エンゲージメント向上施策を実践!|基本と活用事例を徹底解説

戦略

従業員のエンゲージメントを高めたいが、何から始めればよいかわからない」「施策を実施しても効果が見えない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。人材の流動化や働き方の多様化が進む中、エンゲージメント施策は組織の生産性や定着率を左右する重要な取り組みとして注目を集めています。この記事では、エンゲージメント施策の基本から具体的な実践方法、測定指標、さらには失敗を避けるための注意点まで体系的に解説しています。企業理念の共有や評価制度の見直し、コミュニケーション促進など、すぐに取り入れられる7つの施策を詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

  1. 従業員エンゲージメントとは?
    1. 従業員エンゲージメントの基本的な意味
    2. エンゲージメントと従業員満足度の違いと関係性
    3. 日本のエンゲージメント現状
  2. エンゲージメント施策が注目される背景
    1. 人材の流動化と採用難
    2. 働き方の多様化・リモートワークの普及化
    3. 組織-個人間の関係性の変化
  3. エンゲージメント施策のメリットと効果
    1. 生産性・業績の向上
    2. 定着率の改善と離職の抑制
    3. 顧客満足度・ブランド価値の向上
  4. 従業員エンゲージメントを高める7つの施策
    1. 企業理念とビジョンを共有する
    2. 公平で納得感のある評価を徹底する
    3. 承認と称賛の文化を定着させる
    4. 社内コミュニケーションの促進化を図る
    5. 上司のフィードバック力の強化を行う
    6. ワークライフバランスを支援する環境を整備する
    7. キャリア形成の支援を行う
  5. 【コラム】エンゲージメント低下した場合のリスク
  6. エンゲージメント向上を妨げる原因とは?
    1. 旧来型の制度や企業文化
    2. トップダウン型の管理体制
    3. リーダーシップの不足
  7. エンゲージメント施策の成果を測定する指標
    1. エンゲージメントサーベイの活用
    2. ワークエンゲージメント指標の活用
    3. 離職率や生産性データの活用
  8. エンゲージメント施策の注意点と失敗例
    1. 導入目的が曖昧なまま実施してしまう
    2. データ分析が不十分で活用されない
  9. まとめ

従業員エンゲージメントとは?

従業員エンゲージメントとは、従業員が自社に対して抱く愛着心信頼感貢献意欲を示す概念です。近年、人材の流動化や働き方の多様化が進む中で、企業の持続的な成長を実現するために重要な要素として注目されています。

この章では、従業員エンゲージメントの基本的な意味や類似概念との違いを解説し、日本における現状を確認していきます。従業員エンゲージメントを正しく理解することは、効果的な施策を展開するための第一歩となるでしょう。

従業員エンゲージメントとは?
従業員が企業の方向性に共感し、「会社に貢献したい」と自発的に行動しようとする意欲のことを指す概念です。

従業員エンゲージメントの基本的な意味

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の向かっている方向性(企業理念)に共感し、業績向上のために、自発的に「会社に貢献したい」と思う意欲のことを指します。単なる仕事への満足度や会社への忠誠心とは異なり、より深い感情的なつながりを意味します。

従業員エンゲージメントは「理解度」「帰属意識」「行動意欲」の3つの要素から構成されています。従業員が企業のビジョンや方向性を具体的に理解し支持している状態であることに加え、企業や組織、一緒に働く仲間などの集団に属している一員であるという自覚を持ち、さらに会社のために自主的に行動しようという意欲が伴っている状態が、エンゲージメントが高い状態だといえます。

今回は、従業員が「この会社で頑張りたい」と感じる状態、つまり従業員エンゲージメントを高める方法について、基本から実践例まで分かりやすく解説していきますね。
ありがとうございます!エンゲージメントの基本から知りたかったので、実践まで教えてもらえるのはとても助かります。

エンゲージメントと従業員満足度の違いと関係性

従業員エンゲージメントと混同されやすい概念として「従業員満足度」があります。従業員満足度は企業が提供する労働条件や働きやすさなどに左右される受動的な概念であるのに対し、従業員エンゲージメントは従業員が自発的に仕事に取り組み、会社に貢献しようとする能動的な概念です。

従業員満足度とは、居心地の良さに重きが置かれており、従業員満足度を高めることは大切ですが、必ずしも企業の業績に結びつくものではないという点に注意が必要です。満足度が高くてもエンゲージメントは低いというケースがあり、逆に満足度が低くてもエンゲージメントを高められる可能性もあります。満足度は待遇や環境に対する評価である一方、エンゲージメントは企業への貢献意欲という能動的な姿勢を表す指標なのです。

項目 従業員エンゲージメント 従業員満足度
着目点 企業への貢献意欲・愛着 職場環境や待遇への満足
方向性 能動的・双方向 受動的・一方向
企業業績との関連 直接的に関連 必ずしも関連しない

日本のエンゲージメント現状

日本の企業における従業員エンゲージメントは世界最低水準という調査結果もあり、グローバル経済を生き抜くには改善が必要とされています。終身雇用制度のもと、上司や会社の指示に従って行動さえすれば個々の従業員の仕事への熱意や貢献意欲が低くともそれなりの評価や昇進を期待できる企業が多く存在したことが、エンゲージメントの低さにつながっていると考えられます。

現在では働き方の多様化により転職が珍しくなくなり、エンゲージメントの低い優秀な人材を自社につなぎとめることが困難になっています。リモートワークをはじめとする時間や場所にとらわれない働き方が定着しつつあり、コミュニケーション不足による職場への不満やストレスが解消されず、離職につながるというデメリットも顕在化しています。このような状況において、従業員エンゲージメントの向上は企業にとって喫緊の課題となっているのです。

重要ポイント
エンゲージメントは「居心地の良さ」だけではなく、企業に貢献したいという能動的な意欲まで含めて捉えることが大切です。

 

エンゲージメント施策が注目される背景

近年、企業が従業員エンゲージメント施策に注力する動きが加速していますが、これにはいくつかの社会的背景と企業を取り巻く環境の変化が影響しています。従業員が企業に愛着や貢献意欲を持ち続けることは、かつては終身雇用制度のもとで自然に実現されていました。しかし、現代の労働市場では企業と従業員の関係性が大きく変化し、企業側から積極的にエンゲージメントを高める働きかけが必要となっているのです。ここでは、エンゲージメント施策が重視されるようになった代表的な背景を解説していきます。

人材の流動化と採用難

少子高齢化による人手不足は年々深刻さを増し、終身雇用制度の崩壊により人材の流動性も高まっています。総務省統計局の労働力調査によると2019年の転職者数は過去最多となり、「より良い条件の仕事を探すため」に前職を離職した転職者が増加しました。企業にとって、優秀な人材を採用しても短期間で離職されてしまうケースが増えており、採用や教育に投じたコストが無駄になるリスクが高まっています。

労働者の価値観も変化し、給与や安定だけではなく、仕事に「やりがい」や「働きがい」を求める声が強くなっています。現代は採用の難易度が高く、離職リスクも常にある時代であるため、採用した人材にできるだけ長く活躍してもらう必要があります。こうした状況から、従業員が自社で働き続けたいと思える環境を整えるエンゲージメント施策が不可欠となっているのです。

働き方の多様化・リモートワークの普及化

近年の日本ではテレワークが広がり、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が当たり前になりつつあります。多様な働き方の実現により従業員のワークライフバランスが向上する一方で、メールやチャットといった非対面コミュニケーションが主流になったことで、従業員同士の結びつきや組織としての一体感が薄れてしまったという新たな課題も生じています。

リモートワークでは、テキストコミュニケーションが主流であり、相手の顔が見えないために無用な緊張が生まれ、わずかな言葉の誤解が関係性を損なうことがあります。孤独感や情報の分断、一体感の不足は、従業員エンゲージメントの低下が懸念されるため、これらに対処するための対策を講じる企業が増加しています。コミュニケーション不足によるエンゲージメント低下を防ぐための仕組みづくりが求められているのです。

組織-個人間の関係性の変化

終身雇用や年功序列といった昔からの制度が崩壊し、従業員が会社への貢献よりも個人のキャリアアップを重視するようになったことが背景にあります。従業員は企業に対して受け身的に尽くすのではなく、自らのキャリア形成や成長機会を主体的に追求するようになりました。企業と従業員の関係は、従来の主従関係から対等なパートナー関係へと変化しつつあります。

価値観の多様化が進む中、従業員が自分のキャリアを自律的に構築することが求められており、エンゲージメントが高い従業員は、変化に柔軟に対応し、自らの成長を追求する傾向があります。企業には、従業員一人ひとりの価値観や目指すキャリアを尊重しながら、企業目標との方向性を一致させる取り組みが必要です。組織と個人が双方向で信頼関係を築き、共に成長していく関係性の構築がエンゲージメント施策の本質となっています。

エンゲージメント施策のメリットと効果

エンゲージメント施策を推進することは、企業にとって多方面にわたる効果をもたらす重要な取り組みです。従業員が組織に対して貢献意欲を持ち、自発的に業務へ取り組む姿勢が強化されることで、企業全体の競争力が高まります。ここでは、エンゲージメント施策によって期待できる主要なメリットと具体的な効果について解説していきます。

生産性・業績の向上

エンゲージメントが向上すると、従業員一人ひとりが企業のために積極的に行動するようになり、組織全体の生産性が高まる効果が期待できます。職場のコミュニケーションが活発になり、部署を越えた連携が進むことで、意見交換やアイデアの共有が自然と増えていきます。

株式会社リンクアンドモチベーションと慶應義塾大学の研究では、従業員エンゲージメントの向上が営業利益率・労働生産性にプラスの影響を与えると判明しています。業務の質が向上し、より良い商品やサービスの提供ができるようになり、企業全体の業績向上へとつながっていくという好循環が生まれるでしょう。

定着率の改善と離職の抑制

エンゲージメント施策は、優秀な人材の流出を防ぐ効果も持っています。2019年2月に実施された経済産業省主催の「産業経済研究委託事業(企業の戦略的人事機能の強化に関する調査)」によると、エンゲージメントスコアの高い企業は離職率が低い傾向にあるという結果が出ています。

企業のビジョンや目的を理解し、自分の業務にやりがいを見出せる従業員が増えることで、離職率の低下が期待できるのです。離職率が下がることで、企業は採用・教育コストを削減できるため、経営効率の面でも大きなメリットとなります。

顧客満足度・ブランド価値の向上

エンゲージメントの向上は、従業員だけでなく顧客にも好影響を与えます。従業員が企業に愛着を持ち、進んで業務を遂行するようになると、商品やサービスの質が向上し、顧客満足度の向上や、お客さまからの信頼度をアップさせることにつながります。

従業員が自社に誇りを持って働く姿勢は、顧客との接点においても前向きな影響を及ぼします。結果として、企業のブランド価値が高まり、市場における競争優位性の確立にも寄与するでしょう。エンゲージメント施策は、組織内部の改善にとどまらず、企業の持続的な成長を支える基盤となるのです。

エンゲージメント施策は、生産性向上・離職率低下・顧客満足度向上のすべてに影響するため、中長期的な経営戦略として取り入れることをおすすめです。

従業員エンゲージメントを高める7つの施策

従業員エンゲージメントを高めるためには、具体的にどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。ここでは効果的な施策を7つに分けて詳しく解説していきます。それぞれの施策は単独でも効果がありますが、組み合わせることでより大きな成果を期待できるでしょう。自社の状況に合わせて優先順位をつけながら、段階的に導入することをおすすめします。

ポイント
一度にすべてを実施しようとせず、インパクトが大きそうな施策から少しずつ試していくと、現場の負担を抑えながら定着させやすくなります。

企業理念とビジョンを共有する

従業員が企業の方向性や目標を理解し、共感するようになると企業に対する貢献度が高まります。企業理念やビジョンを明確にした上で、従業員全員に浸透させることが大切です。

ビジョンが曖昧なままでは、従業員もどのように動けばよいか分かりません。キックオフミーティングや社内報、企業の目指すべき姿をまとめたブランドブックなどを活用し、周知する機会を定期的に設けましょう。経営層からのメッセージ発信も従業員の帰属意識を高める上で効果的です。

公平で納得感のある評価を徹底する

人は正当な評価を得られない職場では、組織に貢献しようというモチベーションも湧かないものです。公平性の高い人事制度へ改善することで、従業員の仕事への積極性や意欲を高めることが可能になります。

成果だけを評価するのではなく、企業理念の体現度や成果に至るまでのプロセスも評価基準に加えるという方法があります。評価基準を明確にし、透明性のある評価プロセスを構築することで、従業員からの信頼も勝ち取れるでしょう。インセンティブ制度の導入や従業員表彰制度も、モチベーション向上に効果的です。

承認と称賛の文化を定着させる

従業員の努力や成果を日常的に認める文化を組織に根付かせることは、エンゲージメント向上に不可欠です。上司や同僚からの適切な承認と称賛が、従業員の自己肯定感と貢献意欲を高めます。

具体的には、成果を上げた従業員を社内で共有したり、日々の小さな貢献にも声をかけたりする習慣を作りましょう。定期的な表彰制度や感謝を伝え合うツールの活用も有効です。ポジティブなフィードバックを心がけることで、組織全体の雰囲気が活性化し、助け合いの文化が育まれます。

社内コミュニケーションの促進化を図る

情報を共有し、それについて従業員が積極的に話し合える環境作りを行いましょう。コミュニケーションが活発な場では、従業員同士の助け合いも行われやすくなります。

上司と部下の1on1ミーティングの実施や、部署を越えた交流会の開催など、会社が先導してコミュニケーションの機会を増やすことが重要です。社内イベントやコミュニケーションスペースの設置、社内サークルの支援なども効果的でしょう。リモートワークが増えている場合は、チャットツールやオンライン会議システムを積極的に活用してください。

上司のフィードバック力の強化を行う

従業員が「正当に評価されている」と感じるかどうかは、上司の伝え方にも左右されます。上司のフィードバック能力を高めることで、チーム全体の意欲を高めることにつながります。

管理職向けにフィードバック・評価面談研修を実施し、部下との効果的な面談方法や評価の伝え方を学ばせるのも有効な施策です。人事評価を伝える際は、相手を成長させるという観点で、貢献したことや改善してほしい点を丁寧に伝えましょう。部下の言動の良い部分に着目するポジティブフィードバックを心がけることが大切です。

ワークライフバランスを支援する環境を整備する

企業理念に共感できたとしても、従業員のプライベートが犠牲になる状態ではエンゲージメントを高めるのは困難です。仕事とプライベートの両方を充実できるような働き方を実現できれば、従業員のエンゲージメントも高まります。

具体的には、残業時間の見直しやフレックスタイム制度の導入、リモートワークの推進などが挙げられます。定期的なストレスチェックの実施や休暇取得の促進も効果的です。従業員が十分な休息を取れる環境を整えることで、会社への信頼度も高まるでしょう。

キャリア形成の支援を行う

従業員の成長意欲に応えることは、エンゲージメント向上に直結します。成長の場を与え、権限を委譲し、成長が会社の成長とリンクするようキャリア形成を支援することが重要です。

具体的には、従業員の適性やスキル、希望をもとに適切な人材配置を行いましょう。社内公募制を設けて希望の業務につくチャンスを増やすのも効果的です。研修プログラムの充実やキャリアコンサルタントによるサポート、資格取得費用の支援なども検討してください。キャリアパスを明確にし、昇進・昇格の基準を公開することで、従業員が自分の将来を具体的にイメージできるようになります。

重要ポイント
「理念・評価・コミュニケーション・成長機会・働きやすさ」の5つの視点をバランスよく整えることで、従業員エンゲージメントは継続的に高まりやすくなります。

【コラム】エンゲージメント低下した場合のリスク

従業員エンゲージメントが低下すると企業にどのような影響があるのでしょうか。エンゲージメント低下は単に従業員のモチベーションが下がるだけではなく、企業経営全体に深刻なダメージを与える可能性があります。ここでは、エンゲージメント低下によって生じる具体的なリスクについて、組織の視点から解説していきます。

リスクの種類 具体的な影響 結果として生じる問題
生産性・業績の低下 従業員の主体性や責任感の欠如、業務品質の低下 営業利益率の低下、競争力の喪失
離職率の上昇 優秀な人材の流出、定着率の悪化 採用コストの増加、ノウハウの流出
顧客満足度の低下 サービス品質の低下、顧客対応の質の悪化 顧客離れ、企業ブランドの毀損
組織の活力喪失 コミュニケーション不足、挑戦しない文化の蔓延 イノベーションの停滞、組織の硬直化

エンゲージメントが低下すると、従業員は仕事に対する熱意を失い、やりがいを感じられなくなります。その結果、モチベーションが低いまま業務に取り組むことになり、成果を出すことが難しくなるため、企業の業績は伸び悩みやすくなります。仕事に身が入らず、責任感や当事者意識を持っていない状態では、高い成果を生み出すことは難しく、イノベーションが生まれにくくなり、競争力の低下を招きます。

エンゲージメント低下は離職率の上昇や優秀な人材の確保を難しくし、特に優秀な人材は向上心が高いため、転職を検討する傾向が顕著に表れます。従業員が次々と退職することで、採用・育成コストが増大し、蓄積されたノウハウや技術が社外に流出してしまうという悪循環に陥ります。

エンゲージメントが低い結果、品質に影響が及ぶと顧客サービスの質の低下を引き起こす要因になりかねません。不平不満を抱えた従業員が業務に対して熱心に取り組まないと、顧客へのサービスの質が下がり、最後は顧客の不満にもつながります。顧客満足度の低下は企業の評判やブランド価値にも悪影響を及ぼし、長期的な経営リスクとなります。

さらに、エンゲージメントが低い企業では、部署間や上司と部下など、社内のコミュニケーションが不足している傾向が見られ、業務の連携ミスや非効率を生み出すだけでなく、従業員同士の相互理解や信頼関係を阻害する要因となります。組織全体の一体感が失われ、チームとして機能しなくなるリスクも見逃せません。

エンゲージメント低下は企業にとって深刻な経営課題であり、早期に適切な対策を講じることが求められます。次の章では、エンゲージメント向上を妨げる具体的な原因について詳しく見ていきましょう。

エンゲージメント低下は、業績悪化・人材流出・ブランド毀損など、複数のリスクが連鎖的に起こる重大な経営課題であることを押さえておきましょう。

エンゲージメント向上を妨げる原因とは?

エンゲージメント向上の施策を進めていても思うように効果が出ない企業も少なくありません。その背景には組織の構造や体制に根ざした様々な障壁が存在します。ここではエンゲージメント向上を阻む代表的な原因について解説していきます。

旧来型の制度や企業文化

時代に合わない制度や風土はエンゲージメント低下の要因となります。特に年功序列の評価制度や終身雇用を前提とした人事制度は、個人の能力や実績が正当に評価されにくい環境を生み出します。年功序列の給与体系を取り入れている企業では、向上心の高い優秀な若手の成長意欲を阻害してしまい、優秀人材の離職を進めてしまう恐れもあるのです。

組織が大きくなるほどに組織形態は複雑化し、縦割りになります。部門間での連携が取りにくくなり、誰のために仕事をしているのかが不明瞭になることで従業員のモチベーションは低下します。また過度なコンプライアンス重視や承認プロセスの複雑化も、従業員の挑戦意欲を削ぐ原因となってしまいます。

トップダウン型の管理体制

上からの指示待ち状態が常態化すれば、仕事へのモチベーションも持ちにくく、従業員のエンゲージメントも向上しにくくなります。経営層からの一方的な指示や決定に対して現場の意見が反映されにくい環境では、従業員は自律的に業務に取り組むことが難しくなります。

経営陣が現場の実態を理解せず、一方的な指示や押し付けを行ったり、逆に現場の声が経営層に届いていなかったりする状況は、従業員の不信感を招き、エンゲージメントを著しく低下させる要因となります。経営層と従業員との間にコミュニケーションの隔たりが生じると、企業の方針に対する共感や納得感を得ることが困難になります。

リーダーシップの不足

リーダーが適切な役割を発揮できていない環境は、エンゲージメントの向上を妨げる要因となります。上司が部下に適切なサポートを提供しない、ビジョンや目標を明確に伝えないなどの状況では、従業員は目指すべき方向性を見失ってしまいます。

上司との信頼関係は心理的安全性の面でも重要な要素となります。上司にサポートを求めにくい環境ではストレスや不安が蓄積され、パフォーマンスの低下にもつながります。また従業員の成長を促すための研修や教育制度が整っていない、あるいは、そのような機会が十分に提供されていないことも、エンゲージメント低下の要因となります。リーダーによる適切なフィードバックや育成機会の提供は、エンゲージメント向上に欠かせない要素となります。

エンゲージメントが上がらない背景には、制度・文化・マネジメントといった「組織側の要因」が潜んでいるケースが多いため、個人のやる気だけの問題として片づけないことが重要です。

エンゲージメント施策の成果を測定する指標

エンゲージメント施策の成果は、適切な指標を用いて測定することで初めて改善のサイクルを回すことができます。施策の効果を正しく把握し、課題の早期発見や優先順位の設定に役立てるためには、複数の測定手法を組み合わせて多角的に分析することが重要です。ここでは、エンゲージメント向上の成果を測る代表的な3つの測定指標について、それぞれの特徴と活用方法を詳しく解説していきます。

エンゲージメントサーベイの活用

エンゲージメントサーベイとは、従業員のモチベーションや会社に対する愛着心、忠誠心などを数値化して把握し改善するための調査ツールです。従業員の仕事への熱意や関与度、企業に対する愛着心や忠誠心の度合いを把握し、離職率低下やエンゲージメント向上に役立てられます。

測定する手段として最も多く用いられるのはアンケート調査で、月1回から半年に1回程度の頻度で行われるケースが多いようです。定期的に実施することで、過去の結果と比較してエンゲージメントの変化や傾向を把握でき、施策の効果測定に活用できます。エンゲージメントサーベイでは、待遇や職場の人間関係、就労環境などの「働きやすさ」だけでなく、「企業理念への共感」や「仕事に対する意欲」までを指標に含みます。

測定項目 具体的な内容
総合指標 企業への総合満足度やロイヤルティの測定
熱量のレベル 仕事への意欲や関与度の把握
影響要因 職場環境、人間関係、評価制度などの要因分析

サーベイの結果は、部署ごとのエンゲージメントスコアと有給取得率を分析するなど、さまざまな要因を複合的に分析する必要があります。単独のデータだけではなく、属性や時系列との相関分析を行うことで、組織固有の課題構造を明らかにすることが可能になります。

ワークエンゲージメント指標の活用

ワークエンゲージメント指標は、従業員が仕事そのものに対してどれだけポジティブで充実した心理状態にあるかを測定する手法です。国際的に広く活用されている測定尺度として、オランダのユトレヒト大学が開発したUWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度)などがあります。

ワークエンゲージメントは、「活力」「熱意」「没頭」という3つの要素から構成されており、仕事に対する持続的でポジティブな感情状態を測定します。活力は仕事中にエネルギーに満ちている状態、熱意は仕事に誇りとやりがいを感じている状態、没頭は仕事に集中して時間を忘れるほど夢中になっている状態を指します。

構成要素 測定内容
活力 仕事中にエネルギーに満ちているか
熱意 仕事に誇りとやりがいを感じているか
没頭 仕事に集中して取り組めているか

ワークエンゲージメント指標は、仕事への内発的なモチベーションを測定できるため、持続的なパフォーマンス向上の予測に適しています。定期的な測定により、施策前後での変化を把握し、改善の効果を確認することができます。

離職率や生産性データの活用

エンゲージメント施策の効果は、離職率や生産性といった定量的なビジネス指標でも測定できます。これらの指標は、エンゲージメント向上が組織の成果に与える直接的な影響を把握するために有効です。

離職率の測定では、全社的な離職率だけでなく、部署別・年齢別・勤続年数別などの属性ごとに分析することで、課題のある領域を特定できます。特に入社3年以内の早期離職率や、ハイパフォーマー層の離職率は重点的にモニタリングすべき指標です。エンゲージメントサーベイの結果と離職データを照らし合わせることで、エンゲージメント低下が離職につながるパターンを把握できます。

測定指標 分析の視点
離職率 全社・部署別・年次別の離職傾向の把握
生産性指標 売上高・営業利益・一人当たり生産性の推移
業務効率 プロジェクト完了率・納期遵守率の変化
欠勤率 有給取得率や病欠率の傾向分析

生産性データでは、売上高や営業利益、一人当たりの生産性などの指標を定期的にモニタリングします。エンゲージメント向上施策の実施前後でこれらの数値を比較することで、施策の効果を具体的に検証できます。また、プロジェクトの完了率や納期遵守率、品質指標なども、従業員のエンゲージメント状態を反映する重要なデータとなります。

これらの定量データは、エンゲージメントサーベイなどの定性的な測定手法と組み合わせることで、より包括的な分析が可能になります。複数の指標を多角的に活用することで、エンゲージメント施策の真の効果を測定し、継続的な改善につなげることができるのです。

エンゲージメントの成果測定では、サーベイ結果(意識)離職率・生産性(業績データ)をセットで見ることで、より精度の高い分析が可能になります。

エンゲージメント施策の注意点と失敗例

エンゲージメント施策を導入する際、多くの企業が「とりあえず始めてみよう」という姿勢で臨むことがあります。しかし、目的が不明確なまま実施してしまうと、従業員から協力を得られなくなる可能性があります。施策の目的を明確にし、経営層や管理職を含めた組織全体で共有することが成功への第一歩となります。

導入目的が曖昧なまま実施してしまう

導入目的が曖昧なままエンゲージメント施策を実施すると、現場の従業員や管理職から理解を得られず、施策が空回りしてしまうケースが少なくありません。人事部が現場部署と十分に相談せずにエンゲージメントサーベイを始めてしまったり、従業員の声を把握しないままエンゲージメント向上施策を実行してしまったりする失敗例があります。また、企業理念を定めたものの、従業員に浸透させる取り組みを継続的に行わなかったため、理念と従業員の意識にずれが生じ、エンゲージメント向上につながらないという事例も見られます。施策を始める前に、自社がなぜエンゲージメント向上に取り組むのか、どのような状態を目指すのかを明確にし、関係者全員で目的を共有することが重要です。

データ分析が不十分で活用されない

エンゲージメントサーベイを実施しても、得られたデータを十分に分析せず活用できないという失敗例があります。サーベイ結果のフィードバックが単なる結果の伝達のみで終わってしまい、具体的な改善アクションにつながらないケースや、エンゲージメントを高めることがいつの間にかスコアを高めることにすり替わってしまい、数値だけにこだわって本質的な見直しができないという失敗も見られます。データ分析の不足は、適切な改善策の立案を妨げ、せっかくの施策が効果を発揮しない原因となります。

失敗パターン 具体的な問題点 改善のポイント
目的の不明確さ 現場との連携不足、企業理念の浸透不足 関係者全員で目的を共有し、継続的な取り組みを実施
データ活用の不足 結果の伝達のみで終了、スコア向上のみに注力 部署・職種ごとの傾向分析を行い、具体的な改善策を立案
従業員への過度な負担 エンゲージメント向上を常に意識させすぎる 従業員の負担を考慮し、適切な頻度と方法で施策を実施

エンゲージメント向上のための方法は、企業ごとに取り組み方法や施策の優先順位に違いがあることを理解し、自社の状況に合わせた施策を選択することが失敗を避けるためのポイントです。また、サーベイを実施する際には「回答内容によって個々の従業員が不利益を被ることはない」ことをきちんと伝える必要があります。従業員の不安を払拭し、信頼できるデータを得ることで、的確な施策を講じることができるでしょう。

エンゲージメント施策は「やりっぱなし」にせず、目的設定 → 実行 → 測定 → 改善のサイクルを回すことで、はじめて本当の効果が表れます。

エンゲージメントは、一度上げて終わりではなく、施策と測定を繰り返しながら高め続けていくものです。自社の課題と照らし合わせて、できるところから一つずつ始めてみてくださいね。
具体的な施策から測定方法、失敗しやすいポイントまで分かって、とても勉強になりました。自社の状況に置き換えて考えてみます。

まとめ

従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の理念や方向性に共感し、「この会社で貢献したい」と自発的に行動しようとする意欲を示す指標です。単なる従業員満足度とは異なり、企業への能動的な貢献姿勢まで含めて捉えることが重要です。

日本では依然としてエンゲージメント水準が低く、人材の流動化や採用難、リモートワークの普及などの影響も相まって、優秀な人材をつなぎとめることが難しくなっています。その一方で、エンゲージメントを高めることは、生産性・業績の向上、離職率の低下、顧客満足度やブランド価値の向上など、多方面にわたるメリットを企業にもたらします。

具体的な施策としては、「企業理念とビジョンの共有」「公平で納得感のある評価制度」「承認と称賛の文化」「社内コミュニケーションの促進」「上司のフィードバック力強化」「ワークライフバランスの支援」「キャリア形成の支援」など、制度・風土・マネジメントの3つの側面からバランスよく取り組むことがポイントです。

また、エンゲージメント施策の効果を高めるためには、エンゲージメントサーベイやワークエンゲージメント指標、離職率・生産性などのビジネスデータを組み合わせて測定し、「目的設定 → 実行 → 測定 → 改善」のサイクルを回し続けることが欠かせません。目的が曖昧なままの施策や、データを活用しきれていない取り組みは成果につながりにくいため、自社の課題や目指す姿を明確にしながら継続的に見直していきましょう。

重要ポイント
・エンゲージメントは「居心地の良さ」ではなく「企業に貢献したい意欲」まで含めて考える
・理念・評価・コミュニケーション・成長機会・働きやすさの5つをバランスよく整える
・サーベイと業績データを組み合わせて効果測定し、「施策 → 測定 → 改善」のサイクルを回す
・自社の文化や現場の実態に合わせて、実行可能な施策から段階的に取り組むことが成功の近道

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この記事の監修者SOKKIN MATCH事業責任者/倉田 裕貴
SOKKIN MATCH事業責任者:倉田裕貴 株式会社SOKKIN 人材事業責任者

株式会社サイバーエージェントでは、シニアアカウントプレイヤーとして大手企業のコンサルに従事。WEB・アプリ問わず、運用ディレクションをメインに幅広い業種のお客様の課題へ対応してきた実績を持つ。また、マネージャーとして育成業務にも従事。
2022年、株式会社SOKKIN入社後、SOKKIN MATCH事業責任者に従事。

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