庁

特に取引内容については、一般税率と軽減税率の対象を明確にしなければなりません。例えば軽減税率対象品目には帳簿と請求書の両方に「※」などの記号を記載し、欄外に「※は軽減税率対象品目」と明記してわかるようにしておきましょう。

請求書の「お茶」や「ケーキ」などに軽減税率対象品目であることを示す※マークが明記されていた場合、帳簿には以下の表に明記します。

仕入   (△△株式会社)
YY年 適用 借方 貸方
9 5 株式会社〇〇  食料品 ※ 1,080

※は軽減税率対象品目

帳簿は特に品目を細かく明記する必要はなく、購入した企業・会社名と税率区分でまとめても問題ありません。

また帳簿自体も特定の形式はなく、台帳に手書きで明記したものやパソコンで作成したものなど好きな方法で作成・保存しておきましょう。

なお、税込1万円未満の仕入れ・経費についてはインボイス保存をしなくても適用要件を満たす記載内容が帳簿に記録されていれば仕入税額控除が適用できます。ただしこの特例は1階の取引に対するものであって1商品ごとの金額ではありません。例えば5,000円の商品と8,000円の商品をそれぞれ2回にわけて購入した場合は特例対象になりますが、同時購入した場合は合計額が13,000円になるので特例対象から外れます。

インボイスに必要な記載事項

インボイス制度の導入により変更された請求書を確認してみましょう。

適格請求書 適格簡易請求書
・請求書発行事業者の氏名や名称
・登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率対象品目等)
・税抜価格または税率区分ごとの税込合計金額と適用税率
・税率区分ごとの消費税額等
・交付を受ける事業者の氏名や名称
・請求書発行事業者の氏名や名称
・登録番号
・取引年月日
・取引内容(軽減税率対象品目等)
・税抜価格または税率区分ごとの税込合計金額
・税率区分ごとの消費税額等または適用税率

(出典:適格簡易請求書の記載事項|国税庁

原則としてインボイス制度における請求書は「適格請求書」のスタイルで発行されなければなりません。ただし、以下の条件に該当する場合は「適格簡易請求書」の発行が可能です。

適用条件 不特定かつ多数のものに課税資産の譲渡等を行う一定の事業
小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業など

(参考:適格簡易請求書の交付ができる事業|国税庁

適格簡易請求書の例として、スーパーやコンビニなどで受け取るレシートがあげられます。

適格簡易請求書が認められるケースは特例であり、インボイス制度における請求書は適格請求書のスタイルが原則なので請求書を発行する際は注意してください。

インボイス発行には登録が必要

インボイス発行はどうやってやるの?

インボイスの発行をするには、事前に所轄の税務署に登録しなければなりません。インボイスの記載必須事項に含まれる登録番号は、事前に発行事業者として登録申請することでしか取得できないからです。

なお発行事業者として登録申請すると必然的に課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します

前々事業年の課税売上高が1,000万円未満の場合は消費税の納税義務が発生しない免税事業者は、課税事業者ではないのでインボイスは発行できません。発行事業者として「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば登録番号が発行されてインボイスが発行できますが、免税事業者からは外れるので注意してください。

登録申請方法はインボイス登録センターへ登録申請書類を郵送するか、e-Taxにて登録申請を行うかのいずれかです。e-Taxはパソコンだけではなく、スマートフォンやタブレットでも利用できます。

なお登録には一定の時間を必要とする審査があり、申請後すぐに登録番号が発行されるわけではありません。

  • 郵送の場合:約1カ月半
  • e-Taxの場合:約1カ月

記載・入力のミス・漏れがあった場合はさらに審査に時間がかかるので、早めに正確に登録申請を行いましょう。

2023年9月30日までの適用要件

2023年9月30日までの適用要件を紹介します。

請求書等保存方式 区分記載請求書等保存方式
・課税仕入先の氏名や名称
・取引年月日
・取引内容
・対価の額
・請求書受領者の氏名や名称
など

・請求書発行者の氏名や名称
・取引年月日
・取引内容
・対価の額
・請求書受領者の氏名や名称
・軽減税率対象品目
・税率別対価合計額(税込)

(出典:区分記載請求書等保存方式(帳簿及び請求書等の記載事項並びにこれらの保存)|国税庁

従来は「請求書等保存方式」で処理されていましたが、軽減税率導入に伴い税率区分が2通りになったため「区分記載請求書等保存方式」が導入されました。

その後、2023年10月1日のインボイス制度導入とともに適格請求書等保存方式に基づいて請求書が発行されることになります。区分記載請求書等保存方式は適格請求書等保存方式に基づいて発行される請求書にすべての内容が含まれていることから廃止され、現在は発行が認められていません。

インボイス制度の支援処置

インボイス制度の導入に伴い、さまざまな経過措置もとられています。

  • 免税事業者分の6年間控除
  • 会計ソフト導入の補助金
  • 2割特例
  • 小規模事業者持続化補助金増額

それぞれの経過措置を確認しましょう

免税事業者からの仕入も6年間は控除される

適格請求書等保存方式は、原則として適格請求書発行事業者以外の課税仕入は仕入税額控除の適用が受けられません。しかしインボイス制度開始後6年間は経過措置として一定の割合の仕入税額控除が適用されます。

期間 割合
2023年10月1日~2026年9月30日まで 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日~2027年9月30日まで 仕入税額相当額の50%

(参照:5 経過措置|国税庁

ただし、帳簿と請求書の両方で以下の要件を満たさなければなりません。

適用要件
帳簿 ・課税仕入先の氏名または名称
・取引年月日
・取引の内容(軽減税率対象項目および経過措置対象)
・課税仕入分の支払対価
請求書等 ・発行者の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容(軽減税率対象品目および経過措置対象)
・税率ごとの合計税込価額(軽減税率対象品目および経過措置対象)
・交付を受ける事業者の氏名または名称

(参照:適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き|国税庁

なお請求書については適格請求書発行事業者以外から受領した請求書等において、「取引内容」および「税率ごとの合計税込価額」に軽減税率対象項目や経過措置対象の記載がない場合は、受領者の記載が認められています。

また請求書と帳簿は連動させなければならないため、軽減税率対象品目と経過措置対象のそれぞれに異なる記号を明記して記号の種類を請求書と帳簿でそろえておきましょう。

会計ソフトの導入における補助金

会計ソフト導入のための補助金制度は、売り手と買い手の両方が対象です。

インボイス制度導入に伴い対応した会計ソフト等を導入した場合は、「IT導入補助金」のインボイス枠が利用できます。

補助の対象や中小企業と小規模事業者で、補助率や補助額は導入したIT機器等別に以下の通りです。

補助対象 補助率 補助額
インボイス対応の会計・受発注・決済ソフト ・中小企業:3/4以内
・小規模事業者:4/5以内
50万円以下
※会計・受発注・決済のうち1機能以上を有すること
2/3以内 50万円超350万円以下
※50万円以下は補助率3/4(小規模事業者は4/5)、50万円超は2/3
※会計・受発注・決済のうち2機能以上を有すること
PC・タブレット等 1/2以内 10万円以下
レジ・券売機など 20万円以下

(出典:インボイス枠(インボイス対応類型) | IT導入補助金2024

なお「インボイス枠(インボイス対応類型) | IT導入補助金2024」には、補助金シミュレーターが公開されており、該当項目を選択して金額を入力することで補助額を試算できます。あらかじめ補助額をシミュレーションすると購入の際の目安になるでしょう。

2割特例

2割特例とは、免税事業者から適格請求書発行事業者(課税事業者)になった場合に一定期間の売上消費税額を2割減額する経過措置です。

具体的な適用要件は、以下のように定められています。

  • 2023年5月末までに適格請求書発行事業者の登録済み
  • 2023年10月1日以降に新規課税対象事業者
  • 2021年分および2022年4月~6月の課税売上高が1,000万円以下
  • 課税期間短縮適用外
  • 一般課税および簡易課税の申告対象外

(参考:インボイス発行事業者の「2割特例」適用可否フローチャート|国税庁

上記の要件はすべて満たさなければなりません。

適用期間は2023年10月1日〜2026年9月30日までとなっており、消費税の納税額は以下の計算式で算出します。

消費税納税額=売上消費税額×20%

サービス業を営む事業者の税込売上金額770万円(消費税10%)と経費の税込総額330万円(消費税10%)と仮定した場合の納税額を、本則・簡易・2割特例でシミュレーションしてみましょう。

課税ケース 計算方法 納税額
本則 70万円-30万円 40万円
簡易 70万円-(70万円×50%) 35万円
2割特例 70万円×20% 14万円

簡易の計算式や税率については「簡易課税」の項目で解説済みなので、そちらを参考にしてください。

小規模事業者持続化補助金の増額

小規模事業者持続化補助金の増額とは、申請要件を満たす事業者に対して適用される補助金の額に50万円が上乗せされるインボイス特例のことです。

小規模事業者持続化補助金は小規模事業者などが自ら経営計画を策定して商工会議所・小高所の支援を受けながら販路開拓取り組みの支援目的で実施されており、通常は50〜200万円の補助金が支給されます。

通常枠・特別枠の2種類が設けられており、各枠組別の補助率や補助上限額は以下の通りです。

通常枠 特別枠
賃金引き上げ枠 卒業枠 後継者支援枠 創業枠
補助率 2/3(賃金引上げ枠の赤字事業者は3/4)
補助上限 50万円 200万円
インボイス特例 50万円(インボイス特要件を満たす場合)

(出典:小規模事業者持続化補助金|中小企業庁

特別枠およびインボイス特例における申請要件は以下のように定められています。

申請要件
賃金引上げ枠 事業内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上増額している事業者
卒業枠 小規模事業者としての従業員数を超えて規模拡大する事業者
後継者支援枠 アトツギ甲子園のファイナリスト等になった事業者
創業枠 過去3年以内に「特定創業支援事業」の支援を受けて創業した事業者
インボイス特例 免税事業者のうち適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者

(出典:小規模事業者持続化補助金|中小企業庁

なお中小企業庁は具体的な補助対象として厨房増設などの店舗改装や広告掲載をあげており、これらとあわせて免税事業者から適格請求書発行事業者の登録を受けると50万円が上乗せされた補助金が支給されるので同時に行うと良いでしょう。

控除されない消費税

仕入高税額控除は、消費税全般が対象ではありません。

控除されない消費税は、原則として全額控除適用外事業者の非課税売上に対する課税仕入等分です。

控除対象外消費税は資産にかかる場合とかからない場合にわけて処理します。

資産にかかる場合 取得価額に含めて以降の年度分として償却費などで損金額に算入
・課税売上割合80%
・棚卸資産
・1資産の控除対象外消費税額が20万円未満
いずれかに該当する場合は、その年度分の必要経費や損金に算入
上記2つに当てはまらない場合は資産計上して損金や必要経費に算入
資産にかからない場合 原則として控除対象外消費税等の全額をその年度分の損金または必要経費に算入

ただし交際費に関しては資産にかかるものではないため、本来ならその年度分の損金または必要経費として処理ができるはずですが、実際には複雑な方法で計算しなければなりません。

具体的な計算方法について後述するので、参考にしてください。

交際費に係る控除対象外消費税

控除対象外消費税は、原則では損金への算入が可能です。しかし交際費については損金不算入額になるため、必要経費に算入して会計処理しなければなりません。

損金とは法人の資産減少の原因となる費用・損失などのうち、一定額を除いたもののことで税法上認められた金額です。

損金算入は税務の計算上では「損金」として計上しますが、会計の計算上では「費用」としない方法のことであり、課税所得計算時には収益から損金を差し引いて処理します。

一方の損金不算入とは会計上では「費用」とされますが、税務計算上では「損金」としない方法です。「費用」として計上できても「損金」として認められていないため、課税所得計算時には収益から差し引いて処理できません。交際費にかかる控除対象外消費税はこれにあたりますが、損金不算入の例として法人税・法人住民税といった税金などがあげられます。

交際費に係る控除対象外消費税の会計処理

課税売上高5億円以上または課税売上割合95%未満のいずれかに該当する事業者は課税売上に対する課税仕入分の消費税しか控除されず、このとき、控除対象外消費税が発生するのです。

なお交際費は課税仕入額に、交際費にかかる消費税は課税仕入消費税額に含めて会計処理を行います。よって仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
勘定科目 金額 勘定科目 金額
仮受消費税等 課税売上消費税額 仮払消費税等 課税仕入消費税額+交際費の消費税額
租税公課 交際費分も含めた控除対象外消費税額 未払消費税等 仮受消費税額+租税公課-仮払消費税等

なお交際分の租税公課は、のちの会計処理で交際費への振り替えを行いません。租税公課として計上した控除対象外消費税額には、消耗品や通品費などのほかの消費税も含まれているからです。

仮に交際費分の消費税を租税公課から交際費に振り替える処理を行った場合、消耗品などにかかる消費税も振替が必要になってくるでしょう。整合性が取れなくなるうえに会計処理上も複雑になるため、振替処理は行いません。

交際費に係る控除対象外消費税の計算方法

租税公課には、交際費以外の消費税も含まれていると分かったけど、交際費分の控除対象外消費税の金額はどうやって計算すれば良いの?

以下で解説します!

【計算方法】
交際費分の控除対象外消費税等の金額 = 交際費消費税額 ×(1-課税売上割合)

例えば交際費500円(消費税50円)で課税売上割合80%の場合は、以下の通りです。

50円 ×(1-80%)= 10円

他の税金の控除についても詳しく解説しているので、参考にしていただけます。

▼ 個人事業主の方はこちらが参考になります
▼ 所得税の控除についてもっと詳しく知りたい方はこちら

まとめ

消費税の控除について解説しました。

消費税は納税負担者と納税者が異なる点から重複する可能性が高く、それを避けるために仕入税額控除制度が設けられています。計算方法は課税方式によって異なるので、転職すると計算方法が違っていて戸惑うことがあるかもしれません。どのような課税方式で処理されているのか、確認して間違えないようにしてください。

またインボイス制度導入によってさまざまな経過措置が行われていますが、これらは期間限定である点にも注意しましょう。

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/坂口 綾太
SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括:坂口綾太 株式会社SOKKIN 執行役員

2019年に株式会社サイバーエージェントに新卒で入社し、歴代最速でシニアアカウントプランナーに昇格。人材・不動産業界マーケを経験し、株式会社サイバーエージェントTOP3顧客になる不動産企業様にて責任者を担当していた実績を持つ。2024年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN 人材支援統括本部/本部統括に従事。

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