年末調整や確定申告が近づくと、少しでも節税したいと考えるのは当然といえるかもしれません。特に住民税が高い人は、「どうしてこんなにも高いのか」と疑問を感じることがあるでしょう。
住民税が高くて悩んでいる場合は、その仕組みや計算方法を知ると節税の方法もみえてくるかもしれません。
本記事では住民税の仕組みや計算例はもちろん、節税対策に役立つ控除制度も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
住民税とは
住民税とは、その地域で実施されているゴミ処理や消防をはじめとする行政サービスの運営・維持するための財源確保を目的とした地方税です。
所得税と同様に1年間の所得額に対して課税されますが、納付先は地方自治体となり、国に納める所得税とは異なります。
住民税とひとくくりにしていますが、その中身は実際は少々複雑であり、徴収・支払いの際には仕組みについては気づきにくいかもしれません。
後述で住民税の中身についてもう少し深く掘り下げてみます。
住民税が天引きされる時期は?納付のやり方や納税期間、課税対象などわかりやすく解説
住民税の種類
住民税とひとまとめにして表現されることが多い税金ですが、実際の中身は以下の2つと付随する3つの合計5つです。
- 均等割
- 所得割
上記の2つは納付書や給料から天引きされて支払う際の住民税の中身で、自治体のホームページなどでも内訳や計算方法が記されています。
住民税には上記2つとは別に以下の3つがあるのですが、こちらは自動的に徴収される税金であるため、気づいていない人が多いかもしれません。
- 利子割
- 配当割
- 株式等譲渡所得割
これら5つについて詳しく解説するので、参考にしてください。
均等割
住民税の均等割とは、その地域の住人のなかで一定の所得がある人に均等に割り振られた税金のことで所得額に関係なく自治体で定められた金額を負担します。
自治体 | 市町村民税 | 都・道府県民税 | 森林環境税 |
兵庫県宝塚市 | 3,000円 | 1,800円 | 1,000円 |
兵庫県神戸市 | 3,400円 | 1,800円 | 1,000円 |
佐賀県 | 3,000円 | 1,500円 | 1,000円 |
東京都 | 3,000円 | 1,000円 | 1,000円 |
均等割に差があるのは、各自治体が独自の行政サービスに応じた負担金を上乗せしているからです。
所得割
所得割とは該当年の所得額に応じて負担する住民税の一部で、標準税率をかけて計算します。
標準税率とは国が定めている税率のことであり、住民税の所得割を計算する際には標準税率を使用して算出されることが一般的です。ただし自治体によって異なる場合もあり、すべての自治体で同じ税率を使用して計算されるわけではありません。
都・道府県民税 | 市町村民税 | |
標準税率 | 4% | 6% |
神奈川県横浜市 | 2.025% | 8% |
愛知県名古屋市 | 2% | 7.7% |
兵庫県豊岡市 | 4% | 6.1% |
上記のように税率に差があるのは、自治体独自の条例により増減措置を施すことが認められているため、上記のように税率に差があります。
利子割
利子割とは、金融機関での預貯金の利子に課せられる税金のことです。
銀行や郵便局で預貯金をして一定期間そのままの状態にしておくと利息が支払われますが、全額が支払われているわけではなく、所得税15%と住民税5%がマイナスされた金額が口座に振り込まれます。
配当割
配当割とは上場株などの配当金に課せられる地方税のひとつです。
例えば証券会社を利用して、上場株式を購入していたとしましょう。毎年1年間分の配当金が支払われますが、その際の金額は所得税率15.315%と県民税配当割5%を合算した配当割が差し引かれています。
なお、多くのケースでは自動的に所得税と住民税が差し引かれる特定口座を利用して取引が行われるため、自分で申告・納税する義務は発生しません。
株式等譲渡所得割
株式等譲渡所得割とは上場株式を売却した際に得られる収益にかかる住民税で、税率は前述した配当割と同様に所得税15.315%と住民税5%です。
自動的に源泉徴収される特定口座を利用している場合は、取引時に差し引かれるため、年末調整は確定申告の必要はありません。
しかし特定口座を利用していない場合は差し引かれない金額が振り込まれることになるので、自分で申告・納税してください。
住民税の計算方法
住民税の計算方法は、先に所得割から行う方がスムーズに算出できるでしょう。均等割は金額が決まっていますが、所得割は控除などを考慮しなければならないため、計算が複雑です。
先に複雑な計算をしなければならない所得割を算出し、そこに残りの均等割分を合算すると、より正確な金額が算出できるでしょう。
所得割の計算方法
所得割の計算方法は、以下の通りです。
2.課税所得額の算出
3.所得割額の算出
それぞれの手順について詳しく解説するので、参考にしてください。
step1 所得額の算出
対象年の所得額を以下の計算式で算出します。
年間総所得額=年間総収入額-経費の総額
「収入」と「経費」は個人事業主や自営業と給与所得者とで、以下のように内容が若干異なるので参考にしてください。
納税者 | 収入の例 | 経費の例 |
個人事業主や自営業 | ・売上 ・労働への報酬や対価 など |
・仕入 ・通信費 ・交際費 ・交通費 など |
給与所得者 | ・給料 ・賞与 など |
・給与所得控 ・交通費 など |
個人事業主や自営業の場合、経費として上記以外にも文房具のような消耗品費などさまざまな項目があげられます。
step2 課税所得額の算出
年間総所得額が算出できたら、次は課税所得額を以下の計算式にあてはめて計算しましょう。
課税所得額=年間総所得額-所得控除額
所得控除とは一定の要件を満たすことで年間所得額から差し引ける控除制度のことであり、全部で13種類あります。
・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・保険料控除
各控除制度には要件が設けられており、原則として定められているそれらの要件を満たさなければなりません。また、控除制度のなかには段階的に金額や税率が決まっているものもあり、年間総所得額によって控除できる金額は異なります。
詳しい所得控除の中身については後述するので、そちらを参考にしてください。
step3 所得割額の算出
最後に以下の計算式を利用して、所得割額を算出しましょう。
所得割額=課税所得額-税額控除の総額
税額控除とは、要件を満たすことで課税所得額から差し引くことが可能な控除制度です。
・寄附金控除
・住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
上記は多くの人たちに関係が深い税額控除の一例であり、住民税所得割に適用可能なものは全部で6種類あります。
住民税額の算出
住民税の所得割金額が算出できたら、最後に均等割の金額を合算して住民税の納税額を計算します。
均等割は「市町村民税」「都・道府県民税」「森林環境税」の3種類から成り立っており、「市町村民税」「都・道府県民税」は自治体によって金額が異なるので、各自治体のホームページなどを確認してください。
森林環境税については全国一律1,000円であり、自治体による差はありません。
住民税の控除
住民税の控除は主に以下の3つに大別できます。
・所得控除
・税額控除
それぞれの控除についてさらに掘り下げて確認していきましょう。
収入から差し引く控除
収入から差し引く控除とは年間の総収入額から差し引く金額であり、その種類は以下の3つです。
控除の種類 | 内容 |
経費 | 個人事業主や自営業を営んでいる場合に発生した支出額 |
給与所得控除 | 給与所得者の経費 |
公的年金控除 | 公的年金収入から差し引かれる控除 |
個人事業主や自営業の場合、事業活動で収益を得るために一定の支出額が発生します。それらは必要経費として計上して、年間総収入から差し引くことが可能です。
給与所得控除と公的年金控除については、以下の項目でさらに詳しく確認していきましょう。
給与所得控除
給与所得控除とは、企業・会社などの勤務先から給料を受け取っている場合に適用される控除制度です。所得税などの税金が課せられる課税所得額を算出する際に用いられますが、年間総給与収入額に応じて以下のように定められています。
源泉徴収票の給与支払金額 | 控除額 |
162.5万円まで | 55万円 |
162.5万円超180万円まで | 給与支払金額×40%-10万円 |
180万円超360万円まで | 給与支払金額×30%+8万円 |
360万円超660万円まで | 給与支払金額×20%+44万円 |
660万円超850万円まで | 給与支払金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
(出典:No.1410 給与所得控除|国税庁)
例えば源泉徴収票に記載された給与支払金額が103万円だった場合の課税所得額は以下の通りです。
103万円-55万円(控除額)=48万円
一方、源泉徴収票の給与支払金額が500万円だった場合の課税所得額は以下のように計算されます。
500万円×20%-44万円=66万円
このように源泉徴収票の給与支払金額に明記されている金額を、上記の一覧表にあてはめて計算するだけで課税所得額が計算できるので、一度試してみてください!
公的年金等控除
公的年金等控除とは、年金受給者を対象に年金の所得額を減らして税金負担を軽くする制度のことです。年金を受け取る人の年齢や公的年金などの年間収入金額に応じて控除される金額が以下のように定められています。
年齢 | 公的年金等の総収入額 | 年金以外の年間雑所得 | ||
1,000万円以下 | 1,000万円超2,000万円以下 | 2,000万円超 | ||
65歳未満 | 130万円未満 | 60万円 | 50万円 | 40万円 |
130万円以上 | 総収入額×25%-27.5万円 | 総収入額×25%-17.5万円 | 総収入額×25%-7.5万円 | |
410万円以上 | 総収入額×15%-68.5万円 | 総収入額×15%-58.5万円 | 総収入額×15%-48.5万円 | |
770万円以上 | 総収入額×5%-145.5万円 | 総収入額×5%-135.5万円 | 総収入額×5%-125.5万円 | |
1,000万円以上 | 195.5万円 | 185.5万円 | 175.5万円 | |
65歳以上 | 330万円未満 | 110万円 | 50万円 | 40万円 |
330万円以上 | 総収入額×25%-27.5万円 | 総収入額×25%-17.5万円 | 総収入額×25%-7.5万円 | |
410万円以上 | 総収入額×15%-68.5万円 | 総収入額×15%-58.5万円 | 総収入額×15%-48.5万円 | |
770万円以上 | 総収入額×5%-145.5万円 | 総収入額×5%-135.5万円 | 総収入額×5%-125.5万円 | |
1,000万円以上 | 195.5万円 | 185.5万円 | 175.5万円 |
例えば64歳で公的年金の年収は400万円、年間雑所得が1,500万円だった場合は以下の通りです。
400万円×25%-17.5万円=82.5万円
一方、70歳で公的年金の年収1,000万円、年間雑所得が0円だった場合をみてみましょう。
1,000万円-195.5万円(上限)=804.5万円
住民税の所得控除
住民税の所得控除は以下の14種類です。
控除制度 | 内容・要件など |
基礎控除 | 一定の所得がある人全員に適用 |
扶養控除 | 扶養家族が存在する |
配偶者控除 | 納税者と生計を同一とする配偶者が存在する |
配偶者特別控除 | |
障害者控除 | 納税者本人または生計を同一とする配偶者や扶養家族が障害者 |
ひとり親控除 | 納税者本人がひとり親 |
寡婦控除 | 納税者本人が寡婦 |
勤労学生控除 | 納税者本人が勤労学生と認められる |
雑損控除 | 自然災害などで資産に損害を受けた場合 |
医療費控除 | 年間支払済医療費が一定金額を超えた場合 |
社会保険料控除 | 年間支払済社会保険料に対する控除 |
生命保険料控除 | 納税者本人に支払済生命保険料等があった場合 |
地震保険料控除 | 納税者本人が地震保険にかかる掛金を支払っていた場合 |
小規模企業共済等掛金控除 | 共済契約に基づく掛金などを支払った場合 |
それぞれの所得控除について解説するので、参考にしてください
基礎控除
基礎控除とは、確定申告や年末調整で年間総所得額から差し引くことが認められている控除制度のひとつです。
年間総所得額が2,400万円未満の場合、一律43万円が控除されますが、所得税の控除額48万円とは異なる点に注意してください。なお給与所得のみの場合のボーダーラインは、2,595万円です。
例えば年間給与収入が500万円の人の場合、以下のように計算します。
500万円-(500万円×20%+44万円)=356万円
356万円-43万円=313万円
給与所得者の場合、給与所得控除を差し引いた分から基礎控除の43万円を差し引いて、課税所得額を算出してください。
扶養控除
扶養控除とは、納税義務者と生計を同一とする配偶者以外の扶養家族がいる場合に適用される控除制度です。扶養親族の区分によって、以下のように控除金額が定められています。
区分 | 扶養家族の年齢 | 控除額 |
一般扶養親族 | 16歳以上19歳未満 | 33万円 |
23歳以上70歳未満 | ||
特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 45万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上 | 38万円 |
老人扶養親族のうち同居老親等 | 70歳以上 | 45万円 |
同居老親等とは、納税者本人またはその配偶者のいずれかと同居している70歳以上の人のことです。
例えば納税者の配偶者が、介護などの理由から一時的に離れて生活する70歳以上の両親と同居をしたとしましょう。この場合は、「老人扶養親族のうち同居老親等」に当てはまります。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除とは、納税者本人に配偶者がいる場合に適用される控除制度です。一方の配偶者特別控除は、配偶者控除が適用されない場合に一定の要件を満たすことで受けられます。配偶者控除・配偶者特別控除に定められているそれぞれの要件は以下の通りです。
控除の種類 | 適用要件 |
配偶者控除 | ・民法上の配偶者 ・納税者と生計が同一 ・配偶者の年間総所得額が48万円以下 ・青色や白色申告者の事業専従者ではないこと |
配偶者特別控除 | ・納税者本人の合計所得額が1,000万円以下 ・民法上の配偶者であり、生計が同一 ・青色または白色申告者の事業専従者ではない ・配偶者の年間総所得額が48万円超133万円以下 |
それぞれの控除額は以下のように定められています。
控除の種類 | 控除額 | |
配偶者控除 | 69歳以下 | 33万円 |
70歳以上 | 38万円 | |
配偶者特別控除 | 33万円 |
例えば年間給与所得額500万円で、収入なしの配偶者(72歳)がいる場合は以下のような計算をします。
500万円-(500万円×20%+44万円)=356万円(年間所得額)
356万円-38万円(配偶者控除)=318万円
一方、年間給与所得額500万円で、年間総所得額120万円の配偶者がいる場合をみてみましょう。
500万円-(500万円×20%+44万円)=356万円(年間所得額)
356万円-33万円(配偶者特別控除)=323万円
障害者控除
障害者控除とは、納税者本人または生計を同一とする配偶者や扶養親族が障害者に当てはまる場合に適用される控除制度です。障害者控除には障害者と特別障害者の2通りがあり、それぞれ以下のように要件が定められています。
要件・条件 | |
障害者 | ・児童相談所や知的障害者更生相談所などで知的障害者と判定された人 ・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人 ・身体障害者手帳に、身体上の障害ありと記載されている人 など |
特別障害者 | ・精神障害により弁識能力を欠く人 ・児童相談所や知的障害者更生相談所などで重度の知的障害者と判定された人 ・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けており、等級が1級の人 など |
(参考:No.1160 障害者控除|国税庁)
要件を満たした場合に適用される控除額は以下の通りです。
区分 | 控除額 |
障害者 | 26万円(1人につき) |
特別障害者 | 30万円 |
生計を同一とする配偶者または扶養家族が同居の特別障害者 | 53万円 |
ひとり親控除
ひとり親控除とは、納税者本人がひとり親であると認められる場合に、一定の金額の控除が受けられる制度です。ひとり親として認められるためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
・婚姻関係と認められる人がいない
・年間総所得額48万円以下の生計を同一とする子がいる
・納税者本人の年間総所得額が500万円以下である
(参考:No.1171 ひとり親控除|国税庁)
上記の3つをすべて満たすと、30万円の控除が受けられます。
例えば年間総所得額が356万円で、収入なしの子どもがいるひとり親の場合は、以下のように計算します。
356万円-30万円(ひとり親控除)=326万円(課税所得額)
しかし年間総所得額が356万円のひとり親でも子どもに年間総所得額が103万円ある場合は、「年間総所得額48万円以下の生計を同一とする子」に当てはまらないため、ひとり親控除は適用されません。
寡婦控除
寡婦控除とは、納税者本人が寡婦である場合に適用される控除制度です。対象年の12月31日時点でひとり親に該当しないことを前提に、以下いずれかの要件を満たさなければなりません。
・離婚後婚姻しておらず、扶養親族がいる状態で年間総所得額が500万円以下
・死別または、生死が明らかではない状態で年間総所得額500万円以下
(参考:No.1170 寡婦控除|国税庁)
寡婦と認められれば、26万円が控除されます。
勤労学生控除
勤労学生控除とは、納税者本人が勤労学生である場合に適用される控除制度です。控除を受けるためには、以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。
・給与など勤労による所得がある
・年間総所得額が75万円以下でかつ勤労所得以外の所得が10万円以下
・小学校・中学校など特定の学校の学生または生徒であること
(参考:No.1175 勤労学生控除|国税庁)
上記の要件を満たすと26万円が控除されます。
雑損控除
雑損控除とは、以下の条件を満たした対象資産が損害を受けた場合に利用できる控除制度です。
・納税者本人または年間総所得額が48万円以下の生計を同一とする配偶者やその親族が保有する資産
・自宅家屋や家具など生活に必要な資産
(参考:No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁)
また適用できる損害の原因は以下のように定められています。
・人為的(火災・爆発など)な災害
・生物(害虫・害獣など)による災害
・盗難
・横領
2つの条件を満たした対象資産が上記の原因に当てはまる場合は、以下に示す計算式で求めた金額のうち高いほうが控除されます。
1.(損害金額-保険金などの補てん総額)-総所得額×10%
2. 災害関連支出総額-5万円
では以下の条件で具体的なシミュレーションを行ってみましょう。
条件 | 年間総所得額:200万円 損害額:50万円 受取済保険金額:20万円 災害関連支出総額:10万円 ※自然災害による損害 |
計算(1) | 【計算式】(損害金額-保険金などの補てん総額)-総所得額×10% (50万円-20万円)-200万円×10%=10万円 |
計算(2) | 【計算式】災害関連支出総額-5万円 10万円-5万円=5万円 |
上記のシミュレーションでは計算(1)の10万円のほうが計算(2)の5万円より高いので、10万円が控除されます。
医療費控除
医療費控除とは、対象年に支払った医療費が一定額を超えた際に適用される控除制度です。対象者は納税者本人または生計を同一とする配偶者やその親族であり、以下の計算式で控除額を算出します。
医療費控除額=支払済医療費の総額-(年間総所得額×5%)または10万円(年間総所得額に5%をかけた金額が10万円を超える場合)
上記の計算式で算出した金額が200万円を超える場合は、上限の200万円が医療費控除額です。
では、以下の条件で控除額のシミュレーションをしてみましょう。
条件 | 年間総所得額:365万円 年間の支払済医療費:30万円 |
控除額 | 【計算式】支払済医療費の総額-10万円 30万円-10万円=20万円 |
上記の条件の場合「年間総所得額×5%」の金額が18.25万円となり10万円を超えるため、支払済医療費から差し引く金額は上限の10万円で計算します。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、国民健康保険や健康保険などの社会保険料を支払った場合に適用される控除制度です。対象は納税者本人または生計を同一とする配偶者やその他の親族であり、対象年に支払った全額分が控除されます。
控除の範囲となる社会保険料として「国民健康保険」「健康保険」「国民年金」「厚生年金」「後期高齢者医療保険」などがあげられ、多岐にわたるので適用させれば住民税の節税対策になるでしょう。
例えば国民健康保険料20万円と厚生年金保険料30万円を対象年に支払った場合、これらを合算した50万円が所得額から控除されます。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、納税者本人が生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合に適用される控除制度です。
「一般生命保険料」「個人年金保険料」は新契約と旧契約で計算式や控除額の上限が以下のように異なります。「介護医療保険料」については新制度で導入された控除制度なので、旧制度の計算式や上限額は関係ありません。
新制度 | 旧制度 | ||
1.2万円まで | 支払済保険料全額 | 1.5万円まで | 支払済保険料全額 |
1.2万円超3.2万円まで | 支払済保険料×1/2+6千円 | 1.5万円超4万円まで | 支払済保険料×1/2+7.5千円 |
3.2万円超5.6万円まで | 支払済保険料×1/4+1.4万円 | 4万円超7万円まで | 支払済保険料×1/4+1.75万円 |
5.6万円超 | 2.8万円(上限) | 7万円超 | 3.5万円(上限) |
地震保険料控除
地震保険料控除とは、納税者本人が地震などの損害に関する保険料または掛金を支払った場合に適用される控除制度です。
地震保険控除には地震保険料と旧長期損害保険料の2種類があり、年間支払済保険料に応じた控除額は以下のように定められています。
区分 | 年間支払済保険料 | 控除額 |
地震保険料 | 2.5万円以下 | 支払済保険料×1/2 |
2.5万円超 | 2.5万円 | |
旧長期損害保険料 | 5千円以下 | 支払済保険料全額 |
5千円超1.5万円以下 | 支払済保険料×1/2+2.5千円 | |
1.5万円超 | 1万円 |
なお「地震保険料」「旧長期損害保険料」の両方を適用させる場合は、2.5万円を上限として各計算式で算出した金額の合計額が控除されます。
年末調整で保険控除を受けるには?対象者や計算方法、申告の仕方など全部教えます!
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除とは、納税者本人が共済契約に基づく掛金などを支払った場合に適用される控除制度です。
小規模企業共済等掛金控除には上限額が設けられていません。しかし小規模企業共済の掛金は毎月1千円〜7万円と制限が設けられているため、実際には「7万円×12カ月」で84万円が上限額となります。
住民税の税額控除
税額控除とは住民税の所得割額から一定の要件を満たした場合に適用される制度のことで、主に以下のような控除があります。
税額控除の制度 | 内容・要件など |
外国税額控除 | 外国所得税を支払っていた場合 |
寄附金税額控除 | 特定の団体などに寄附を行った場合 |
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) | 住宅ローンを利用した場合 |
それぞれの税額控除について詳しくみていきましょう。
外国税額控除
外国税額控除とは、海外で所得税と同等の税を課せられた場合に二重課税を防ぐ目的で適用される控除制度です。
外国税額控除額を算出するためには以下の計算方法で行います。
所得税控除限度額を計算 | 対象年の総所得税額×対象年の国外所得総額/対象年の所得総額 |
都道府県民税控除限度額 | 所得税控除限度額×12% |
市町村民税控除限度額 | 所得税控除限度額×18% |
寄附金税額控除
寄附金税額控除とは、納税者本人が国や地方自治体などに寄付を行った際に適用される控除制度です。
節税対策の一環としてふるさと納税をする人が増加傾向にありますが、その場合は確定申告を行うことで寄附金税額控除の適用が受けられます。
控除額を計算する際に用いられる計算式は以下の通りです。
寄附金税額控除額=(寄附金の総額-2千円)×税率
※年間総所得額の30%が控除の限度額
上記計算式の税率は、寄附先の区分によって以下のように定められています。
寄附先 | 税率 |
都道府県・市区町村(ふるさと納税) | 10% |
共同募金・日本赤十字社 | |
都道府県と市区町村の両方の条例指定先 | |
都道府県条例の指定先 | 4%(政令指定都市在住の場合は2%) |
市区町村条例の指定先 | 6%(政令指定都市在住の場合は8%) |
なお、ふるさと納税には「基本分」と「特例分」があり、「基本分」は上記の一覧表や計算式で算出しますが、「特例分」の場合は以下のように計算式が異なるので注意してください。
特例分=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税率)
特例分とは「所得税分」と「基本分」で控除できなかった分を全額控除(住民税所得割額の20%が上限)する際に用います。
また住民税所得割額が20%を超える場合に用いる計算式は、以下の通りです。
特例分=住民税所得割額×20%
住宅ローン控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、納税者本人が住宅ローンを利用して新築・購入・増改築を行った場合に適用される控除制度です。
住民税の場合の住宅ローン控除には上限が設けられており、下記いずれか少ないほうがsy遠く額からマイナスされます。
・所得税の住宅ローン控除で控除しきれなかった金額
・所得税分の課税総所得額の5%(9.75万円が上限)
住宅ローン控除は確定申告や年末調整の手続き内容が住民税にも共有されるため、住民税に適用させるためだけに申請をする必要はありません。
その他の控除
住民税の控除制度には、ほかにも以下のようなものもあります。
その他の控除制度 | 対象者 |
配当控除 | 納税者本人 |
調整控除 | 納税者本人 |
それぞれの控除制度について確認していきましょう。
配当控除
配当控除とは、納税者本人に配当所得があった場合に適用される控除制度のひとつです。
法人からの剰余金や分配金、投資信託の収益などの配当所得が該当し、源泉分離課税か総合課税のいずれの方式を選択するかで、以下のように税率が異なります。
課税方式 | 分離(源泉徴収・申告) | 総合 |
税率 | 5% | 7.2%~8.6% |
調整控除
住民税の調整控除とは、所得税額と個人住民税額の控除(扶養控除など)の差で税負担が増加しないように所得割額から控除する制度です。
対象者は納税者全員であり、課税所得額200万円をボーダーラインとして以下のように算出方法が定められています。
住民税の課税所得額200万円以下 | (1)と(2)いずれか小さい金額×5% (1)所得税と住民税の人的控除額の差額合計 (2)個人住民税の課税所得額 |
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住民税の課税所得額200万円超 | {所得税と住民税の人的控除額の差額合計-(住民税の課税所得額-200万円)}×5% |
住民税の納付方法
住民税の納付方法を「サラリーマン」「個人事業主」「給与以外」の3通りに注目して確認していきます。
サラリーマンの納付
給与所得があるサラリーマンの場合の住民税の納付方法は原則として特別徴収となっており、給料から天引きです。
勤務先が市区町村に前年分の給与支払報告書を送付し、役場で納税額が決定されたあとに勤務先に通知書と納付書が送付されます。勤務先はこれらの書類を確認したうえで6月~翌年5月まで給料から天引きするシステムです。
個人事業主の納付
個人事業主の納付方法は、納付書による一括または4期分割による普通徴収です。
確定申告を行うことで5月頃に申告内容が市区町村役場にも共有され、納税額が決定します。その後、自宅と一括用と4期分割用の納付書が自宅に届くので、納付期限までに納税しましょう。
給与以外の納付
給与以外の収入がある場合は、確定申告をする場合としない場合とで納付方法が異なります。
給与以外の所得額が20万円以上の場合は、自分で確定申告をしなければなりません。確定申告時に第一表の住民税の納税方法欄で「普通徴収」に丸印をつけておくと、給料からの天引きではなく納付書による支払方法になるので、会社に副業を知られるリスクは軽減されるでしょう。
納税方法欄を空欄のままにしておくと、給与所得者や原則として特別徴収なので給料から天引きされます。
給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告は必要ありませんが、自治体に住民税のための所得申告をしなければなりません。このとき、支払方法で「普通徴収(自分で納付)」を選択すると、自宅に納付書が送られてきます。
【2024年から】定額減税スタート
定額減税とは、納税者を対象に所得税と住民税に対して実施される特別控除制度です。
住民税の減税額は以下のように定められています。
対象者 | 減税額 |
納税者本人 | 1万円 |
生計を同一とする配偶者または扶養親族 | 1万円/1人につき |
例えば配偶者と子3人の家族の場合、住民税の減税額は以下の通りです。
1万円(納税者本人)+1万円(配偶者)+1万円×3人(子)=5万円
減税のタイミングは2024年度分の住民税総額から減税額を差し引き、残りの金額を12カ月分に分割して5月〜翌年6月まで支払います。
住民税非課税世帯とは?
住民税には非課税世帯の制度が設けられています。
ここでは対象者や優遇措置を確認していくので、参考にしてください。
住民税非課税世帯の対象者
住民税非課税世帯になる条件は、「所得割」と「均等割」で以下のように異なります。
非課税 | 条件 | 目安金額 |
所得割のみ | 生計を同一とする配偶者やその他の親族がいる | 35万円×(納税者本人を含む合計人数)+42万円 |
配偶者・扶養家族なし | 45万円 | |
所得割と均等割の両方 | 生活保護を受けている | - |
障害者・未成年者・寡婦またはひとり親 | 前年分の総所得額が135万円以下(給与所得のみの場合は204.4万円未満) | |
前年の合計所得額が一定金額以下 | 自治体によって異なる |
住民税非課税世帯の優遇措置処置
住民税非課税世帯の対象になると、以下のような優遇措置があります。
優遇措置の種類 | 内容 |
扶養控除額の優遇 | 所得税・住民税の扶養控除優遇措置 |
高額医療費の軽減 | 一定額を超える高額医療費の負がん学軽減措置(申請が必要) |
介護保険料軽減 | 65歳以上の人 |
国民年金・国民健康保険料の減免 | 負担額を免税または減免(申請が必要) |
保育無償化 | ・2歳未満の保育 ・生活支援特別給付金など |
教育支援 | 大学や高等教育の奨学金・就学援助 |
優遇措置は自治体によって異なるので、ホームページなどで確認してください。
確定申告でもっと控除が受けられる?
控除制度のなかには、確定申告でしか適用できないものもあります。
ここでは確定申告でさらに控除が受けられるケースをみていきましょう。
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医療費控除など特別な控除を使う
会社・企業などで行われる年末調整では、さまざまな控除制度が適用できますが、確定申告でしか申請できないものがあります。
・雑損控除
・寄附金控除
・配当控除
・外国税額控除
・住宅ローン控除
上記は年末調整の手続きでは適用できない控除制度です。各制度の要件を満たしている場合は、会社・企業で年舞調整後の源泉徴収票を入手して確定申告を行いましょう。
年末調整を行っていない場合
所得控除や税額控除は、年末調整を行わなければ適用されません。
「期限に間に合わなかった」「忘れていた」「必要書類を提出しなかった」などの理由で年末調整を行わなかった場合は、自分で確定申告を行ってください。
会社を退職した場合
会社を退職した場合、すぐに再就職をすれば年末調整が行われます。
しかし退職後に再就職をしなかった場合、前職の年末調整対象者から外れるので所得額の申請が行われず、控除制度も適用されません。
対象年中に再就職をしない場合は、自分で確定申告を行いましょう。
給与以外の所得がある場合
年末調整は給与所得を対象としているため、給与以外で配当金などの所得がある場合は配当控除を適用させるために確定申告をしなければなりません。
副業で控除制度が適用できる所得がある場合は、例え合計所得額が20万円以下であっても確定申告をしたほうが良いでしょう。
まとめ
住民税の控除を解説しました。
住民税は地方税のひとつであることから、控除額・控除制度・税率などは自治体によって異なります。
自治体独自の優遇措置などが設けられていることもあるので、ホームページを確認したり問い合わせをしたりしてみてください。
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